公開日 2023/01/05
パーソル総合研究所は、2022年11月に「メタバース社会における対人インタラクション研究(Phase1)」結果を発表。今後も「メタバース」による新しい働き方の可能性をさぐるため、2022年12月に特設サイト「メタバースは私たちのはたらき方をどう変えるか」を公開し、共同で研究を行った大森隆司名誉教授(玉川大学)とパーソル総合研究所 研究員 井上亮太郎の対談をはじめ、識者や企業の方々のインタビューや寄稿を発信していく予定だ。
本稿は、バーチャルオフィスやバーチャル展示会などのメタバースサービスを提供する株式会社ガイアリンク 取締役副社長 千野 将氏に、メタバース空間において重要視されるコミュニケーション要素の変化や、リモート授業・業務の浸透によって減少する雑談などの「余白」コミュニケーションとメタバースの関係について寄稿いただいた。
当社ガイアリンクは、アメリカ発の世界的メタバースプラットフォーム「Virbela」の日本公式販売代理店として2021年から日本国内へのサービス提供を行なっている。対象領域は産学官民問わず「ビジネス・教育・社会課題の解決」を主軸としたサポートをしているが、その中で得られた大きな「気付き」があった。
それは、複数人が介在する日常のコミュニケーションにておける発言者本人の視覚的要素は、必ずしも最上位にあるものではないのかも知れない、という点である。
元々Virbelaは2016年より北米を中心としてスタートし、Beforeコロナから本質的なコミュニケーションを行うための画期的ツールとして運用・提供されてきた。行動心理学の専門家たちも開発チームにジョインし、ゲームの様なエンタメ性の高さよりも、「どれだけストレスなく日常の業務や学習環境をアップデートできるのか」に重きが置かれ拡大してきたので、コロナ禍によりリモートワークを含みまったく違う価値観が醸成された現代において正にピッタリなタイミングとして日本に浸透が続いている。
「見た目がファーストではなくなってきている」という推論のエビデンスとしては、日頃ガイアリンクがサポートしているお客様の反応を見ていても顕著だ。日常的な社内コミュニケーションや授業などの学習環境はもちろんのこと、学術集会、研修会、1,000人以上を超える講演会や地方の商店街、はたまた婚活パーティの自社運営などまでもサポートしている中で、「リアルでのコミュニケーションは、自分の見た目に対してのコンプレックスが何かしら影響していたということが予想以上にありそうだ」というアンケート結果も散見される。事実、ガイアリンクが運営する婚活イベントに参加し、アバターでカップリングした方々が、現在もリアルでお付き合いしている方がいる程だ。
他にも例えば、2022年3月、全国各地に支店を持つ大手企業様が700名規模の社内コミュニケーションイベントをメタバース上で行ったときのこと。
大学時代はリモート授業が当たり前だった新卒の若手社員が参加した中で、「今まで同期入社のスタッフのあだ名や趣味すらも知らなかった」、「メタバース内イベントに出社するようになり、敬語がなくなりチーム感が増した」、「交流が活性化した一方、自分の時間が増えて仕事へのモチベーションが上がった」などのポジティブな反応が83%にものぼるアンケート結果が出た時が、まさに冒頭で紹介した「気づき」の確証を得られた瞬間だ。
必要なことしか話さない超効率化リモート業務が良しとされる反面、日常業務からは余白のコミュニケーションタイムが消え去り、非常に希薄なチームが形成されてしまったことに頭を悩ませる経営者・管理者の方も少なくないだろう。私たちが黙っていても、今後は「α世代」と呼ばれる多様な価値観を受け入れ、物質的なモノより体験を重視する世代が社会に進出してくる。
2022年現在はメタバースにスポットライトが当たっているので、「これで根本的な解決に繋がるかも知れない」と世間に大きな期待をされることは我々メタバースサービスを提供する側にとっては大変ありがたいことである。その一方、技術革新に対して表面的に色めき立つのではなく、人としての思考の許容レベルに更に多様性を持たせることが、ニューノーマルの働き方として必要なマインドセットだといえる。「DX」とは、ただの言葉に過ぎない。メタバースはあくまで受け皿に過ぎず、本当にアップデートしなくてはならないのは我々自身の生き方・過ごし方なのではないだろうか。
株式会社ガイアリンク 取締役副社長
千野 将 氏
山梨県甲府市出身。やまなし大使。2019年10月株式会社ガイアリンク設立。2021年7月より米国発メタバース「Virbela(バーベラ)」日本公式販売代理店スタート。「誰もが主役になれる世界をつくる」をモットーに「ビジネス」「教育」「社会課題の解決」を軸として、コミュニティー型メタバースプラットフォームを中心に展開。メタバースに留まらず中小企業・地域コミュニティーにおける本質的なソリューションも提供。セミナー・講演活動の実績も数多く、昨今はメタバースを介した本質的なコミュニティ形成により、リアル社会をいかに活性化させるかを提唱している。
※文中の内容・肩書等はすべて掲載当時のものです。
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