調査名 | はたらくソーシャル・リスニング/24年4月 |
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調査内容 | ・インターネット上の投稿内容から、労働・組織に関わるトピック・トレンドの現状を理解する。 ・時系列での比較によって雇用関連のトレンドを動態的に把握する。 |
分析対象 |
■データ収集元:日本全国のSNS、ブログ、ニュース、掲示板、レビューサイトなど日本国内10万ドメインのデータソースより投稿データ(サンプリングデータ)を取得。「労働」「人材マネジメント」「組織」「働く」関連のワードが含まれる投稿について分析 |
取得時期 | 2022年度(2022年4月1日-23年3月31日)と2023年度(2023年4月1日-24年3月31日)の投稿データ比較 |
調査方法 | SNS分析ツール Quid Monitor(TDSE株式会社提供)を使用し、パーソル総合研究所分析。 |
実施主体 | 株式会社パーソル総合研究所 |
調査報告書(全文)
「はたらく」に関する旬のトピックスについて、各種SNS・ブログ・掲示板・レビューサイトなどの投稿データ(サンプリングデータ)をリアルタイムに取得。一般生活者の「生の声」を収集し、定期的に分析・発信することで日々変化する労働市場全体の動向理解に資することを目指します。
2023年度(2023年4月1日-24年3月31日)において、2022年度同期からの「はたらく」に関する投稿増加率/減少率が高かったトピックは以下の通り。
*データ取得先:X、YouTube、各種ブログ、掲示板、各種ニュースサイト、レビューサイトなど、日本国内10万ドメインのデータソースより投稿データ(サンプリングデータ)を取得。2023年度の投稿数が10,000以上のトピックに限定。
*2022年度の投稿数に対する2023年度の投稿数の増減割合。
*メンション数:該当キーワードの投稿回数。1回の投稿文中に複数回使われている場合は、複数回分をカウント。
*各11~20位は調査報告書全文PDFを参照。
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会社などの社会的な場において、既婚者が便宜上旧姓を使用すること
「はたらく」に関する投稿増加率上位10ワードの主なポイントは以下の通り。
増加率1位:ガラスの崖
低迷期にある企業が起死回生策として女性をトップなどの幹部に登用する傾向。女性活躍の失敗リスクを高めるものとして注目される。初出は2000年代初頭のミシェル・ライアンとアレックス・ハスラムによる論文。
増加率2位:通勤手当
増税の一環として「通勤手当課税」の案が話題に。山口市での通勤手当の誤支給や、市職員・大学教授などによる通勤手当不正受給などの関連ニュースが相次ぐ。
増加率3位:2024年問題
2024年4月よりドライバーの時間外労働時間が制限されることの影響や企業の対策が広く議論される。
増加率4位:ソーシャルスキル
社会生活を円滑に営むための対人スキル。 オーレリー・シアン・ショウ・シーヌ著『かっても
まけても いいんだよ』(主婦の友社、2022年)がヒット。SST(ソーシャルスキルトレーニング)がさまざまな場面で話題に。
増加率5位:在留資格
政府がIT関連職種「デジタルノマド」を対象に、在留資格「特定活動」を与える新制度発表(2024年2月)。
増加率6位:特定技能
特定技能について4分野追加(自動車運送業、鉄道、林業、木材産業)を閣議決定(2024年3月)。
増加率7位:扶養控除
政府、所得税の扶養控除について高校生は年38万円から年25万円に縮小する方針発表(2023年12月)。
増加率8位:オワハラ
「就活終われハラスメント」の略 。松野博一官房長官「オワハラ許されない」発言(2023年6月)や雑誌記事などで話題に。
増加率9位:人手不足倒産
インバウンド需要の復活により、人手不足倒産が急増。2024年も建設業で増加傾向。
増加率10位:定年後再雇用
高齢化対策として多くの企業がシニア雇用の制度改変を進める。関連して雑誌記事などが話題に。
「はたらく」に関する投稿減少率上位ワードの主なポイントは以下の通り。
減少率1位:産後パパ育休、3位:パワハラ防止法
「産後パパ育休」(2022年10月施行)や、「パワハラ防止法」(大企業2020年6月、中小企業は2022年4月から)など、法改正や制度改定などの直後の時期から減少している。
減少率5位:インフレ手当
「インフレ手当」など、経済状況に合わせた一時的な手当て・支援が後景に退き、ベースアップ・賃上げといった恒常的手当てに議論が移ったものと思われる。
減少率6位:雇調金、7位:職域接種
「雇調金」「職域接種」など新型コロナウイルス感染対策に関するワードも減少。
2023年、メディアでも大きく取り上げられ、社会的な関心が高まる「賃上げ」について分析した。まず、「賃上げ」に言及している投稿数は、2022年度から2023年度で156%増加していた。とりわけ2023年11月、2024年3月に急激な増加が見られた。
次に、2023年度の「賃上げ」に言及している投稿に含まれる他のワードを可視化した。賃上げが「必要」とする政府の方針に触れたうえで、実現方法やそのボトルネックについて議論する投稿が目立った。
また、春闘での大企業の賃上げが話題になる一方で、下請けとなる中小企業への支援や、国民生活に直結する減税を求める声が多い。
[発言傾向と発言例]
言及多数
〇岸田総理、春闘の賃上げを歓迎 ・中小企業の賃上げ支援を重視する発言。
〇新藤経済再生相、テレビ出演。高水準の賃上げ「非常に心強い」と歓迎。
発言例
〇雇用する側として毎年昇給しているが、どれだけ賃金を上げても所得税と社会保険料が上がるので、従業員の手には渡らない。
〇賃上げしているのは下請けにコスト転嫁している大手企業だけ。
〇なぜ政府が賃上げを約束するんだろ。それは企業がやることです。減税すればいい。
近年、雇用を取り巻くトレンドは人事や経営だけではなく、一般就業者や生活者の耳目を集めるようになった。働き方改革、賃上げ、外国人雇用、リスキリングなど、メディアで大きく取り上げられるようなトピックは日々移り変わっている。人材マネジメントや組織運営を時代に適応させていくにあたり、生活者全体の潮流やトレンドを理解することが重要になる。そこで、パーソル総合研究所では、ソーシャルメディアに投稿される「はたらく」に関する一般生活者の「生の声」の収集・分析を実施した。そこから「はたらく」に関連するトレンドを概観し、2023年度の傾向として以下の点が見えた。
1.最も上昇したのは、企業が低迷期に女性を重要役職に登用する傾向を示す「ガラスの崖(1位)」である。また、女性差別の文脈においては無自覚の差別行為である「マイクロアグレッション」(20位*)も話題。人的資本開示の中でも男女賃金格差の開示が義務化される中、遅々として進まない女性活躍において目新しさのあるワードが注目を集めた。
2.「在留資格(5位)」、「特定技能(6位)」など、上昇ワードにおける、外国人雇用関連ワードの多さも特筆すべき点だ。失踪などの問題が多く指摘されてきた技能実習の廃止(育成就労制度の開設) も決定し、これからも外国人雇用を取り巻く環境と雇用の枠組みは大きく変化していくだろう。
3.「定年後再雇用(10位)」や「65歳定年制(11位*)」などシニア雇用関連のワードが上昇ワードの上位に多くランクインした。1970年代前半生まれの団塊ジュニア世代が高齢者になる2040年問題を控え、各企業が定年後の雇用の枠組みを変革しており、今後も引き続き話題が多くなることが予想される。
今後も、現場や生活に近い視点で、労働市場全体の動向理解に資するものとして、定期的な分析と発信を行っていく予定である。
*11~20位は調査報告書全文PDFを参照
※本調査を引用いただく際は出所を明示してください。
出所の記載例:パーソル総合研究所「はたらくソーシャル・リスニング/24年4月」
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