公開日:2024年11月7日(木)
調査名 | はたらくソーシャル・リスニング/24年上半期 |
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調査内容 | ・インターネット上の投稿内容から、労働・組織に関わるトピック・トレンドの現状を理解する。 ・時系列での比較によって雇用関連のトレンドを動態的に把握する。 |
調査対象 | ■データ収集 日本全国のSNS、ブログ、ニュース、掲示板、レビューサイトなど日本国内10万ドメインのデータソースより投稿データ(サンプリングデータ)を取得。「労働」「人材マネジメント」「組織」「働く」関連のワードが含まれる投稿について分析 ■データ取得先 X、YouTube、各種ブログ、掲示板、各種ニュースサイト、レビューサイトなど |
調査時期 | 2024年上半期(4月1日-9月30日)と23年同期の投稿データ比較 |
調査方法 | SNS分析ツール Quid Monitor(TDSE株式会社提供)を使用し、パーソル総合研究所分析 |
調査実施主体 | 株式会社パーソル総合研究所 |
※図版の構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、個々の集計値の合計は必ずしも100%とならない場合がある。
調査報告書(全文)
「はたらく」に関する旬のトピックスについて、各種SNS・ブログ・掲示板・レビューサイトなどの投稿データ(サンプリングデータ)をリアルタイムに取得。一般生活者の「生の声」を収集し、定期的に分析・発信することで日々変化する労働市場全体の動向理解に資することを目指します。
※2023年度(2023年4月1日-24年3月31日)の動向は「はたらくソーシャル・リスニング/24年4月」からご覧いただけます。
2024年上半期(4月1日-9月30日)において、2023年同期からの「はたらく」に関する投稿増加率/減少率が高かったトピックは以下の通り。
*データ取得先:X、YouTube、各種ブログ、掲示板、各種ニュースサイト、レビューサイトなど、日本国内10万ドメインのデータソースより投稿データ(サンプリングデータ)を取得。2024年上半期の投稿数が5,000以上のトピックに限定。
*2024年上半期の投稿数の前年同期比・増加割合。
*メンション数:該当キーワードの投稿回数。1回の投稿文中に複数回使われている場合は、複数回分をカウント。
*各11~20位は調査報告書全文PDFを参照。
「はたらく」に関する投稿増加率上位10ワードの主なポイントは以下の通り。
増加率1位:通称使用
自民党総裁選における選択的夫婦別姓制を巡る議論の中で、職場などでの通称使用について多くの言及がなされ、ネットでの議論も盛り上がりを見せた。
増加率2位:スポットワーク
2023年から2024にかけて、スポットワーク・スキマバイト市場が大きく伸長。大手プラットフォーマ―の参入や上場など、事業者側の経営動向も大きな話題を呼んだ。
増加率3位:カスハラ/カスタマーハラスメント
顧客からの迷惑行為・過剰要求であるカスハラについて厚労省・自治体による条例・規制強化の流れが加速した。各機関の定量的な調査も進み、メディア報道が激増。世間の耳目も集まった年となった。
増加率4位:2025年の崖
経産省が2018年のDXレポートの中で、システムの老朽化や人材不足により2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性があると示した用語。2025年が来年に迫る中で言及が増加した。
増加率5位:人手不足倒産
人手不足倒産が過去最高ペースで増加。背景には、建設・物流の長時間労働を規制した「2024年問題」がある。
増加率6位:戦略人事
人的資本経営・人的資本開示の流れの中で、中長期の経営戦略と人事戦略の連動が各社で課題に。
増加率7位:ガラスの天井
米大統領選挙戦の中で、クリントン元長官がハリス副大統領に対してガラスの天井を破ることを期待。日本企業において進まない女性活躍推進の文脈でも言及が集まった。
増加率8位:ギグ・ワーカー
フードデリバリーや配車サービスの運転手など、プラットフォーム経由で仕事を請け負うギグ・ワーカーに対し、アメリカやEUで待遇改善の動きが活発化。日本でも厚労省が2024年度中に指針を出す見込み。
増加率9位:整理解雇
自民党総裁選で複数の候補者から解雇規制の緩和がアジェンダ化された。それにより、一時的に日本の解雇規制の在り方に対する議論が活発化。
増加率10位:非正規公務員
「会計年度任用職員」と呼ばれる非正規の公務員に対し、待遇の改善を求める動きが広がる。
「はたらく」に関する投稿減少率上位ワードの主なポイントは以下の通り。
減少率1位:通勤手当
2023年、通勤手当不正受給のニュースが相次いだことで言及が増えたが、2024年はその反動で減少。「インボイス制度(2位)」も2023年に制度が開始され、2024年は落ち着いたトピック。
減少率3位:「ブラックバイト」
「ブラックバイト」や「ストライキ(6位)」、「偽装請負(11位*)」、「バイトテロ(19位*)」といった特定の事案・事件の報道に引っ張られるワードは、昨年ほど話題にならず。
減少率8位:ハイブリッドワーク
テレワークを巡る議論は落ち着き、「ハイブリッドワーク」や「フレックスタイム(12位*)」をめぐる議論は減少。しかし2024年9月に入ってからはアメリカIT企業の出社増加についての報道が過熱しており今後の言及は増える可能性も。
減少率10位:ジェンダーギャップ指数
「ジェンダーギャップ指数」や「WLB(ワークライフバランス)(16位*)」、「女性活躍(18位*)」は、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)といったより大きな多様性を示す議論が進む中で、やや使用頻度が落ちてきていることが推察される。
*減少率上位ワードは調査報告書全文PDFを参照。
2024年上半期において特に目立ったトレンドについて3つピックアップした。
2024年上半期は、新たに注目された「カスタマーハラスメント」だけでなく、「パワハラ」・「モラハラ」といったハラスメント全体の言及数の増加傾向が見られた。特にカスハラについては、2024年最も話題を集めたワードの一つとして、下半期にも前年同期で増加が見込まれる。東京都では条例が可決するなど、カスハラについて進む規制強化の流れの中で、労働者の安全配慮義務の観点から対応を迫られる企業はここから多くなることが予想される。
「スポットワーク」の伸長は2023年から2024年にかけての大きなトピックだ。アプリでマッチングを完結させるスキマバイトのプラットフォームは、人材サービス業のみならず他業界からも参入が活発化。報道の効果もあって利用者が大きく伸び、言及数も爆発的に増加した。
新しい柔軟な働き方として関連するのは、主に業務委託のフードデリバリー職などに使われる「ギグ・ワーカー」への言及だ。こちらはアメリカやEUでギグ・ワーカーの労働者性を巡って待遇改善の動きが活発化。日本でも厚労省が2024年度中に指針を出す見込みであり、下半期も上昇が見込まれる。
2024年は、さまざまな角度から退職・離職への注目が集まった。 「コーポレート・アルムナイ」のトレンドは、円満退社やつながり継続のためのオフボーディング=組織としての離職プロセスの設計が近年注目されており、2024年上半期も増加傾向。
また、大きな話題を呼んだのが、「退職代行」サービスだ。労働者の退職手続を代行する民間の退職代行業者・利用者がともに大きく増加した。賛否が分かれる話題でもあり、今後の動向も注目される。
2024年9月に行われた自民党総裁選では、「解雇規制緩和」がアジェンダ化された。整理解雇や早期退職に関する議論が一時的に極めて高まった。
2023年に続いて実施した「はたらくソーシャル・リスニング」の分析だが、2024年の上半期多様なトピックが話題になった。目立ったのは、顧客からの迷惑行為・過剰要求である「カスハラ」についての話題だ。厚労省・自治体による条例・規制強化の流れや定量的な調査の進展もあり、メディア報道が激増した。カスハラについてはパーソル総合研究所も調査を実施。広範囲な負の影響が確認されている(カスタマーハラスメントに関する定量調査 )。
また、「スポットワーク」の伸長も、2023年から2024年にかけての大きなトピックだ。アプリでマッチングを完結させるスキマバイトのプラットフォームは利用者・就業者ともに大きく伸びており、それに伴って言及数も爆発的に増加した。
2024年は「整理解雇」「退職代行」など、退職・離職への注目がさまざまな角度から集まった年でもあった。自民党総裁選では解雇規制緩和が複数の候補者からアジェンダ化され、議論が活発化した。長期雇用の安定感が失われていく中で、離職行動に対して労使ともに改めて捉え直す機運として見ることができよう。
2023年から連続して上昇ランキング上位に入ったのは、「人手不足倒産」である。コロナ禍の各種補助が終わったことからの反動や、建設・物流業界の労働時間制限が開始されたこと、その他賃上げやコストアップにより、倒産全体が増えてきている。倒産後の企業から労働移動がどう起こるのかも注目される。
今後も、現場や生活に近い視点で、労働市場全体の動向理解に資するものとして、定期的な分析と発信を行っていく予定である。
※※本調査を引用いただく際は出所を明示してください。
出所の記載例:パーソル総合研究所「はたらくソーシャル・リスニング/24年上半期」
調査報告書全文PDF
はたらくソーシャル・リスニング/24年上半期
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