公開日:2020年6月16日(火)
調査名 | コーポレート・アルムナイ(企業同窓生)に関する定量調査 |
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調査内容 | 離職後の元いた企業との関係性の在り方を明らかにし、企業・離職者が互いに有効な関係を継続させることにより、双方にどのようなメリットを享受できるかを探る。 |
調査対象 | 〈共通条件〉 居住地域:全国 年齢:20歳以上50歳未満 ・企業規模:10人以上 / 公務員・士業、第一次産業は除く / 資本:内資・外資不問 ■合計サンプル数 2300人 ・離職者2000人 5年以内に離職経験者:性年代ごとに250サンプルづつ回収 ・再入社者300人 5年以内に出戻り入社の経験者(割付なし) ・当時の役職不問 在職期間3ヶ月以上 ※離職者の現在の雇用形態・就業状態は不問 |
調査時期 | 2019年12月20日-24日 |
調査方法 | 調査モニターを用いたインターネット定量調査 |
調査実施主体 | 株式会社パーソル総合研究所 |
調査報告書(全文)
離職者が個人ユーザーとして、元在籍した企業の商品・サービスを1年のうちに利用・購買している割合は10.8(図1)。
図1.元在籍企業との企業取引・個人取引の割合
離職者が元在籍企業の商品・サービスを勧めるかどうかを見ると、ポジティブな説明が12.5%、ネガティブな説明が13.2%と概ね拮抗する結果となった。元在籍企業への入社を人に勧めるかどうかを見ると、ポジティブな紹介が4.0%、ネガティブな紹介が4.3%と、こちらも概ね拮抗する結果となった。 しかし、会社の口コミサイトでは、ポジティブな書き込み4.8%、ネガティブな書き込み35.6%と、圧倒的にネガティブな書き込みが多くなる(図2)。
図2.元在籍企業に対する評価
元在籍企業と良好な関係を築いている離職者(アルムナイ意識が高い層)では、ポジティブな評判を広めやすく、元在籍企業との取引・利用が起こりやすいことが確認できた(図3)。
※「アルムナイ意識」は、協働意欲・交流意欲・顧客化志向の合計平均値で指標化。
図3.「アルムナイ意識」の高低による評判の差
離職後に再入社できる公式な制度(再入社制度)を設けている企業は8.6%。従業員5,000人以上の企業では202%と、従業規模が大きい企業から整備されている(図4)。
図4.離職者向けの制度・施策(全体平均と5,000人以上比較)
離職した企業への再入社の意向をみると、再入社したい人は8.3%いる。実際に過去5年以内に再入社した人は2.1%だった(図5)。
図5.再入社意向と実際の再入社率
再入社した人のうち、公式な再入社制度を利用したのは4.0%。整備は徐々に進んできているものの、現状では再入社者の75.7%が人づて・縁故などの非公式なルートで再入社していることがわかった(図6)。
図6.再入社者の経路
再入社者のメリットとして、「仕事内容が事前にイメージできた」(42.7%)、「組織内のキーパーソンが理解できている(37.7%)など、比較的スムーズに業務を進められる様子が伺える(図7)。
図7.再入社者のメリット
再入社後の満足度は総じて離職時よりも高まっているが、「給与・報酬・評価への満足度」だけは離職時より微減する(図8)。背景として、離職時と再入社後の処遇を比較すると、大企業(従業員1,000人以上)では 「年収低下」(32.9%)や「職位低下」(17.7%)など、再入社者を低く処遇する傾向がみられることが考えられる(図9)。
図8.退職前と再入社後の満足度
図9.従業員規模別の処遇
離職後、「元在籍企業」や「元同僚」と行った経済的取引の範囲を「アルムナイ経済圏※」と定義すると、その規模は年間1兆1500億円に上ることが明らかとなった(図10)。
図10.アルムナイ経済圏の規模
※「アルムナイ経済圏」はパーソル総合研究所による造語。離職者による元在籍企業・元同僚との取引範囲を意味し、その規模は、①元在籍した企業と現在在籍中の企業との取引(B2B)、②元在籍企業と離職者個人との取引(B2C)、③元在籍企業で同僚だった者との取引(B2B並びにB2C)の合計値を意味する。
「アルムナイ経済圏」の市場規模推計値は、「①年間の離職者数(パートタイム除く一般労働者)」から「②非自発的な離職(事務所側の理由・定年など)を除き、「③離職者一人当たりの年間取引額」をかけて求めた。①と②は平成29年雇用動向調査結果、③はパーソル総合研究所調査より、業界割合調整済の数値を用いた。
「アルムナイ経済圏」のうち、「元同僚」との取引を除き、「元在籍企業」との取引に限定した「狭義のアルムナイ経済圏※」の規模は、年間4,400億円となる(図10)。
※離職者による元在籍企業との取引範囲を意味し、その規模は、①元在籍企業と現在在籍中の企業との取引(B2B)、②元在籍企業と離職者個人との取引(B2C)の合計値を意味する。
コロナ・ショックによる産業構造の転換と終身雇用モデルの崩壊により、今後、離職や転職が各所で起こってくることが見込まれている。一方で、コロナ禍の前から大手企業を中心に「自らの組織を離れた従業員」との関係性のあり方を見直す動きが活発化している。企業を去った従業員をぞんざいに扱ってしまえば、企業ブランディングは大きく毀損するし、逆に、良好な関係を築ければメリットが大きい。人口減少社会である日本では、こうした「離職者との良好な関係の継続」はますます重要になってくる。
そうした企業と離職者との繋がり=良好な「アルムナイ」がもたらすメリットは、採用(再入社による自組織以外の人脈・知見の獲得、採用コスト削減)、ブランディング(ポジティブな評判獲得、ネガティブな評判防止)、顧客化(購入者や取引先となる可能性)、ビジネス上の協業関係など多岐にわたる。
アルムナイとのリレーション構築のための施策は、再入社制度の整備、離職者向けSNSやコミュニティ整備、交流イベント、優待サービスなどによるアルムナイ意識の醸成、再入社後の公正な処遇、不安を減らすマネジメントなど様々だ。今後は、離職者を裏切り者とみなすことなく、こうした総合的な手を積極的に打っていく企業が、人材を惹き付けていくだろう。
また、見逃されがちだが、退職時の面談の影響力は大きい。上司面談において、単に退職意思を尊重するだけでは、離職者心理にネガティブな影響を与えており、「思いの引き出し」が必須であることが明らかになった。こうした細やかなコミュニケーションに気を配れるかどうかが、離職者との長い信頼関係を築くための分かれ道となるだろう。
※本調査を引用いただく際は出所を明示してください。
出所の記載例:パーソル総合研究所「コーポレート・アルムナイ(企業同窓生)に関する定量調査」
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