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人事部大研究 -非管理職の意識調査

公開日:2022年11月28日(月) 

調査概要

調査名 人事部大研究 -非管理職の意識調査
調査内容 ・人事部に所属する非管理職から見た人事部の魅力と課題を明らかにする
・人事部に所属する非管理職のキャリア意識の実態を明らかにする
・戦略人事実現企業における人事部に所属する非管理職のキャリア意識や育成環境を明らかにする
調査対象 全国の正社員 20~64歳男女 従業員規模300名以上企業対象 一般社員・従業員、係長相当
除く、農業、林業、漁業、鉱業

※人事部以外非管理職は、事務職、理美容師、医療・福祉専門職、教育関連、幼稚園教諭・保育士、その他職種を除く


調査対象
調査時期 2022年 6月16日-20日
調査方法 調査会社モニターを用いたインターネット定量調査
調査実施主体 株式会社パーソル総合研究所

※報告書内の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計と内訳の計は必ずしも一致しない場合がある。
※凡例の括弧内数値はサンプル数を表す。
※第1回調査とは異なり、日系企業・外資系企業を問わずに分析を実施(日系企業が全体の92.3%を占める)。

調査報告書(全文)

Index

  1. 人事部非管理職層から見た人事部の魅力・やりがいと課題
  2. 人事部非管理職層の人事職域における経験意向
  3. 人事部非管理職層のキャリア意向
  4. 人事部非管理職層の仕事のやりがいタイプ
  5. 戦略人事の実現に向けて、《従業員視点》に加え、《経営視点》《事業視点》を身につけるための育成プログラムやタレントマネジメントが求められる

調査結果(サマリ)

人事部非管理職層から見た人事部の魅力・やりがいと課題

「魅力的」と感じる人事部の5つの特徴

人事部の非管理職層が「魅力的」と感じる人事部の特徴は、以下であることが明らかになった。

① 事業部門との連携:事業部門と人事部のコミュニケーションが活発であり情報連携がなされていること
② 従業員支援:人事部が従業員の声にしっかりと耳を傾けており、キャリア支援を行っていること
③ 権限委譲:年次や役職にかかわらず、責任ある仕事ややりたい仕事に柔軟にチャレンジさせてもらえること
④ 管理職の優秀さ:人事部のトップが変革に前向きであり、人事部の管理職が優秀であること
⑤ 人事部内の連携:人事部内のコミュニケーションが活発であること

そのうち、①「事業部門との連携」④「管理職の優秀さ」は実現率が4割前後と低く、多くの人事部非管理職層にとって所属人事部の魅力度を下げる要因となっていることがうかがえる。

図1.人事部非管理職層にとって魅力的な人事部の特徴の現実とのギャップ

人事部非管理職層にとって魅力的な人事部の特徴の現実とのギャップ

戦略人事実現企業の人事部は、人事部の非管理職層にとって魅力的な環境である傾向

戦略人事*を実現する人事部では、これらの非管理職層にとっての魅力的な人事部の特徴を実現している割合が高い。

*戦略人事(戦略的人的資源管理):本調査では、「経営資源の一つである『ヒト』の価値を最大化するために、経営戦略と連動した人事戦略を策定・実行すること」を指す。『人事戦略』との大きな違いは、「企業のミッションや経営目標」にコミットしているか、否かという点。

図2.人事部非管理職層にとって魅力的な人事部の特徴の実現率(戦略人事実現度別)

人事部非管理職層にとって魅力的な人事部の特徴の実現率(戦略人事実現度別)

やりがいを感じる業務の特性は、「従業員対応」「従業員支援」「専門性発揮」

人事部の非管理職層がやりがいを感じる業務の特性を見ると、「現場に寄り添い困りごとを解決している」などの『従業員対応』、「社員の成長を感じる機会がある」などの『従業員支援』、「高い専門性・スキルを要する仕事をしている」などの『専門性発揮』において、やりがいを強く感じる傾向が見られた。

図3.人事部非管理職の業務特性とやりがい(全体)

人事部非管理職の業務特性とやりがい(全体)

人手不足により「人材採用」や「労務管理」業務が特に忙しい

所属する人事部の人事業務の忙しさについて尋ねると、「人材採用」や「労務管理」の担当者が特に忙しい傾向があり、約8割が「非常に忙しい/忙しい」と回答。次いで「人事管理」「人事戦略・企画」「人材開発・育成」と続く。

図4.人事業務の忙しさ

人事業務の忙しさ

人事業務の忙しさの理由を尋ねると、「人事部の人手が不足しているから」(60.4%)が最も多い。次いで「突発的な業務が多く発生するから」(50.0%)、「繁忙期に業務量が増加するから」(47.5%)と続く。

図5.人事業務の忙しさの理由

人事業務の忙しさの理由

人事部非管理職層の人事職域における経験意向

「人事戦略・企画」「人材開発・育成」の経験意向が高く、「労務管理」は今後やりたくないが多い

各人事職域の経験意向とこれまでの経験率とをかけあわせて見ると、総合職の人事部非管理職層では経験はないが今後やりたい職域は、「人事戦略・企画」で最も多く18.4%、次いで「組織開発」の15.9%。経験の有無にかかわらず今後やりたい職域は「人事戦略・企画」(42.7%)、「人材開発・育成」(41.6%)が多い。一方、経験はあるが今後やりたくないと考えている職域は、「労務管理」が33.9%と最も多い。

図6.人事職域の経験意向

人事職域の経験意向

各人事職域の経験者の経験意向を見ると、「組織開発」「人事戦略・企画」「人材開発・育成」の順で高い。一方、「労使管理」「人事管理」「労務管理」は低い傾向がある。未経験者の経験意向が最も高いのは、「人事戦略・企画」の28.9%。

図7.人事職域の経験意向率(経験者、未経験者別)

人事職域の経験意向率(経験者、未経験者別)

戦略人事実現企業は専門性が高く、人手不足の人事職域に非管理職の配置が進む

戦略人事*を実現する人事部では、「人事戦略・企画」、「人材開発・育成」、「組織開発」、「HRテック推進/人事データ活用」の「経験があり、今後もやりたい」人事部非管理職が多い傾向。戦略人事実現企業では、これらの専門性が高く人手不足の人事職域に非管理職の配置が進む。

図8.人事職域の経験意向(戦略人事実現度別)

人事職域の経験意向(戦略人事実現度別)

人事部非管理職層のキャリア意向

人事を続けたい57.4%、人事部の管理職になりたい29.4%

人事部の非管理職層に今後のキャリア意向尋ねたところ、「人事を続けたい(人事継続意向)」は57.4%、うち「自社の人事部で働き続けたい」は40.3%。「人事部の管理職になりたい(人事管理職意向)」は29.7%、うち「自社の人事部で管理職になりたい」は24.6%であった。

聴取方法・割付が異なるため単純比較はできないが、全職種の自社継続就業意向率(44.2%)、自社管理職意向率(25.7%)と変わらない水準*。

*パーソル総合研究所「働く1万人の就業・成長定点調査 2022年」の200人以上企業の一般社員・従業員/係長相当の正社員における値

図9.人事部非管理職のキャリア意向

人事部非管理職のキャリア意向

「労務管理」担当者は管理職意向が低い

現在の担当職域別にキャリア意向を見ると、「人事戦略・企画」、「人材開発・育成」担当者は管理職意向が高い。一方、「労務管理」、「人事管理」、「HRテクノロジー推進/人事データ活用」担当者は管理職意向が低く、今後担当したい職域が「労務管理」の場合も、管理職意向が低い傾向がある。

図10.人事部非管理職層のキャリア意向(人事職域別)

人事部非管理職層のキャリア意向(人事職域別)

戦略人事を実現している人事部は自社の人事継続意向と人事管理職意向が高い

戦略人事実現度別にキャリア意向を見ると、戦略人事を実現する人事部「戦略策定から施策実行までを主導する」では、「自社の人事部で働き続けたい」が46.8%と多く、「自社の人事部で管理職になりたい」も35.6%と高い。一方、「定例・定型的な人事労務管理が中心的役割」の人事部では、自社での管理職意向者が19.5%と顕著に低い。

図11.人事部非管理職層のキャリア意向(戦略人事実現度別)

人事部非管理職層のキャリア意向(戦略人事実現度別)

人事部非管理職層の仕事のやりがいタイプ

人事としての専門性に特化する「人事スペシャリスト」「労務スペシャリスト」「従業員目線」、経営・事業目線も強い「定型業務忌避」が各1割ずつ存在

現在どのような業務を実施し、かつやりがいを感じているかによって人事部の非管理職層をタイプに分類したところ、全ての業務でやりがいが高い①「全て高」(15.1%)、全ての業務でやりがいが低い②「全て低」(6.6%)、全ての業務でやりがいが平均的な③「平均」(38.8%)、定型業務以外でやりがいが高い④「定型業務忌避」(9.8%)、経営関与/企画・戦略以外でやりがいが高い⑤「人事スペシャリスト」(9.8%)、専門性発揮と機密情報の扱い、定型業務でやりがいが高い⑥「労務スペシャリスト」(10.3%)、従業員の支援・対応でやりがいが高い⑦「従業員目線」(9.5%)に分かれた。

図12.人事部非管理職層の仕事のやりがいタイプ

人事部非管理職層の仕事のやりがいタイプ

図13.人事部非管理職層の仕事のやりがいタイプの割合

人事部非管理職層の仕事のやりがいタイプの割合

戦略人事実現企業では、人事としての専門性に特化したタイプが少なく、「平均」や「定型業務忌避」が多い傾向

戦略人事実現度別に仕事のやりがいタイプの比率を見ると、戦略人事実現度の高い企業では、「すべて低」、「従業員目線」、「労務スペシャリスト」、「人事スペシャリスト」タイプが少なく、「平均」、「定型業務忌避」タイプが多い。戦略人事実現企業では、人事に閉じた役割だけでなく、経営関与や事業部連携、企画・戦略業務、対人折衝といった幅広い視点を求められる業務にもやりがいを感じるタイプが多いことが分かる。

図14.人事部非管理職層の仕事のやりがいタイプの割合(戦略人事実現度別)

人事部非管理職層の仕事のやりがいタイプの割合(戦略人事実現度別)

分析コメント

戦略人事の実現に向けて、《従業員視点》に加え、《経営視点》《事業視点》を身につけるための育成プログラムやタレントマネジメントが求められる

2021年10月に調査した「人事部大研究」に引き続き、第2弾として2022年6月に「人事部大研究 ―非管理職の意識調査」を実施した。企業の経営層層・人事部管理職層を対象とした前回調査にて実現率が29.7%であった戦略人事の推進に向けた取り組みのポイントを見いだすことを目的に、今回は人事部の非管理職層(一般社員層)を対象にしている。

今回の調査からは、人事部の非管理職層は、従業員に寄り添った視点を意識的に持っている人が多く、人事職域の経験意向や昇進意欲の傾向から、多くが「従業員目線に立った人事企画や人材開発・育成」を好んでいる様子もうかがえた。また、7割の人が人事業務に関する学習を自ら行っているなど勉強熱心な側面も見て取れた。

人事企画や人材開発・育成は重要な人事の役割であり、それらの役割を志向する割合が高いことや、従業員に寄り添う視点、学習行動の実態は素晴らしいものだ。一方で、経営や事業部の視点に対する関心度については、今後の戦略人事の実現において懸念が残る。戦略人事には、《従業員視点》、《事業視点》、《経営視点》の3つの視点が必要だ。特に、そのうちの《経営視点》については、次世代経営人材プールに早々にエントリーされるようなポテンシャルと意欲を持つ人材を、人事部に配置することが欠かせない。人事部としてのタレントマネジメントが求められているといえよう。

また、今後の経験意向が比較的低かった「人事管理」「労務管理」「労使管理」といった人事運用の業務は、人事の基幹となるような難度の高い業務である。ともすれば、定型的な運用に陥りがちなそれらの業務の本質的な意味や価値を理解し、経験することで、事業部門とのハブとなるHRBP(Human Resource Business Partner)*の育成にもつながる。定型的な業務部分はできるだけアウトソースしつつ、《まさに人事》というべき高難度のこれらの業務を人事部の非管理職層が経験できるプログラムを用意することも必要だろう。

*HRBP:戦略人事実現のため、事業部の経営目標を人事観点から支援する役割・組織。

※本調査を引用いただく際は出所を明示してください。
出所の記載例:パーソル総合研究所「人事部大研究-非管理職の意識調査」


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