公開日:2021年7月5日(月)
調査名 | コロナ禍における研修のオンライン化に関する調査 |
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調査目的 | コロナ禍における研修実態を把握するとともに、 オンライン集合研修の成果創出に向けた課題と、その解決策を示す。 |
調査対象 | 【人事調査】 人事部門の「教育・研修」「人材開発・キャリア開発」担当者 ※2020年度に研修を実施した企業で研修の企画・運営に携わった人 ※従業員規模:従業員100名以上 / 業種:第一次産業は除く 【受講者調査】 2020年度に研修を受講した正社員 ※従業員規模:従業員100名以上 / 業種:第一次産業は除く 有効回収数 【人事調査】 400名(実態把握編は979名) 【受講者調査】 2000名 実施/受講した下記の研修について、主に用いた研修形式(オンライン集合研修/対面集合研修/eラーニング・録画コンテンツ視聴)の状況を聴取 |
調査時期 | 2021年1月29日-2月10日 |
調査方法 | 調査会社モニターを用いたインターネット定量調査 |
調査実施主体 | 株式会社パーソル総合研究所 |
※報告書内の構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、個々の集計値の合計は必ずしも 100%とならない場合がある
調査報告書(全文)
コロナ禍により、企業研修のオンライン化が進んでいる。その実態を把握し、オンライン集合形式の研修をより一層、成果創出につなげるための注力ポイントを探るべく、企業の研修担当者と研修受講者のそれぞれに調査を実施した。
2020年の1年間(※)で、オンライン集合研修を増やした企業は75.0%であった。従業員100名以上300名未満の中小企業でも、61.0%がオンライン集合研修を増やしている。
※増加の判断については調査時点(2021年1月29日~2月10日)の1年前との比較
図1.2020年の1年間でオンライン集合研修を増やした企業の割合
2020年はロジカルシンキング研修、技術・開発研修など多くの研修が主にオンライン集合形式で実施されていた。ただし、新入社員研修は対面集合形式、コンプライアンス研修はeラーニングが多かった。
図2.各研修の主な研修形式
企業の研修担当者に対して、研修の実施形式別に学習目標の達成度を聞いたところ、オンライン集合研修では学習目標を8割以上達成したとの回答割合は46.5%となった。eラーニングでは学習目標を8割以上達成したとの回答割合は32.0%であり、達成度が低かった。
図3.研修の形式別 学習目標の達成度
一方、研修受講者に対して、研修が成果につながったかを聞いた結果では、対面集合研修とオンライン集合研修では成果の有無に大きな差は見られなかった。eラーニングと比べると、オンライン集合研修のほうが成果につながっているという結果であった。
図4.受講者の成果認識(研修の形式別)
研修を成果(研修目的の達成・実務への貢献)により結びつけるためには、どうすればよいのだろうか。 そこで、成果に至るまでの間、受講者がどのような心理状態にあり、どのような行動プロセスを踏むのかを確認した。その結果、研修形式にかかわらず、 ①研修前の「学習期待感」 ②研修中の「没入感」 ③研修直後の「職務効力感」という受講者の心理コンディションが、現場での実践(行動変容)につながり、成果を生み出していることがわかった。
図5.オンライン集合研修の成果に至る受講者の心理・行動プロセス
心理コンディションを高める要因は研修形式を問わず共通しているものが多いが、研修形式ごとに特徴も見られる。 オンライン集合研修ならではの特徴として、講師のインストラクションや服装のガイドラインがないことが没入感、上司からの事前説明や資料のわかりやすさが職務効力感、研修後のテストや上司との議論、実践成果を振り返る機会が行動変容につながっていた。
図6.オンライン集合研修ならではの要因
成果につながりやすい「研修前」「研修中」「研修後」における施策や対応について、実際にどの程度、実施されているのかを見たのが下図だ。研修中の働きかけは比較的実施されているものの、実践に向けた上司との議論や実践有無の確認・振り返りといった研修後のフォローは、成果につながりやすいにもかかわらず4割程度の企業でしか実施されていなかった。
図7.成果につながる主な要因
最後に、研修分野でも進むデジタル活用について、どのような活用方法が成果につながっているのかを確認した。研修形式にかかわらず、成果が出ている企業で活用率の高かったものは、ラーニングマネジメントシステムによる研修後のフォローや動画視聴などのデジタルコンテンツ活用である。中でも、オンライン集合研修では、成果が出ている企業と出ていない企業でデジタル活用率に大きな差が見られた。
図8.成果の有無とデジタル活用の関係性
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、2020年の1年間でオンライン集合研修は一気に広がった。新型コロナウイルスの収束とともに一定程度は対面へ戻る動きもあると思われるが、オンライン化を促進したい企業も多いことから、今後は研修成果を高める工夫をおこないながら「戦略的に」オンライン集合研修を取り入れるステージに入ると考えられる。
調査結果を踏まえて、オンライン集合研修の成果を高める上で、特に注力したいポイントは2つある。
1つ目は、研修後に、学んだことを上司と議論したり、実践有無の確認や振り返りの機会を設けることである。研修後のフォローは成果につながりやすいにもかかわらず、現状では実施している企業が少ないことから、多くの企業にとって取り組み余地がある施策である。
2つ目は、オンラインならではの没入感を高める働きかけである。没入感を高めるためには、研修前に研修の意図やメリットを伝えることなどで学習の期待感を高め、適切な難易度の学習内容とし、受講者に受け身にならずにメモを取ってもらうなど能動的な姿勢で受講してもらうことや、「研修中は業務メールを見ない」といった受講者側の意識的な心掛けを促すことが大切である。加えて、オンライン集合研修では、講師のインストラクションが没入感を左右するため、講師がわかりやすい説明で受講者の考えを深めることにも留意したい。また、騒音・雑音が没入感を阻害することから、出社時に受講する場合であれば、会議室を予約するなどして静かに受講できる環境を準備するなど、集中環境を整えることが必要である。
調査では、オンライン集合研修は、デジタル活用率によっても成果に差が出ていた。デジタルをうまく活用しながら、研修前・研修中・研修後の要点を押さえることで、より成果に結びつきやすいオンライン集合研修が増えていくことを期待している。
※本調査を引用いただく際は出所を明示してください。
出所の記載例:パーソル総合研究所「コロナ禍における研修のオンライン化に関する調査」
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