調査名 | キャリア対話に関する定性調査 |
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調査内容 | 個人のキャリアについての面談シーンの会話を分析し、感情変化や気持ちの言語化などの創発性がどのように生まれているかを明らかにする。 |
調査対象 | ■全国の男女・正規雇用就業者(年齢30-49歳、役職者含む) |
調査方法 | 調査会社モニターを用いたオンラインデプスインタビュー |
調査期間 | 2024年3月22日-3月25日 |
インタビュー時間 | 90分(前半約40分はキャリア対話、後半約30分は対話の振り返り+アンケート回答など) |
実施主体 | 株式会社パーソル総合研究所 |
調査報告書(全文)
キャリアに関する対話による心境や感情の変化を明らかにするため、面談直後にその面談を振り返る実験的な手法で実施
※キャリアに関する対話部分のインタビュアーは、普段からキャリアに関するオンライン面談を実践している複数人で実施。インタビュアー募集にあたっては、外部面談サービスを提供しているエール株式会社の協力を得た。モデレーターは調査会社所属のモデレーターで実施。
キャリアに関する対話中の感情の変化を見ると、一般社員では、前半、対話に慣れてきた安心感から感情がポジティブに動き、キャリアへの不安の話になるとネガティブに動く傾向が多かった。その後、キャリアの未来の話を始めると前向きな内容になり、再びポジティブな感情に動き、最後はインタビュアーからの肯定的な言葉によりポジティブな感情で終了している。
係長や部長相当の役職の感情グラフでは、ポジティブな感情に至ることは少ない傾向。ポジティブにならない理由として、「対話だけでは新しい発見はない」「現状が大きく変わることはない」などの意見が挙がる。
今回のキャリアに関する対話では、10人中9人の出席者が「本音で話せた」と回答。対話前後での心境の変化を確認したところ、「スッキリした」人が10人中7人で多い傾向であった。
対話前後での心境の変化では、「話せてスッキリした」などの解放感を感じているほか、過去のキャリアの整理から、今後のキャリアの方向性を考えるきっかけになったり、自分の強みを再確認したりと、キャリア対話によって前向きな気持ちが醸成されている様子がうかがえる。
一方、対話前後で心境の変化を感じなかった人の意見として、「話しただけでは現実は変わらない」「想定通りの対話内容だった」などが挙がる。これらは普段からキャリアの見直しを自分で実施している人や、係長以上の役職の人達に多い傾向。
キャリアについて社外の人と対話することで、普段職場で話しづらい内容が話せたり、より広い視野でキャリアについて考えられたりする点が良さとして挙がる。一方、職場で具体的にどう動いていくべきかなどのリアルな相談は難しいと感じられている。
調査から、以下のキャリア対話による効果が見られた。
悩みに対して深堀されることにより、職場では打ち明けられなかった不満が「解放」される効果が見られた。不満が解放されることで感情がスッキリし、今後のキャリアを改めて考え直すきっかけにもつながっている様子。
これまでのキャリアの「振り返り」を対話で一緒に行うことにより、過去の成功例や自分の強みなどを再確認する機会につながっている。
キャリアに対する自分の気持ちや考えを細かく深堀されることで思考が整理され、今後向かうべきキャリアの方向性を検討しようとする、前向きな気持ちが醸成されている。
繰り返し投げかけられた問いに対して気持ちを言語化したことで、自分でも気付いていなかった潜在的な気持ちに「気づく」効果が見られた。
職場で言えなかった気持ちを聞いてもらい、対話相手と気持ちを分かち合えて嬉しい、聞いてもらえて嬉しいという気持ちから、ポジティブな感情につながっている。
自身の仕事や会社についての想いを「言葉」にすることで、現実を固定化させる側面がある。 その上で、「思っていない言葉を与える」ことを忌避することも。
キャリア・カウンセリングの制度的普及、キャリア自律のトレンドの高まりにより、企業の人事管理においても他者とキャリアについて語ることの意義が見直されてきた。しかし、キャリアの対話を実施したことによる実質的な効果と意義については、十分に言語化されているとはいえない。今回の調査では、定量的な調査では確認しにくいキャリア対話の具体的な効果について、主観的な振り返りとともに明らかにすることができた。
キャリアの対話によって「解放」「内省」「整理」といった効果が発現しており、それらは本人の思考にはなく、他者からの刺激や問いかけによってもたらされていた。企業のキャリア対話の制度や仕掛けにおいても、こうした効果について理解を深め、狙いを明確化することは重要である。
また、社内と社外のキャリア面談の棲み分けについても示唆を得ることができた。内部でのキャリアについての語りが十分でないとき、社外の人との対話は特に新しい価値ある経験として受け取られていた。その一方で、仕事やキャリアの具体的な変化までは生みだしにくいという限界も感じられている。
今後も重要性を増し続けるキャリア対話の実践において、今回得られた示唆が参考になれば幸いである。
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