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企業のシニア人材マネジメントに関する実態調査(2020)

公開日:2020年12月1日(火) 

調査概要

調査名 企業のシニア人材マネジメントに関する実態調査(2020)
調査内容 ①日本企業がシニア人材マネジメントに対して抱えている課題感や制度・施策の実施状況・方針などの実態を明らかにする
②シニア人材の活躍を促す制度・施策や企業・組織の特徴を探索する
調査対象 <対象者>
企業規模100人以上の日本企業に勤める「経営・経営企画」「総務・人事」担当者(係長〜経営者・役員の職位)で、
 自社の「人事戦略・企画」あるいは「人事管理」の動向に対して把握していると回答した者
(*一次産業、行政関連サービス業、専門・技術サービス業、士業、学術研究関連業界は除く。シニア人材の定義は回答者の判断としている。)

<サンプル構成>
全体:800人
【性別】男性:744人 女性:56人
【年代】20代:4人 30代:59人 40代:231人 50代:379人 60代:127人
【役職】係長相当:129人(16.1%) 課長相当:257人(32.1%) 部長相当:233人(29.1%)
    事業部長相当:57人(7.1%) 取締役相当:83人(10.4%) 代表取締役・社長相当:36人(4.5%)
    その他管理職:5人(0.6%)
調査時期 2020年9月18日 - 9月22日
調査方法 調査モニターを用いたインターネット定量調査
調査実施主体 株式会社パーソル総合研究所

調査報告書(全文)

調査結果(サマリ)

シニア人材に課題感を持つ企業の割合

シニア人材について、すでに課題感を持っている企業の割合は49.9%。また、今後、5年以内に課題になると回答した企業の割合は75.8%。従業員規模が大きくなるほど課題感が強くなる。業種別にみると、「金融・サービス」「情報通信」「製造・建設」における課題感が高い。

図1.シニア人材に課題感を持つ企業の割合

シニア人材に課題感を持つ企業の割合

シニア人材に対する具体的な課題感

シニア人材に対して具体的にどのような課題感を持っているかをみると、上位は「モチベーションの低さ」「パフォーマンスの低さ」「マネジメントの困難さ」となった。

図2.シニア人材に対する具体的な課題感

シニア人材に対する具体的な課題感

シニア人材に対する施策実施の割合

シニア人材に対して何らかの施策を実施している企業の割合は62.9%。

図3.シニア人材に対して施策を実施している割合

シニア人材に対して施策を実施している割合

シニア人材に対する具体的な施策

一定の年齢で一律に責任のある立場から外す、ポストオフ・役職定年制度が38.1%とトップとなった。スキルアップ研修など、地道にシニア人材の活躍につなげられる施策の充実が求められている。

図4.シニア人材に対する各施策の実施割合

シニア人材に対する各施策の実施割合

シニア人材の能力開発・キャリア開発は不十分

45歳以降、スキルアップ研修を受講する人の割合は大きく下がっていき(図5)、人材開発予算配分(図6)をみるとシニア人材は6.3%にとどまる。シニア人材の能力開発・キャリア開発につながる施策は十分に行われておらず、改善が求められる。

図5.シニアの年齢別に見た各施策実施の割合

シニアの年齢別に見た各施策実施の割合

図6.人材開発予算配分

人材開発予算配分

70歳までの就労機会提供の努力義務への対応

定年後再雇用は「実施している」と「検討している」を併せると86.1%を占め、最も有力な選択肢となっている。しかし、再雇用後の年収は、全体平均で32.5%の減少がみられ、再雇用前と職務変更がほとんど無い場合であっても27.1%の減少がみられた。
定年制度の廃止は「実施している」と「検討している」を併せても3割台、NPO活動へのサポート(社会貢献活動支援)や起業支援は「実施している」と「検討している」を併せても2割台と低い。

図7.70歳までの就労機会提供の努力義務への対応

70歳までの就労機会提供の努力義務への対応

注)「希望者に対する70歳まで就労機会提供の努力義務」に対して、現在、どのように対応を検討していますか?」への回答。
現在の制度状況とかけ合わせた検討率は、報告書のP34を参照のこと。

分析コメント

職務を軸とした人材マネジメント(配置・処遇)がシニア課題解決のカギ

現時点で企業の半数がシニア人材に課題感を持っているが、施策実施率トップはポストオフという厳しい現状が明らかとなった。シニア人材向け施策実施のハードルを尋ねると、1位「経営層からの承認」37.1%、2位「予算の捻出」34.5%となったが、実際、シニア人材に振り分けられている人材開発予算は6.3%と僅かであり、シニア人材の能力開発・キャリア開発をもっと強化すべきだ。

シニア人材が活躍できる組織の特徴としては、①社内の職務ポジションが可視化され、社内のジョブ・マッチング施策が充実し、人員の社内流動性が高いこと、②従業員の専門性を重視し、育成体制が充実していること、③ダイバーシティが重視され、個が尊重されることが挙げられる(図8。会社属性を統制した重回帰分析の結果)。

また、人事制度として、「職務」の市場相場を反映させる等級・処遇制度であるほど、シニア人材の活躍が促されており(図9)、職務を軸にした人材マネジメント(配置・処遇)の強化が、シニア課題を解決するための人事施策のカギとなる。逆に、職能主義的で安定雇用の企業において課題感が強く、伝統的な日本型雇用とシニア活躍の相性の悪さが確認された。

図8.組織の特徴とシニアの活躍の対応

組織の特徴とシニアの活躍の対応

図9.人事制度とシニアの活躍の対応

人事制度とシニアの活躍の対応

※本調査を引用いただく際は出所を明示してください。
出所の記載例:パーソル総合研究所「企業のシニア人材マネジメントの実態調査」


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