公開日:2023年10月26日(木)
調査名 | 第三回 副業の実態・意識に関する定量調査 |
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調査内容 | 企業と正社員個人における副業の実態を把握するとともに、 企業と個人の双方にとって実りある副業を実現するためのポイントを明らかにする。 |
調査対象 | ■企業調査 勤務先従業員人数10人以上、年齢70歳未満 男女 経営層・人事(主任・リーダー以上)で人事管理(制度設計・運用等)について把握している者 n=1,500 ■個人調査 【スクリーニング調査対象者】 勤務先従業員人数10人以上 正社員20-59歳 男女 n=61,780 ※調査結果の数値は令和2年国勢調査の正規の職員・従業員性年代の構成比に合わせてウェイトバック集計実施 【本調査対象者】 上記スクリーニング対象者条件に加え、 ① 副業実施者 n=2,000 ※現金収入を伴う仕事を現在行っている&資産運用でない&直近1ヵ月間での稼働がある ② 副業意向者 n=1,170 ※副業は現在行っていない & 副業への意向がある ③ (副業者と接する) 本業先メンバー n=1,000 ※副業は現在行っていない&副業を行っている同勤務先の社員が身近にいる ④ (副業者と接する) 副業先メンバー n=1,000 ※副業は現在行っていない&副業で来ている社員が身近にいる |
調査時期 | 2023年7月26日-8月1日 |
調査方法 | 調査モニターを用いたインターネット定量調査 |
調査実施主体 | 株式会社パーソル総合研究所 |
※報告書内の構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、個々の集計値の合計は必ずしも100%とならない場合がある。
調査報告書(全文)
企業の副業容認と受入れの実態を見たところ、企業の副業容認率(全面容認+条件付き容認の合計)は60.9%で、21年調査より5.9pt上昇。18年の調査以降、上昇トレンド。一方で、副業者(他社で雇用されている人材)の受入れ率は24.4%で、21年調査から変動なし。副業容認率とのギャップが目立つ。
次に、正社員個人の副業実施と副業意向を見ると、現在副業を実施している正社員は7.0%で、21年調査より2.1pt減少。現在副業を行っていない正社員(非副業)のうち、副業意向がある層(行いたいと思う+やや行いたいと思う)は40.8%で、21年調査から変動なし。副業実施率と副業意向率とのギャップは30pt以上あり開いたままであった。
企業の副業受入れの理由は、「迅速に人材確保が可能だから」が25.4%で最も高く、次いで「多様な人材確保が可能だから(21.3%)」「高度なスキルをもった人材確保が可能だから(18.3%)」が続く。図示はしていないが、62.0%の企業が「人材不足」と回答。21年調査から6.8pt増加している。
副業からの学びによって副業実施者にもたらされた効果(メリット)を確認したところ、何らかの効果があった割合は7割弱。「視野の拡大(30.4%)」が最も高く、次いで「業務で役立つスキル・知識の獲得(19.0%)」「モチベーション向上(18.8%)」が続く。
副業実施者が、副業によって最も高まった就業能力は、「傾聴力」で48.3%。次いで「主体性(47.4%)」、「発信力(45.8%)」と続く。
これらを含む労働市場における能力評価、能力開発目標の基準となる実践的な就業能力15項目の平均値を「エンプロイアビリティの向上」と定義して分析したところ、エンプロイアビリティの向上は、本業先での「継続就業意向」「上昇意向」にプラスの影響を与えていることが分かった。なお、他企業への「転職意向」には有意な影響を与えていなかった。
副業者と接することで何らかの効果があった《副業先メンバー》は65.6%。「視野の拡大(17.1%)」 「社内のコミュニケーション活性化(13.1%)」 「モチベーション向上(11.9%)」が高い。他方、副業者と接することで何らかの効果があった《本業先メンバー》は61.7%。「視野の拡大(25.1%)」 「経験がないことへのチャレンジ意欲向上(14.7%)」 「変化を前向きに捉えること(14.3%)」が高い。
副業による効果があるものの、企業による副業受入れ率や個人の副業実施率が上がっていない現状を踏まえ、企業と個人の双方にとって実りある副業を推進するにあたって、副業前・副業開始時・副業中における課題とその対策を探った。
副業意向はあるものの副業を行っていない副業意向(求職)者には、副業求人に対し、「その求人票に応募することを控えようと思う(30.4%)」、「その求人票に自分が応募する必要はないと感じる(31.7%)」など、副業求人への応募を控える意識があり、副業実施者よりもその傾向が強い(図)。
図示はしていないが、「応募控え」意識の背景には、副業求人における「柔軟性のなさ(条件が限定的すぎる)」「情報の不明瞭さ」や、「役割・権限の重さ」「経験・スキルの高さ」といった要素が潜むことが分かった。
副業求人の記載事項については、「副業先で働く上で大変なこと・デメリット」「責任範囲」「職場の雰囲気・組織風土」「副業人材を求める背景・理由」「働き方の柔軟性」の情報は、副業求人への記載率が低いものの、不足を感じている副業求職者が多いため、重要な記載事項と考えられる。
副業者として採用された後、副業先に対して事前の期待やイメージとの齟齬(リアリティ・ショック)があった割合は3割弱。
リアリティ・ショックには、副業開始前の「副業選択の納得感」の度合いが影響している。納得感に対しては、副業採用前の認識合わせ時の「内容理解」「内容共感」「相性理解」がプラスの影響を与えている。
企業側からのネガティブな情報も含めた「両面提示」のコミュニケーションが、「内容理解」「内容共感」「相性理解」にプラスの影響を与えている。しかし、採用前に「企業が抱える課題・問題点」「働いてもらう上で大変なこと・デメリット」などのネガティブ情報の摺合せは行えていない傾向。
また、採用前の認識合わせ時の「内容理解」「内容共感」「相性理解」は、面談のみ行っている企業よりも、面談と面談以外の接点を持つ企業の方が高い。しかし、採用前における企業と副業求職者の接点について、面談しか行っていない企業はおよそ3割。図示はしていないが、面談回数は「1回」が41.3%で最多。
副業先でのパフォーマンス実態を見た。担当業務を滞りなく遂行できている割合は半数を超えるが、任されたレベル以上の成果をあげたり、周りからの期待を超えるパフォーマンスを発揮したりしている割合は3割台 。
パフォーマンスの発揮には、副業先での「固有ルールの理解」「人的ネットワークの構築」と、副業先メンバーとの「信頼関係の構築」が良い影響を与えている。
パフォーマンス発揮に影響する「固有ルールの理解」「人的ネットワークの構築」「信頼関係の構築」について、受入れ先企業におけるオンボーディング施策との関係を見た。オンボーディング施策のうち、「社内重要人物の説明」や「歓迎ランチ会・懇親会」などは、「固有ルールの理解」「人的ネットワークの構築」「信頼関係の構築」すべてにプラスの影響を与えているが、実施率が相対的に低い。
一方で、「固定ルールの理解」「人的ネットワークの構築」「信頼関係の構築」を抑制するものを見たところ、副業実施者が感じる「よそ者」意識と、副業先メンバーが感じる「よそ者」意識が影響していることが分かった。図示はしていないが、副業者への「よそ者」意識を醸成させているのは、「不自由・閉鎖的組織風土」「属人思考風土」「私的コミュニケーションの少ないチーム」であった。
パフォーマンスが発揮できない要因のひとつとして考えられる過重労働について、パフォーマンスと過重労働に影響する自己管理スキルを確認した。「成果コミットメント」や「仕事の組立スキル」は、パフォーマンスを向上させ、過重労働を抑制する傾向が見られた。
副業前・副業開始時・副業中における課題とその対策についてまとめると以下の通り。
2018年の副業元年から5年が経過し、企業の副業解禁の動きが加速している一方、正社員の副業実施率は微減トレンドを推移しており、企業の副業容認率と副業実施率のギャップは拡大していた。また、副業実施率と副業意向率のギャップについても大きいままの結果となり、副業者の増加には歯止めがかかっている状態である。
要因のひとつに考えられるのが「本業の多忙化」だ。これには、新型コロナウイルス感染症の収束に伴う、テレワーク実施率の低下*も関係していると推察される。また、副業における「アンマッチの多さ」と「受け皿の少なさ」も、上記の傾向に関する主要因といえよう。本調査において、自身の希望・スキルにマッチしていないが故に、求人への応募を躊躇う個人の意識があることや、副業者を受け入れている企業の割合が、副業を容認する企業の割合と比べてかなり少ないことも明らかになった。
さらに、副業者の受け入れにおいては、1回の面談だけで認識を合わせるケースが多く、副業者へのオンボーディングに力を入れていないことなどから、「パズルはめ込み型」の様相が確認された。本業先企業の副業者への働きかけは、副業者や周囲のメンバーへの学びを促すだけでなく、本業先への組織コミットメント、継続就業意向、上昇意向の高まりにも寄与する。そのため、企業と個人の双方にとって実りある副業を実現する上では、副業先の企業と個人に加えて、本業先の企業も巻き込んだ、三者による「歯車連動型」の形態が重要である。
企業の労働力不足は年々悪化しており、人材確保は大きな課題といえよう。企業は、今回導出した課題を解決するためのポイントも参考にしながら、副業人材という外部リソースを積極的かつ円滑に活用していくことをお勧めしたい。本データが、副業者への積極的関与について、 企業が検討する上での判断材料になれば幸いである。
*パーソル総合研究所「第八回・テレワークに関する調査/就業時マスク調査」より
※本調査を引用いただく際は出所を明示してください。
出所の記載例:パーソル総合研究所「第三回 副業の実態・意識に関する定量調査」
調査報告書全文PDF
第三回 副業の実態・意識に関する定量調査
<2024年11月12日改訂>
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