組織開発ワークショップで社員の意識変革とコミュニケーションを強化
「Trusted Global Innovator」をグループビジョンとして掲げ、事業のサービス化、グローバル化を推進する株式会社NTTデータ。法人第二サービス担当は、金融機関のインターネットバンキングなどを展開する事業部において、法人向け決済サービスの企画やシステム開発を行っています。また組織としては2020年10月に別担当でサービス開発していた2つのチームが統合しました。これを一つの機会として組織力強化のため、全12回にも及ぶ「組織開発ワークショップ」を実施。その狙いと効果について、事務局を務めた竹村 昌也部長、村山 陽一課長、亀谷 智将師範、またメンバーとしてワークショップに参加した起田 萌々香様にお話を伺いました。
竹村氏:ひとつには環境変化があります。これまではシステムを開発してお客様に届けることが私たちの役割であって、またお客様の課題や要望は明確でした。よって、私たちの強みである開発力やプロジェクトマネジメント力を発揮して、どうやって品質の高いシステムをスケジュール通りに提供することが求められてきました。
しかし現在は、社会環境の変化やテクノロジーの進化のスピードが早いため、弊社もお客様も明確な答えが無い中でそれを自ら定義して、ビジネスにしていく必要があります。そのために、自らが「なぜ」「何を」をすべきなのかを考えて定義し、それを組織として実行できるようにしていくことが求められます。このため、社員自らが問いを立て、答えを導き出す力を養っていかなければならないと考えるようになりました。これまでは「How」の力を求められていたのが、「Why」や「What」を見つける力を求められるようになった感覚です。
もうひとつは、新型コロナによるテレワークの促進などから、働き方の多様性が高まっていること、また2020年10月に担当再編があり組織内外の関係構築に課題を感じていたためです。
そこで、自らが導き出した答えを担当内で共有するとともに、自らを省みる機会となるように、対話を中心としたワークショップを企画することにしました。
竹村氏:最初は事業部で担当横断的な実施形態を考えましたが、事業部全体だと規模が大きく効果が見えづらいかもしれないと考え、まずは担当単位で小さく始めてみようと思いました。
竹村氏:まずワークショップの目的は、環境が変化する中で一人ひとりが何を目指すのか考えて実行し、その先に組織として成果を上げられる状態にすることでした。また、会社としても世の中的にもキャリアに対する考え方や価値観が多様化していく中で、自分自身のキャリアについても画一的な発想から抜け出す必要があると感じていました。個性や価値観を大事にしつつ、スキルや知識力を高めるなど、この先のキャリアを自分事と捉えてもらいたいと強く思っていました。
そこでパーソルさんからのご提案でワークショップを大きく3つのフェーズに分けました。最初のフェーズ1は「常々自分がこう変えたいと感じていること」をテーマに置きました。また元の組織が異なるメンバーでグループを組んで「事業部や担当としてこれからどうするか」といった固いテーマでいきなりディスカッションすると、話し合いが進みにくくなると想像しました。そこでまずはお互いを知ること、話しやすい土台をつくることが大切であるとパーソルさんからアドバイスがあり、同じ組織で入社年次が近いメンバー同士でグループを編成して、仕事や職場で日頃感じていることを話し合うこととしました。
続いてフェーズ2では、部課長から社会や金融業界などの変化についてのインプットを行った上で自分たちの役割を考えてもらい、フェーズ3では法人第二サービス担当としてこれから何をするためにどんな組織へ変化していくのかを考えていく流れにしました。
またこれらのテーマや毎回のコンテンツの設計については、私たち事務局とパーソルさんで、前回ワークショップを振り返り、次回に向けて毎回議論を交わしました。
ワークショップの全体像
フェーズ | 回数 | 日程 | テーマ |
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1 | 1 | 2021年10月~11月 | 日常業務で常々感じていること |
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3 | |||
2 | 1 | 2021年11月~12月 | 環境変化に対して組織として必要なこと |
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3 | 1 | 2022年1月~3月 | 業務の変化、役割の変化 |
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3 | ゲスト講師による講演 | ||
4 | 来年度の目標達成に向けて | ||
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6 | ワークショップ全体の振り返り |
村山氏:これまでも月1回のコミュニケーションタイムが設けられていたのですが、プロジェクト状況の共有などがメインでコミュニケーションとしては一方向でした。今回のワークショップはそれとは異なり、テーマに沿ってグループメンバーでディスカッションし、それを担当全員で共有する双方向スタイルでしたので、組織としての一体感が深まったと感じます。各回でグループ編成を意図的に変えていったのもコミュニケーションの深化に効果的でした。
亀谷氏:テーマを絞って語り合う中で、今まで接点や会話がなかった人から、会社に対する誇りや仕事への熱い想いなど、普段あまり聞けないようなことを聞けたことはとても有意義でした。こうした機会がないと聞けなかったことだと思います。
起田氏:私は入社1年目でワークショップに参加したことで、いろいろな方を深く知ることができてよかったと思います。仕事でちょっと聞きたいことがあるときに気軽に聞ける先輩が増えたり、挨拶や会話ができる方が増えたり、小さいことですが自分としては大きな変化だと感じています。
村山氏:互いに話しかけやすい雰囲気が生まれました。また、最後のフェーズでは事業と組織、一人ひとりの行動を絡めながら考えていくワークショップを行いました。このことで、自分たちのサービスとエンドユーザーとのつながりを意識するなど、通常業務ではなかなかもてない視点で考えてくれるようになったと思います。普段の会話の中でも、「考えたことがなかったので、やってよかった」という声が出ていますし、みんなの中に新たな視点や気づきが生まれていると思います。
亀谷氏:劇的な大きな変化という意味では目に見えるものはないのですが、じわじわ浸透してきているのかなと感じます。たとえばサービスの売上の話などをしているとき、無関心だったり、無反応だったりする様子はなくなりました。ワークショップ終了後も、各サービスをより自分事として捉え、意見を交わす流れが定着してきています。
起田氏:個人としての話になってしまいますが、フェーズ2以降は毎回インプットの時間があり、この先を考えるための重要なキーワードを色々といただけて刺激になりました。「自分の業務」と「社会の変化」を紐づける視点がもてるようになりました。
竹村氏:2022年4月、新年度を迎えて法人第二サービス担当としてこれから取り組むべき4つの課題を設定しました。今回のワークショップを通じて関係性の強化が図られ、考えや意見をシェアする土台ができているので、まずは自分事として課題を深く考え、個人の目標設定と紐づけてもらい、達成するためにはどのような取り組みが必要かを、メンバー同士でシェアしていきたいと考えています。20人いれば20通りの工夫やアイデアが出てきますし、それらをシェアするだけでも刺激になり、組織の成長にも、個々人の成長にもつながっていくだろうと考えています。
亀谷氏:今回のワークショップは、ディスカッションの様子や振り返りで出てきた内容を踏まえて次のテーマを決めていきました。まさに走りながら創り上げていった実感があります。そのなかで事務局として、先に進めるためにどうすべきか悩んだり、葛藤したりする場面も少なくありませんでしたが、パーソルさんには常によき伴走者でいていただきました。様々な選択肢を常に提案してくださり、方向性を示していただいたことで、長丁場のワークショップを最後まで走り切ることができたと思っています。今後もぜひ伴走者でいていただきたいと思います。
村山氏:自分たちにノウハウが無いなかでの一からのスタートでしたから、さまざまな助言やアドバイスをいただくことができました。本当にありがたかったと思います。プロセスを積み上げ、形にしてきた半年を通じて、我々なりのノウハウもできてきたと感じています。今度はそれを事業部や社内にもぜひ展開していきたいと考えています。パーソルさんには多くの知見やノウハウがあると思いますので、これからも力を貸していただきたいと思っています。
多くの企業で「社内コミュニケーションの不足」という課題が共通して聞かれます。部署間の連携や従業員同士の連帯感の欠如など様々な懸念はあるものの、有効な処方箋が見つからない。そうした企業も多いのではないでしょうか。
法人第二サービス担当は2020年に組織再編があり、関係性構築に課題が生まれやすいタイミングで、こうした対話型のワークショップを実施されたことは大変効果的でした。今回、皆さんには社会や顧客の変化に合わせて、自分たちの組織はどうあるべきか、また、自分自身の役割、さらにはこれからのキャリアについてもお考えいただきました。コロナ禍のためオンライン会議が多く、「名前は知っているが、会ったことがない」「声しか知らない」といったメンバーもいる中でのスタートとなりました。ワークショップを通じて、ともに働く仲間が「仕事をするうえで大切にしていることは何か」「顧客にどのようなことを提供したいと考えているのか」「私たちはどのように変わっていきたいのか」といった対話を重ねていきました。