公開日:2022年9月5日(月)
調査名 | 賃金に関する調査 |
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調査内容 | ①就業者:賃金の増減、収入に対する満足度、年収、副業の有無 ほか ②企業の経営層:賃上げに関する意識 ※本調査において賃金は、主な仕事から得られる月収のことで、各種手当や社会保険料、税金等を含む。 |
調査対象 | ①就業者:全国、18~69歳、男女、現在仕事からの収入を得ている人(自営業者・フリーランスを除く) 正規の社員・職員 n=8,383 パート・アルバイト n=3,358 派遣社員 n=337 契約・嘱託社員 n=989 会社・団体の役員 n=678 ※平成29年就業構造基本調査(総務省)の性・年齢・雇用形態別の構成比に合わせてウエイトバック処理 ②企業の経営層:社長もしくは役員 n=530 |
調査時期 | 2022年 5月27日-31日 |
調査方法 | 調査会社モニターを用いたインターネット定量調査 |
調査実施主体 | 株式会社パーソル総合研究所 |
調査報告書(全文)
昨年2021年から今年2022年にかけて勤務先と雇用形態が変わらなかった人に賃金の増減を聞いたところ、賃金が増加した人が最も多かったのは「正規の社員・職員」(44.6%)、次いで「パート・アルバイト」(33.5%)、「契約・嘱託社員」(30.3%)、「派遣社員」(27.8%)、「会社・団体の役員」(23.0%)だった(図1)。
図1.賃金の増減 雇用形態別
賃金が増加した人は、正規の社員・職員では若年層ほど多く、「18~29歳」で54.7%、「30~39歳」で52.5%、「40~49歳」で45.2%、「50~59歳」で35.2%、「60~69歳」で18.6%だった(図2)。非正規雇用者では正規雇用者のようなはっきりとした年齢による傾向は見られなかった。
図2.賃金の増減 正規の社員・職員×年齢別
賃金が増えた人が多かった業種は、「情報通信業」、「製造業」、「医療、福祉」。一方で、「不動産業、物品賃貸業」、「生活関連サービス業、娯楽業」、「電気・ガス・熱供給・水道業」、「宿泊業、飲食サービス業」では賃金が増えた人が少なかった(図3)。
図3.賃金の増減 業種別
賃金が増えた職種は、「福祉指導員・相談員」、「保育士」、「商品企画・マーケティング」、「製造技術者」「法人営業」だった。賃金増加者が少ない職種は、「建設・採掘従事者」、「一般事務・アシスタント」、「飲食・宿泊サービス」、「クリエイティブ職」、「配達・運搬・清掃・包装等」、「輸送・機械運転従事者」であった(図4)。
図4.賃金の増減 職種別
従業員規模では、「5人未満」と「5~29人」の小規模企業で賃金増加者が少なかった。なお正規雇用では従業員規模が大きくなるにつれて賃金増加者が多くなる傾向だが、非正規雇用では正規雇用のような規模による傾向は見られなかった(図5)。
図5.賃金の増減 従業員規模別
年収階層別では、「100~200万円未満」から「500~700万円未満」の年収階層において、正規雇用者では年収が高い層ほど賃金が増加した人が多いのに対し、非正規雇用者では年収が低い層ほど賃金が増加した人が多かった(図6)。正規雇用の高年収層は収入が伸びていく一方で、非正規雇用者や正規雇用の低収入層は収入が伸び悩む傾向を示している。
図6.賃金の増減 年収階層別
賃金が増えた直接的な理由は、雇用形態を問わず「固定給/時給が増えた」が多く、正規の社員・職員で38.8%、パート・アルバイトで46.5%、派遣社員で53.9%、契約・嘱託社員で55.9%だった。パート・アルバイトは「勤務時間・勤務日数が増えた」(26.3%)、派遣社員は「残業が増えた」(26.1%)が2番目に多い(図7)。
図7.賃金増加理由(複数回答)
賃金が減った直接的な理由は雇用形態によって違いがあり、正規の会社員、派遣社員、契約・嘱託社員は「残業が減った」(それぞれ34.7%、56.7%、24.9%)、公務員と団体職員は「賞与・ボーナスが減った」(29.4%、25.5%)、パート・アルバイトは「勤務時間・勤務日数が減った」(59.5%)が多かった。派遣社員と契約・嘱託社員は「勤務時間・勤務日数が減った」も比較的多い(図8)。
図8.賃金減少理由 (複数回答)
昨年(2021年)からベースアップもしくは定期昇給(年齢による)があった人の比率を見たところ、「正規の社員・職員」では、「ベースアップ」が12.7%、「定期昇給」が12.2%、「ベアと定期昇給」のいずれか(もしくは両方)があった人は22.2%だった。「正規の社員・職員」のベースアップ比率は、「パート・アルバイト(6.6%)」、「契約・嘱託社員(6.1%)」の約2倍だった(図9)。
図9.ベースアップと定期昇給の比率 雇用形態別
収入に対する満足度は、「正規の社員・職員」では満足37.4%、不満37.0%、「パート・アルバイト」では満足35.0%、不満35.7%と、満足と不満が拮抗している。「派遣社員」と「契約・嘱託社員」では不満がそれぞれ46.6%、50.4%と不満が満足を上回る。「会社・団体の役員」では満足が53.7%と不満を上回る(図10)。
図10.収入満足度 雇用形態別
正規雇用においては、若年層は年収が低いにもかかわらず満足度は低くなく、収入の低さをある程度許容しているといえる結果になった。非正規雇用では、年収の差は正規雇用ほどないが(女性はむしろ若年層ほど年収が高い)、特に「18~29歳」の男性は他の年代よりも年収が低いにもかかわらず満足度は最も高く、やはり低収入を許容する結果となっている(図11)
図11.現年収と収入満足度 雇用形態別
企業の経営層(社長・役員)の63.0%が「会社の成長なくして賃上げは難しい」と回答。賃上げよりも成長が優先される認識を示した。「賃金アップは投資だ」は38.1%で「賃金アップはコスト増だ」(18.5%)を上回った。賃上げへの国の関与については、「関与すべきだ」が22.6%、「関与すべきではない」が28.1%で、意見が分かれた(図12)。
図12.賃上げに対する経営層の考え
賃上げの判断に何が影響するかを聞いたところ、最も多かったのは「予算達成度や業績の良し悪し」(40.6%)だった。次いで「従業員の離職防止」(29.4%)、「景気動向」(27.9%)と続く。「物価動向」(23.9%)は4番目だった。「政府の要請」(8.1%)や「経団連の方針」(3.0%)、「連合の方針」(1.0%)は影響度が低かった。(図13)。
図13.自社の賃上げ判断に影響する要素(複数回答)
賃金は収入の高い層で増加した人が多く、収入の低い層で増加した人が少ない、という結果になった。こうした特定の層に低賃金が固定化され、収入格差が広がっていくことが懸念される。一部の医療・福祉従事者のように低収入ながら賃金が上がっている属性もあるが、こうした賃金アップの動きが一過性のものなのか、他の低収入層にも広がっていくのか、注視していく必要がある。
また収入が低い若年層は、年齢の高い層と比べて現収入と希望年収とのギャップが大きいにもかかわらず、収入に対する満足度は他の年齢層とあまり変わらず、不満として表れていなかった。低成長慣れした若年層が、低賃金に対して「諦め」のような状態にあるのだとすると、その心理が、賃金が上がらない状態を固定化してしまう一つの要因になるかもしれない。
国は企業に賃上げを要請しているが、多くの企業経営層が「成長なくして賃上げは難しい」と考えている。企業の6割強が赤字※という状況の中、企業の成長を待っていては賃上げはなかなか進まないだろう。賃上げへの国の関与に否定的な経営層が3割近くに上ったが、国と企業が一体となった賃上げへの取り組みが求められるのではないだろうか。
※2020年度の欠損(赤字)法人は173万9,778社で、内国普通法人279万560社の62.3%を占める(令和2年度版「国税庁統計年報」)
※本調査を引用いただく際は出所を明示してください。
出所の記載例:パーソル総合研究所「賃金に関する調査」
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