学び合う組織に関する定量調査

調査レポート | 2024年2月7日(水)

公開日:2024年2月7日(水) 

調査概要

調査名 学び合う組織に関する定量調査
調査内容 ・正規雇用就業者の組織全体の学び実態を明らかにする。
・組織的な学び促進のための施策検討のための示唆を得る。
調査対象 ■全国の男女・正規雇用就業者(年齢20-64歳)
 -令和2年国勢調査で性年代を割付
 -合計6000s
 -※一部業種除外、役員以上の役職者を除外
調査時期 2023年10月24日-27日
調査方法 調査会社モニターを用いたインターネット定量調査
調査実施主体 株式会社パーソル総合研究所

※報告書内の構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、個々の集計値の合計は必ずしも100%とならない場合がある。

調査報告書(全文)

調査報告書目次

Index

1就業者の学びの実態
2ラーニング・バイアスの実態と学びの“秘匿化”
3学び合う組織を創るポイント
4他者との協働的な学びと、学びに向かう文化の醸成を

調査結果(サマリ)

就業者の学びの実態

業務外の学習無し・研修無しが多い就業者

就業者の学習行動の実態を見た。業務外の学習時間は、56.1%が「学習無し」。過去3年以内の研修受講経験も72.7%が「ひとつもない」。

図1.業務外の学習時間・過去3年以内の研修受講率
業務外の学習時間・過去3年以内の研修受講率

過去3年間に研修受講経験もなく、業務外の学習もしていない「研修無し(過去3年間)かつ学習無し」という層が、全体で48.5%。特に女性でやや多い。

図2.性年代別|研修無し(過去3年間)かつ学習無し層(%)
性年代別|研修無し(過去3年間)かつ学習無し層(%)

性年代別にみる学習意欲と学習時間

学習意欲と学習時間を年代別に見ると、男性は40代以降、女性は30代以降、学習意欲も学習時間も大きく減少している。

図3.性年代別|学習意欲と学習時間
性年代別|学習意欲と学習時間

ラーニング・バイアスの実態と学びの“秘匿化”

学習意欲・学習時間・学習期間へ悪影響を及ぼす7つのバイアス

就業者が学習から遠ざかる要因となる、学びについての偏った認識・意識を、「ラーニング・バイアス」として7つ特定した。「新人(学びは新人や若い人だけがやるものである)」、「学校(学びは学校で生徒が行うものである)」、「自信の欠如(学びはもともと得意ではない、自信が無い)」、「地頭(生まれつき知能は決まっていて不変である)」バイアスなどが、学習意欲を下げる。
「現状維持(今のままで十分仕事ができている)」、「タイパ(手っ取り早く、正解だけを学びたい)」「現場(経験だけが重要であり、学びは必要ない)」バイアスなどは、学習時間を短くしている傾向が確認された。

図4.ラーニング・バイアスと学習への影響
ラーニング・バイアスと学習への影響

職場で共有されない学習行動

学習者が自身の学びについて、状況や内容を共有するかどうかを聴取した。自身の学びについて状況や内容を同僚に「言わない」は56.2%、「言う」は12.0%。上司やその他の社内関係者に対しても「言う」は10%前後にとどまる。

図5.学びの秘匿化の実態
学びの秘匿化の実態

学習行動の過半数が学んでいることや学習内容を職場で他者と共有しない“秘匿化”することで、可視化(職場で共有)される学びは、全体で19.7%になる。

図6.学習状況と学習共有(%)
学習状況と学習共有(%)

学び合う組織を創るポイント

ポイント① 学びの自己認識の向上

学びに関する自己認識(セルフアウェアネス)を「学び方」「キャリア」「スキル」の3つの次元に分け、それぞれ内部(自己)の視点と、外部からの視点で測定した。
学習スタイルなどについて認識する「学び方の自己認識」、自身のキャリアやキャリアパスなどについて認識する「キャリアの自己認識」、興味・関心やスキルなどを自己理解・評価する「スキルの自己認識」はすべて「学習意欲」に対してプラスの関連がある。
学びの自己認識に対しては、仕事上の経験の中でも「学びの相談経験」が最も強くプラスの影響。また、他者との協働的な学び経験である「コミュニティ・ラーニング経験」が広くプラスの影響が見られた。

図7.学びの自己認識を高める要因とその影響
学びの自己認識を高める要因とその影響

ポイント② 3つの組織文化

組織文化と学習意欲・学習共有との関連を見た。学んだことを仕事に役立てる「活用文化」、学んだことを人に教えたり共有したりする機会がある「共有文化」、職場外の勉強会や研修への参加が推奨されている「奨励文化」が高い組織は学習意欲が高く、学習共有が進んでいる(秘匿度が低い)。

図8.学びの組織文化と学習意欲・共有への影響
学びの組織文化と学習意欲・共有への影響

ポイント③ 上司のマネジメント行動

メンバーの学びと上司マネジメントの行動を見た。日常的な情報収集や、新しい知識やスキルの学習などの「上司自身の学び行動」が、部下の学習意欲・学習時間・学習共有にプラスの関連が見られた。

図9.上司マネジメントと部下の学び
上司マネジメントと部下の学び

分析コメント

他者との協働的な学びと、学びに向かう文化の醸成を

「人的資本経営」や「リスキリング」の流行により、人材開発・育成への関心が高まっている。人材開発費が長期抑制されてきた日本では数十年ぶりのトレンドである。一方で、手挙げ式研修やe-Learningをいくら用意しても、学ぶ従業員がごく一部しかいないという課題の重みは増し、持続的に学び合う組織づくりの重要性が改めて問われている。

本調査の独自の発見は、就業者には「学びは新人のもの」「現場での経験だけが重要」といった学びを遠ざける7つのバイアスがあることに加え、自分の学びを共有せずに「秘匿」する習慣も広く存在するということだ。多くの企業で学びを共有する風土が無く、“学ばない組織”が維持されている。個人の学習意欲を向上させるだけでなく、組織内で「学習伝播」する施策が必要である。

有効と考えられるのは、以下が挙げられる。
① バイアスの存在を含めた個人の学びに関する自己認識(セルフ・アウェアネス)を高めるためのワークやカウンセリング機会を取り入れる
② 個人単位の学習ではないコミュニティ・ラーニング機会の拡充
③ 組織全体の学び合う組織の現状を測定し、総合的に改善を図る

図10.学び合う組織の全体モデル
学び合う組織の全体モデル

パーソル総合研究所では既にさまざまな学びについての調査*を実施してきた。本調査と合わせて参照いただければ幸いである。

*「学び」に関連する調査・研究員コラムはこちらからご覧ください。
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/theme/?theme[]=reskilling

※本調査を引用いただく際は出所を明示してください。
出所の記載例:パーソル総合研究所「学び合う組織に関する定量調査」

調査報告書全文PDF

学び合う組織に関する定量調査

全文PDF

調査報告書目次

就業者の学びの実態

ラーニング・バイアス

学びの“秘匿化”

学び合う組織のために ①自己認識と学習行動

学び合う組織のために ②組織文化とマネジメント


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