《“X(トランスフォーメーション)”リーダー》変革をリードする人材をどう育成していくか

公開日 2023/12/01

経営変革を主眼としたホールディングス体制へ移行し、現在では教育分野、医療福祉分野を中心に事業展開する約50社の企業集団へと成長した学研グループ。今後の発展のためにどのような人材育成を推進しているのか、人的資本投資を推進する渡辺氏に伺った。

渡辺 悟 氏

株式会社学研ホールディングス エグゼクティブディレクター/人的資本経営・サスティナビリティ推進担当 
渡辺 悟 氏

大学卒業後、大手銀行に入行。外資系大手コンサルティング会社などで事業戦略策定や研修サービス事業化などに従事後、2010年1月にシュハリ株式会社を設立。コンサルティングと研修を掛け合わせた新たな企業支援サービスを創出。19年、学研グループにDX推進のため入社、経営課題のフロンティアに挑み続ける。23年1月より現職。

  1. VUCAの時代に求められる“X”リーダーとは
  2. “X”の基礎的戦闘力であるポータブルスキルを磨く

VUCAの時代に求められる“X”リーダーとは

渡辺氏

経営を取り巻く環境が大きく変化し、先の見通しが困難なVUCAの時代において、DX(デジタル・トランスフォーメーション)やSX(サスティナビリティ・トランスフォーメーション)など、新たな経営課題は、“X”(トランスフォーメーション/変革)とともに語られることが増えています。学研グループは創業以来、社会ニーズの変化に応じた変革を実現し、経営や事業のトランスフォーメーションに挑戦し続けてきました。例えば、2000年代には少子高齢化が加速する中、シニア世代をターゲットに医療福祉(介護)領域の新事業を創造し、いまやグループの柱のひとつになっています。新たな社会課題の登場に対して変革し続けることができているのは、新たな挑戦や変化を許容する組織文化を醸成し続けているからです。そうした「環境づくり」の結果、その時々の時代に応じた変革を主導するヒーロー&ヒロイン、つまり《トランスフォーメーション・リーダー(以後、“X”リーダー)》が出現してきました。

VUCAの度合いが加速する現在、環境づくりを通じたヒーロー&ヒロインの創出に加えて、“X”リーダー出現のための戦略的な人づくりの必要性が高まっています。「未来の展望を明示し、心躍る表現で人材の意欲を刺激する。同時に一人ひとりを思いやりつつ、人材や組織に良き変化をもたらし、変革を迅速・適時に実現する」のが“X”リーダーです。

“X”の基礎的戦闘力であるポータブルスキルを磨く

西田氏

ホールディング体制に移行して十数年経ち、管理職登用アセスメントや“X”リーダー創出に向けた鍛錬など、ホールディングスが主導してグループ共通で取り組むべき課題も増えてきました。そうした背景から2022年12月よりグループの人的資本投資体系を見直し、グループ全社を対象とした企業内大学である「学研仕事塾」をスタートさせました。従来通り各社が取り組むべき人的資本投資と、グループ共通で取り組むべき人的資本投資の良いとこ取りを狙っています。

「学研仕事塾」の重点施策のひとつが、《ポータブルスキル》の鍛錬です。“X”リーダーはある日突然生まれるわけではなく、リーダーポテンシャル群の中で可能性が開花した人材が“X”リーダーとして活躍するのです。人的資本投資策としては、リーダーポテンシャル人材増につながる素養磨きが重要です。その素養の中でも、論理思考や資料作成力、プレゼンテーションやファシリテーションなど、企業規模や職種・職場を問わず通用する基礎的戦闘力である《ポータブルスキル》の優先度が高いと考えています。

ポータブルスキルは、人的資本投資領域では別段目新しいものではありません。しかしながら、仕事の賞味期限の短命化や企業間での人材流動化の加速など、人的資本関連のトレンドを鑑みれば、今だからこそ、「持ち運び可能な」スキルの重要性は高まっています。

昨今、注目度の高い1on1やコーチングなど「対話系」の取り組みなども、その前提としての基礎的戦闘力があってこそ。高いポータブルスキルを持つ人材を輩出できれば、在職者のロイヤリティ向上や求職者へのアピールにもつながり、会社自体のブランド力向上にも貢献することになるでしょう。


※文中の内容・肩書等はすべて掲載当時のものです。


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