実践力を高める新入社員研修をオンライン環境で実施

パナソニック システムソリューションズ ジャパン様

実践力を高める新入社員研修をオンライン環境で実施

パナソニックグループにおいてBtoB、BtoGのビジネスを展開するパナソニック システムソリューションズ ジャパン株式会社では、社内に研修機関を有し、独自に人材開発・能力開発を行っています。2020年度も約130名の新入社員を受け入れ、オンラインで新入社員研修を実施しました。営業やマーケティング、SEや施工など幅広い職種を集めた研修を通して、いかに現場での実践力を高めることができたのか、新入社員・若手育成担当の渡辺氏、篠田氏にお聞きしました。

左から、教育研修課 篠田尚徳氏/ジャパンソリューションユニバーシティ 校長 柚村 隆氏/教育研修課 課長 渡辺久美子氏左から、教育研修課 篠田尚徳氏/ジャパンソリューションユニバーシティ 校長 柚村 隆氏/教育研修課 課長 渡辺久美子氏

CONTENTS

  1. 新入社員研修のリニューアルについて
  2. すべてをオンライン化した新入社員研修
  3. 集合型研修をオンライン研修化にあたっての不安
  4. 受講者からの反応
  5. 今後、新入社員の育成にあたって強化していくポイント
  6. パーソルグループへの今後の期待

新入社員研修のリニューアルについて

―2020年度は新入社員研修を大きくリニューアルされたとお聞きしています。まずその背景やねらいをお聞かせください。また、貴社では、営業やマーケティング、SEや施工など幅広い職種の新入社員を迎えられます。こうした様々なバックボーンをもった新入社員に対する研修では、どのようなことを重視していらっしゃいますか?

渡辺氏:当社の新入社員は、入社後すぐパナソニックグループ全体の研修機関である人材開発カンパニー(大阪府枚方市)で導入研修を受講します。その後、当社独自に全職種合同での研修を行いますが、その狙いとしては、配属先の職場で一人ひとりが即戦力となることを目指しています。また、当社のミッションである「お客様の課題を、お客様と共に解決して、お客様の経営に貢献する」ことを目指して、早期にそうした実務に携われるような人材の育成を大切にしています。

じつはコロナとは関係なく2019年秋ごろから、新入社員研修の見直しを行っていました。当社は「事業は人なり」という考え方のもと、人を起点に事業を考えてきましが、そのなかで、新入社員の育成についても、従来の職場のOJT任せではなく、早期に、お客様の課題解決に貢献できるようになってもらう内容を模索しました。

たとえば、新入社員研修でビジネスの「基礎」を身に付け、職場でのOJTを通して成長してもらうことが一つの理想の形です。ただし、「基礎」と言っても、単にマナーだけではなく、会社の存在意義「何のために、自社は存在しているのか、自分たちは何のためにこの会社で働くのか」を考え、行動を通して理念を理解したうえで、自ら考え即実践できるようになってほしいと考えました。これは、すべての職種に共通して求められることです。

篠田氏:当社が大切にしている考え方として「自主自律・自修自得」というものがあります。その意図は、「他を頼り人をあてにしていては事は進まない。自らの力で、自らの足で歩いてこそ他の共鳴も得られ、知恵も力も集まって良き成果がもたらされる。自ら進んで学び、事の本質を究める。」ということですが、そうした点で見ても、新入社員の社会人力・人間力が弱まっているのではという現場からの声があり、課題と感じていたことから、今までの新入社員研修にプラスしてやってみようということになりました。コロナは、こうした方向性をさらに強化するきっかけになりました。

すべてをオンライン化した新入社員研修

―この度の新型コロナウィルス感染症拡大の中、新入社員を迎えるにあたって、どのようなご苦労がありましたか?

・オンラインでの受講環境の整備

渡辺氏:急遽すべての研修をオンラインで実施しなければならなくなり、まずは、全国各地から入社する新入社員がオンラインで受講できる環境を整えることが第一関門でした。

篠田氏:新入社員全員にPCを配布するためには、会社としての機密情報の取り扱いのルールやセキュリティの問題を解決する必要がありました。それらを解決した上で、全員にPCを配布できたのは5月で、4月は個人のPCで対応してもらわざるを得ない状況になりました。ただ通信環境を含め、こうした準備に、社内の多くの部門が「新入社員のために何とかしよう」ということで協力してくれました。その点は我々も大変感謝しています。
それでも様々なトラブルがありました。個々人の通信環境やITリテラシーの違いから、さまざまな問い合わせが寄せられましたが、一つひとつサポートしながら進めてきました。こうした環境整備は、来年度以降も継続する課題として留意して取り組んでいきたいと考えています。

・オンラインに適したカリキュラムへ

渡辺久美子氏

渡辺氏:もう1点は、研修のカリキュラムです。すべての研修内容をリアルの集合形式を想定して準備していたため、いろんな意味で必死でした。たとえば録画とライブ配信のどちらがいいのかといったことも含め、試行錯誤の連続でした。
オンライン環境でもカリキュラムの内容をできるだけ変えずに、さらに質を落とさずに実施したいという思いが強くあり、パーソルさんに仕立て直してもらうことになりました。
マナー教育などオンラインでは難しい内容もありましたが、代わりにグループワークの時間を長くとるなどして、新入社員が安心して取り組める工夫を大切にしました。
事務局としての発見は、リアルの研修であれば自然とケアできていたことが、オンラインでは、こちらから積極的にいかないと状況が分からないことでした。130名一人ひとりに寄り添いきれなかった部分もあったかもしれません。
これからの新しいやり方を、新入社員を含めて事務局とパーソルさんで試行錯誤しながら作ってきたように感じています。パーソルさんには任せられる安心感がありました。

・ワークショップを重視した研修プログラムへの転換

渡辺氏:2020年度の新入社員研修は、eラーニングの受講に加え、次の3種類の研修を展開しました。
1、2は希望者が参加し、3は全員必須の研修として実施しました。

プログラム名称 時間 回数 ワークショップ 概要 主たるテーマ
1. プロジェクト型問題解決ワークショップ 6月中旬~7月下旬 3日間×4回 研修全体 行政課題や社会課題をテーマにグループワークを通じてソリューションを検討する 行政課題佐渡島の観光振興社会課題外国人雇用、障害者雇用
2. ワークショップ型ビジネススキル研修 8月中旬~9月中旬 9日間 各日の約半分がワークショップ ビジネススキルテーマのインプットと学んだスキルを活かして取り組むワークショップ 聞き出す力・レポート力、業務プロセス・仕事の可視化、仕事の段取り力・計画力等
3. ビジネス総合スキル研修 10月初旬~11月中旬 14日間×4クラス 14日のうち4日 ビジネススキルテーマのインプットと学んだスキルを活かして取り組むワークショップ 問題解決、コミュニケーション、チームビルディング、企画力・発想力、仕事の段取り等

「1.プロジェクト型問題解決ワークショップ」は実在の市町村が抱える行政課題や、外国人雇用や障碍者雇用などの社会課題の解決に取り組むワークショップ型の研修でした。実際の行政職員や社会課題解決に取り組む実務家へのインタビューやグループでの情報収集を通じて、「何が課題なのか」「どのような課題なのか」をグループで考え、課題解決策を見出し、行政職員などにプレゼンし、フィードバックを受ける実践的な内容でした。
この研修は、急遽コロナ禍に対応するため、配属後に強制でなく、自由に選択して受講する研修として企画しました。パーソルさんには、急なお願いにも関わらず即座に研修内容を提案いただけて感謝しています。意識したのは、基礎的なビジネススキルの知識習得型の研修ではなく、自らが考え、意見を出し合い答えを模索するワークショップ形式の研修であることです。新入社員同士、コミュニケーションを図ることでき、社会課題の解決・社会貢献にも結び付く体験研修となりました。

また、「2.ワークショップ型ビジネススキル研修」は、ビジネススキルを学ぶとともに、グループワークを通じて課題に取り組むワークショップ型の研修でした。例えば、身近なイベントをテーマとして取り上げ、ワークショップを通じてどのような段取りが必要か、どのようなリスクに備えるべきかなどを考えていきました。イベントの準備スケジュールや案内チラシなど成果物の作成を行っていくことを通じて、「仕事の段取り力・計画力」の実践的なスキルを身につけていきました。

「3.ビジネス総合スキル研修」は10月に実施しましたが、その前に職場に配属をしたため、実際の仕事をしながら、覚えながら研修に入る形になりました。わずかでも職場感覚を身に付けてから、理論を学ぶことによって、「そうか、こうすればよかったんだ」「間違っていなかった」といったコメントも聞かれました。こうした感覚で研修に臨んだ点はとても良かったと思います。
また、講師から「イメージすることが大事」「イメージしていないと実現できない」というメッセージを繰り返し発していただきました。実際の仕事のなかでも、先々のことを考えてイメージすることができれば、リスクも考えていい方向に持っていけるので、そうした点を実感してもらえたことで、研修がより有効になったと感じています。

集合型研修をオンライン研修化にあたっての不安

―集合型研修のオンライン研修化にあたって、不安をお感じになる点などはありませんでしたか?

渡辺氏:オンライン研修での一番の心配は、受講者同士のコミュニケーションが取りづらいことでしたが、その心配な点をカバーするために、ワークショップを多めにとって交流が図れるようにしました。さらに、答えを与える、理論を教えるだけではなく、自分で考える、皆で知恵を合わせて答えを出していく、そうしたことを体験する研修を今回は提供できたと実感しています。チームワークやフォロワーシップなど、自分がそこで何をしなくてはいけないかを考えることも学べたのではないかと思います。

篠田氏:研修では、パーソルの講師からは答えを言わず、受講者自身が深く考えられるように進めていただきました。実践に向けた訓練を研修期間中にできたのではないかと思います。これからいかに習慣化するか、現場でどう活かすかは、彼ら次第。一人ひとりにかかっています。受講者からのコメントには、現場で生かしたいという前向きな内容のものも多く見られました。

―「1.プロジェクト型問題解決ワークショップ」では、実在の市町村が抱える地域課題の解決や、外国人雇用や障害者雇用といった社会課題の解決をテーマにしました。初めての取組みも多かったと思いますが、いかがでしたか。

渡辺氏:「1.プロジェクト型問題解決ワークショップ」は、行政職員や社会課題に取り組む実務者に対するインタビューやプレゼンテーションなど、社外との接点を設ける企画でした。じつは当初は先輩社員をお客様と見立てて、お客様のお困りごとを聞き出して提案していくという計画もあったのですが、実際のお客様へのヒアリングを体験できたことは、新入社員にとって貴重な経験になったと思います。

パーソル(岡):研修のなかでコミュニケーションとプレゼンテーションのスキルを学んだうえで、お客様へのヒアリングを実施したので、どういう質問をして、どういうことを引き出すかを具体的に準備して臨まれていました。アウトプットし実践する場があることを伝えながらインプットのプログラムを進めていたことが、スムーズな実践につながったと思います。

渡辺氏:受講者のコメントにも、「もう少しお客様の課題を引き出せればよかった」といった内容がありました。社会課題の解決に貢献するということは当社の使命なので、我々が事業で大切にしていることを体感できたところは大きかったのではないかと思います。
新入社員にとってもチャレンジにつながる取り組みでしたが、インプットをきちんとしたうえでの内容だったので、自信をもって取り組めたことがよかったと思います。

篠田氏:そういうことに気づくだけでも十分ではないでしょうか。

受講者からの反応

―パーソルの担当講師や事務局体制などについては、いかがでしたか。また、受講者から何か反応がありましたか?

渡辺氏:事務局の山元さんには、一人ひとりの特性やグループとしてのまとまり、雰囲気、議論が活性化しているかどうかなどを細かく観察してフォローいただきました。研修内容に合わせてグループ編成を柔軟に変更し、強弱をつけるようにさまざまなグループ編成を試しながら進めていただきました。この3週間の研修を通じて、同期同志のつながりを深めることができたというコメントもあり、こうしたきめ細かい運営がとてもありがたかったです。

パーソル(山元):コミュニケーションの取り方にもタイプがあって、先に意見を出す人もいれば、皆さんの意見を聞いたうえで発言する人もいます。そうしたメンバー構成のバランスを考えながら、対応しました。一人ひとり様子を見ることを大切にして、活性化していないグループには進んで入っていって働きかけました。

渡辺氏:比較的コミュニケーションを積極的にとる営業とじっくり考えて発言する施工の人が一緒のグループになることで、化学反応というか、お互いの違いに驚く場面もありましたが、逆によかったと思います。人としてのつながりやお互いの仕事内容や職場をリアルに知る体験になったのではないでしょうか。

篠田氏:先に配属されていたので、自分の職場の様子は分かっていましたが、それとは全然違う人たちで、施工の人たちは本当に驚いていたと思います。逆に施工の現場感を他のメンバーと共有できたのも良かったです。

渡辺氏:早い段階から、違う職種がどういうことをやっているか、どんな仕事をしているかをリアルに学べたので得るところは大きかったと思います。事業としてはすべての職種はつながっているので、全体でお客様の課題解決に貢献していくという視点を持ってもらいたいと思います。そして、何より、この新入社員の時にできたつながりをこれからも大事にしていってもらいたいと思います。

篠田氏:アンケートに前向きな意見が出てきたことが、我々としては成功だと思っています。たとえば、4月からの一連の研修の流れや目的が分かりやすくて腹落ちしたといったコメントがあり、企画側の意図した狙いが伝わったと感じました。

渡辺氏:同様に、アンケートに書かれていた良かった点としては、「講師がどんな発言をしても、否定せず、質問で引き出して整えてくれた」といった内容がありました。やはり講師の人柄に助けられた部分も多かったと感じています。講師の皆さんの多様なキャリアに裏打ちされた様々な体験談もあり、それによって腹落ちしたのではないかと思います。

パーソル(岡):新入社員の方達は、初めてのことばかりです。オンラインでの初めての研修ですし、人事に見られていないかなど、色々な不安を抱えて研修に参加しています。前向きに取り組んでもらえるように、かといって面白おかしくではなく、真剣に・楽しく取り組めるよう細かな軌道修正も心掛けました。

パーソル(山元):回を追うごとに積極的に誰かが動き、スムーズに役割分担する雰囲気が定着していったことを実感しました。

パーソル(岡):リアルだと様子見になったり、口火を切るのをためらったりするケースも、オンラインであるがゆえに、誰かが動くのを待っていても仕方がないという意識や、誰かが動いたら自分はどうするといった役割分担を考えて、さっと動けるようになったというのは、自律的に動くマインドが醸成されたのではと感じました。こうしたマインドの部分の変化も大きいのではないでしょうか。

渡辺氏:何か止まってしまっても、意見を出して「まずは動こうよ。」といった切り替えができる人たちになってくれたと思います。

パーソル(岡):最終日、受講者の皆さんに「研修初日に戻れたら、自分にどんなことを伝えますか?」と聞いたところ、「誰かが発言しないと、何も前に進まないよ」「この場をどう進めたいのか、もっと自分で考えて」「とにかく何かを発信して」という声が上がっていました。今後、受け身でなく、仕事に主体的に関わっていくかを考える良い助走期間になったと思います。

今後、新入社員の育成にあたって強化していくポイント

―今後、新入社員の育成にあたって強化していくことをお考えのポイントがあれば、お聞かせください。

篠田尚徳氏

篠田氏:今年やってみて、コンテンツの良しあしが一番大きいと感じました。今年は良い内容で実施できたので、今年度の振り返りと精査をしっかりやっていきたいと考えています。
また、自主自律という点もオンライン環境下だから普段より引き出せた部分もあったと思います。リアルだと譲り合うようなことが出がちですが、ある意味、危機感を持ってやってくれたことは、思ってもみなかった効果でした。来年度はオンラインとリアルを組み合わせて、いろいろと相談しながら考えていきたい。

渡辺氏:もう一回、「新入社員教育において伝えるべきこととはなんだろう」とあらためて考えています。やはり、経営理念を理解いただくことは外せませんが、加えて、即戦力となるため、配属前に自身の学びの自主性次第で現場でのスタートが変わることを理解いただくことが、益々重要になっていると感じています。「自主性」を早いうちから身に付ける、磨くことが重要だと思いますし、もっと強化できたらいいと考えています。

パーソルグループへの今後の期待

―パーソルグループへの今後の期待について、ぜひお聞かせください。

渡辺氏:今回の新入社員研修には、当社の一員のような姿勢で取り組んでいただきました。これからも、新入社員研修というポイントだけでなく、その後も社会で活躍できる人材になってもらうための、人材育成についても教えていただきたいと思います。
また、今年はオンラインだけで進めましたが、やはりそれだけでは難しい部分もありました。オンラインとリアルの融合、130名をどうしたらハイブリッドで効果が出せるのか、他社事例を含めて教えていただき、相談に乗っていただきたいです。

篠田氏:こうした環境下で新入社員は上下左右の人脈形成がすすまない状況になっており、悩みを相談する、励ましあう、協力しあう等ができる人脈が希薄なままオンラインでの研修に入っています。そんな状況下では自身の居場所がなかなか確立できず、本来やれることができないままあせり、悩み、ストレスをためてしまう等の懸念もあります。そういった意味で横のつながりができるリアルな集合研修が一番だと思っていますが、状況に応じてオンラインとリアルを効果的に組み合わせた形でより効果的なものにしていきたいですね。どうしたら自分の勤めている会社に居場所と誇りを持ってもらえるか、そうした要素も一緒に検討していきたいと思います。

取材日:2020年11月
所属・役職は取材当時のものです。

人材開発・組織開発

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