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人的資本情報開示に関する調査【第2回】
~求職者が関心を寄せる人的資本情報とは~

公開日:2022年10月5日(水) 

調査概要

調査名 人的資本情報開示に関する調査【第2回】
~求職者が関心を寄せる人的資本情報とは~
調査内容 ・転職/就職先の検討にあたり重視する要素
・転職/就職先の検討に使用する媒体・ツール
・人的資本情報開示項目への関心度
調査対象 ①1年以内の転職を検討している社会人(正社員) n=4100
調査対象

②2024年春に就職予定の学生(大学生・大学院生) 男女均等割付 n=500
調査時期 2022年 8月10日-16日
調査方法 調査会社モニターを用いたインターネット定量調査
調査実施主体 株式会社パーソル総合研究所

※報告書内の構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、個々の集計値の合計は必ずしも100%とならない場合がある。

調査報告書(全文)

Index

  1. 1年以内の転職を検討している社会人(正社員)が関心を寄せる人的資本情報
  2. 2024年春に就職予定の学生が関心を寄せる人的資本情報
  3. 人的資本情報への関心の高まりは、自社の描く経営戦略や取り組み姿勢を社内外に伝える好機。情報の受け手を想定し、上手に伝えたい

調査結果(サマリ)

1年以内の転職を検討している社会人(正社員)が関心を寄せる人的資本情報

優秀人材は転職先の検討にあたり「裁量権がある」を相対的に重視

1年以内の転職を検討している社会人(正社員)が、転職先の検討にあたり重視している上位3項目は「人間関係が良い」(88.3%)、「給料が良い」(87.5%)、「ワークライフバランスを保てる」(85.3%)であった。求職者としての現実的な一面がうかがえる。

一方で、優秀人材*に着目すると、社会人全体に比べて「裁量権がある」(52.5%、差分15.9pt)、「新しいことに挑戦できる」(62.3%、差分11.9pt)、「会社のビジョンやパーパスに共感できる」(72.7%、差分9.7pt)、「フレックスタイム制など働く時間を選べる」(59.6%、差分8.5pt)、「成長できる(73.6、差分7.9pt)」ことを相対的に重視している。

*現在勤めている会社での評価が高くかつ昇格のスピードも速い人(自己評価)

図1.転職先の検討にあたり重視する要素(社会人全体・優秀人材比較)

転職先の検討にあたり重視する要素(社会人全体・優秀人材比較)

優秀人材は転職先の検討に「有価証券報告や決算書」「統合報告書やサステナビリティレポート」を情報源とする比率が高い

転職の検討に使用する主な情報源は、「転職サイトの情報」(61.3%)、「会社のホームページ」(55.5%)、「転職/採用エージェントからの情報」(44.9%)だった。

優秀人材に着目すると、社会人全体と比較して「会社のSNS」(24.9%、差分7.1pt)、「有価証券報告や決算書」(19.0%、差分6.7pt)、「統合報告書やサステナビリティレポート」(12.5%、差分4.9pt)、を情報源とする比率が高い傾向が確認された。

図2.転職先の検討に使用する媒体・ツール(社会人全体・優秀人材比較)

転職先の検討に使用する媒体・ツール(社会人全体・優秀人材比較)

優秀人材は「リーダーシップ」「サクセッション(後継者プラン)」など「価値向上」領域の人的資本情報開示項目に関心が高い

「人的資本可視化指針」(内閣官房,2022年8月)が開示事項例として示す19項目は「価値向上」と「リスクマネジメント」の2つの観点で捉えられているが、転職を検討している社会人は、「福利厚生」(88.6%)、「賃金の公平性」(84.8%)、「精神的健康」(79.1%)、「コンプライアンス/倫理」(78.4%)、「安全」(78.4%)などの「リスクマネジメント」領域の項目に関心が高い傾向が確認された。

優秀人材は、社会人全体に比べて「リーダーシップ」(69.4%、差分11.5pt)、「サクセッション(後継者プラン)」(57.6%、差分6.2pt)、「採用」(70.3%、差分4.9pt)、「エンゲージメント」(75.7%、差分4.8pt)、「育成」(74.2%、差分4.3pt)に関心が高かった。「価値向上」と「リスクマネジメント」という観点では、優秀人材は、「価値向上」領域の項目に関心が高い傾向がうかがえる。

図3.人的資本情報開示項目への関心度(社会人全体・優秀人材比較)

人的資本情報開示項目への関心度(社会人全体・優秀人材比較)

男性は「リーダーシップ」、女性は「差別のなさ」への関心が高い

優秀人材を性別で比較すると、男性は「リーダーシップ」(75.3%、差分12.7pt)、「サクセッション(後継者プラン)」(62.6%、差分11.0pt)、「採用」(72.5%、差分4.8pt)、が、女性は「差別のなさ」(81.3%、差分15.9pt)、「ダイバーシティ」(66.5%、差分8.8pt)、「福利厚生」(89.7%、差分7.8pt)、への関心が相対的に高い傾向が確認された。

図4.人的資本情報開示項目への関心度(優秀人材性別)

人的資本情報開示項目への関心度(優秀人材性別)

2024年春に就職予定の学生が関心を寄せる人的資本情報

学生は就職先の検討に「社会貢献に積極的」「環境に配慮している」を重視する比率が高い

2024年春に就職予定の学生が、就職先の検討にあたり重視している上位3項目は「人間関係が良い」(89.8%)、「給料が良い」(86.8%)、「ワークライフバランスを保てる」(86.2%)であった。この上位3項目は転職を検討している社会人と同じだった。

学生の回答を社会人と比較すると、学生は「社会貢献に積極的」(64.0%、差分16.7pt)、「環境に配慮している」(54.6%、差分9.6pt)、の比率が高く、ESGのE(環境)とS(社会)を重視する傾向がうかがえる。また「成長できる」(76.4%、差分10.7pt)、「人材育成に積極的」(77.2%、差分9.0pt)、「強みや専門性を活かせる」(73.4%、差分8.2pt)、も高い傾向が確認された。人的資本への投資に積極的な企業姿勢は、学生へのアピールにもつながることが示唆される。

図5.就職先の検討にあたり重視する要素(学生・社会人比較)

就職先の検討にあたり重視する要素(学生・社会人比較)

学生は「育児休暇」「採用」などの人的資本情報開示項目に関心が高い

「人的資本可視化指針」における19項目中最も関心が高かったのは、「福利厚生」で90.2%、次いで「賃金の公正性」(85.0%)、「安全」(82.2%)、「精神的健康」(81.8%)、「採用」(80.0%)であった。

学生の回答を社会人と比較すると、学生は「育児休暇」(77.8%、差分20.3pt)、「採用」(80.0%、差分14.6pt)、「組合との関係」(63.0%、差分11.9pt)、「児童労働/強制労働」(68.4%、差分11.6pt)、「育成」(79.8%、差分9.9pt)、への関心が高い傾向が確認された。

図6.人的資本情報の開示項目への関心度(学生・社会人比較)

人的資本情報の開示項目への関心度(学生・社会人比較)

男性学生は「サクセッション(後継者プラン)」、女性学生は「ダイバーシティ」のへの関心が高い

学生の回答を性別で比較すると、男性は「サクセッション(後継者プラン)」(61.6%、差分9.2pt)、「リーダーシップ」(65.6%、差分3.6pt)、「エンゲージメント」(74.8%、差分3.2pt)、女性は「ダイバーシティ」(76.4%、差分16.8pt)、「差別のなさ」(86.0%、差分16.0pt)、「育児休暇」(83.6%、差分11.6pt)への関心が相対的に高かった。

図7.人的資本情報の開示項目への関心度(学生性別)

人的資本情報の開示項目への関心度(学生性別)

分析コメント

人的資本情報への関心の高まりは、自社の描く経営戦略や取り組み姿勢を社内外に伝える好機。情報の受け手を想定し、上手に伝えたい

内閣官房から「人的資本可視化指針」が発表され、ますます人的資本情報の開示に向けた動きが本格化している。

これまで情報開示の議論は、主に投資家の要求を軸に語られてきた感がある。しかし、企業のステークホルダーは投資家にとどまらない。多様なステークホルダーを念頭に、誰にどのような開示を行っていくかという視点が求められる。

そこで、本調査は転職希望者と学生を対象に、企業が開示する人的資本情報のどこに関心が高く、どのように情報を受け取っているのかを調査した。その結果、企業が情報を開示していく場合、次の2点のポイントが見えてきた。

1. 「転職検討中の社会人における優秀人材」は、企業価値向上の観点に関心が高い

優秀人材は、「リーダーシップ」や「サクセッション」「採用」「エンゲージメント」「育成」といった企業価値向上の観点への関心が高かった。優秀人材へのアピールという意味では、それら開示事項および関連する取り組みを示すとともに、価値向上につながる道筋を示すことが肝要であろう。

2. 「学生」は、企業選びの際、社会貢献や環境への配慮を重視する傾向

学生は社会人に比べて、社会貢献や環境への配慮を重視して企業選びをする傾向が確認された。一定の社会人経験がある群よりも、社会課題への意識が高く理想を追い求める姿勢の強さが表れていると考えられる。学生へのアピールとしては、社会的課題などに企業としてどのように向き合っているか、入社後にどのように関わる機会があるかなどを企業のホームページなどで分かりやすく伝えることが肝要であろう。

本調査は転職希望者と学生を対象としたものであるが、今後、企業が多様なステークホルダーに対する情報 開示を戦略的に行っていく上での参考資料となれば幸いである。

※本調査を引用いただく際は出所を明示してください。
出所の記載例:パーソル総合研究所「人的資本情報開示に関する調査 【第2回】」


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