公開日:2021年3月3日(水)
調査名 | ITエンジニアの人的資源管理に関する定量調査 |
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調査内容 | ITエンジニアの採用・定着・仕事観・キャリア構築の実態や特徴を、他職種との比較を通して明らかにする。 |
調査対象 | (共通条件) ・居住地域:全国 / 年齢:20〜59歳 / 男女 / 雇用形態:正社員(代表取締役・社長相当は除く) ・企業規模:10人以上 / 第一次産業は除く / 資本:内資・外資不問 【A】 ITエンジニア職種(IT技術職) 1600名(20-30代 800名、40-50代 800名) 【B】 バックオフィス職種(財務・会計・経理・法務・事務・アシスタント) 300名(20-30代 150名、40-50代 150名) 【C】 マーケティング・企画職種(企画・マーケティング) 300名(20-30代 150名、40-50代 150名) 【D】 フロント職種(営業職) 300名(20-30代 150名、40-50代 150名) 合計サンプル数 2500人 |
調査時期 | 2020年9月4日~9月7日 |
調査方法 | 調査モニターを用いたインターネット定量調査 |
調査実施主体 | 株式会社パーソル総合研究所 |
調査報告書(全文)
ITエンジニアのキャリア不安をランキング化すると、1位は自分の技術やスキルの陳腐化で46.5%、3位は新しい技術やスキルの習得で43.6%となった。ITエンジニアはそれ以外の職種と比べて、技術やスキルに関する不安感が高いことが定量的に明らかとなった。企業としてはITエンジニアが技術やスキルを研鑽する機会を積極的に提供すべきと考えられる。
図1.ITエンジニアとそれ以外の職種のキャリア不安
年収と転職意向の関係性をみると、ITエンジニアは年収が高いほど定着しやすい傾向にある。ITエンジニアの場合、職務に見合った市場価格とすることで、それ以外の職種以上に定着の効果が現れる可能性がある。
図2.年収と転職意向の関係性
ITエンジニアの希望年収と現在の年収の差は150.1万円、それ以外の職種における差は141.4万円(図3)。ITエンジニアの方が8.7万分ギャップが大きく、給与に関してより不満を抱えている可能性がある。
また、希望年収と現年収のギャップの大きさは、ITエンジニアでは転職意向を上げ、それ以外の職種では管理職意向を下げる(図4)。ITエンジニアの場合、転職市場に求人ポジションが相当数あり、どの会社でも通用するスキルを持っていることが背景にあると考えられる。それ以外の職種の場合、低い給与に見合った働きぶりにとどめようという意識が働いていると考えられる。
図3.希望年収と現年収の差
図4.希望年収と現年収のギャップと転職意向・管理職意向との関係性
希望年収と現年収に最も差がある職種はセキュリティエンジニアであり、181.7万円ものギャップがある。人材の希少性を背景に給料面で不満を抱えている可能性が高く、注意が必要。
図5.ITエンジニアの職種別・役割別の年収との関係性
ITエンジニアが使っているプログラミング言語別に希望年収と現年収をみると、最も差が生じたのはTypeScriptであり、226.6万円ものギャップがある。給料面で不満を抱えている可能性が高く、注意が必要。
図6.言語別の年収(複数選択)
ITエンジニア全体の月平均の残業時間は18.2時間。職種別にみると「IoTエンジニア」「ネットワークエンジニア」「インフラエンジニア」の順で、残業時間が長い。役割別にみると「プロジェクトマネージャー」「プロダクトマネージャー」といった調整機能を担う場合に長時間労働となる傾向が見られた。
図7.ITエンジニアの残業時間
ITエンジニアの入社理由ランキング1位は安定して働ける環境で53.8%。2位は成長できる環境で40.4%、3位は技術を伸ばせる環境で38.3%となり、ITエンジニアの成長志向が強い傾向が伺える。
図8.ITエンジニアの入社理由
ITエンジニアとそれ以外の職種の学習実施率で大きく差が開いたのが「資格取得のための学習」で11.1%の差。「通信教育、eラーニング」は5.1%の差。ITエンジニアの副業が語られることが多いが、「副業・兼業」で差は見られなかった。
図9.ITエンジニアとそれ以外の職種の学習実施率(複数回答)
現在(調査期間の2020年9月)、ITエンジニアが在宅勤務している割合は38.1%、ITエンジニア以外の職種が在宅勤務している割合は24.1%となり、ITエンジニアは在宅勤務で働きやすいことが定量的に明らかとなった。
図10.ITエンジニアとそれ以外の職種の勤務場所(調査期間の2020年9月時点)
ITエンジニアの定着にとってまず重要なのは、市場価値を反映させた給与の設計である。ITエンジニアの場合、希望年収と現年収のギャップがそれ以外の職種以上に大きいうえ、ITエンジニアの職種や役割、プログラミング言語別ごとにギャップにばらつきがある。市場価値や職務に見合った給与となっているか、給与面で不満を抱えていないか十分な注意が必要だと言える。適切な給与とすることは採用面でも重要だ。
また、定着の要因として組織シニシズム(所属組織への批判的態度)に注目し、分析を行ったところ、ITエンジニアの場合、それ以外の職種に比べて、組織シニシズムが転職意向に顕著につながりやすいことが分かった(図11)。また、重回帰分析により、組織風土やマネジメントの在り方が組織シニシズムをもたらす要因となっていることが分かった(図12)。経営や人事、エンジニアのマネジメント層は、組織シニシズムを回避するため、エンジニア部門とそれ以外の部門との対等性や風通しの良さ、育成体制の充実などに注意を払うべきである。
図11.組織シニシズムによる転職意向への影響
図12.組織シニシズムに影響する要因(重回帰分析の結果による)
※本調査を引用いただく際は、出所として「パーソル総合研究所」と明記してください。
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