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コロナ禍における就業者の休暇実態に関する定量調査

公開日:2021年5月14日(金) 

調査概要

調査名 コロナ禍における就業者の休暇実態に関する定量調査
調査目的 コロナ禍における就業者の年次有給休暇取得及び休み(※)の過ごし方の変化実態を明らかにする
調査対象 ■共通条件
 全国、正社員、20~59歳男女、企業規模10名以上
■個別条件:
 ①テレワーカー【n=1000】 
  週に1~5日間、モバイルワーク・在宅勤務・サテライト勤務のいずれかの実施者
 ②出社者【n=1000】
  モバイルワーク・在宅勤務・サテライト勤務をまったく行っていない出社者

合計 n=2000
調査時期 2020年 8月26日 - 8月31日
調査方法 調査会社モニターを用いたインターネット定量調査
調査実施主体 株式会社パーソル総合研究所

※1.休み…「労働日の余暇時間」ならびに「休日」を指す
※2.図中、四捨五入処理の関係で合計が100にならない場合があります

調査報告書(全文)

調査結果(サマリ)

コロナ禍後、残業時間が減少。労働日の余暇時間は22.4%が増加

まず、コロナ禍前後で残業や余暇時間、休み方にどのような変化があったかをみた。
残業については、コロナ禍前よりもコロナ禍後のほうが「残業はしない」と回答した割合が高くなっている。平均残業時間を比べると、全体では2.8時間短く、テレワーカーと出社者に分けてみた場合、テレワーカーで3時間、出社者で2.6時間短縮している。また、労働日の余暇時間についても、全体の22.4%、テレワーカーでは32.4%が増えたと回答している。

図1.コロナ禍前後の残業時間の変化

コロナ禍前後の残業時間の変化

 

図2.コロナ禍前後の平均残業時間の変化

コロナ禍前後の平均残業時間の変化

 

図3.コロナ禍前後の労働日の余暇総時間の変化

コロナ禍前後の労働日の余暇総時間の変化

コロナ禍前後の休日の過ごし方の変化

コロナ禍前後で休日の過ごし方がどのように変わったかをみると、コロナ後に増えたものとしては、「テレビやDVD、CDなどの視聴」が25.8pt増、「オンラインでの動画・音楽配信視聴、ゲーム」が20.6pt増と、家内におけるコンテンツ観賞が1位2位を占めた。また、3位には「家族との団欒・会話」(18.6pt増)が挙がった。一方、休日の過ごし方として減少したものは、「行楽・レジャー・旅行」(44.5pt減)が最も多く、次いで「友人・恋人との交際」(24.2pt減)、「社会参加」(15.5pt減)となり、屋外レジャーや人との交流が減少している。新型コロナの影響が顕著に表れた結果といえよう。

図4.コロナ禍前後の休日の過ごし方の変化GAP

コロナ禍前後の休日の過ごし方の変化GAP

残業が多い人ほど休んでいない、環境の影響も大きい

年次有給休暇の取得状況についてみると、2019年における平均取得日数は10.4日。年間取得日数が5日に満たない割合は14.2%であった。また、残業時間と年次有給取得日数の関係をみると、残業時間が多い人ほど年次有給休暇が取得できていないことが分かる。

図5.年次有給休暇取得日数(2019年)

年次有給休暇取得日数(2019年)

【参考】厚生労働省令和2年「就労条件総合調査」では、労働者1人あたりの年次有給休暇平均取得日数は10.1日であった。

 

図6.残業時間と年次有給取得日数の関係性

残業時間と年次有給取得日数の関係性

年次有給休暇の取得状況には周囲の影響も見られる

組織風土や上司のマネジメントと休暇取得の関係性をみたところ、「スピード感・迅速さ」を求める組織風土である職場や、上司が「プライベートよりも仕事一筋のタイプ」である場合には部下の年次有給休暇取得は進まず、一方で「チームワークが良いこと」は取得を促進している。

図7.組織風土やマネジメントと年次有給取得日数の関係性

組織風土やマネジメントと年次有給取得日数の関係性

また、「健康経営の環境整備」や「介護・育児休暇取得推進、残業是正の取り組み」は社員の年次有給休暇取得を促進し、「成果重視の評価・処遇」は抑制するということも明らかになった。年次有給休暇の取得率向上には、休暇取得を呼びかけるだけでなく、社員が休暇を取得しやすくなるような職場環境づくりも求められる。

図8.人事制度と年次有給取得日数の関係性

人事制度と年次有給取得日数の関係性

休みへの満足度によって、仕事におけるパフォーマンスへの影響は変わる

本調査では、「上手な休み方」=「取得した後に仕事を生き生きと取り組めるような休みの過ごし方」とし、「休みへの満足度」や「ワーク・エンゲイジメント」に注目。これらが個人や組織のパフォーマンス、組織コミットメントにどのような影響を与えているかをみたところ、いずれも「個人パフォーマンス」「組織パフォーマンス」「組織コミットメント」にそれぞれポジティブな影響を与えることが分かった。

図9.休暇とパフォーマンスの関係

休暇とパフォーマンスの関係

さらに、職場や家庭以外の活動場所である「サード・プレイス」を持つことが、休みへの満足度やワーク・エンゲイジメントを高めるという影響もみられた。なお、本調査におけるサード・プレイスの有無は、他人を気にせず自分一人でのんびりできる場所である「マイプレイス」と、多様な人々と気軽に交流できる場所である「交流の場」の有無を聞き、その合計平均値を出している。

図10.サード・プレイスと休みへの満足度、ワーク・エンゲイジメントとの関係

サード・プレイスと休みへの満足度、ワーク・エンゲイジメントとの関係

サード・プレイスを持つ人は37.6%、20代や一人暮らしに多い

現在、サード・プレイスを持っているという人は37.6%で、20代や一人暮らしに比較的多い。また、所属する企業の規模が大きいほどサード・プレイスを持つ割合が増える傾向にあるほか、テレワーカーと出社者ではテレワーカーのほうがサード・プレイスを持つ人が多い。なお、サード・プレイスを持っている群は持っていない群に比べ、休日に学習して過ごす割合が高い傾向にあった。

図11.サード・プレイスの有無

サード・プレイスの有無

 

図12.サード・プレイスの有無別にみた休日の過ごし方

サード・プレイスの有無別にみた休日の過ごし方

分析コメント

満足度の高い休み方で、より質の良い「休み」と「はたらく」の実現を

2019年4月から年5日の年次有給休暇の確実な取得が義務付けられるなど休暇取得促進の流れの中、2020年には新型コロナ対応によってテレワークが進み、労働日の余暇時間も増えた。働く個人には、単に休むだけでなく、休みへの満足度を高めることにも意識を向けてみることをおすすめする。コロナ禍が収束すれば、働き方の変化に合わせて新しいサード・プレイスを持つことも検討したい。

また、こうした満足度が高い《質の良い休み》は、次の仕事におけるパフォーマンスにも良い影響を及ぼすため、企業側としても重視したいポイントだ。社員一人ひとりが質の高い休みを実現するために、まずは社員が適切に自由に休みを取得できる状態であることが前提となろう。そこでは、職場やマネジメント、制度といった環境整備がひとつの重要な要素となっている。既に健康経営やWell-beingに関心が高まっている中ではあるが、本調査結果から、成果や効率だけを追うのではなく、社員の心身の健康やワークライフバランスを重視する経営・職場づくりの重要性が改めて認識されたといえよう。

※本調査を引用いただく際は出所を明示してください。
出所の記載例:パーソル総合研究所「コロナ禍における就業者の休暇実態に関する定量調査」


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