公開日 2017/11/14
2017年10月23日東京新宿マインズタワーで『次世代リーダーを効果的に育成するためのプログラムデザインとは』体験セミナー(株式会社パーソル総合研究所主催)が開催されました。株式会社ACWパートナーズ代表大國仁氏に、次世代の幹部育成を成功に導くための秘訣などについてご講演いただきました。
本日は約17年間のコンサルタントとしてのキャリアを通して取り組んできた、次世代幹部育成について、成功に導くための秘訣についてお話をしたいと思います。
まず、1つ目のポイントは、求めている次世代幹部像を明らかにすることです。どのような資質、スキル、知識、経験を持つかという視点ではなく、どのような成果をあげることができる幹部を育成するのかが重要。そして、そのような幹部をいつまでに育成するべきなのか。明確な次世代幹部像を持つことが必要だと考えています。
2つ目のポイントは、人はどのようにして成長するのかを考えることです。例えば私は、個人行動という小さな歯車を適切に回し、より大きな組織行動という歯車に接続させることで成長に向けた行動サイクルを実現できると考えています。※図1
図1成長に向けた行動サイクル
3つ目のポイントは、課題解決の意思を表明した人をリーダーに、それに共感した人をメンバーにしてチームを組むことです。この際にメンバーが集まるかどうかは、リーダーとなる人が「普段から個人行動の小さな歯車を回して信頼を得ている人かどうか」が影響します。
4つ目のポイントは、課題によって、成果の大きさ、実現までの時間や難易度が異なるということを理解することが必要だということです。例えば、職場の業務改善は比較的成果までの時間は短く難易度もさほど高くないことが多いと思いますが、反面成果も限られているという特徴があります。それに比べ、新規事業の立ち上げなどは中期的な成長を目指したもので、時間がかかり、難易度が高い代わりに、成果も大きいというのが一般的ではないでしょうか。
ここで重要なのが、ポイント1でお話しした、次世帯の幹部にどのような課題を取り組んでもらいたいのか、どのような幹部を育てたいのかということです。どのような課題に取り組む幹部を育成したいのかを明確にし、その課題にあった育成をする必要があると考えています。
5つ目のポイントは、育成プログラムの実施に関しては、プログラム中に成果が確認できる課題に関して、課題設定をすることです。育成プログラムにおいて、「新規事業プラン」など時間のかかる課題を設定してしまうと、育成プログラム中に成果の確認ができず、成果の評価が難しくなってしまいます。また、次世代幹部のモチベーションを喚起するという意味でも、比較的難易度の低い、短期的な課題からステップを踏み、より大きな課題に取り組んでいくということが必要だと考えています。
6つ目のポイントは方法論の紹介から入るのではなく、課題解決のために必要な方法論を順次紹介していくということです。方法論や手法を学ぶことに起点を置くのではなく、課題の解決に起点を置き、その上で方法論を学ぶことが効果的なのではないかと考えています。
人口の構造的な変化によって、国内市場の衰退は加速する恐れがあります。このような環境下ではリーダー育成についても思考を転換する必要があります。成長期に求められた「優秀な人材を選ぶか」という視点ではなく、「課題意識を持った人材にいかに成果をあげてもらうか」という視点を強めることが求められます。課題の性質が異なるのであれば、当然、そのリーダー像も異なります。次世代リーダーの育成で最も重要なのは、事業における成果を明確にした上で、育成プランを組み立てていくことではないでしょうか。
(株)ACWパートナーズ 代表取締役
大國 仁
(おおくに じん)
三菱自動車工業でマーケティング戦略策定・実行を担当した後、経営コンサルタントに転身。戦略系コンサルティングファームや企業変革の実行に強みを持つジェネックスパートナーズなどを経て2009年に独立。変革パートナーとして、全社改革の企画・推進やサービス拠点のマネジメント強化といった「成果の創出」と「人材の育成」を狙った企業活動を支援している。近年は講師として、マーケティング、課題発見・解決、チームマネジメントに関する各種研修やワークショップに登壇し、次世代のリーダー育成に当たっている。
東京工業大学大学院 理工学研究科 生産機械工学専攻 修士課程修了
著書:『事業計画、再考!』(眞人堂)
本記事はお役に立ちましたか?
前のイベントレポート
データから見る対話の「効果」とは
職場で「本音で話せる」関係はいかに実現可能か
「本音で話さない」職場はなぜできるのか
「主体性」という曖昧な言葉に翻弄されないように。企業と学生の認識のギャップを解消したい
「学び合わない組織」のつくられ方
学びを遠ざける「ラーニング・バイアス」を防げ
コソコソ学ぶ日本人――「学びの秘匿化」とは何か
学び合う組織に関する定量調査
どのような若手社員が上司からサポートを受けているのか
《哲学的思考力》 混迷のVUCA時代に必要なのは、自分の頭で考えて探求する力
《ポテンシャルの解放》個人の挑戦を称賛する文化が時代に先駆けた変化を生み出す
《“X(トランスフォーメーション)”リーダー》変革をリードする人材をどう育成していくか
《適時・適所・適材》従業員が最も力を発揮できるポジションとタイミングを提供
人的資本情報開示にマーケティングの視点を――「USP」としての人材育成
会社員が読書をすることの意味は何か
「若手社員は管理職になりたくない」論を検討する
コロナ禍で「ワーク・エンゲイジメント」はどう変化したのか?ー企業規模に注目して
不正を防止するコンプライアンス対策とは
従業員のリスキリング促進に向けて企業に求められる人材マネジメントとは~学び続ける人を増やし、組織の成長につなげる~
人事部非管理職のキャリア意識の現在地
目まぐるしく移り変わる人事トレンドに踊らされるのではなく、戦略的に活用できる人事へ
新卒者・中途採用者のオンボーディングから、子どもたちの《協育》まで。 誰もが幸せに働ける社会の実現を目指し、研究に挑み続けたい
HITO vol.18『組織成長に生かすアンラーニング ~これまでの知識・スキルを捨て、入れ替える~』
アンラーニングしなければ、人と組織は成長を続けられない
従業員のリスキリングを促進する人材マネジメントとは
従業員のリスキリングを支える「3つの学び」とは
企業の新規事業開発の成功要因における組織・人材マネジメントの重要性
リスキリング・アンラーニングと変化抑制のメカニズム ~変化とは「コスト」なのか~
就業者のアンラーニングを阻むのは何か
リスキリングとアンラーニングについての定量調査
人を育てる目標管理とは従業員の「暗黙の評価観」が鍵
HITO vol.17『ITエンジニアに選ばれる組織の条件 ~賃金と組織シニシズムの観点から考察する~』
コロナ禍における研修のオンライン化に関する調査
ITエンジニアの人的資源管理に関する定量調査
ジョブ型雇用への転換で教育・育成はどう変化するべきか?
成長実感の高い職種ランキング BEST10 職種別成長実態
【イベントレポート】ケースメソッドを活用したリーダーシップ開発
アルバイト・パートの成長創造プロジェクト
価値創造型人材の発掘とパイプラインの構築
非正規社員に対する人材育成の在り方
正社員の価値発揮を阻害する人事制度上の3つの課題
今こそ、企業の包容力(2) 包容力はどう持てばいいのか
今こそ、企業の包容力(1) 人の成長を待つ余裕を持つ
創造型人材の重視を
follow us
メルマガ登録&SNSフォローで最新情報をチェック!