公開日:2021年12月13日(月)
調査名 | 一般社員層(非管理職層)における異動配置に関する定量調査 |
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調査内容 | ①企業における一般社員層(非管理職層)の異動配置施策の実態を把握する。【企業調査】 ②異動配置施策が組織・個人にもたらす効果を明らかにする。【企業調査/個人調査】 ③異動配置後の個人の活躍・適合度に影響を与える要因を明らかにする。【個人調査】 |
調査対象 | 【共通条件】 従業員人数300人以上、農業、林業、漁業、国家公務、地方公務 除外 Ⅰ.企業対象調査: 人事管理(異動配置)を把握している人事担当・経営層 年齢70歳未満:652s Ⅱ.従業員対象調査: ①一般社員層(非管理職層):年齢20~59歳 正社員 総合職一般社員 勤続1年以上 男女:3000s (平成27年国勢調査 正規の職員 年代別構成比と令和元年度雇用均等基本調査の男女別の総合職・限定総合職の割合を掛け合わせ割付を作成。 男性20代は割付数に満たなかったため、男性30-50代で不足分を補填した) ②現在の会社で5年以内の[会社主導]による異動経験者(直近の異動経験が会社主導):900s ③現在の会社で5年以内の[個人希望]による異動経験者(直近の異動経験が個人希望):200s ※②③は①と重複するサンプルが含まれる ※報告書内では、「一般社員層(非管理職層)」のカッコ内(非管理職層)の記載は省略 |
調査時期 | 2021年 7月21日 - 8月1日 |
調査方法 | 調査会社モニターを用いたインターネット定量調査 |
調査実施主体 | 株式会社パーソル総合研究所 |
※報告書内の構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、個々の集計値の合計は必ずしも 100%とならない場合がある
調査報告書(全文)
人事管理上の取り組み課題の優先度を経営層・人事に尋ねたところ、を見ると、「従業員のキャリア開発・キャリア自律意識の向上のための組織的支援」72.5%、「一般社員層(総合職)の戦略的異動配置」70.1%と、一般社員層(非管理職層)への課題は、次世代経営人材や戦略的ポジション人材に次ぐ優先度の高さとなっている(図1)。
図1.人事管理上の取り組み課題の優先度
人事管理上の取り組み課題の優先度が高い一般社員層(非管理職層)の異動配置に関する方針について経営層・人事に聞いたところ、「明確な方針がある」は35.0%(図2)。年齢別に見ると、新卒~34歳くらいまでの若年層に対して「明確な方針がある」との回答は38.0%と、若年層についても4割未満にとどまっている(図3)。
図2.一般社員層(非管理職層)の異動配置に関する方針
Q.あなたの会社では、一般社員層(総合職)の異動・配置に関する指針や方針(中・長期的)はありますか。
図3.一般社員層(非管理職層)の異動配置に関する方針〈年齢別〉
一般社員層(非管理職層)の定期異動がある企業は全体の70.1%。1年間あたりの定期異動の回数は1回が約半数だった(図4)。定期異動のある企業では、1年で行われる異動のうち、平均2.5割が定期異動によって行われており、残りの約7.5割は事業の必要性に応じた随時異動で異動が行われていることが分かった(図5)。
図4.定期異動の有無と1年間あたりの定期異動回数
図5.異動のうち定期異動の割合
異動に対する従業員の意向はどうだろうか。現在の会社で今後異動したいかを尋ねると、異動意向層35.8%、非異動意向層33.3%で拮抗している。性年代別に見ると若年層で異動意向者が多く、20代男性40.1%、20代女性では47.5%であった(図6)。また、所属部門の在籍年数が5年を超えると異動意向は低下していく傾向が見られた(図7)。
図6.一般社員層(非管理職層)の異動意向〈全体と性年代別〉
図7.一般社員層(非管理職層)の異動意向〈所属部門の在籍年数別〉
Q.あなたは、現在の会社で今後異動したいと思いますか。
会社指示による異動命令の受け入れ意向を尋ねると、職種の変更を伴う異動については、「会社指示なので従う」43.2%、「希望条件に合えば従う」35.2%、「希望条件に合わなければ拒否する」14.4%、「拒否できないのであれば、退職や転職を検討する」7.2%と、拒否意向がある層は21.6%となり、転勤を伴う異動になると拒否意向は30.6%と上昇した。(図8)
図8.会社指示による異動命令に対する受け入れ意向
異動経験が個人の意識・行動面にどのように作用するかを確認するため、従業員のパフォーマンスにプラスの影響を与える要因「社内知識形成」「成長志向」「学習意欲」「キャリア自律度」について分析した。すると、どの要因においても異動経験がある層のほうが、ない層に比べて有意に高いことが分かった(図9、10)。ただし、職種変更を伴う異動の場合、一時的にはパフォーマンス(活躍・適合度)は低下する。
図9.社内知識形成(あてはまる・計)
図10.成長志向/学習意欲(あてはまる・計)、キャリア自律度
異動経験が従業員にプラスの影響を与えていることが分かったが、会社主導と従業員個人の希望による異動配置によって影響の違いはあるのだろうか。
異動後の満足度の変化を聞いたところ、異動後の職務について、総合的にみて満足している層は、会社主導の異動経験者では38.7%、個人希望の異動経験者では55.5%となっている。
また、職務満足度が異動前後で「不満足」から「満足」に変化した層は、会社主導では12.0%、個人希望では23.0%と、約1.9倍の差がついた(図11)。
図11.異動前後の職務満足度変化の分布
※異動前後それぞれの【総合職務満足度(5件法聴取)】を「満足+やや満足」「不満足+やや不満足+どちらともいえない」に分け、かけ合わせて4象限に分類。
異動配置は、従業員のパフォーマンスにプラスの影響を与えることが分かった一方で、会社主導による異動配置については、従業員から拒否意向が見られることや、異動後の職務満足度も従業員希望による異動配置より低いことが明らかになった。
そこで、会社主導による異動配置においてどのような支援ができるかを検討すべく分析したところ、異動前の上司による「異動理由の十分な説明」や、「異動先の役割・期待感の通知」などのコミュニケーションが、異動者の「異動に対する肯定的な受け止め」や「異動後の活躍適合の見通し」を促し、異動後の活躍・適合度を高めていることが示唆された。さらに、「異動先ポジションの事前理解」が高いほど、異動後の組織再社会化(※)が促され、異動後の活躍・適合度を高めていることが分かった。
また、異動後の上司による「役割・期待感の通知」「キャリア相談」「部下理解」などのコミュニケーションが、異動者の異動後の活躍・適合度を促進していることが示唆された(図12)。
※「組織社会化」とは、組織の一員となるために、組織の規範や価値、行動様式を獲得しながら、組織に適応していく過程のこと。「組織再社会化」とは、すでに特定の組織の一員として組織社会化された人が、組織間移動によって別の組織に参入した際に“再び社会化される”こと
図12.異動後の活躍・適合度を促進する要因
異動で得られる効果を他の経験で代替できないかを検討したところ、社内知識形成は「部門横断的なプロジェクトへの参加」「社内部活動・社内サークル活動への参加」によって異動経験と同様の効果が得られることが分かった。他にも学習意欲は「自己啓発・自己学習への手当・支援金の受給」「キャリア研修」など、キャリア自律は「キャリア・カウンセリング」「キャリア研修」などのキャリア支援で高められていた(図13)。
図13.異動配置に代わる施策の効果
企業の人事管理の課題は、次世代経営人材や戦略的ポジション人材に次いで一般社員層(非管理職層)の異動配置の優先度が高まってきている。一方で、一般社員層(非管理職層)の異動配置について明確な方針があると回答した企業は35.0%と多くない。実態としては事業上の要請に応じてタイムリーに人員を確保していくという側面が大きいことが推察される。
今回の調査結果より、会社主導の異動よりも、個人希望の異動のほうが職務満足度が高く、異動後の活躍状況も相対的に見て高いことが示唆された。また、キャリア自律の重要性が高まっている中、これからは手挙げ制の異動配置の仕組みを増やしていくことが必要だろう。
しかし、手挙げ制の異動の仕組みがあったとしても、全員が手を挙げるわけではない。自主性に任せると、中にはキャリアの計画を持たないまま一つの部門に長期在籍するような個人も出てくる。そのようなケースは、成長意欲や学習意欲が低下していき成長が鈍化してしまう懸念がある。在籍年数が5年を超えると異動意向が低下するという実態を踏まえると、在籍年数が5年を超えた人材を対象に、会社から異動を提案するという施策なども考えられる。
また、個人希望による異動が実現できない従業員に対しては、学習支援、キャリア支援、部門横断の交流機会の提供などを実施することで異動配置に代わる成長機会を提供することも必要である。個人の希望を反映する異動配置の仕組みの整備のみではなく、個人が成長できる機会を主体的に選べるよう、多くのメニューを揃えることが肝要といえそうだ。
※本調査を引用いただく際は出所を明示してください。
出所の記載例:パーソル総合研究所「一般社員層(非管理職層)における異動配置に関する定量調査」
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