職場のメンタルヘルスマネジメントについての定量調査

調査レポート | 2024年2月19日(月)

公開日:2024年2月19日(月) 

調査概要

調査名 職場のメンタルヘルスマネジメントについての定量調査
調査内容 ・企業のメンタルヘルスマネジメント施策の実態を明らかにする
・良好なメンタルヘルスマネジメントを実践している管理職の特徴を探索する
調査対象 全国の就業者計6400名。内訳は以下の通り:
調査対象
調査時期 2023年2月27日-28日
調査方法 調査会社モニターを用いたインターネット定量調査
調査実施主体 株式会社パーソル総合研究所

※報告書内の構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、個々の集計値の合計は必ずしも100%とならない場合がある。

調査報告書(全文)

Index

1メンタルヘルス不調とメンタルヘルス施策の実態
2効果的なメンタルヘルスマネジメント方略
3「挑戦と予防」の両極のマネジメントが鍵

調査結果(サマリ)

メンタルヘルス不調とメンタルヘルス施策の実態

メンタルヘルス不調の発生率と管理職の不安感

メンバーを持つ管理職を対象に「自組織内でのメンタルヘルス不調による休職・異動・退職の発生実態」を尋ねたところ、過去3年以内の発生率は、「休職」は25.6%、「異動」は18.4%、「退職」は21.0%発生していた。

図1.自組織内でのメンタルヘルス不調による休職・異動・退職の発生率
自組織内でのメンタルヘルス不調による休職・異動・退職の発生率

自組織内でメンタルヘルス不調者を出すことへの不安感を管理職に尋ねたところ、32.4%が「不安がある」と回答。この傾向は、回答者の年代が若いほどに高い傾向がみられた。また、自組織のオフィスへの出社頻度で比較したところ、週1回未満の出社頻度の場合で不安が高い傾向が見られた。

図2.メンタルヘルス不調発生への不安
メンタルヘルス不調発生への不安

メンタルヘルス施策の実施率と研修内容

では、自社のメンタルヘルス施策の実施状況はどうか。21.2%が「特に実施されていない」と回答。実施割合の高い内容としては「産業医の設置」「メンタルヘルス研修」が挙げられた。

図3.メンタルヘルス施策の実施割合
メンタルヘルス施策の実施割合

メンタルヘルス研修で扱われていた内容について尋ねたところ、「ストレスの性質」や「ストレスの軽減」に関する知識が中心的に挙げられた。「部下のストレスや精神的な不調に気づくための手がかり」について受講した管理職は全体の13.2%にすぎない。

図4.メンタルヘルス研修で扱われていた内容
メンタルヘルス研修で扱われていた内容

効果的なメンタルヘルスマネジメント方略

管理職のマネジメント方略と、部下のコンディションの関係

企業のメンタルヘルス施策が十分とはいえない中、マネジメント面において管理職ができることについて調査結果を2つ紹介する。まず、管理職のマネジメント方略と部下のコンディションの関係を分析した。分析にあたり人間行動の基本原理に関する心理学理論に基づき、マネジメント方略に関する尺度項目を作成。因子分析の結果、部下に対して失敗を恐れずに挑戦するように伝えている「挑戦志向」、自分の把握できる範囲を超えても良いので、部下には社内の関係を広げて欲しいと思っている「飛び越え期待」、部下が仕事で失敗しないように気を配っている「失敗予防」、部下が他部署からの評判を落とさないように、失礼のないコミュニケーションの仕方を指導している「評判配慮」の4因子が抽出された。

メンバー・組織のための「挑戦支援」を志向するマネジメント方略と、「失敗予防」を志向するマネジメント方略が、いずれも、メンバーの「ストレス反応」抑制といった良好な健康状態と、「社内評価」「ワーク・モチベーション」「ワーク・エンゲイジメント」などパフォーマンスにつながるコンディションの向上に寄与していることが示された。

図5.マネジメント方略とチームメンバーのコンディションの関係
マネジメント方略とチームメンバーのコンディションの関係

「促進的マネジメント方略」(「挑戦志向」「飛び越え期待」)と「予防的マネジメント方略」(「失敗予防」「評判配慮」)の高低ごとにマネジメントタイプを「促進偏り型」「バランス型」「放任型」「予防偏り型」の4つに分け*、3年以内の自組織内でメンタルヘルス不調による休職・退職の発生率を比較した。その結果、促進・予防のいずれかにマネジメントが偏っている「促進偏り型」「予防偏り型」マネジメントは、どちらにも偏っていない「バランス型」「放任型」マネジメントよりもメンタルヘルス不調による休職・退職の発生率が高いことが示された。

*マネジメントタイプ
「促進偏り型」:促進型マネジメントスコア【高】×予防型マネジメントスコア【低】
「バランス型」:促進型マネジメントスコア【高】×予防型マネジメントスコア【高】
「放任型」:促進型マネジメントスコア【低】×予防型マネジメントスコア【低】
「予防偏り型」:促進型マネジメントスコア【低】×予防型マネジメントスコア【高】

図6.3年以内の自組織でのメンタルヘルス不調を理由とした休職・退職の発生率〔マネジメントタイプ別〕
3年以内の自組織でのメンタルヘルス不調を理由とした休職・退職の発生率〔マネジメントタイプ別〕

管理職が得ている部下の情報と、部下のコンディションの関係

次に、管理職のメンバーについての「知識量」とメンバーのコンディションとの関係を分析した。管理職がメンバーについての知識量を多く把握することによりメンバーのストレス反応の低さを導くことが示された。

図7.管理職のマネジメント方略や知識量とメンバーのストレス反応の関係
管理職のマネジメント方略や知識量とメンバーのストレス反応の関係

分析コメント

「挑戦と予防」の両極のマネジメントが鍵

企業は各種要請への対応からメンタルヘルス研修の実施や相談窓口の設置など、メンタルヘルスに関する施策を実施している。しかし、自社でメンタルヘルス施策が「実施されていない」と回答する管理職は21.2%。25.6%は3年以内にメンタルヘルス不調を理由とした「メンバーの休職」を経験していることからも、管理職にとってメンタルヘルスのマネジメントが重要で難易度の高いミッションであることがうかがえる。

本調査において、メンバーの健康保護と成長・パフォーマンス発揮に寄与する効果的マネジメント方略を探索した結果、挑戦を促しながらメンバー・組織にとって「理想的な状態」を追求することを志向しつつ、「問題」を生じさせないように先回りして予防することを志向するという、相反する認知のモードを使い分けられるマネジメント方略が有効という知見が得られた。加えて、日常的な会話や観察を通して、メンバーに関するさまざまな「情報」を多く深く集めていることが、メンバーの良好なコンディションを導くことも示された。

これらを実践するには、管理職に対して具体的なメンバーとの「関わり方」に関する知識の提供や、従業員データやHR Techの利活用によって、メンバーの情報を記録・引き出しを容易にしたり、忘れていた情報を適切なタイミングでレコメンドされたりするシステムなどの実現が求められるだろう。

※本調査を引用いただく際は出所を明示してください。
出所の記載例:パーソル総合研究所「職場のメンタルヘルスマネジメントについての定量調査」


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