公開日 2017/10/25
2017年10月16日東京新宿マインズタワーで『ケースメソッドを活用したリーダーシップ開発』体験セミナー(株式会社パーソル総合研究所主催)が開催されました。名古屋商科大学大学院マネジメント研究科伊藤武彦教授にM&A、グローバル展開など、ますます複雑化し巨大化していく大企業の次世代トップリーダー候補に求められる「リーダーとしてのあり方」を醸成する方法などについてケーススタディを交えてご講演いただきました。
まず、はじめに言えるのはリーダーシップを教えるのは難しいということです。例えば、日本ではダイレクトではっきりとしたフィードバックは「厳しい」と敬遠される傾向にあります。しかし、グローバルリーダーになる為には、ダイレクトではっきりとしたフィードバックをクリアに行うことが必要になります。また、ハーバード大学のある教授は「人生では二回の結婚がある」と教えているといいます。1回目はパートナーと結婚する時、2回目はリーダーになった時です。その趣旨はパートナーとの結婚もリーダーになるということも、自分の生活様式や反射の仕方、考え方を調整し、変更しないとうまくいかないということです。つまりリーダーシップトレーニングとは、自分のこれまでのやり方をリーダーのやり方に変えなければならない、難しいトレーニングなのです。
国内、海外問わず、色々な産業のコンサルティングをしましたが、各社の社長やエグゼクティブの悩みや課題は共通している部分が多くあります。本セミナー※では、それを抽出し12のケーススタディでまとめたものを題材にして、2日間リーダーシップに関して考えていきます。
※次世代リーダー育成プログラム https://rc.persol-group.co.jp/learning/service/leader/
このようなリーダーシップトレーニングをしている時に感じるのは、日本人は甘えている人が多いということです。海外では「クライングベイビー」という言葉があります。何かをくれないと働きたくないというようなわがままをいう人を指しますが、このような人はリーダーシップトレーニングから脱落させられます。グローバルスタンダードなリーダーは非常に厳しい状況下で、スピード感を持って課題解決することが求められる、難易度が高く、ストレスも多い立場です。そのようなリーダーを醸成するトレーニングですから、当然、難易度が高く、緊張感のあるプログラムになっています。日本の常識は世界の非常識などとも言いますが、企業がグローバル化する中で、グローバルスタンダードなリーダーシップトレーニングは不可欠だと考えています。
私がリーダーシップトレーニングで特に重視しているのは、コミュニケーションです。いくら知識を身に付けたとしても、リーダーとしてのコミュニケーションができていなければ、その知識を活かすことはできません。例えば、リーダーは最低でも1つの事柄を4つのタイプの人に合わせて、4通りの話し方をしなければなりません。言いたいことを言う人やいい人ではなく、多様な場面で言うべきことを言う人がリーダーなのです。
リーダーシップトレーニングでは、当然様々な知識も学んでいただきます。しかし、それらの知識をそのまま様々な場面で使っていこうと考えるのは賢明ではありません。それらの知識は、現実の様々な場面において、参考となる引き出しを増やす為に学ぶと考えた方が良いと思います。リーダーにとって重要なのは、それらの知識を参照し、いかに考え、いかに伝えるかということだと考えています。
例えば、ある内容を人に伝えるという時、皆さんは適切に伝えられているでしょうか。ある研究では、何かを伝えられた側が内容を理解し、頭に残る率は約5%だといいます。つまり、皆さんは伝えているつもりでも約5%しか、伝わっていないということです。では、どのようにすればいいのかというと、繰り返し伝えたり、相手の印象に残るようにデモンストレーションしたり、様々な工夫をする必要があるのです。
このようなお話をすると、リーダーになるのは非常にハードルが高く、私には無理なんじゃないかと考える人がいるかもしれません。確かに、リーダーになる為には多くのスキルを身に付け、活用する必要があります。しかし、トレーニングをすることで、世界中でリーダーが成長している実態があることを考えると、日本でも、適切なトレーニングをすれば、誰でもリーダーになることが可能性があると考えています。
名古屋商科大学大学院 マネジメント研究科
教授
伊藤 武彦
1991年早稲田大学商学部卒業。富士総合研究所入社、ベンチャー経営、マーサー・ジャパン名古屋所長、同プリンシパルを経て株式会社ライトマネジメントジャパンプリンシパル。2005年より名古屋商科大学大学院にて教壇に立ち、2008年同教授。
著書:「4つのカラーで見直そうこれからの働き方」(ファーストプレス)、「世界で通用する正しい仕事の作法 4つのカラーで人を知る、組織を活かす、世界と通じあう」(good.book)。 他共著「取締役イノベーション」(東洋経済新報社)など。英国ダラム大学ビジネススクールMBA修了。webサイト「ソフトバンクビジネス+IT」にて、連載記事「これからの企業で働くための条件 」を寄稿中。
本記事はお役に立ちましたか?
前のイベントレポート
次のイベントレポート
《人材の力を組織の力に》変革後も制度を改善し続け 人材の成長と組織貢献を最大化
《無自覚・無能からの脱却》企業成長に貢献する人事への変革は人事自身のアンラーニングからはじまる
常識の枠を超えて考える「哲学思考」の実践が、イノベーションや「より良く生きる」ことにつながる
データから見る対話の「効果」とは
職場で「本音で話せる」関係はいかに実現可能か
「本音で話さない」職場はなぜできるのか
「主体性」という曖昧な言葉に翻弄されないように。企業と学生の認識のギャップを解消したい
「学び合わない組織」のつくられ方
学びを遠ざける「ラーニング・バイアス」を防げ
コソコソ学ぶ日本人――「学びの秘匿化」とは何か
学び合う組織に関する定量調査
どのような若手社員が上司からサポートを受けているのか
《哲学的思考力》 混迷のVUCA時代に必要なのは、自分の頭で考えて探求する力
《ポテンシャルの解放》個人の挑戦を称賛する文化が時代に先駆けた変化を生み出す
《“X(トランスフォーメーション)”リーダー》変革をリードする人材をどう育成していくか
《適時・適所・適材》従業員が最も力を発揮できるポジションとタイミングを提供
人的資本情報開示にマーケティングの視点を――「USP」としての人材育成
会社員が読書をすることの意味は何か
「若手社員は管理職になりたくない」論を検討する
コロナ禍で「ワーク・エンゲイジメント」はどう変化したのか?ー企業規模に注目して
不正を防止するコンプライアンス対策とは
従業員のリスキリング促進に向けて企業に求められる人材マネジメントとは~学び続ける人を増やし、組織の成長につなげる~
人事部非管理職のキャリア意識の現在地
目まぐるしく移り変わる人事トレンドに踊らされるのではなく、戦略的に活用できる人事へ
新卒者・中途採用者のオンボーディングから、子どもたちの《協育》まで。 誰もが幸せに働ける社会の実現を目指し、研究に挑み続けたい
HITO vol.18『組織成長に生かすアンラーニング ~これまでの知識・スキルを捨て、入れ替える~』
アンラーニングしなければ、人と組織は成長を続けられない
What constitutes an approach to human resources management that promotes reskilling for workers?
従業員のリスキリングを促進する人材マネジメントとは
従業員のリスキリングを支える「3つの学び」とは
企業の新規事業開発の成功要因における組織・人材マネジメントの重要性
リスキリング・アンラーニングと変化抑制のメカニズム ~変化とは「コスト」なのか~
就業者のアンラーニングを阻むのは何か
リスキリングとアンラーニングについての定量調査
人を育てる目標管理とは従業員の「暗黙の評価観」が鍵
HITO vol.17『ITエンジニアに選ばれる組織の条件 ~賃金と組織シニシズムの観点から考察する~』
コロナ禍における研修のオンライン化に関する調査
ITエンジニアの人的資源管理に関する定量調査
ジョブ型雇用への転換で教育・育成はどう変化するべきか?
【イベントレポート】次世代リーダーを効果的に育成するための秘訣とは?
成長実感の高い職種ランキング BEST10 職種別成長実態
アルバイト・パートの成長創造プロジェクト
価値創造型人材の発掘とパイプラインの構築
非正規社員に対する人材育成の在り方
正社員の価値発揮を阻害する人事制度上の3つの課題
今こそ、企業の包容力(2) 包容力はどう持てばいいのか
今こそ、企業の包容力(1) 人の成長を待つ余裕を持つ
創造型人材の重視を
follow us
メルマガ登録&SNSフォローで最新情報をチェック!