公開日:2022年5月27日(金)
調査名 | パーソル総合研究所 「人的資本情報開示に関する実態調査」 |
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調査内容 | ・非財務情報の関連用語や開示指針の理解度、対応度 ・人的資本情報開示に関する議論の状況、主管部署 ・人的資本情報開示に関して重視する要素 ・人的資本情報のマネジメント実態 ・人的資本情報の開示のテーマやキーワード、開示にあたっての悩ましさや懸念 |
調査対象 |
上場企業の役員層(取締役・執行役員)、人事部長 n=157 |
調査時期 | 2022年 3月3日-3月7日 |
調査方法 |
調査会社モニターを用いたインターネット定量調査 |
実施主体 | 株式会社パーソル総合研究所 |
※報告書内の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計と内訳の計は必ずしも一致しない場合がある。
調査報告書(全文)
上場企業の役員層・人事部長に対し、非財務情報の開示基準や関連用語への理解度※を聞いたところ、「ESG投資」が最も高く85.4%、次いで「人的資本経営」(75.8%)であった。また、具体的な情報開示指針となる「SASB スタンダード」(15.3%)や「国際統合報告フレームワーク」(19.7%)などの理解度は、他の選択肢と比べて低い傾向であった(図1)。
経営者や投資家に広く認知される「ESG投資」と同様に、「人的資本経営」についての理解度も7割を超えており、人的資本経営の概念は一定程度、普及してきているものと考えられる。
※理解度:「理解しており社員に説明できる」+「理解しているが説明する自信はない」回答の割合
図1.非財務情報の開示基準や関連用語の理解度
企業の役員層・人事部長に対し、「人的資本の情報開示」に関する議論の実態を確認したところ、取締役会や経営会議で「最優先事項として」、または「優先度高く」議論されている割合は、上場企業では56.1%、非上場企業においても40.2%に上った(図2)。また、上場企業の人事部内での議論に限ると、82.1%であった(図3)。
※「最優先事項として議論されている」+「優先度高く議論されている」回答の割合
図2.人的資本情報やその開示に関する社内の議論(上場企業/非上場企業別)
図3.人的資本情報やその開示に関する社内の議論(役員層/人事部長別)
上場企業の役員層・人事部長に対し、人的資本情報の開示に際して重視する要素※を確認したところ、最も関心が高かったのは「優秀人材の採用実績の増加」(80.3%)、次いで「他社の動向」(77.7%)、「役員層の意識改革」(77.1%)であった(図4)。また、上記3要素のうち「他社の動向」について関心を向けている割合は、役員層75.4%に対して人事部長は84.6%であった。
※各項目の「とても重視している」+「重視している」+「どちらかというと重視している」の割合
図4.人的資本情報の開示に関して重視する要素
上場企業の役員層と人事部長それぞれに対し、人的資本情報開示の主管部署※を尋ねたところ、役員層の54.2%、人事部長の61.5%が「人事部門」と回答(図5)。次いで、「経営企画部門」が2割前後、「広報・IR部門」が1割程度となっている。人的資本情報の開示においては、「人」に関わる情報ゆえに人事部門が関与するのは必然であろうが、各部門が連携して準備が進められていることがうかがえる。
※具体的にどのような情報をどう開示するかの議論を主導する部署
図5.人的資本情報開示の主管部署
上場企業の役員層・人事部長に対し、人的資本情報のマネジメント実態を確認したところ、「自社にとって重要な人的資本情報が何であるかを特定できている」は45.9%※であった。「データの蓄積」「HRテクノロジーの導入」「モニタリング」など人的情報をデータとして蓄積・活用できている企業は少ない傾向。
※各質問の「とてもあてはまる」+「あてはまる」回答の割合
図6.人的資本情報のマネジメント実態
不確実性の高い経営環境下において、企業の将来的な価値を評価するには、財務指標だけでは十分でなく、非財務情報とりわけ人的資本情報の開示の重要性が増している。現在、我が国においてもこの潮流に呼応し、官民が連携して人的資本情報の開示に対する指針やガイドライン等を整備しつつある。
本調査の結果、人的資本情報の開示は、上場企業のみならず非上場企業においても優先度高く議論されつつあるテーマであることが確認された。しかし、調査時点では、ISOやSASBスタンダードなど標準化された開示項目やガイドラインを意識した開示を行っている企業は多いとはいえなかった。
従来、非財務情報の開示は、機関投資家との対話を主たる目的とするとの考えがあるが、本調査によると「株価への反映」や「ESG格付け向上」といった投資家からの評価という観点以上に、「優秀人材の獲得」や「役員の意識改革」といった点に関心が向けられていることが確認された。
本調査では、企業の役員層や人事部長らの77.7%(人事部長に限ると84.6%)が他社の動向を意識しており、他社事例などの情報を収集し、情報開示の在り方を模索している段階にあることが示唆された。人的資本情報の開示に向けては、自社らしさを議論しつつ、必要なデータを整理・蓄積していく必要があり、準備には一定の時間を要することが想定される。
また、早期に着手し、人的資本情報開示に向けた取り組み自体の進捗を踏まえて、実践からの気づきや学びを活かした改善結果などを継続的に開示していくことが有用との声もある。データの蓄積や精査、他社動向などを慎重に見極める姿勢は理解できるが、まずは情報を開示することで始まる対話もあるのではないだろうか。
本テーマは、投資家からの評価のみにあらず、ましてや一時的なブームとして受け止めるのではなく、今後の組織と従業員の本質的な在り方を問い直す機会として受け止めたい。その際に人事部門の果たす役割は大きいといえよう。
※本調査を引用いただく際は出所を明示してください。
出所の記載例:パーソル総合研究所「人的資本情報開示に関する実態調査」
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