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ワーキングマザー調査

公開日:2019年6月27日(木) 

調査概要

調査名 ワーキングマザー調査
調査目的 ワーキングマザー像とワーキングマザーの課題を定量的に把握し、時間的制約があるなかでもワーキングマザーが正社員として就業を継続して成果を出すための道筋を明らかにする
調査対象 有効回収数 2100名
・小学生以下の子どもがいる正社員女性 900名
・小学生以下の子どもがいる正社員を辞めた女性 300名
・小学生以下の子どもがいる正社員女性の配偶者(正社員男性) 300名
・小学生以下の子どもがいる正社員を辞めた女性の配偶者(正社員男性) 200名
・上司(小学生以下の子どもがいる正社員女性部下がいる係長・主任相当以上) 200名
・同僚(小学生以下の子どもがいる正社員女性が部署内にいて業務上のかかわりがある一般社員) 200名

※対象者条件、および、サンプルの内訳詳細は調査報告書PDFをご覧ください。

調査時期 2019年1月9日~2019年1月17日
調査方法 調査モニターを用いたインターネット定量調査
調査実施主体 株式会社パーソル総合研究所

調査報告書(全文)

調査結果(サマリ)

離職編

<出産後の就業継続の意向>

出産前の思いを振り返ってもらうと、育児期に離職した正社員女性の約6割が、出産後も働き続けたいと思っていたことが明らかとなった。出産を機に辞めたいと思っていた専業主婦志向は2割のみ。
こうした意向を踏まえると、企業の対応次第で女性の就業継続率をさらに高めることができると考えられる。

図1.出産前の就業継続意向

出産前の就業継続意向

※ベース:小学生以下の子供がいる正社員を辞めた女性(300名)
※出産前を振り返ってもらい、「できれば出産を機に退職し、その後は仕事を持ちたくなかった」かを尋ねたところ、①そう思う=6%、②ややそう思う=14%、③どちらともいえない=20.7%、④あまりそう思わない=29.3%、⑤そう思わない=30%だった。円グラフの「出産後も働き続けたかった」は④⑤の回答の合計。「辞めたかった(専業主婦志向)」は①②の合計。

<離職した後の就業状況>

正社員を辞めた後の状況をみると、小学生以下の子どもを持つ人の47%がアルバイト・パートとして働いている。
企業が柔軟な働き方を認めることで、辞めずに就業継続していた可能性がある。

<離職した理由>

正社員を辞めた理由をみると、辞めたときの子どもの年齢に応じて特徴がみられる。

子どもが3歳未満だったときの離職では、家族・親族の家事育児サポートが不十分とする割合が高い。3歳未満の子どもを持つ女性に対して夫の家事育児時間を聞くと、就業継続できている女性の場合で2時間10分、正社員を辞めてしまった女性の場合で1時間16分(離職時)と差が生じている。
夫が家事育児に時間を割けるように、企業側は男女ともに一時的に年収を下げて負荷を減らしてもキャリアコースを歩むことができるなど、共働き夫婦が共同で家事育児を担うことを念頭においた選択肢を用意することが望ましい。

子どもが3~6歳(未就学児)だったときの離職では、職場での居場所感のなさ(職場の理解不足や迷惑をかけているので肩身が狭いなど)を理由とする割合が高い。
企業としては、仕事と家庭の両立に対する上司や同僚の理解を促進する必要がある。また、企業は不可欠な人材としての役割をワーキングマザーに与え、その働きぶりを評価することで、「自分は職場で役に立っている、居場所がある」と感じられるように心掛けるべきである。

子どもが小学生だったときの離職では、子どもへのケア(精神的なケアや教育など)を理由とする割合が高い。企業としては、子どもがある程度成長してもケアのための時間がかかることを理解すべきである。そのうえで、ワーキングマザーそれぞれの事情に応じて対応することが望ましい(セーフティネットとして、小学生以上でも短時間勤務できる選択肢を用意するなど)

<ワークライフバランスと離職の関係>

「子どもがいて正社員として働き続けている女性」で、ワークライフバランスがとれていると回答したのは49.7%。一方、「子どもがいて正社員を辞めた女性」で、離職した職場でワークライフバランスがとれていたと回答したのは26.7%。23.0ポイントの差があり、ワークライフバランスは就業継続に影響する。ワークライフバランスには「仕事と家庭の両立に対する理解」「適切な仕事量」「裁量性」が影響しており、企業はこれらに配慮すべきである。

<仕事量と離職>

<ワークライフバランスがとれていないワーキングマザーの約5割が、上司に仕事量を調整して欲しいとの希望を伝えていない。
仕事を抱え込み、相談せずに辞めてしまう可能性がある。
上司が適切なコミュニケーションがとれるような関係性を築き、個々の状況にあわせて仕事量を調整していくことが望まれる。

活躍編

<管理職の意向の変化>

管理職として働きたいワーキングマザーの割合は一時的に下がるが、子どもの年齢とともに回復することが明らかとなった。管理職として働きたい人の割合は、出産前で19.6%だが、3歳未満の子どもがいるときで7.7%に低下する。しかし、その後、3歳以上の未就学児の子どもがいるときで10.0%、小学生の子どもがいるときで17.3%と上昇していく。

さらに、現在「小学生の子どもを持つ正社員女性」に対して、子どもがもっと成長した将来の段階について考えてもらうと、管理職として働きたいと希望した人は、5年後の段階(子どもが中学生~高校生のとき)で20.0%、10年後の段階(子どもが高校生~大学生のとき)で23.7%だった。

ワーキングマザーの中には、簡易的・補佐的な職務しか与えられず昇進・昇格から遠ざかる「マミートラック」にのせられるケースもみられる。企業としては、ワーキングマザーが管理職として働きたい気持ちは一時的に封印されているだけであることを踏まえ、育児期においてもその人の能力やスキルにふさわしい職務と適切な評価を与え、管理職候補として育成する姿勢が求められる。

図2.管理職として働きたい人の割合

管理職として働きたい人の割合

※ベース:
*1 小学生以下の子どもがいる正社員女性(900名)下記*2~4の女性が出産前を振り返ったときの回答を合計
*2 末子が3歳未満正社員女性(300名)
*3 末子が3歳以上未就学児の正社員女性(300名)
*4 末子が小学生の正社員女性(300名)
※「企業や組織のなかで管理職として働きたい」「企業や組織のなかで専門職として働きたい」「企業や組織のなかでサポート業務につきたい」「起業したい」「フリーランスとして企業や組織に所属せずに働きたい」「パートやアルバイトとして働きたい」「仕事を辞めたい/働きたくない」「その他」の選択肢の中から各時期の理想に近いものを1つずつ選択してもらった。

<育休中にやって良かったランキング>

育休中の過ごし方で復職後に役立ったことベスト5は、1位=復職後の分担について夫婦の話し合い(67.6%)、2位=働く意義の明確化(66.3%)、3位=会社の人との交流(63.9%)、4位=キャリアの棚卸し(62.2%)、5位=ママ友づくり(57.9%)

ビジネス書の読書や資格取得はベスト5に入らない結果となった。1位の夫婦の話し合いは、復職後に夫に家事育児に参画してもらう協力体制を作っておくことで、ワーキングマザーが仕事と子育てを両立しやすくなるため、最も役立ったと感じたのだと考えられる。子どもが3歳になるまでは家族・親族の家事育児サポートが不十分であることによる離職が多く(離職編参照)、夫の協力の影響は大きいと思われる。また、2位の働く意義の明確化は、復職後に多忙な日々を過ごす中でもモチベーション維持につながるため、役立ったと感じたのだと考えられる。

企業の施策としては、産休・育休に入る女性に対して、復職後の分担について夫婦で話し合うなど、ランキング上位の過ごし方を推奨することが考えられる。また、育休中でも職場の人と交流できる機会を設けたり、女性社員の夫の協力が復職後に得られるように配偶者同伴セミナーを開催するなどの啓蒙を行ったりすることが考えられる。

<職場が変わらないと思う無力感>

自分が声をあげても職場は変わらないと思う"職場内対話無力感"を抱えているワーキングマザーは約4割。
企業としては、ワーキングマザーに活躍してもらうために、「経営に社員の意見を反映させる」「上司が個々のスキル・能力を活かせるような仕事を与える」など、無力感を醸成しない職場づくりを心掛けるべきである。
また、ワーキングマザー自身による「職場で個人的な願望を伝えるのはよくない」「子どもがいたらやりたい仕事をするのは無理だと思う」などの固定観念も"職場内対話無力感"に影響している。
ワーキングマザーが思い込みで諦めてしまわないように、企業としては、社員1人ひとりと対話しながら組織に貢献できる働き方や仕事内容を考えるという柔軟な姿勢を明確に示し、まず相談することを促していくことが重要である。

<マネジメントの方法>

ワーキングマザーの活躍にとって、職責・職務に応じた期待をかけること、能力・スキルが発揮できていること、時間あたりのアウトプットで評価されていることが重要であるが、いずれも十分に実現されていない。これはワーキングマザーに限らず、男性も同様にそのようなマネジメントはなされていない。時間あたりのアウトプットで評価されている人は、時短を取得しているワーキングマザーで24.4%、時短を取得していないワーキングマザーで15.4%にとどまる。

※本調査を引用いただく際は出所を明示してください。
出所の記載例:パーソル総合研究所「ワーキングマザー調査」


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