APAC就業実態・成長意識調査(2019年)
パーソル総合研究所では、日本を含めたアジア太平洋地域(APAC)14の国・地域の主要都市の人々の就業実態、仕事に対する意識や働くことを通じた成長意識などについてインターネット調査を実施しました。多国間比較してみると地域ごとの傾向や日本の特異性が見られました。ここではとトピックスと象徴的なデータをいくつかご紹介します。
※詳細は、ページ下にあります報告書(PDF)をご参照ください
なお、本調査は調査モニターを対象としたインターネット定量調査です。回答者属性の特徴として、既婚、高学歴、正社員、フルタイム、製造業勤務、間接部門や事務職、自国企業勤務の割合が高い傾向が見られました。この点をご留意の上ご参照ください。
調査概要
Ⅰ.現在の働き方 Topics
就業形態と勤務先属性
「正社員」が多いのはシンガポール、インド、香港、台湾で、7割超。「自営業・自由業」が2割超はインドネシア、フィリピン、タイ、ベトナム。
勤務先業種は、東アジアや東南アジアで製造業が多い。
就業職種は、全般には間接部門、事務職、専門・技術職が多く、その他は各職種に分散している。
各国共通して自国企業に勤務している割合が高い。フィリピン、シンガポール、インドは勤務先としてアメリカ企業資本の割合が高く、ベトナムは日本企業資本の割合が高い。
現在の職位
管理職の割合が5割以上は、中国、マレーシア、ベトナム、インド。一般社員の比率が高いのは、日本、台湾、香港。
男女別にみる管理職の割合はほとんどの国で男性が高く、男女差が最も大きいのは日本で20pt差。最も小さいのはインドで0.8pt差。
勤務時間制度/労働時間・日数
正社員の勤務は「フルタイム」がいずれの国でも9割超。
1日あたりの労働時間は「8時間程度」が主流。ベトナムとインドでは「週6日」勤務が4割超。週あたりの労働時間は日本、オーストラリア、ニュージーランドでは40時間を下回り、男女差が大きい。
図表1.週あたりの労働時間(単位:時間)
※日あたりの勤務時間と週あたりの勤務日数をかけ合わせて算出
管理職をめざす人の割合
非管理職(一般社員・従業員)の中で「管理職になりたい」と思っている人の割合は、ほとんどの国で5割を超え、インド、ベトナム、フィリピンでは8割以上。一方、日本は2割程度にとどまる。
Q.あなたは、現在の会社で管理職になりたいと感じますか。(5段階尺度)
図表2.管理職になりたいと思っている人の割合(%)
※スコアは、「そう思う」「ややそう思う」の合算値
Ⅱ.勤務先の組織状況と満足度 Topics
組織文化
東アジアの上位は「上に従う」「和を重視」「波風を立てない」。上に従い波風立てない組織文化が色濃い傾向。
東南アジア・南アジア・オセアニアは、「チームとしてまとまる」「一致団結」が上位に入り、チームワークを重視する傾向。東南アジアは、独自性を活かした柔軟な発想や創意工夫を求める傾向も。
Q.あなたの職場にどの程度あてはまりますか。最も当てはまる選択肢をそれぞれ一つずつお選びください。
(6段階尺度/項目数24)
1位:チームとしてひとつにまとまっている(87.6%)
2位:一致団結して目標に向かっていく雰囲気がある(86.8%)
3位:自分勝手に仕事を進める人よりも、和を重視する人のほうが評価される(85.1%)
図表3.組織文化 各国ランキング
※スコアは、「全くその通りだ」「かなりその通りだ」「ややその通りだ」の合算値
※14ヵ国・地域の全体平均TOP3と同色の色付け
上司のマネジメント行動
共通するマネジメント行動は、仕事を任せることと適正な評価。情緒的配慮もする東アジア。「仕事のマネジメント」を重視する東南アジア。
東アジアでは「納得できる注意や叱り方」「良い仕事に対する称賛」、東南アジアやインドでは「スキルや能力が身につく仕事の付与・任命」「スムーズな業務進捗への支援」が上位に入る。
仕事における満足度
「会社全体」「職場の人間関係」「直属の上司」「プライベート」「仕事内容」の満足度を聞いたところ、東アジアは中国を除いて満足度が14ヵ国・地域平均を下回る一方、東南アジア、南アジア、オセアニアは平均を上回る傾向。日本は全5指標で満足度が低い。
図表6.南アジア・オセアニア
※スコアは、「非常に満足」「満足」「やや満足」の合算値け
Ⅲ.働く意識 Topics
仕事選択の重視点
仕事を選ぶ上で重視するのは、「希望する収入が得られること」が9カ国でトップ。シンガポール、インド、オセアニアは「仕事とプライベートのバランスがとれること」、マレーシアは「雇用が安定していること」がトップ。
日本は、トップ3に「職場の人間関係がよいこと」「休みが取れる/取りやすいこと」といった職場内の人間関係が入っており、他国とはやや異なる傾向。
Q.あなたが仕事を選ぶ上で重視することは何ですか。(優先度の高いものから上位5位まで/選択肢26項目)
図表7.仕事選択重視点 各国ランキング
※スコアは「加重スコア」(1位×5、2位×4、3位×3、4位×2、5位×1と加重をかけ、項目ごとに合算)
※日本の上位3位の同項目に同色の色付け
転職
転職回数と転職意向
いずれの国でも平均で2回を上回り、中でもオセアニアは、平均3.5回以上と高水準で、人材の流動性の高さがうかがえる。インドは半数以上が転職意向を持っている。
転職した最初の年の収入
インドや東南アジアでは転職により年収が増加。日本は年収増加につながらない傾向。
転職理由
「給料に不満」は各国共通で、東アジアと東南アジア(ベトナム以外)では転職理由のトップ3に入る。東アジアは、処遇以外に会社や業界の先行きも気がかり。日本は精神的ストレスや体力的な理由で転職する傾向。東南アジアとインドは、経験や知識向上のための転職意識が強い。
転職に対するイメージ
全14ヵ国・地域でポジティブなイメージ。「総合的に見てよい」「成長につながる」「キャリアアップ」「スキルアップ」が7割以上。ただし、中国と日本では「できれば避けた方がよい」が4割超。
勤続意向
現在の勤務先で継続して働きたい意向は、14ヵ国・地域で5割以上。インド、ベトナム、中国では8割を超える。
年代が高くなるほど現在の勤務先での勤続意向が高まる傾向。
転職意向
今後の転職意向は、インドを除いて5割未満。日本は最も低い25%。
年代別に見ると、20‐30代の転職意向が高い国が多い。
独立・起業意向
独立・起業意向は、東南アジア、インド、中国で高い傾向。
年代が若いほど独立・起業意向は高い傾向がみられる。
希望する就労年齢
「何歳まで働きたいか」は、日本が63.2歳で最も高い。東南アジアは58歳未満。
男女による大きな差は見られないが、韓国、シンガポール、マレーシアは女性がやや低い。
年代別にみると、年代があがるごとに働きたい年齢は高くなり、50代以上は全ての国で60歳超え。
Q.あなたは人生で何歳まで働きたいと思いますか。希望する年齢をお知らせください。(実数回答)
Ⅳ.仕事に対する意識と自己成長 Topics
仕事に対する考え方・志向性
上昇志向が強くみられる東南アジアとインド。「会社で出世したい」など高い傾向。
多様性への受容度が低い日本、中国、韓国。一方、ベトナム、タイ、フィリピン、オーストラリア、ニュージーランドは高い傾向。女性や年下の上司、外国人と働くことへの抵抗感に差が見られる。
働き方の柔軟さを求める東南アジアとインド。好きな「場所」や「時間」で働きたい要望が高い。
Q.あなたは、現在の会社で管理職になりたいと感じますか。(5段階尺度)
図表9.管理職になりたいか
※スコアは、「そう思う」「ややそう思う」の合算値
Q.仕事に関する意識としてあなたの考えに最も近いものを各ひとつお選びください。(5段階尺度)
図表10.会社で出世したい
※スコアは、5段階尺度の平均値
働くことを通じた成長イメージ
働くことを通じた成長イメージは、「給料・報酬が上がること」 「新しい知識や経験を得ること」
「成長=スキルアップ」のイメージが強い
成長志向度・成長実感度
成長志向度、成長実感度はともにインドネシア、フィリピン、インド、ベトナムで非常に高い。
働くことを通じた成長が重要だと考える「成長志向度」は、ほぼ全ての国で90%以上と高い。
過去1年を振り返り仕事を通じた成長を実感できている「成長実感度」は、70%以上の国が多い。
Q.あなたにとって、「働くことを通じた成長」は、どのくらい重要だと感じますか。(7段階尺度)
Q.過去【1年間】を振りかえったとき、あなたは仕事を通じた成長を実感しましたか。(7段階尺度)
図表11.成長志向度・成長実感度(%)
※成長志向度:スコアは「とても重要だ」「重要だ」「やや重要だ」の合算値
※成長実感度:スコアは「とても実感した」「実感した」「やや実感した」の合算値
社外の学習・自己啓発
東南アジアやインドは、社外学習・自己啓発が活発で自己研鑽に意欲的。一方、日本は「とくに何も行っていない」が46.3%で約2人に1人。
各国共通で高い学習・自己啓発は「読書」「研修・セミナー、勉強会」。
Q.あなたが自分の成長を目的として行っている勤務先以外での学習や自己啓発活動についてお知らせください。(複数回答/選択肢11項目)
図表12.社外の学習・自己啓発(%)
Ⅴ.日本企業とグローバル就業 Topics
日本企業での就労意向
どの企業で働きたいと思うか聞いてみると、ほとんどの国で「自国の企業」が1位だが、ベトナムは「日本企業」、フィリピンとシンガポールは「アメリカ企業」が1位。
日本企業での就労意向は東南アジアで高い傾向。タイ、フィリピン、インドネシア、ベトナムで5割以上、マレーシアで4割。インドと台湾でも3割と高め。
Q.以下のどの企業で働きたいと思いますか。(複数回答/選択肢9項目)
図表13.就労意向(%)
※上位3位に同色の色付け
日本企業に対するイメージ
「待遇がよい」「福利厚生が充実」イメージが全体的に上位。韓国、香港、台湾、シンガポールでは「日本語が話せないと評価されない」や「日本人でないと出世できなさそう」がトップ5に入る。
「雇用が安定している」イメージは、タイ、フィリピン、インドネシア、ベトナムで4割超で、中国、韓国、台湾でもトップ5に入
Q.あなたの国にある日系企業で働くことのイメージについて、あてはまるものをすべてお選びください。(複数回答/選択肢19項目)
図表14.日本企業に対するイメージ(%)
※各国の上位5位に色付け
働いてみたい国・地域
ほとんどの国で「アメリカ」はトップ3に入り、「オーストラリア」と「英国」も7ヵ国でトップ3に入る。「アメリカ」の人気が高く、7ヵ国で1位。香港とマレーシア以外の国でトップ3に入る。
「日本」はベトナム、タイ、インドネシアで1位、台湾、フィリピンで2位。年代別で差が大きくみられるのは、ベトナム、台湾、マレーシア、オーストラリア、シンガポール、中国で、ベトナムは50代、台湾は30代の割合が高い。また、「日本」がトップ5に入っていないのは、シンガポールとオセアニア2ヵ国。
Q.あなたは、世界のどの場所でも働けるとしたら、働いてみたい国・地域はありますか。あてはまるものをすべてお選びください。(複数回答/選択肢23項目)
図表15.どこの国・地域で働きたいか(%)
回答者の年齢構成・属性サマリ
※2019年1月18日時点のレートで各国現地通貨からUSDへ換算。
本調査結果の詳細/関連資料
APAC就業実態・成長意識調査(2019年)英語版