公開日 2023/12/01
三菱重工は、2022年4月に戦略機能と事業支援の強化、環境変化への対応を目的とするHR改革推進室を設置した。その副室長を務める川島氏に、これから人事としてより重要になると思われるキーワードについて伺った。
三菱重工業株式会社 HR改革推進室 副室長/グループ戦略推進室 戦略企画部 主幹部員/名古屋ヒューマンバリューセンター長 川島 秀之 氏
1990年三菱重工業入社。冷熱事業部門にて人事勤労や資材購買、営業、事業企画、中国上海駐在などを経験し、2010年より本社コーポレート部門のHR担当に。10年人事部グローバル人事グループ長、16年シェアドテクノロジー部門技術戦略推進室次長、21年グローバルHR部長を経て、22年より現職。
※名古屋ヒューマンバリューセンター長は2023年9月、取材当時
私は当社に入社後20年間、事業部門を経験し、直近13年は本社で主に人事を担当してきました。このたび三菱重工グループ全体のHRの戦略・企画立案を担うHR改革推進室の副室長という立場になり、改めて人事の役割を考えると、「《適所適材》を実現させ、従業員一人ひとりにとって最適なポジションで、力を最大限に発揮してもらうことに尽きる」という思いに至りました。加えて、最近特に重要と感じているのが、適所適材を最適なタイミングで実現させる《適時》の視点です。
この《適時・適所・適材》は、会社・組織側の事業ニーズの観点から重要であることはもちろんですが、個人のキャリアにおいても、適したタイミングに適した任務や役割を経験することはとても重要です。誰しも「若い頃にこんな経験ができれば(できて)よかった」ということがあると思います。そういう経験を可能な限り時機を逸せず、実現させていければと思っています。会社と個人の時機が合ったとき、個人のパフォーマンスは最大限に発揮され、それが組織の成果につながり、ひいては社会への貢献になるのです。
《適時・適所・適材》を重視するようになった背景には、世代の多様性ともいえるような、キャリアに対する価値観の変化があります。今の若い世代は、タイパ(=タイムパフォーマンス)を優先させる傾向があるといわれますが、実際に若手社員と接すると、学生時代からすでにキャリアについて考えていて、われわれの世代に比べ「早く経験を積み、成長したい」という意識が強い人が多いように感じます。
そのため当社では、キャリアを考え「覚醒」を促す支援と、それを「実践」できる場の提供の支援を行っています。例えば、2023年から始めた「社内(グループ内)越境プログラム」です。もともと手挙げによる異動や副業・兼業の制度はありましたが、社内越境は半年間などの期限付きで別部署の仕事を経験できるもので、若手から課長職手前までの層を対象としています。異なる部署の業務に携わり、それが終わると元の部署に戻り越境体験を生かす。そのようなサイクルがうまく回っていけばと期待しています。
こうした機会提供は、人事部門の中でも積極的に行っています。人事戦略や企画の立案について、全国各地の若手も参画できるように分科会を設け、プロジェクト型で実施しています。また、HRテックやマーケティングに強い外部の方に副業・兼業という形で一定期間参画してもらい、社内メンバーのスキル強化を図ったり、外部の視点から提言をもらうケースもあります。組織開発やHRテック、ウェルビーイングなど、人事もさまざまな新しい分野への取り組みが必要になる中、このように社内外における《適時》の《適所適材》が実現されることが力となっていくでしょう。
なお、《適時・適所・適材》を効果的に実現するためには、やはり「従業員一人ひとりをよく知る」ことが不可欠です。人事としては当たり前のことですが、最も大切なことではないでしょうか。本社勤務が長くなった私ですが、今年度からはまた現場に近い業務を兼務しているので、最前線の従業員の皆さんとの積極的なコミュニケーションを心がけていこうと思っています。
※文中の内容・肩書等はすべて掲載当時のものです。
本記事はお役に立ちましたか?
前のインタビュー
《人材の力を組織の力に》変革後も制度を改善し続け 人材の成長と組織貢献を最大化
《無自覚・無能からの脱却》企業成長に貢献する人事への変革は人事自身のアンラーニングからはじまる
常識の枠を超えて考える「哲学思考」の実践が、イノベーションや「より良く生きる」ことにつながる
早期リタイアを希望する20~30代の若手男性が増えているのはなぜか
データから見る対話の「効果」とは
職場で「本音で話せる」関係はいかに実現可能か
「本音で話さない」職場はなぜできるのか
キャリア対話に関する定性調査
「主体性」という曖昧な言葉に翻弄されないように。企業と学生の認識のギャップを解消したい
「学び合わない組織」のつくられ方
学びを遠ざける「ラーニング・バイアス」を防げ
コソコソ学ぶ日本人――「学びの秘匿化」とは何か
「ジョブ型」や「キャリア自律」で異動配置はどう変わるのか
日本的ジョブ型をどう捉えるか
仕事をもっと楽しく──ジョブ・クラフティングでより前向きに、やりがいを感じて働く人を増やしたい
「ジョブ型/キャリア自律」時代の人事異動・配置
学び合う組織に関する定量調査
どのような若手社員が上司からサポートを受けているのか
《哲学的思考力》 混迷のVUCA時代に必要なのは、自分の頭で考えて探求する力
《ポテンシャルの解放》個人の挑戦を称賛する文化が時代に先駆けた変化を生み出す
《“X(トランスフォーメーション)”リーダー》変革をリードする人材をどう育成していくか
人的資本情報開示にマーケティングの視点を――「USP」としての人材育成
会社員が読書をすることの意味は何か
「若手社員は管理職になりたくない」論を検討する
コロナ禍で「ワーク・エンゲイジメント」はどう変化したのか?ー企業規模に注目して
派遣社員のリスキリングに関する定量調査
従業員のリスキリング促進に向けて企業に求められる人材マネジメントとは~学び続ける人を増やし、組織の成長につなげる~
社員一人ひとりに目を向け、そのタレントを最大限に活かす あらためて考える配置・異動・昇進のあり方
大手企業における管理職の異動配置に関する実態調査(2022)
人事部非管理職のキャリア意識の現在地
管理職の異動配置に関する実態調査(2022)
多様性の推進と成長の加速に必要なのは、自己認識と自律的なキャリアの歩み
人生100年時代に必要なのは、自分の軸を持ちキャリアを構築する「キャリアオーナーシップ」
人的資本と同時に《組織文化資本》が重要に。挑戦と失敗を受け入れる組織文化が自律型人財を育てる
目まぐるしく移り変わる人事トレンドに踊らされるのではなく、戦略的に活用できる人事へ
オンラインの進展、人手不足……人事はより戦略的に攻めの時代へ。 注目すべきは、《全国採用》《タレントアクイジション》《創造性》
自律性、主体性が求められる時代、人事施策成功のカギは《個の覚醒》にあり
新卒者・中途採用者のオンボーディングから、子どもたちの《協育》まで。 誰もが幸せに働ける社会の実現を目指し、研究に挑み続けたい
人事は、いかにミドル・シニアを活性化させていくべきか 待ったなしの今、取り組みへのポイントは?
HITO vol.18『組織成長に生かすアンラーニング ~これまでの知識・スキルを捨て、入れ替える~』
アンラーニングしなければ、人と組織は成長を続けられない
What constitutes an approach to human resources management that promotes reskilling for workers?
従業員のリスキリングを促進する人材マネジメントとは
従業員のリスキリングを支える「3つの学び」とは
企業の新規事業開発の成功要因における組織・人材マネジメントの重要性
リスキリング・アンラーニングと変化抑制のメカニズム ~変化とは「コスト」なのか~
就業者のアンラーニングを阻むのは何か
経営戦略と連動した人材戦略の実現の鍵は人事部の位置付け ~人的資本経営に資する人事部になるには~
リスキリングとアンラーニングについての定量調査
個に寄り添い、個を輝かせる。カインズのキャリア自律支援
「キャリア自律」促進は、従業員の離職につながるのか?
非管理職層の異動配置に関する実態調査(2021)
大手企業における非管理職層の異動配置に関する実態調査(2021)
一般社員層(非管理職層)における異動配置に関する定量調査
人を育てる目標管理とは従業員の「暗黙の評価観」が鍵
「キャリア自律推進」の背景とその落とし穴 啓発発想からビオトープ発想へ
もはや経営主導だけでは成り立たない タレントマネジメントはハイブリッド型へ
従業員のキャリア自律に関する定量調査
HITO vol.17『ITエンジニアに選ばれる組織の条件 ~賃金と組織シニシズムの観点から考察する~』
中間層人材のタレントマネジメントの在り方が 次世代経営人材の発掘・育成効果を変える
コロナ禍における研修のオンライン化に関する調査
大手企業のタレントマネジメントに関する実態調査2020
ITエンジニアの人的資源管理に関する定量調査
大手企業のタレントマネジメントに関する実態調査(2020)
ジョブ型雇用への転換で教育・育成はどう変化するべきか?
ジョブ型人事が加速させるキャリアデベロップメントプラン
特別号 HITO REPORT vol.7『True Colors 日本的タレントマネジメントの可能性』
キャリア自律が生み出す社員の成長と組織への恩恵 副業・兼業解禁は企業と個人に何をもたらすのか
労働市場の今とこれから 第7回 全社員型タレントマネジメントという考え方
キャリアの曲がり角は42.5歳ミドル・シニア正社員と成長の関係
【イベントレポート】次世代リーダーを効果的に育成するための秘訣とは?
成長実感の高い職種ランキング BEST10 職種別成長実態
【イベントレポート】ケースメソッドを活用したリーダーシップ開発
【イベントレポート】デジタル化時代の心の通う人事セミナー
アルバイト・パートの成長創造プロジェクト
【イベントレポート】タレントマネジメントの実務を通じて見えてきた課題と展望(2)
【イベントレポート】大和証券グループが取り組む働き方改革
【イベントレポート】タレントマネジメントの実務を通じて見えてきた課題と展望(1)
【イベントレポート】タレントマネジメントの潮流
外部労働市場すべての人を「自社で働く可能性のあるタレント」と捉える時代へ次なるタレントマネジメントの展望
~日本企業のタレントマネジメント最前線~全社員型タレントマネジメントに向けた3つのトレンド
HITO vol.10『全員を光らせろ!~タレントマネジメントの潮流~』
価値創造型人材の発掘とパイプラインの構築
岐路に立つ「正社員」
非正規社員に対する人材育成の在り方
非正規社員の無期転換のために必要な支援とは?
仕事を作れる社員に ~入社3年間でスキル強化~
正社員の価値発揮を阻害する人事制度上の3つの課題
下積み期間が重要 ~段階踏まえて仕事を熟達~
今こそ、企業の包容力(2) 包容力はどう持てばいいのか
問題発見能力が重要 ~自ら考え行動する習慣を~
今こそ、企業の包容力(1) 人の成長を待つ余裕を持つ
創造型人材の重視を
follow us
メルマガ登録&SNSフォローで最新情報をチェック!