公開日:2020年10月30日(金)
調査名 | 人材マネジメントにおけるデジタル活用に関する調査2020 |
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調査内容 | 人材マネジメントにおけるデジタル活用実態と課題を定点的に把握し、導入・活用のポイントを整理する。 |
調査対象 | 人事・総務・経営企画担当者 n=800 ※自社の人材マネジメントにおけるデジタル活用動向を把握している人 (自社で活用していないことを把握しているケースも含む) ・従業員規模:従業員100名以上 / 業種:第一次産業は除く ・担当職務:給与・社会保険・労働法規のみ担当者は除く ・資本:内資・外資不問 |
調査時期 | 2020年7月28日 - 7月30日 |
調査方法 | 調査モニターを用いたインターネット定量調査 |
調査実施主体 | 株式会社パーソル総合研究所 |
調査報告書(全文)
① 75.5%の企業が人材マネジメントにおけるデジタル活用を推進すべきと考えている(図1)。
図1.人材マネジメントにおけるデジタル活用意向
② 経営トップが人材マネジメントにおけるデジタル活用に積極的に関与している企業は42.8%。十分な予算が確保されているのは31.3%。人材データの活用推進体制が整っているのは29.0%。従業員規模が大きいほど、デジタル活用に前向き(図2)。
また、経営トップの積極的な関与や人材データ活用推進体制の整備が行われている企業ほど、人材マネジメントにおけるデータ活用で成果が出ているとの認識が高いが、両者がともに行われている企業は22.4%にとどまった。
図2.人材マネジメントにおけるデジタル活用体制(全体、および、従業員規模別)
③ 人材マネジメントにおいてデジタル活用している領域をみると、1位は「長時間労働是正」で30.3%、2位は「時間や場所に縛られない働き方の推進」で26.9%と、働き方改革に関わる活用が上位となっている(図3)。
「次世代リーダーの選抜・育成」は、デジタル活用で実現したいこととして挙げた企業は29.5%と比較的高い割合であったが、「次世代リーダーの選抜・育成」のためにデジタル活用している企業は15.1%にとどまり、期待と実際の取り組みにギャップがあることがうかがえる。
図3.人材マネジメントにおいてデジタル活用していること
④ 「時間や場所に縛られない働き方推進」「長時間労働是正」といった働き方改革関連、採用や人材開発における「コスト/工数削減」においてデジタル活用に取り組んでいる企業では、6割弱と高い割合で成果を認識している(図4)。企業としては、こうした成果を認識しやすいところからデジタル活用を進めていく選択肢も取り得る。
図4.人材マネジメントにおけるデジタル活用率×成果認識率
⑤ デジタルツールの導入率をみると、半数以上の企業が導入しているのは1位の「健康管理」(53.6%)だけとなった。その他のツールの導入率が伸びる余地は大きいと考えられる(図5)。
図5.人材マネジメントにおけるデジタルツール導入率
⑥ デジタルツールについて、1年以内に導入・強化された割合をみると、1位は「採用面接」で73.0%、2位は従業員間で称賛・承認し合う「ソーシャルレコグニション」で68.0%であった(図6)。コロナ渦の現在において、採用面接ツールの導入・強化が進められていることがうかがえる。
図6.導入済企業のうち、1年内に導入・強化した企業の割合
⑦ 人材に関するデータを分析している企業の割合は41.0%。しかし、分析していて意思決定に使っている企業の割合は16.9%にとどまり、分析しても意思決定に活かされていない実態が明らかとなった(図7)。
図7.人材に関するデータの分析実施状況
⑧ 分析していて意思決定に使っている「デジタル活用先進企業」では、データの一元管理が進んでおり、候補者の定着・活躍可能性の予測や採用選考結果のレコメンドといった予測や最適化レベルの高度な分析まで手掛けている(図8)。「デジタル活用先進企業」のうち、こうした予測や最適化を行っているのは、採用、配置、人材開発、リテンション、コンディション管理のいずれの領域においても3~4割程度。
一方で、さらなる活用にあたっては、「組織間の断絶」が課題として認識されている。人材マネジメントにおけるデジタル活用の高度化を実現するためには、組織間の連携が重要であるといえる。
図8.企業の人材データ活用の4フェーズ
⑨ 人材マネジメントにおけるデジタル活用で成果につながる要因を見てみると、「経営トップの積極的関与」と「人材データの活用推進体制の整備」がともに影響していた。経営トップの積極的な関与だけでなく人材データ活用推進体制が整備されていると人材マネジメントにおけるデータ活用で成果が出ているとの認識が高く、成果が得られたと認識している人材マネジメントの領域数は2倍以上であった(図9)。
図9.成果創出水準値(成果が得られたと認識している人材マネジメントの領域数)
今回の調査結果より、人材マネジメントにおけるデジタル活用を成果につなげるためには、経営トップの積極的な関与に加えて、人材に関する「データ」の活用推進体制整備がカギであることが示された。
人材に関するデータの活用には、4つのフェーズがある(図2)。
分析したいと思っていない段階<フェーズ1>、分析したいという意向はあるが分析に至っていない段階<フェーズ2>、分析に取り組んでいるものの意思決定に使えていない段階<フェーズ3>、そして、分析していて意思決定に使っている段階<フェーズ4>である。人材データの分析をする以上、目指すところは意思決定への活用<フェーズ4>である。
人材データ活用は、マーケティングデータ分析における売上予測のように売上等のデータが最初から整備されているわけではなく、予測が当たれば成功といった明確な目的があらかじめ設定されているわけでもない。
今回の調査結果では、分析開始前の段階では分析人材の確保や分析リテラシー不足が主な課題として認識されており、目的の不明瞭さは分析実施企業の特徴的な課題として表出していた。このことから、分析開始前後では、ともすると、明確な目的のないまま分析自体が目的化してしまっている可能性もうかがわれる。分析を意思決定に活かしている企業の特徴を踏まえると、分析を意思決定に活かすには、自社の課題に応じたデータ活用目的を明確にし、その上で、目的に応じたデータの一元管理を推進するとともに高度な手法も含めた適切な分析の選択をおこない、統合的・複合的なデータ活用に取り組むべきである。
さらに意思決定への活用を進める上では、組織間の断絶も課題になっていた。現場からのデータ収集や施策実行上の組織展開にあたって組織間連携も不可欠であるため、スモールスタートによる成功体験を積み重ねながら、トップの積極的な関与やデータ活用の推進体制の構築を行い、強い力で組織を動かしていくことが必要であるといえる。
※本調査を引用いただく際は出所を明示してください。
出所の記載例:パーソル総合研究所「人材マネジメントにおけるデジタル活用に関する調査2020」
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