公開日:2024年3月27日(水)
調査名 | 新卒者の内定辞退に関する定量調査 |
---|---|
調査内容 | 複数の企業から内(々)定を獲得した新卒者の内定承諾・内定辞退の要因を明らかにする |
調査対象 | ■スクリーニング調査 n=3,153 ■本調査 n=477 ・20代の大学4年生および修士課程2年生 (2024年4月入社に向けて民間企業の就職活動を行い、調査時点で就活を終えた者、かつ2社以上から内(々)定を獲得した者) |
調査時期 | 2023年11月7日-11月9日 |
調査方法 | 調査会社モニターを用いたインターネット定量調査 |
調査実施主体 | 株式会社パーソル総合研究所 |
※図版の構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、個々の集計値の合計は必ずしも100%とならない場合がある。
調査報告書(全文)
今回のスクリーニング調査の対象者759名の就活生(※)のうち、2社以上から内(々)定を獲得したのは493名の65.0%であり、内(々)定を辞退した企業数は平均で3.4社であった。入学難易度が高い大学の就活生が最も多く内(々)定を辞退していた。
※2024年4月入社に向けて就職活動を行い、調査時点で内(々)定を獲得して就活を終えた大学4年生と修士課程2年生
就活生がどのような業種や規模の企業の内定を辞退しているかを見た。業種では、「製造業」に入社予定の就活生の37.5%が製造業以外の企業の内定を辞退、「金融業、保険業」では47.5%が異業種の企業の内定を辞退しているなど、採用活動を行う企業にとって、競合相手は必ずしも同業種ではないことがうかがえた。
企業規模に関しては、就活生が大企業志向であるとは言い切れない結果が得られた。例えば、「500人未満」の中小規模の企業の内定を承諾した就活生が、その内定承諾企業よりも大きな規模の企業の内定を辞退した割合は45.6%であった。
内定を承諾した企業に対する志望度について、「エントリーシート提出」の時点から一貫して第1志望企業であったのかをたずねたところ、57.7%がそうではなく、もともとは第2志望以下であったり、途中で志望順位が変動したりしていた。
特に、エントリーシート提出や適性検査などの受検を経たタイミングでは、内定承諾企業に対する第1志望割合にほぼ変化がないのに対し、面接は1次、2次と経るごとに第1志望となる割合が引き上がっていた。
ここからは、内定辞退を防止する施策のヒントを探るべく行った分析の結果を紹介する。
まず、「入社後の働き方に関するイメージ」について、内定承諾企業と内定辞退企業それぞれに対する回答結果の差分を見たところ、内定承諾企業のほうで特に肯定的にイメージされていたものは、「仕事と仕事以外の生活のバランスのとれた働き方ができる」「希望する地域で働くことができる」「産休・育休がとりやすい」「職場の人間関係がよい」であった。
どのような「入社後の働き方に関するイメージ」が入社意欲に影響を及ぼすのかを見たところ、「経済的に豊かな暮らしができる」「社会に貢献できる」「希望する職務(職種)で働くことができる」「職場の人間関係がよい」というイメージが、入社意欲を高めるものとして上位に挙がった。
これらの結果から、就活生に対して入社後のイメージをアピールする際には、「職場の人間関係がよい」「働きやすさ」はもちろんのこと、「社会貢献できる」ことも重視すべきであることがうかがえる。
就活生が体験した「インターンシップの内容」について、内定承諾企業と内定辞退企業での違いを見たところ、一般社員や社長・役員と交流する「交流型」は、内定承諾企業のほうが内定辞退企業よりも16.8pt高かった。逆に、企画・提案を行う「特別PJT系」のインターンシップは、内定辞退企業のほうが9.9pt高くなっている。
就活生からの面接に対する評価は、内定辞退企業よりも内定承諾企業のほうが1.6pt高い。
また、面接に対する評価には、「熱意がある」「誠実だ」「頼りになりそう」「親しみやすい」といった面接官の印象が影響する。面接への評価の高さは、入社意欲の向上に影響が見られるため、面接の評価を左右する面接官の配置は重要といえる。
さらに、就活生が面接後に社員から感想やアドバイスを受け取った割合は内定承諾企業のほうが高く、面接「後」のフィードバックが内定承諾に影響を与えている可能性が考えられる。
内定承諾企業において実施されている「内定者フォロー」の内容を見ると、「社長・役員との懇親会」「社員との個人面談」といった交流系のものや、「社内・施設見学会」「社内イベントへの参加」などは、入社意欲を高めるが現状における実施率はさほど高くないため、費用対効果の面で有効な施策と考えられる。
本調査では、就活生がどのような理由で内定の承諾/辞退を決定しているのかについて、内定承諾企業・内定辞退企業それぞれに対する就活生の回答結果を比較することによって探った。全体を通して浮かび上がってきたのは、日本の「就活」の変わらなさである。調査では、企業における人間関係の良好さを示すシグナルを、就活プロセスの中で敏感に感じ取っている就活生の様子が随所にうかがえた。「社会貢献志向」や「ワークライフバランス志向」は比較的新しいものであろうが、現代においても、具体的なジョブへの志向性ではなく、従来しばしば「就社」と呼ばれてきたような志向性に重点を置く就職活動が多く行われている実態が垣間見えた。
そのような就活事情の中で、内定辞退を防止するには企業はどうすればよいのか。調査から見えた施策のヒントを以下の枠内にまとめる。項目を全体的に見ると、職場の雰囲気やメリットを具体的にイメージできるようにする施策は、特に重要といえるだろう。面接はもちろん、面接以外にも社員との交流が可能である多様な接点を設けること。そして、そのような接点の場で、就活生を新たな仲間として受け入れようとしているという姿勢を、誠実かつ熱心に示すことが、最終的な内定承諾の決断を促す後押しになると考える。
[調査から見えた内定辞退防止の施策のヒント]
① 就活生に呈示する入社後イメージ
「職場の人間関係がよい」「働きやすさ」はもちろんのこと、「社会貢献できる」ことも重視するべきである。
② インターンシップ
一般社員、社長・役員との交流を重視したインターンシップは、他のインターンシップよりも内定辞退を防ぐ可能性がある。
③ 面接
就活生にとって印象のよい(信頼性を伴う熱意や親しみを感じさせる)面接官の配置が効果的と思われる。また、面接後に簡単でもよいのでフィードバックを行なったほうが内定承諾に繋がる可能性がある。
④ 内定者フォロー
コストパフォーマンスという点では、現時点で実施率が低いにもかかわらず入社意欲を高める施策がよい。具体的には、仕事に関する基礎スキルの研修やアルバイトではなく、社員と就活生が率直に意見交換できる機会を設定することが効果的と思われる。
※本調査を引用いただく際は出所を明示してください。
出所の記載例:パーソル総合研究所「新卒者の内定辞退に関する定量調査」
調査報告書全文PDF
新卒者の内定辞退に関する定量調査
本記事はお役に立ちましたか?
面接が就活生の内定承諾と内定辞退に及ぼす影響―企業が選ばれる時代の面接の在り方
調査研究要覧2023年度版
新卒者の内定辞退を防ぐためのポイントとは?
機関誌HITO「人事トレンドワード2023-2024」発刊記念セミナー ~パーソル総合研究所が選んだ人事トレンドワード解説~
HITO vol.21『人事トレンドワード 2023-2024』
マクロ視点の成長志向と学ぶ文化の醸成により日本全体での成長を目指すべき
2023年-2024年人事トレンドワード解説 - 賃上げ/リスキリング/人材獲得競争の再激化
企業と副業人材のミスマッチを防止する採用コミュニケーション
副業人材の獲得に重要な副業求人の記載事項 ~ネガティブ情報の「積極的開示」と、組織風土の「見える化」を~
オンラインの進展、人手不足……人事はより戦略的に攻めの時代へ。 注目すべきは、《全国採用》《タレントアクイジション》《創造性》
企業の新規事業開発の成功要因における組織・人材マネジメントの重要性
HITO vol.17『ITエンジニアに選ばれる組織の条件 ~賃金と組織シニシズムの観点から考察する~』
ITエンジニアの人的資源管理に関する定量調査
就活に「やりたいこと」は必要なのか
現在の就活生・データから見る5つのタイプ
入社後の「こんなはずじゃなかった」を防ぐ就活の3つのポイント
就職活動と入社後の実態に関する定量調査
企業インターンシップの効果検証調査
労働市場の今とこれから 第4回 採用なくして成長なし
労働市場の今とこれから 第2回 アルバイトが採れない!大規模調査プロジェクトから見えたもの
アルバイト職場のシニア人材活用をどう進めるか〈採用編〉
時給と雰囲気、どちらを重視? タイプ別の特徴から探る募集のヒント
HITO vol.9『マネジメント職の採用と活躍支援』
価値創造型人材の外部採用とリテンション
調査レポート一覧
2024/11/07
2024/10/31
2024/08/30
2024/08/28
2024/06/25
2024/06/25
2024/06/07
2024/06/05
2024/05/30
2024/05/13
2024/04/26
2024/03/29
2024/03/27
2024/03/26
2024/02/20
2024/02/19
2024/02/07
2024/01/31
2023/10/30
2023/10/26
2023/09/12
2023/09/04
2023/08/31
2023/07/19
2023/07/10
2023/06/30
2023/06/29
2023/06/14
2023/04/28
2023/04/12
2023/02/22
2022/11/28
2022/11/18
2022/11/08
2022/11/02
2022/10/05
2022/09/05
2022/08/30
2022/07/21
2022/06/30
2022/05/27
2022/05/23
2022/05/13
2022/04/06
2022/03/22
2022/03/01
2021/12/13
2021/09/30
2021/09/07
2021/08/31
2021/08/16
2021/07/05
2021/06/25
2021/06/08
2021/06/02
2021/05/14
2021/03/15
2021/03/03
2021/01/21
2020/12/21
2020/12/21
2020/12/18
2020/12/01
2020/10/30
2020/10/23
2020/06/24
2020/06/19
2020/06/17
2020/06/16
2020/04/24
2020/02/07
2019/11/19
2019/10/31
2019/09/27
2019/08/27
2019/06/27
2019/06/04
2019/05/09
2019/01/25
注目コラム
【経営者・人事部向け】
パーソル総合研究所メルマガ
雇用や労働市場、人材マネジメント、キャリアなど 日々取り組んでいる調査・研究内容のレポートに加えて、研究員やコンサルタントのコラム、役立つセミナー・研修情報などをお届けします。
follow us
公式アカウントをフォローして
最新情報をチェック!
2024年11月12日(火)
2024年11月7日(木)
2024年10月31日(木)
2024年8月30日(金)
2024年8月28日(水)
2024年6月25日(火)
2024年6月25日(火)
2024年6月7日(金)
2024年6月5日(水)
2024年5月30日(木)
2024年5月13日(月)
2024年4月26日(金)
2024年3月29日(金)
2024年3月27日(水)
2024年3月26日(火)
2024年2月20日(火)
2024年2月19日(月)
2024年2月7日(水)
2024年1月31日(水)
2023年10月30日(月)
2023年9月12日(火)
2023年9月4日(月)
2023年8月31日(木)
2023年7月19日(水)
2023年7月10日(月)
2023年6月30日(金)
2023年6月29日(木)
2023年6月14日(水)
2023年4月28日(金)
2023年4月12日(水)
2023年2月22日(水)
2022年11月28日(月)
2022年11月18日(金)
2022年11月8日(火)
2022年11月2日(水)
2022年10月5日(水)
2022年9月5日(月)
2022年8月30日(火)
2022年7月21日(木)
2022年6月30日(木)
2022年5月27日(金)
2022年5月23日(月)
2022年5月13日(金)
2022年4月6日(水)
2022年3月22日(火)
2022年3月1日(火)
2021年12月13日(月)
2021年9月30日(木)
2021年9月7日(火)
2021年8月31日(火)
2021年8月16日(月)
2021年7月5日(月)
2021年6月25日(金)
2021年6月8日(火)
2021年6月2日(水)
2021年5月14日(金)
2021年3月15日(月)
2021年3月3日(水)
2021年1月21日(木)
2020年12月21日(月)
2020年12月21日(月)
2020年12月18日(金)
2020年12月1日(火)
2020年10月30日(金)
2020年10月23日(金)
2020年6月24日(水)
2020年6月19日(金)
2020年6月17日(水)
2020年6月16日(火)
2020年4月24日(金)
2020年2月7日(金)
2019年11月19日(火)
2019年10月31日(木)
2019年9月27日(金)
2019年8月27日(火)
2019年6月27日(木)
2019年6月4日(火)
2019年5月9日(木)
2019年1月25日(金)
follow us
メルマガ登録&SNSフォローで最新情報をチェック!