公開日:2019年8月27日(火)
パーソル総合研究所では、日本を含めたアジア太平洋地域(APAC)14の国・地域の主要都市の人々の就業実態、仕事に対する意識や働くことを通じた成長意識などについてインターネット調査を実施しました。多国間比較してみると地域ごとの傾向や日本の特異性が見られました。ここではとトピックスと象徴的なデータをいくつかご紹介します。
※詳細は、ページ下にあります報告書(PDF)をご参照ください
なお、本調査は調査モニターを対象としたインターネット定量調査です。回答者属性の特徴として、既婚、高学歴、正社員、フルタイム、製造業勤務、間接部門や事務職、自国企業勤務の割合が高い傾向が見られました。この点をご留意の上ご参照ください。
調査名称 | パーソル総合研究所「APAC就業実態・成長意識調査(2019年)」 |
---|---|
調査目的 | アジア太平洋地域(APAC)14の国・地域の主要都市の人々の働く実態や意識、仕事に対する意識、転職状況、働くことを通じた成長などを明らかにする。また、日本企業での就労イメージや働いてみたい国についても把握する。 |
調査手法 | 調査モニターを対象としたインターネット定量調査 |
調査期間 | 2019年2月6日-3月8日 |
調査対象 エリア |
APAC14の国・地域(主要都市)
【東アジア】 【東南アジア】 【南アジア】 【オセアニア】 ※日本(東京、大阪、愛知) |
サンプル数 | 各国1,000サンプル |
割付 | 性・年齢による均等割付 |
対象条件 |
|
実施主体 | 株式会社パーソル総合研究所 |
調査報告書(全文)
「正社員」が多いのはシンガポール、インド、香港、台湾で、7割超。「自営業・自由業」が2割超はインドネシア、フィリピン、タイ、ベトナム。
勤務先業種は、東アジアや東南アジアで製造業が多い。
就業職種は、全般には間接部門、事務職、専門・技術職が多く、その他は各職種に分散している。
各国共通して自国企業に勤務している割合が高い。フィリピン、シンガポール、インドは勤務先としてアメリカ企業資本の割合が高く、ベトナムは日本企業資本の割合が高い。
管理職の割合が5割以上は、中国、マレーシア、ベトナム、インド。一般社員の比率が高いのは、日本、台湾、香港。
男女別にみる管理職の割合はほとんどの国で男性が高く、男女差が最も大きいのは日本で20pt差。最も小さいのはインドで0.8pt差。
正社員の勤務は「フルタイム」がいずれの国でも9割超。
1日あたりの労働時間は「8時間程度」が主流。ベトナムとインドでは「週6日」勤務が4割超。週あたりの労働時間は日本、オーストラリア、ニュージーランドでは40時間を下回り、男女差が大きい。
▼週あたりの労働時間
非管理職(一般社員・従業員)の中で「管理職になりたい」と思っている人の割合は、ほとんどの国で5割を超え、インド、ベトナム、フィリピンでは8割以上。一方、日本は2割程度にとどまる。
Q.あなたは、現在の会社で管理職になりたいと感じますか。(5段階尺度)
▼管理職になりたいと思っている人の割合(%)
東アジアの上位は「上に従う」「和を重視」「波風を立てない」。上に従い波風立てない組織文化が色濃い傾向。
東南アジア・南アジア・オセアニアは、「チームとしてまとまる」 「一致団結」が上位に入り、チームワークを重視する傾向。東南アジアは、独自性を活かした柔軟な発想や創意工夫を求める傾向も。
Q.あなたの職場にどの程度あてはまりますか。最も当てはまる選択肢をそれぞれ一つずつお選びください。(6段階尺度/項目数24)
共通するマネジメント行動は、仕事を任せることと適正な評価。情緒的配慮もする東アジア。「仕事のマネジメント」を重視する東南アジア。
東アジアでは「納得できる注意や叱り方」「良い仕事に対する称賛」、東南アジアやインドでは「スキルや能力が身につく仕事の付与・任命」「スムーズな業務進捗への支援」が上位に入る。
「会社全体」「職場の人間関係」「直属の上司」「プライベート」「仕事内容」の満足度を聞いたところ、東アジアは中国を除いて満足度が14ヵ国・地域平均を下回る一方、東南アジア、南アジア、オセアニアは平均を上回る傾向。日本は全5指標で満足度が低い。
Q.あなたの満足度についてお聞きします。最も当てはまる選択肢をそれぞれ一つ選んでお知らせください。(7段階尺度)
※スコアは、「非常に満足」「満足」「やや満足」の合算値
Q.あなたの満足度についてお聞きします。最も当てはまる選択肢をそれぞれ一つ選んでお知らせください。(7段階尺度)
※スコアは、「非常に満足」「満足」「やや満足」の合算値
Q.あなたの満足度についてお聞きします。最も当てはまる選択肢をそれぞれ一つ選んでお知らせください。(7段階尺度)
※スコアは、「非常に満足」「満足」「やや満足」の合算値
仕事を選ぶ上で重視するのは、「希望する収入が得られること」が9カ国でトップ。シンガポール、インド、オセアニアは「仕事とプライベートのバランスがとれること」、マレーシアは「雇用が安定していること」がトップ。
日本は、トップ3に「職場の人間関係がよいこと」「休みが取れる/取りやすいこと」といった職場内の人間関係が入っており、他国とはやや異なる傾向。
Q.あなたが仕事を選ぶ上で重視することは何ですか。(優先度の高いものから上位5位まで/選択肢26項目)
転職回数と転職意向
いずれの国でも平均で2回を上回り、中でもオセアニアは、平均3.5回以上と高水準で、人材の流動性の高さがうかがえる。インドは半数以上が転職意向を持っている。
転職した最初の年の収入
インドや東南アジアでは転職により年収が増加。日本は年収増加につながらない傾向。
転職理由
「給料に不満」は各国共通で、東アジアと東南アジア(ベトナム以外)では転職理由のトップ3に入る。東アジアは、処遇以外に会社や業界の先行きも気がかり。日本は精神的ストレスや体力的な理由で転職する傾向。東南アジアとインドは、経験や知識向上のための転職意識が強い。
転職に対するイメージ
全14ヵ国・地域でポジティブなイメージ。「総合的に見てよい」「成長につながる」「キャリアアップ」「スキルアップ」が7割以上。ただし、中国と日本では「できれば避けた方がよい」が4割超。
現在の勤務先で継続して働きたい意向は、14ヵ国・地域で5割以上。インド、ベトナム、中国では8割を超える。
年代が高くなるほど現在の勤務先での勤続意向が高まる傾向。
今後の転職意向は、インドを除いて5割未満。日本は最も低い25%。
年代別に見ると、20‐30代の転職意向が高い国が多い。
独立・起業意向は、東南アジア、インド、中国で高い傾向。
年代が若いほど独立・起業意向は高い傾向がみられる。
「何歳まで働きたいか」は、日本が63.2歳で最も高い。東南アジアは58歳未満。
男女による大きな差は見られないが、韓国、シンガポール、マレーシアは女性がやや低い。
年代別にみると、年代があがるごとに働きたい年齢は高くなり、50代以上は全ての国で60歳超え。
Q.あなたは人生で何歳まで働きたいと思いますか。希望する年齢をお知らせください。
▼何歳まで働きたいと思っているか 実数回答
上昇志向が強くみられる東南アジアとインド。「会社で出世したい」など高い傾向。
多様性への受容度が低い日本、中国、韓国。一方、ベトナム、タイ、フィリピン、オーストラリア、ニュージーランドは高い傾向。女性や年下の上司、外国人と働くことへの抵抗感に差が見られる。
働き方の柔軟さを求める東南アジアとインド。好きな「場所」や「時間」で働きたい要望が高い。
・働くことを通じた成長イメージは、「給料・報酬が上がること」 「新しい知識や経験を得ること」
「成長=スキルアップ」のイメージが強い
成長志向度、成長実感度はともにインドネシア、フィリピン、インド、ベトナムで非常に高い。
働くことを通じた成長が重要だと考える「成長志向度」は、ほぼ全ての国で90%以上と高い。
過去1年を振り返り仕事を通じた成長を実感できている「成長実感度」は、70%以上の国が多い。
▼働くことを通じた成長を重要だと考えている(成長志向度が高い)人の割合(%)
Q.あなたにとって、「働くことを通じた成長」は、どのくらい重要だと感じますか。(7段階尺度)) ※スコアは「とても重要だ」「重要だ」「やや重要だ」の合算値
▼成長を実感できている(成長実感度が高い)人の割合(%)
Q.過去【1年間】を振りかえったとき、あなたは仕事を通じた成長を実感しましたか。(7段階尺度)※スコアは「とても実感した」「実感した」「やや実感した」の合算値
東南アジアやインドは、社外学習・自己啓発が活発で自己研鑽に意欲的。一方、日本は「とくに何も行っていない」が46.3%で約2人に1人。
各国共通で高い学習・自己啓発は「読書」「研修・セミナー、勉強会」。
Q.あなたが自分の成長を目的として行っている勤務先以外での学習や自己啓発活動についてお知らせください。(複数回答/選択肢11項目)
どの企業で働きたいと思うか聞いてみると、ほとんどの国で「自国の企業」が1位だが、ベトナムは「日本企業」、フィリピンとシンガポールは「アメリカ企業」が1位。
日本企業での就労意向は東南アジアで高い傾向。タイ、フィリピン、インドネシア、ベトナムで5割以上、マレーシアで4割。インドと台湾でも3割と高め。
Q.以下のどの企業で働きたいと思いますか。(複数回答/選択肢9項目)
「待遇がよい」「福利厚生が充実」イメージが全体的に上位。韓国、香港、台湾、シンガポールでは「日本語が話せないと評価されない」や「日本人でないと出世できなさそう」がトップ5に入る。
「雇用が安定している」イメージは、タイ、フィリピン、インドネシア、ベトナムで4割超で、中国、韓国、台湾でもトップ5に入る。
Q.あなたの国にある日系企業で働くことのイメージについて、あてはまるものをすべてお選びください。(複数回答/選択肢19項目)
ほとんどの国で「アメリカ」はトップ3に入り、「オーストラリア」と「英国」も7ヵ国でトップ3に入る。「アメリカ」の人気が高く、7ヵ国で1位。香港とマレーシア以外の国でトップ3に入る。
「日本」はベトナム、タイ、インドネシアで1位、台湾、フィリピンで2位。年代別で差が大きくみられるのは、ベトナム、台湾、マレーシア、オーストラリア、シンガポール、中国で、ベトナムは50代、台湾は30代の割合が高い。また、「日本」がトップ5に入っていないのは、シンガポールとオセアニア2ヵ国。
Q.あなたは、世界のどの場所でも働けるとしたら、働いてみたい国・地域はありますか。あてはまるものをすべてお選びください。(複数回答/選択肢23項目)
▼どこの国・地域で働きたいか
本記事はお役に立ちましたか?
はたらく幸せ/不幸せの特徴《仕事・ライフサイクル 編》
オンライン時代の出張の価値とは~出張に対する世代間ギャップと効用の再考~
早期リタイアを希望する20~30代の若手男性が増えているのはなぜか
PERSOL HR DATA BANK in APAC
働く10,000人の就業・成長定点調査
シニア就業者の意識・行動の変化と活躍促進のヒント
会社員が読書をすることの意味は何か
「若手社員は管理職になりたくない」論を検討する
コロナ禍で「ワーク・エンゲイジメント」はどう変化したのか?ー企業規模に注目して
20代の若者は働くことをどう捉えているのか?仕事選び・転職・感情の観点から探る
20代若手社員の成長意識の変化 -在宅勤務下の育成強化も急がれる
グローバル就業実態・成長意識調査(2022年)
20代社員の就業意識変化に着目した分析
40代社員の成長志向に変化 40代ミドル層が仕事で成長を実感し続けるには?
働く10,000人の成長実態調査2021
特別号 HITO REPORT vol.6『APAC就業実態・成長意識調査2019』
働く10,000人の成長実態調査2017
follow us
メルマガ登録&SNSフォローで最新情報をチェック!