• 調査レポート

人事部大研究

公開日:2022年5月13日(金) 

調査概要

     
調査名 パーソル総合研究所「人事部大研究」
調査内容 ・企業人事部の人員体制や権限、機能、経営参加の実態を明らかにする。
・企業人事部の戦略人事の実態を明らかにする。
・HRBP/事業部人事の実態を明らかにする。
調査対象

全国の就業者 20~64歳男女 従業員規模300名以上企業対象
※事業部管理職は、HRBP/事業部人事設置日系企業、外資系企業で割り付けを実施。人事部管理職、経営層は非実施。

調査対象
調査時期 2021年 10月21-24日
調査方法

調査会社モニターを用いたインターネット定量調査

実施主体 株式会社パーソル総合研究所

※報告書内の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計と内訳の計は必ずしも一致しない場合がある

調査報告書(全文)

調査結果(サマリ)

人事部の実態

人事部の役割は「定例・定型的な人事労務管理が中心的」が約半数

経営層・人事部管理職・事業部管理職に人事部の役割を尋ねたところ「定例・定型的な人事労務管理が中心的」と49.4%が回答。人事戦略・人材ポリシーの「施策実行が中心的」が21.9%、「施策実行までを主導」が28.7%だった(図1)。

職域別に人事部の関与度を見てみると、「新卒採用」は人事部主導が73.3%で最も多い。 一方で、「異動・配置」「要員計画」「経営幹部候補の育成」は、人事部がある程度関与~原則関与しない企業が半数を超えた(図2)。

図1.人事部の役割

人事部の役割

図2.人事関与度(職域別)

人事関与度(職域別)

人事課題の重要度は高いが実行度が低いのは「最適な人員配置」「次世代経営人材の選抜・育成」「人事データの活用」

人事課題のうち「最適な人員配置」「次世代経営人材の選抜・育成」「人事データの活用」は、35%以上の企業で課題となっている。特に「最適な人員配置」は約55%の企業が課題と認識している。しかしいずれの施策を実行できている割合は半数未満と少ない(図3)。

図3.人事施策の実施状況

人事施策の実施状況

人事部の人員不足を感じている企業は約6割

人事部の人員過不足感を尋ねたところ、60.8%の企業が「不足している」と答えた(図4)。

人事部の人員過不足感を職域別に見ると、「人事戦略・企画担当」59.4%、「人材開発・育成担当」56.8%、「HRテクノロジー推進/人事データ活用担当」51.8%で不足しており、専門性の高い人材の不足感が強いことがうかがえる(図5)。

図4.人事部の人員過不足感

人事部の人員過不足感

図5.人事部の人員過不足(職域別)

人事部の人員過不足(職域別)

戦略人事の実現度

戦略人事を実現できていない企業は約4割

自社において「戦略人事」(※)が実現できているかをたずねたところ、29.7%の人が「肯定」的な回答、41.6%の人は「否定」的な回答という結果となった(図6)。

※戦略人事(戦略的人的資源管理):本調査では、「経営資源の一つである『ヒト』の価値を最大化するために、経営戦略と連動した人事戦略を策定・実行すること」を指す。

図6.戦略人事の実現度

戦略人事の実現度(職域別)

戦略人事の主要要素の実現状況

経営層・人事部管理職の回答から、「戦略人事の主要な要素」として上位に挙がった要素のうち、実現度の高いものは「経営戦略に紐づいた人事」(「人事部員が事業戦略を理解」「人事部のトップが経営会議に常時参加」など)や、経営層/事業部との「社内連携」であった。

一方、実現度が低いものは「次世代人材の発掘/育成」や「事業部の人的資源の調整/配分」への深い関与、「人事ポリシーの明確な打ち出し」「従業員の前向きなキャリア形成のための施策実行」であった。また、「データドリブン人事」は、重要度・実現度ともに低くなっている(図7)。

図7.戦略人事の主要要素の実現状況

戦略人事の主要要素の実現状況

人事データの一元管理と活用をしている企業は約4割に満たない

戦略人事の実現を促進する要因を分析すると、①人事データ活用、②人事部の経営関与、 ③人事戦略・企画担当/人材開発・育成担当/組織開発担当の人材確保、④人事業務の専門性が高い人材と事業経験のある人材両方の確保、⑤オペレーション業務のアウトソースの5点が浮かび上がった。

しかし、人事データ活用の実態を見ると、戦略人事の実現に必要な「従業員のキャリア志向」や「スキル・強み」といった人事データが一元管理され、活用されている企業は全体の4割に満たない(図8)。

図8.人事データの活用実態

人事データの活用実態

HRBP/事業部人事の実態

HRBP設置率は11.3%、事業部人事設置率は27.5%

戦略人事の実現・推進に向けてその役割が注目されている「HRBP(HRビジネスパートナー)」と「事業部人事」の設置率を見たところ、HRBPの設置率は11.3%であり、事業部人事の設置率は27.5%であった(図9)。

※HRBP:戦略人事実現のため、事業部の経営目標を人事観点から支援する役割・組織。事業部人事:各事業部の人事業務を担う組織を指すが、本調査ではHRBPを含まない定義としている。

図9.HRBP/事業部人事設置率

HRBP/事業部人事設置率

組織名称と実態に乖離

自社におけるHRBPや事業部人事の役割を聞いたところ、「HRBP」を設置している企業であっても、20.0%の企業ではHRBPが管理的な業務のみを担っていた。一方で、組織名称が「事業部人事」であっても、65.1%の企業では事業部人事が組織・人事構想を担っており、組織名称と実態に乖離が見られた(図10)。

図10.HRBP/事業部人事の役割

HRBP/事業部人事の役割

HRBPの設置は戦略人事の実現度に影響

戦略人事の実現度を低・中・高の3群に分け、それぞれHRBP/事業部人事の設置率や機能を見たところ、戦略人事実現度が高い企業ほど、HRBP設置率が高く、またHRBP/事業部人事が組織・人事構想を検討している傾向が強かった(図11)。

図11.HRBP/事業部人事と戦略人事の実現度の関係

HRBP/事業部人事と戦略人事の実現度の関係

戦略人事の実現に影響するHRBPの役割

HRBP/事業部人事が機能することで、「次世代人材の発掘・育成」「事業部の人的資源の調整・配分」「従業員への支援」といった戦略人事の実現度が高い傾向が見られた。中でも「事業部の組織活性化支援」「事業部の社員との面談」「事業部の社員のキャリア支援」は戦略人事の実現度への影響度が強く、重要な役割を果たしていることが分かった(図12)。

図12.戦略人事の実現に影響するHRBPの役割

戦略人事の実現に影響するHRBPの役割

分析コメント

戦略人事の実現に向けた人事部の検証と再構築への取り組みを

1990年代にその概念が登場した「戦略人事」。近年になって、グローバル化の加速、コロナ禍による働き方の変化、SDGsによる企業の健全なる持続性、多様性が問われる過程で日本型雇用の限界が露呈し、ジョブ型雇用転換への波が押し寄せてきたことで、再び注目が集まっている。

しかし、今回の調査結果から、「戦略人事」の実現はまだ道半ばである実態が見えた。また、戦略人事を推し進める上で着目すべき点としては、次の3点が挙げられる。

【1】本社人事による「選択と集中」
【2】戦略人事に欠かせないHRBP/事業部人事の再定義からはじめる
【3】戦略人事のインフラとして人事データの活用を進める

【1】本社人事による「選択と集中」

重要であると認識されながらも、その実行が伴っていない人事施策が散見された。人員や時間といったリソースに限りがあるなかで戦略人事を推し進めていくためには、重要施策への選択と、それを担う部署(本社人事またはHRBP/事業部人事)への責任と権限の集中が決め手となる。

【2】戦略人事に欠かせないHRBP/事業部人事の再定義からはじめる

戦略人事の実現に向けて、HRBPや事業部人事といった部門人事の存在が、本社人事と同様に不可欠であることが調査から明らかになった。一方で、HRBPの存在・役割についての人事部管理職の認知・理解度は高いとはいえない結果であった。戦略人事をさらに推し進めていくには、改めて部門人事(HRBP/事業部人事)と本社人事の位置づけ、役割・機能を再定義し、経営と事業に資する人事としての責任と権限を明確にすることが必要だろう。

【3】戦略人事のインフラとして人事データの活用を進める

調査結果では、人事情報の一元管理ができている企業ほど、戦略人事が実現できている傾向が見られた。《経験・勘・記憶》のOld3Kによる「なんとなく人事」から、《客観・傾向・記録》といったNew3Kによって「より確かな人事」へと変貌していくことが戦略人事実現への確実な道である。多様な雇用形態、働き方の変化による人事業務の複雑性に対処していくためにも、人事データやタレントマネジメントシステムは、アジリティとサステナビリティ強化に必要不可欠なインフラになり得るだろう。

※本調査を引用いただく際は出所を明示してください。
出所の記載例:パーソル総合研究所「人事部大研究」

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