公開日:2020年12月18日(金)
調査名 | マネジメントにおけるアンコンシャス・バイアス測定調査 |
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調査内容 | マネジメント層の [人事評価]・[マネジメント職登用]・[中途採用]の判断について、候補者の性別・未既婚・学歴などの間接的な要素による偏り・歪みを定量的に測定する。 |
調査対象 | 〈共通条件〉 居住地域:全国 年齢:20~69歳男女 〈調査ごとの条件〉 企業規模100人以上の企業で、自職場でⅠ.部下評価/Ⅱ.登用/Ⅲ.採用業務にそれぞれ携わっているマネジメント層(係長以上) 〈サンプル数〉 調査Ⅰ・Ⅱ:各調査 1000人ずつ、調査Ⅲ:800人 合計2800人 |
調査時期 | 調査Ⅰ 2019年04月19日~2019年04月21日 調査Ⅱ 2019年11月22日~2019年11月23日 調査Ⅲ 2020年03月03日~2020年03月15日 |
調査方法 | 調査モニターを用いたインターネット定量調査 |
調査実施主体 | 株式会社パーソル総合研究所 |
調査報告書(全文)
同じ目標を持つ複数の部下に対して人事評価を行うにあたり、目標達成率など人事評価に直接かかわる要素を除き、どの間接的要素がどのくらい影響しているかをみたところ、最も強いバイアスは「対話頻度」で、対話頻度が多いほど評価にプラスの影響があった。次に強いのは「年齢」で、年齢が高いほど評価にマイナスの影響があった。
人事評価の判断に与える間接的要素全体の影響を100とすると、上司との「対話頻度」による影響の割合は40.2%、「年齢」は24.0%となる。
図1.人事評価に影響する間接的要素の割合(寄与率)
図2.人事評価における間接的要素の効用値(影響度)
※人事評価への直接的要素を「目標達成」と「労働(残業)時間」とした場合、直接的要素と間接的要素が影響している比率はおよそ7:3。
実績や資格などマネジメント職登用に直接影響する条件が同じである複数の部下のうち、誰をマネジメント職に登用するか判断するにあたり、どの間接的要素がどのくらい影響しているかをみたところ、最も強いバイアスは「年齢」で、年齢が高いほど登用にプラスの影響があった。「人事評価」の判断では年齢が高いほどマイナスの影響があったが、登用では逆に年功的になるバイアスがうかがえる。「年齢」の次に強いのは「出身大学の偏差値」で、偏差値60程度までは高いほど登用にプラスの影響が見られた。
登用の判断に与える間接的要素全体の影響を100とすると、「年齢」による影響の割合は26.7%、「出身大学の偏差値」は20.3%となる。自分(上司)と部下との「対話頻度」は15.8%と、人事評価だけではなく、登用でも相当程度影響がうかがえる。部下の経験部門数は12.6%で、経験部門が多いほど登用にプラスの影響。
図3.マネジメント職登用に影響する間接的要素の割合(寄与率)
図4.登用における間接的要素の効用値(影響度)①
図5.登用における間接的要素の効用値(影響度)②
同じ経験・スキルの中途採用候補者を選ぶにあたり、どの間接的要素がどのくらい影響しているかをみたところ、最も強いバイアスは候補者の「転職回数」、次に強いのは「年齢」となった。採用の判断に与える間接的要素全体の影響を100とすると、「転職回数」は21.7%、「年齢」は19.3%影響している。
「転職回数」についてみると、4回目の転職以降(過去3回転職済み)が大きくマイナス。転職3回目と4回目との差は、出身大学偏差値が10下がるのと同程度の差である。
「年齢」についてみると、35歳以降は効用値が大きく低下し、採用されにくくなる。35歳を超えると、5歳ごとに出身大学偏差値が10低下することと同程度の効果が生じる。
「性別」についてみると、男性は子あり・子なしでほぼ差がないが、女性は男性と比べて大きく効用値が下がり、子ありが最も低い。男性子ありと女性子ありの差は、35歳-40歳の5歳の加齢効果分、出身大学偏差値が10低下することと同程度の差である。男性の方が多い職場では、女性であることのマイナスの効果はさらに大きい。業種別にみると、製造業・建設業において女性であることのマイナスの効果が大きい。
図6.中途採用における間接的要素の割合(寄与率)
図7.中途採用における間接的要素の効用値(影響度)
マネジメント職登用において、他の条件が同じであっても、女性名の方が男性名よりも8.9ポイント登用意向が下がることが分かった(登用意向は女性名で47.8%、男性名で56.7%)。また、中途採用において、他の条件が同じであっても、女性名の方が男性名よりも11.3ポイント採用率が下がることが分かった(採用率は女性名で51.0%、男性名で62.3%)。
図8.登用における性別のアンコンシャス・バイアス(コンセプト評価)
図9.中途採用における性別のアンコンシャス・バイアス(コンセプト評価)
注目すべきは、人事評価とマネジメント職登用において、上司との対話頻度が少ない部下に大きなマイナスの影響が見られたことだ。上司との対話頻度の影響は、間接的要素全体の影響を100とすると、人事評価では40.2%、登用では15.8%にも及んだ。テレワーカーと出社者が混在する「まだらテレワーク」により、上司との対話頻度に個人差が出ている職場は多くなっていると考えられるが、対話頻度という業務成果と直接関係がない要素により、適切な判断が下されていない可能性がある。組織としても評価者としても注意すべきだろう。
登用と中途採用においては、未だに女性であるということだけで不利な条件に置かれるという、残念かつ根強い課題も浮き彫りとなった。さらなる女性活躍推進のために、組織としても評価者としても、女性に対するバイアスについてもっと自覚的になるべきだ。
アンコンシャス・バイアスは無自覚であるがゆえに対処方法が難しいが、人事評価に関しては、管理職研修やダイバーシティ研修の受講により、間接的要素で部下を評価する割合が減っていたことが朗報と言えるだろう。特に若い上司の場合、間接的な要因に影響されがちで、研修の受講が望ましい(図10)。マネジメントにおける公正さを担保するため、マネジメント職に研修を受けさせることは有力な手段となる。
一方、中途採用に関しては、面接官研修の有無よりも、面接人数経験が最もバイアスを低減させる可能性がみられた。ロールプレイや面接補佐など、面接の実地的な経験を積むことが重要だと示唆される。また、採用の判断は、現在の職場の「同質性」を高める方向に傾きがちであり、男性が多い職場では採用側も男性を選び、出身大学の偏差値が高いと偏差値が高い候補者を選ぶバイアスがあり、ダイバーシティ実現の障害となっていそうだ。
図10.間接的要素が部下の評価に影響する割合
※本調査を引用いただく際は出所を明示してください。
出所の記載例:パーソル総合研究所「マネジメントにおけるアンコンシャス・バイアス測定調査」
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