はたらくソーシャル・リスニング/24年下半期
■データ収集
日本全国のSNS、ブログ、ニュース、掲示板、レビューサイトなど日本国内10万ドメインのデータソースより投稿データ(サンプリングデータ)を取得。「労働」「人材マネジメント」「組織」「働く」関連のワードが含まれる投稿について分析
■データ取得先
X、YouTube、各種ブログ、掲示板、各種ニュースサイト、レビューサイトなど
2024年度下半期(10月1日-3月31日)と23年度同期の投稿データ比較
SNS分析ツール Quid Monitor(TDSE株式会社提供)を使用し、パーソル総合研究所分析
株式会社パーソル総合研究所
「はたらく」に関する旬のトピックスについて、各種SNS・ブログ・掲示板・レビューサイトなどの投稿データ(サンプリングデータ)をリアルタイムに取得。一般生活者の「生の声」を収集し、定期的に分析・発信することで日々変化する労働市場全体の動向理解に資することを目指します。
※過去のソーシャル・リスニングの分析結果は、こちらからご覧いただけます
2024年度下期(2024年10月1日-25年3月31日)において、2023年度同期からの「はたらく」に関する投稿増加率/減少率が高かったトピックは以下の通り。
「はたらく」に関する投稿増加率上位10ワードの主なポイントは以下の通り。
増加率1位:103万円の壁
配偶者控除に関連する所得制限「103万円の壁」について、与野党の間で、見直しの議論が活性化。労働力不足が深刻化する中で、収入が一定額を超えないように働く時間を調整する、いわゆる就業調整を防ぐ狙いがある。
増加率2位:通称使用
通称使用とは、法的な氏名(本名)とは異なる名前を、日常生活や社会活動において使用することを指す。選択的夫婦別氏制の導入を巡る問題が活発化し、それに関連付けて通称使用の取り扱いなどについても議論が盛り上がった。
増加率3位:ドナー休暇
骨髄や末梢血幹細胞を提供する際に、従業員が特別休暇を取得できる制度。ドナーとして選ばれても、仕事の都合で提供を辞退するケースが多く、厚生労働省はドナー休暇の導入を推奨・啓発しており、企業における導入も一部で広がりを見せている。
増加率4位:106万円の壁
「103万円の壁」と同様に一定の条件で社会保険(厚生年金・健康保険)に加入が必要になる「106万円の壁」についても、見直しの議論が起こっている。企業の負担を減らすための助成金制度なども検討されている。
増加率5位:ソーハラ
「ソーシャルハラスメント」の略称で、SNSを通じた嫌がらせや不適切な行為を指す。上司が部下のSNS投稿を逐一チェックしてプライベートな活動に干渉したり、友達申請やフォローを強制したりといった新たなハラスメントの形が話題に。
増加率6位:通勤手当
政府の税制調査会において、通勤手当の非課税措置の見直しが議題に上り、一時的に話題に。防衛費や少子化対策の財源確保の一環として、これまで非課税とされてきた通勤手当に課税する案が浮上。
増加率7位:年収の壁
「103万円の壁」「106万円の壁」と同様。
増加率8位:休業支援金
2025年4月より「出生後休業支援給付金」がスタート。共働き・共育てを推進するため、子の出生直後の一定期間に両親ともに14日以上の育児休業を取得した場合に、最大28日間分の給付金が支給される。
増加率9位:スモハラ
「スモークハラスメント」の略称で、主に職場において、喫煙者が非喫煙者に対して喫煙を強要したり、たばこの煙にさらしたりするなどの嫌がらせ行為を指す。喫煙者が非喫煙者からの圧力や配慮要求に対して感じるハラスメントを「逆スモハラ」と呼ぶ動きが話題に。
増加率10位:ガラスの天井
能力や実績にかかわらず、性別や人種などを理由に昇進やキャリアアップが阻まれる見えない障壁を指す。
「はたらく」に関する投稿減少率上位ワードの主なポイントは以下の通り。
※
減少率上位に関するポイントは、一部をピックアップの上、コメントを記載しています。
減少率1位:内定取り消し
新卒売り手市場の継続もあり、企業からの内定取り消しは事案としても話題にはならず、大きくメンション数を下げた。
減少率2位:バイトテロ
2024年問題、バイトテロのような、突発的なイベントに引きずられたものはダウントレンドとして急速に話題にならなくなる。
減少率6位:在宅勤務
出社回帰が進んだことで、在宅勤務は話題としても減少傾向。今後もどこまで下がるかが注目される。
減少率8位:合理的配慮、減少率9位:インボイス制度
障害者雇用促進法改正やインボイス制度など、制度の施行タイミングに伴って注目されるワードは、その後大きく下がる傾向にある。
2024年下半期において特に目立ったトピックについてピックアップした。
特にパートやアルバイトなどの短時間労働者において、一定の年収を超えると社会保険料や所得税負担が発生して手取りが減る「年収の壁」の見直しの議論が進んだ。「103万円の壁」「106万円の壁」などの関連ワードが爆発的に話題を集めた。物価高や労働力不足を背景に、順次、年収額の見直しが進んでおり、その解説や具体的金額、時期などについて今後も引き続き話題を集めそう。
少子高齢化やインバウンド需要の復活から、「労働力不足」への懸念はますます広がってきている。2024年度は各研究機関から将来的な「労働力人口」に関連する推計も出され、話題を呼んだ。特に「人手不足倒産」は、年々増加しており、24年度の「人手不足」関連倒産は前年度の1.6倍に達し、過去最多の309件を記録(東京商工リサーチ調べ)し、深刻化が進む。
「賃上げ」・「春闘」については、2023年度ほどの話題にはならず。企業の動きとしての賃上げ機運は継続するも、議論の熱としては冷めてきている様子がうかがえる。同様に、「ジョブ型」についても一時期の話題は沈静化しつつある。その一方で職務給や職務等級といった人材マネジメントの浸透は中期的に進んできており、世間の声と実態の乖離が見られるトピックである。
2024年度の下半期も、多様な労働関連のトピックが人々の間で注目を集めた。
目立ったのは、社会保険料や所得税負担について、与野党の間で金額見直しや撤廃の議論が活性化し、関連ワードは急激に話題を集めた。そもそもの制度の複雑さも手伝って、解説記事やコメントも大量に投稿された。労働力不足や物価高が進む中で、社会全体に大きく影響を与える制度変更であり、25年度も引き続き議論は活性化しそうだ。
前年度から連続して上昇してきたのは、「人手不足倒産」である。コロナ禍の各種補助からの反動や、建設・物流業界の労働時間制限が開始されたこと、その他人件費やコスト上昇により、倒産数が大きく増えてきている。成長分野への円滑な労働移動が叫ばれる中で、倒産した企業からの労働移動が実際にどう起こっていくかも実証的検証が望まれる。
「ジョブ型」や「賃上げ」、「春闘」については、23年度ほどの話題にはならず、世間やメディアの熱としては冷めてきている様子がうかがえる。その一方で、企業の動きとしてはそれぞれ続行している事柄であり、トレンドとして消費せずにしっかりとした追跡が必要だ。
※本調査を引用いただく際は出所を明示してください。
出所の記載例:パーソル総合研究所「はたらくソーシャル・リスニング/24年下半期」
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