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企業理念と人事制度の浸透に関する定量調査

公開日:2023年7月19日(水) 

調査概要

調査名 パーソル総合研究所 「企業理念と人事制度の浸透に関する定量調査」
調査内容

・企業理念の浸透、そして人事制度の浸透に関する社内コミュニケーションの実態を明らかにする。
・それぞれの浸透の効果やその要因、課題を明らかにする。

調査対象

■全国の男女・正規雇用就業者(年齢20-59歳)
- 理念浸透セル:企業理念浸透について何らかの施策が行われている者
- 制度浸透セル:過去5年以内に何らかの人事制度の変更があった者
- 一般セル:条件無し(自然発生ー比較対象)

調査対象
調査期間

2023年 4月4日-6日

調査方法

調査会社モニターを用いたインターネット定量調査

実施主体 株式会社パーソル総合研究所

※報告書内の構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、個々の集計値の合計は必ずしも100%とならない場合がある。

調査報告書(全文)

分析の構成

企業理念や人事制度の重要性に注目度が高まっている。しかし、その重要性に比して、現場への浸透施策の効果や要点は十分に解明されているとはいえない。本調査では、企業理念や人事制度における社内コミュニケーションや浸透施策を以下の5つの次元(「組織」「情報」「プロセス」「人」「媒体」次元)に分けて定量的な検証を行い、重要点や課題を整理した。

分析の構成

Index

  1. 企業理念と人事制度の浸透実態
  2. 企業理念と人事制度の浸透要因【組織次元・情報次元】-どんな企業が、どんなことを伝えるのか
  3. 企業理念と人事制度の浸透要因【プロセス次元】-理念・制度がどのように策定されるか
  4. 企業理念と人事制度の浸透要因【人次元】-誰が・誰に浸透させるのか
  5. 企業理念と人事制度の浸透要因【媒体次元】-何によって浸透させるのか
  6. 企業理念・人事制度の浸透には、現場の巻き込みとリアリティを重視する「共創-拡散型」への舵切りが必要

調査結果(サマリ)

企業理念と人事制度の浸透実態

企業理念と人事制度の理解・同意は33%~44%程度

企業理念について、「内容を十分理解している」は41.8%、「内容について同意できる」は44.5%。人事制度は、企業理念よりも浸透度合いが全体的に低く、「内容を十分理解している」は36.1%、「内容について同意できる」は33.8%。 また、浸透実態をフェーズ別に見ると、「理解」「同意」よりも「実践」「習慣」といったフェーズが全体的に低い。

図1.企業理念・人事制度の浸透の実態(%)

企業理念・人事制度の浸透の実態(%)

企業理念と人事制度の浸透要因【組織次元・情報次元】-どんな企業が、どんなことを伝えるのか

大企業は多くのトピックに触れる総花的な企業理念の傾向

企業理念に含まれるトピックを企業規模別に見た。大規模な企業になるほど多くのトピックに触れる、総花的な理念になっている。10人未満の企業も全体的に高めの数値。ほか、図示はしていないが、設立が古い企業や経営戦略として多角化戦略をとっている企業ほど多くのトピックに触れていた。

図2.企業理念の内容(企業規模別・%)

企業理念の内容(企業規模別・%)

「明確さ」「詳細さ」が企業理念・人事制度の浸透に影響

企業理念と人事制度の浸透には、「明確さ」「詳細さ」がともにプラスの影響。さらに企業理念は、「課題の直視」や「脱・綺麗ごと感」などが浸透につながっている。人事制度は「ビジュアル性」や「現場でのリアリティ」などが浸透に影響している。

図3.企業理念・人事制度の内容と浸透度

企業理念・人事制度の内容と浸透度

企業理念・人事制度への印象は、ポジティブ印象「明確さ」、ネガティブ印象「綺麗ごと感」

企業理念・人事制度へのポジティブ・ネガティブな印象を見た。ポジティブな印象は、「内容が分かりやすかった」などの「明確さ」を感じるものが多く、「自社の悪い部分もふれている」などの「課題の直視」は低めである。
ネガティブな印象は、「内容が綺麗ごとばかりだ」などの「綺麗ごと感」が強く感じられている。「現場の現実がかみ合っていない」などの「現場との一貫性欠如」も高め。ポジティブ・ネガティブな印象とも、全体的に人事制度のほうが印象が悪い。

図4.企業理念・人事制度へのポジティブな印象(あてはまる計・%)

企業理念・人事制度へのポジティブな印象(あてはまる計・%)

図5.企業理念・人事制度へのネガティブな印象(あてはまる計・%)

企業理念・人事制度へのネガティブな印象(あてはまる計・%)

企業理念と人事制度の浸透要因【プロセス次元】-理念・制度がどのように策定されるか

企業理念・人事制度の策定に重要な「対話機会」「意見の吸い上げ」「プロセスの透明性」の実施率は25%前後

企業理念や人事制度の浸透には、策定・浸透プロセスにおける従業員のインボルブメント(関与・参画・共感)の度合いが大きくプラスの関係にある。

図6.インボルブメントと企業理念・人事制度の浸透度

インボルブメントと企業理念・人事制度の浸透度

策定・浸透プロセスにおける「対話機会」「意見の吸い上げ」「プロセスの透明性」がインボルブメントを上昇させる傾向が見られた。しかし、それらの実施率は全体的に22-27%前後でそれほど高くない。

図7.企業理念・人事制度の浸透時のプロセス(%)

企業理念・人事制度の浸透時のプロセス(%)

企業理念と人事制度の浸透要因【人次元】-誰が・誰に浸透させるのか

「課長・リーダー」「従業員の家族」は企業理念・人事制度ともに浸透施策に有効

企業理念・人事制度の浸透施策に登場する人物と浸透への影響を見た。企業理念については、浸透施策に「課長・リーダー」や「従業員の家族」が登場している場合、浸透プロセスにプラスの影響が見られる。人事制度については、「メンバー層の従業員」も浸透にプラスの影響がある。一方で、「社長・会長・CEO」といった組織トップは浸透にプラスの影響は確認されなかった。

図8.企業理念・人事制度の浸透施策の登場人物と浸透への影響

企業理念・人事制度の浸透施策の登場人物と浸透への影響

従業員同士にポジティブにシェアされる要素は「理念・制度の内容」「語りの主体」「策定・浸透プロセス」

企業理念・人事制度の浸透は、従業員の「うわさ」を介して広がり、その広がりの大きさやポジティブさは、「理念・制度の内容」「語りの主体」「策定・浸透プロセス」への関与の度合いによって影響される。

図9.人の「うわさ」ネットワーク

人の「うわさ」ネットワーク

企業理念と人事制度の浸透要因【媒体次元】-何によって浸透させるのか

企業理念・人事制度の浸透は「一方通行型」のコミュニケーション施策が最多

企業理念・人事制度の浸透施策の媒体・イベントは、「全体説明会」「社内イントラ」「朝会・夕会」「オンライン社内報」が上位で20%を超える。人事制度は浸透のための媒体・イベントの数が全体的に少なく、「何もなし」も24.5%に上る。企業理念・人事制度ともに、「全体説明会」「社内イントラ」「社内報」などの「一方通行型」のコミュニケーション施策が突出して多い。

図10.企業理念・人事制度の浸透施策の媒体・イベント(実施率・%)

企業理念・人事制度の浸透施策の媒体・イベント(実施率・%)

「双方向型」の媒体・イベントが企業理念・人事制度の浸透に影響

企業理念・人事制度ともに浸透にプラスの影響が確認されたのは、ロールプレイを含む研修、車座・ワークショップなどの「双方向型」のメディア・イベント。また、企業理念は目標やアワードなどへ反映する「評価反映型」、人事制度はアンケートや相談窓口などの「吸い上げ型」の媒体がプラスに関連していた。

図11.企業理念・人事制度の浸透施策の媒体と浸透への影響

企業理念・人事制度の浸透施策の媒体と浸透への影響

分析コメント

企業理念・人事制度の浸透には、現場の巻き込みとリアリティを重視する「共創-拡散型」への舵切りが必要

企業理念や人事制度を従業員が理解し、行動へとつながっていることは組織マネジメント上の重要な意味を持つ。しかし、現状の日本企業の理念や人事制度は、従業員の関与が足りないまま策定され、解像度が低い状態で上から伝達されるものになっている。これでは、いくら精緻に構築したパーパスや制度も意味がないものになりかねない。

また、企業理念や人事制度は従業員にただ伝達されるだけでなく、従業員同士のうわさ行動によって「シェア」されており、その頻度やポジティブさもまた、浸透施策の在り方に大きく左右されているということが明らかになった。

本調査から見えてきたことは、企業理念も人事制度も、経営や管理部門が決めたものを下に伝達する「暗室-伝達型」から、現場の巻き込みとリアリティを重視する「共創-拡散型」へと大きく変化する必要があるということだ(図)。

就業価値観の多様化と労働力不足が同時に進行する中、企業の「大方針」としての理念やパーパス、組織の「基盤」としての人事制度の浸透は、これからも重要性を増し続ける。

図12.企業理念と人事制度の浸透の在り方

企業理念と人事制度の浸透の在り方

※本調査を引用いただく際は出所を明示してください。
出所の記載例:パーソル総合研究所「企業理念と人事制度の浸透に関する定量調査」


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