• 調査レポート

グローバル就業実態・成長意識調査(2022年)

公開日:2022年11月8日(火) 

調査概要

調査名 パーソル総合研究所 「グローバル就業実態・成長意識調査(2022年)」
調査内容 世界18ヵ国・地域の主要都市の人々の働く実態や働く意識、Well-being、働くことを通じた成長、グローバルな就業意向などを明らかにする。また、コロナ禍の影響による働く実態や意識の変化についても把握する。
調査対象 18ヵ国・地域(調査都市)
【東アジア】日本(東京、大阪、愛知)、中国(北京、上海、広州)、韓国(ソウル)、台湾(台北)、香港
【東南アジア】タイ(グレーターバンコク)、フィリピン(メトロマニラ)、インドネシア(グレータージャカルタ)、マレーシア(クアラルンプール)、シンガポール、ベトナム(ハノイ、ホーチミンシティ)
【南アジア】インド(デリー、ムンバイ)
【オセアニア】オーストラリア(シドニー、メルボルン、キャンベラ)
【北米】アメリカ(ニューヨーク、ワシントン、ロサンゼルス)
【ヨーロッパ】イギリス(ロンドン)、ドイツ(ベルリン、ミュンヘン、ハンブルグ)、フランス(パリ)、スウェーデン(ストックホルム)
調査時期

2022年2月10日-3月14日

調査方法

調査モニターを対象としたインターネット定量調査

サンプル数

各国・地域 約1,000サンプル

割付

性・年齢による均等割付、収入による緩やかな割付(ソフトクォータ)

対象条件

・20~69歳男女
・就業している人(休職中除く)
・対象国に3年以上在住

実施主体 株式会社パーソル総合研究所

※報告書内の構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、個々の集計値の合計は必ずしも100%とならない場合がある。凡例の括弧内数値はサンプル数を表す。

調査報告書(全文)

Index

  1. 就労環境の変化
  2. 働く環境と働く意識
  3. Well-being
  4. 勤続意向と転職意向
  5. 自己成長と自己研鑽
  6. グローバル就業意向
  7. コロナ禍の影響による働く実態と意識変化
  8. 多様な人材が活躍する労働環境や企業風土の整備を進めWell-beingの向上を

調査結果(サマリ)

就労環境の変化

APAC各国・地域の「在宅勤務」実施率は大幅に増加

「在宅勤務」実施率は全体平均11.9%。最も高いのは「フィリピン」(22.3%)、次いで「日本」(18.5%)、「マレーシア」(18.4%)、「シンガポール」(16.5%)、「インド」(14.5%)と続く。「中国」、「韓国」、「台湾」、「香港」、「タイ」、「ドイツ」、「スウェーデン」では1割未満。なお2019年調査と今回の2022年調査を比較すると、APAC各国・地域の「在宅勤務」実施率は大幅に増加しており、「日本」は14.1pt増加している。

「時短勤務(1日6時間以上8時間未満)」も増加傾向にあり、「台湾」や「ベトナム」では大幅に増加。また、「副業・兼業」は「日本」(5.6%)をはじめ、「インドネシア」(8.2%)、「マレーシア」(6.0%)、「フィリピン」(5.8%)が全体平均2.9%を上回り増加傾向。

図1:就労環境の変化(2019年・2022年比較)

就労環境の変化(2019年・2022年比較)

働く環境と働く意識

日本と韓国の組織文化は「権威主義・責任回避」

「組織文化」の特徴(10分類)を用いて、類似度により18カ国・地域をマッピングしたところ、「日本」と「韓国」は、「上層部の決定にとりあえず従う」、「社内では波風を立てないことが重要」、「オープンな議論でなく事前の根回し」など「権威主義・責任回避」に近いのが特徴的であった。

「オーストラリア」、「アメリカ」、「イギリス」、「ドイツ」、「スウェーデン」は個人を尊重した柔軟なマネジメント、「インドネシア」、「フィリピン」、「マレーシア」、「ベトナム」は組織の調和を重視した自由闊達な風土に特徴づけられる傾向があった。

図2.組織文化の類似度マッピング

組織文化の類似度マッピング

日本、韓国、香港、中国の上司のマネジメント行動は「肯定的なフィードバック」

「上司のマネジメント行動」の特徴(6分類)を用いて、類似度により18カ国・地域をマッピングしたところ、「日本」や「韓国」、「香港」、「中国」は「日常的に感謝やねぎらいの言葉をかけられている」、「上司から褒められている」など「肯定的なフィードバック」に特徴づけられた。

「フランス」や「スウェーデン」、「インド」、「タイ」、「インドネシア」では「部下の話の傾聴」、「フィリピン」や「マレーシア」、「シンガポール」では「権限委譲」、「ドイツ」や「オーストラリア」では「目標の設定と共有」に特徴づけられる傾向があった。

図3.上司のマネジメント行動の類似度マッピング

上司のマネジメント行動の類似度マッピング

管理職になりたい人の割合、日本は19.8%と最も低い

一般社員・従業員に「管理職」になりたいと思うかを聞いたところ、1位はインド(90.5%)、次いでベトナム(87.8%)、フィリピン(80.6%)と続く。最下位は日本(19.8%)。

男女差(男性の方が高い)が最も大きいのはスウェーデン(24.4pt)で男性が女性を大きく上回る。2位はアメリカ(17.3pt)、3位はマレーシア(17.0pt)で、イギリス、ドイツ、フランス、日本、オーストラリアでも10pt以上の差がある。

マレーシアを除く東南アジア(タイ・フィリピン・インドネシア・シンガポール・ベトナム)と日本を除く東アジア(中国・韓国・台湾・香港)とインドでは、男女差が比較的小さい。特にインドネシアとシンガポールでは女性の管理職意向が男性を僅かに上回る。

図4:管理職になりたい人の割合(男女別)

管理職になりたい人の割合(男女別)

Well-being

「はたらくことを通じて幸せを感じている」割合は、日本が49.1%と最も低い

「はたらくことを通じて、幸せを感じている」就業者の割合は、「インド」(92.6%)が最も高く、次いで「インドネシア」、「フィリピン」、「中国」、「ベトナム」で9割前後と高い。一方、「日本」、「韓国」、「台湾」、「香港」では低い傾向で、「日本」(49.1%)は最も低い。

図5:仕事に対する現在の状況(Well-being)

仕事に対する現在の状況(Well-being)

ダイバーシティ&インクルージョンは、日本と韓国で低い

職場におけるダイバーシティ&インクルージョンの18カ国・地域平均(5段階尺度の平均値)は、「女性にとって働きやすい」4.2が最も高い。次いで「若手(20代)にとって働きやすい」4.0、「人種的・民族的マイノリティにとって働きやすい」3.9、「LGBTQの人々にとって働きやすい」と「移民や外国人労働者にとって働きやすい」3.8、「シニア層(50/60歳以上)にとって働きやすい」3.7と続く。

日本と韓国は特に「女性」、「若手」、「人種的・民族的マイノリティ」、「移民や外国人労働者」を中心に平均を大幅に下回る。また、日本は「シニア層」の働きやすさが、「若手」の働きやすさを上回るのが特徴的であった。

図6:職場のダイバーシティ&インクルージョン

職場のダイバーシティ&インクルージョン

勤続意向と転職意向

日本は積極的に転職や独立・起業したいと考えていない

現在の勤務先での勤続意向の全体平均は71.2%で、「中国」と「インド」では8割強と高い。転職意向の全体平均は35.2%、独立・起業意向の全体平均は35.1%。「インド」は転職、独立・起業意向ともに最も高く5割半ばであった。

「日本」は、現在の勤務先で働き続けたい割合は56.0%で18カ国・地域の中で最も低いが、転職意向や独立・起業意向も2割代にとどまっており積極的に転職や独立・起業したいとは考えていない様子がうかがえる。

図7.継続就業意向

継続就業意向

図8.転職意向

転職意向

図9.独立・起業意向

独立・起業意向

日本は「キャリア」に関する転職理由がトップ10に入らず

転職理由として「給料に不満」は各国・地域共通。昇進や評価に対する不満も上位に挙がる。「日本」は「経験や知識・専門性の習得」、「やりたい仕事」などのキャリアに関する項目がトップ10に入らず、「人間関係が上手くいかない」、「尊敬できる人がいない」、「社員を育てる環境がない」といった人間関係の不満が多いのが特徴的であった。

図10:転職理由の各国・地域ランキングトップ10

転職理由の各国・地域ランキングトップ10

自己成長と自己研鑽

日本は勤務先以外での自己研鑽「とくに何も行っていない」が5割超え

勤務先以外で自分の成長を目的に行っている学習・自己啓発の全体平均トップ5は、「読書」(34.5%)、「研修・セミナー、勉強会へ参加」(30.4%)、「資格取得のための学習」(22.0%)、「通信教育・eラーニング」(21.8%)、「語学学習」(20.9%)。

「フィリピン」、「インドネシア」、「マレーシア」、「ベトナム」、「インド」は、ほぼ全ての項目で全体平均を大きく上回り、勤務先以外での自己研鑽に意欲的。一方、「とくに何も行っていない」割合の全体平均は18.0%。最も高いのは「日本」(52.6%)。次いで「オーストラリア」(28.6%)、「スウェーデン」(28.1%)、「イギリス」(24.1%)、「フランス」(22.6%)と続く。

「日本」は「何も行っていない」割合が突出して高く、全ての項目で全体平均を下回り、1割未満も多いなど自己研鑽意欲の低さが際立つ。

図11:社外の学習・自己啓発の活動状況

社外の学習・自己啓発の活動状況

日本は勤務先以外での学習・自己啓発に「自己投資する予定なし」が4割超え

勤務先以外での学習・自己啓発に対する『自己投資』については、「既に自己投資している」という割合が全体平均で7割を超え、特に「インド」、「ベトナム」、「インドネシア」、「フィリピン」、「アメリカ」では8割を超えており、自己研鑽に意欲的な傾向が見られる。

一方、「日本」における「既に自己投資している」割合は40.0%と最も低く、「現在は自己投資しておらず、今後も投資する予定はない」という割合も42.0%であり、他国・地域と比較して自己投資意欲の低さが目立つ。

図12:社外の学習・自己啓発への自己投資

社外の学習・自己啓発への自己投資

グローバル就業意向

働いてみたい国「日本」は、タイ、ベトナム、台湾で10pt以上低下

働いてみたい国・地域の全体平均のトップ5は、「アメリカ」(30.2%)、「日本」(26.5%)、「イギリス」(22.5%)、「カナダ」(21.2%)、「シンガポール」(20.7%)。

東南アジア(タイ・フィリピン・インドネシア・マレーシア・シンガポール・ベトナム)や「台湾」、「香港」では、「日本」は働いてみたい国・地域の上位に挙がる。ただし、2019年調査と比べると、「タイ」、「ベトナム」、「台湾」では「日本」を希望する率が10pt以上低下している。また、「働きたい地域はない(自国のみで働きたい)」は、「日本」が最も高く約5割。

図13:働いてみたい国・地域(2019年・2022年比較)

働いてみたい国・地域(2019年・2022年比較)

コロナ禍の影響による働く実態と意識変化

日本はコロナ禍で働く実態としてマネジメントに影響

コロナ禍の影響による働く実態変化について聞いたところ、「テレワーク増加」と「所得減少」の変化は多くの国・地域で上位に入る。

「日本」は、「将来のキャリアに関する不安増」、「仕事の生産性低下」が他国・地域と比べ最も低く、雇用や業務への影響が比較的少ない。「上司や同僚とのコミュニケーションの減少」と「部下マネジメントの複雑化/負担増」の両方がトップ5に入り、マネジメントへの影響がうかがえる。

図14:コロナ禍の影響による「働く実態」変化 各国ランキングトップ5

コロナ禍の影響による「働く実態」変化 各国ランキングトップ5

日本のコロナ禍での働く意識変化「独立・起業したい」「業務のデジタル化を進めたい」は低い

コロナ禍で高まった意識変化の全体トップは、「現在の会社で安定して働き続けたい」。全体3位の「業務のデジタル化を進めたい」は、「タイ」で1位。「韓国」や「シンガポール」も高い。「タイ」は、実態変化でも「業務のデジタル化が進んだ」が1位となっており、「業務デジタル化」が働く人々に与えたインパクトの大きさがうかがえる。

「日本」では「労働時間を減らしたい」、「副業・兼業を行いたい」という意識変化が他国・地域に比べて高く、「独立・起業したい」、「業務のデジタル化を進めたい」は低い傾向であった。

図15:コロナ禍の影響による「働く意識」の変化(上位3位までの選択率)

コロナ禍の影響による「働く意識」の変化(上位3位までの選択率)

分析コメント

多様な人材が活躍する労働環境や企業風土の整備を進めWell-beingの向上を

2019年(2ー3月)、パーソル総合研究所では、アジア太平洋地域(APAC)14カ国・地域の主要都市において、就労者の働き方や意識についての実態調査を実施。それから3年を経た2022年、就労者の意識や職業生活の実態はどのように変化したのか、新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックは就労者の意識や働き方にどのような影響を与えたのかという問いを立て、新たに欧米地域も加えた世界18カ国・地域の主要都市に調査範囲を拡大して実態調査を実施した。

調査結果から、APACや欧米諸国との多角的な比較分析により、日本の就労者の内向き志向やキャリア自律性の低さといったキャリア意識、組織文化に関する特徴などがより鮮明に確認された。また、コロナ禍を経て各国・地域において働き方や価値観が多様化している実態や就労先として「日本」や「日本企業」を選択する割合がタイ、フィリピン、ベトナム、台湾において低下している傾向などが確認できた。本調査結果は、少子化・労働力不足が懸念され、外国人材へも期待を寄せている日本にあっては良い結果ばかりとはいえない。

多様な人材が活躍しやすい労働環境や企業風土を整備することは、外国人材のみならず労働価値観の多様化が進む日本の就労者一人ひとりにとっても職業生活のWell-beingを向上させる事にもつながる。多くの就労者が働くことを通じて、喜びや楽しみを感じ、公正な評価と魅力的な処遇が得られる社会の実現を目指し、日本の雇用組織も変革が求められている今、本調査結果がその一助となることを願う。

※本調査を引用いただく際は出所を明示してください。
出所の記載例:パーソル総合研究所「グローバル就業実態・成長意識調査(2022年)」


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