若手社員の自己変革を促し未来の事業拡大を支える組織を作る
自己革新をチーム革新・全社革新へとつなげる
1951年に創業、1955年に倉庫業を開始。その後、営業倉庫会社としての基盤を強化し、1989年に大和実業からダイワコーポレーションへ社名変更。2011年に曽根和光氏が代表取締役社長に就任。「倉庫会社から物流CREATORへ」を掲げ、物流アウトソーシング、物流不動産、物流コンサルティングと事業を拡大。2014年には沖縄県からの受託事業として泡盛を沖縄県外への出荷する物流共同化に取り組み、2017年には本事業が「グリーン物流パートナーシップ会議 特別賞」を受賞。常に一歩先をいく物流のプロフェッショナルとして物流の清流化、効率化、お客様の商品拡販を追求している。
曽根 ダイワコーポレーションで働く社員は、物流を扱うプロである前に、立派な人間でなければならないと考えています。どんな仕事でも立派な人・感じのいい人には好感を持ちますし、また一緒に仕事をしたいと思っていただける可能性が高まります。立派な人間であるためには、その根幹の人間力を高める必要があり、10年ほど前から人間力向上を絡めたリーダーシップ研修を実施したいと考えていました。同時に、近年は事業の拡大に伴い若手を急ピッチで採用しており、社員の平均年齢が36歳と下がってきているため、若手を育てることが喫緊の課題でした。そこで約5年前から構想し、計画を練り上げ3年前から富士ゼロックス総合教育研究所(現 パーソル総合研究所)へリーダー研修をお願いしています。
もともと私は、担当者の対応力が素晴らしい富士ゼロックスのファンで、コピー、ファクスからシステム関連、ISO取得まで幅広くおつきあいさせていただいています。どの分野の担当者にお会いしても立派な方が多く、まさに人間力が高い集団であるという評価でした。関連会社である富士ゼロックス総合教育研究所(現 パーソル総合研究所)も、やはり担当いただいた営業・コンサルタントのみなさんの人間力が素晴らしいと感じ、人材を成長させていくための課題について相談しています。
八木 曽根社長からは4〜10年目の主任・係長クラスを育てたいというご依頼だったのですが、まずはその若手に日々接している管理職の部下へのかかわり方を変革させないと本格的に会社は変わっていきません。そのため、対象は主任・係長ではなく課長クラスに力点を置くべきではないか?とご提案しました。議論した結果、主任・係長クラスと課長クラスの2階層に対して同時並行で研修を実施することになりました。そのとき、研修を通じて共通言語が増えるように同じプログラムを実施したいとお願いしました。その提案を受け入れてくださり、研修がスタートしました。
曽根 現在3年目の研修プログラムに入りましたが、初年度から研修を受講した主任・係長が、学んだ手法を実際の仕事に取り入れていたのを見て感動しました。主任・係長らと交わす会話のレベルも明らかに上がり、1年目から成果の芽を感じました。さらに、研修を通して部門を超えた新たなつながりができ、風通しがよくなって一体感が生まれたことも大きな成果だと思います。今までは、各営業所間や職種間の交流が少なかったため、こうした同世代の交流やチームワークは確実に今後につながっていくと感じます。実際に、直接部下でない社員のいいところを他の部門の人が話していたり、他部門の若手の名前を管理職からよく聞くようになりました。研修前にはなかった光景です。物流業界は受動的な仕事が多く、普段通り仕事をするだけでは社員が指示待ちになりやすい業態です。しかし、一人ひとりが能動的・積極的に仕事をすればお客様との関係をさらに構築でき、新たな課題を聞き出し、先手を打っていくことができます。主任・係長は研修を通じて能動的に動けるようになってきていますが、さらに多くの社員が能動的に行動し、お客様に対して積極的な提案ができるようになることが今後の課題です。将来を見据え、現在AIなどを活用した機械化を進めており、それをマネジメントする管理者を育てたいと考えています。また、沖縄での新たなビジネスの展開も始まっており、若手リーダーの活躍に期待しています。
八木 3年が経過し、一定のご評価をいただいていますが、今後営業所単位でもっと経営的な視点をもってオペレーションができれば、さらに成果が上がる可能性があると感じています。次期幹部候補の育成に向けたステップアップの研修が必要だと思います。現在、異業種の同世代とともに研修を行うことでさらに視野を広げるための他流試合なども計画に上がっています。今回育った若手が未来の中核的な人材になり、さらに継続的に若手が育つ仕組みが作れるように支援して参りたいと思います。
曽根 今、ビジネスは自社ですべてを抱える時代ではありません。今後の当社の発展は、いかに水平協働型で有力な会社とアライアンスを組んでいけるかで成長の加速度が変わっていくと思います。当社のコア事業は物流事業ですが、私はそこに固執はしていません。世の中の環境が激変していく中で、先手を打って変化していきたいと考えています。そのためには、今の事業を支える専門性も大切ですが、やはり根本的な人間力やコミュニケーション力を高める必要があると思います。当社の企業理念は「人とモノの真ん中に」ですが、それには「人と人の真ん中に」という意味も含んでいます。人と人の真ん中に立つことは決して簡単ではありません。小さな気づかいや心遣いにはじまり、コミュニケーション能力や積極性といったまさに人間力が必要です。これからも、富士ゼロックス総合教育研究所(現 パーソル総合研究所)には末永くお力添えをいただき、当社の人間力を高める一翼を担っていただければと思います。
研修開始時の課題は、次世代を担うリーダーの育成でした。私は次の責任者候補である主任・係長クラスのコミュニケーション力などに課題があると感じていたため、富士ゼロックス総合教育研究所(現 パーソル総合研究所)に相談して研修を企画し、ご提案いただいた骨子をもとに話し合ってプログラムをつくっていきました。対象者である主任・係長は、アルバイト・パート・派遣社員をマネジメントしている次期所長という立場です。常に目の前の業務に追われている現場では、研修より業務が優先されがちなところがあり、今回も営業所の中心的人物をまる一日研修に送り出すということに対して、最初は部門の責任者には抵抗がありました。しかし、本来はその社員が急に休んでも成り立つ業務プロセスや体制でなければなりません。ですから研修参加は会社命令として、ある意味、力技で彼らを現場から引き離すようにして行いました。
今回受講した社員は主任・係長の中でも「研修を受けたい」と自主的に手を挙げた人、かつ、上司の推薦のあった人です。つまり、立場や役割に自覚のある人で、周りから期待もされている人ということです。直属の上司である課長にも同時期に同じプログラムを受講してもらったので、研修の重要性を理解してもらうことができ、どんな研修を受けているのかもわかるため上司からのフォローもしやすかったと思います。
八木 1年目の研修は、自分自身の行動を変えることに主眼を置きました。研修ではまずTPI※という自己理解のためのテストを行い、自分の考え方の癖は何か、周囲にはどう見えているかをデータで把握します。そうして自分の思考・行動の傾向を知り、自己理解を深める場を研修と現場の両方でつくり、自分自身で行動計画を立てて上司と面談をするという流れです。そこから自分の行動を改善し、周囲との関係構築につなげることをねらいました。2年目はあるトピックについて話し合う対話会を実践し、自分が起点になってチームに良い影響を与えるという活動を通じてリーダーシップ行動の質を上げる経験をしてもらいました。まずは研修の中で対話会を実践しながらやり方を身につけ、現場に戻って対話会を実践してもらい、チームの雰囲気を変える、問題解決力を上げるなど、自分を鍛える取組みを続けてもらいました。対話のテーマは、「お互いを理解する(価値観や仕事でのこだわりなど)」や「職場の生産性を高めるための問題点、原因、施策の検討」などです。3年目は実際に考えたことをアウトプットとして提言することに重きを置き、事業の柱となる経営課題を自分たちで考え、解決策や新規事業を立案し、役員の前で発表しました。
注記:<TPI(Todai Personality Inventory・東大版総合人格目録)とは>
TPIは、東京大学のTPI研究会が開発した心理テストです。
職場での自己の行動傾向や対人姿勢等を客観的に理解し、自己の持ち味を再認識するために使用するものです。
新井 研修によって、職場の雰囲気はよくなっていると感じます。対話会を現場でも続けていますが、リーダー役を務める受講者に対し、周囲のメンバーからは「今まであまり話をしない人が話すようになった」「よく質問されるようになり、話も聞いてもらえるようになった」などの声が上がっています。また、研修を受ける前は受動的だった受講者が、部下やお客様に対して積極的に接して意見・提案する場面も多く見られるようになりました。私自身は人事制度改革に取り組んでいるのですが、若手社員が増えていく中で、いかに人を見える化し、一人ひとりの個性を把握して育成していくかが鍵となると考えていました。研修ではこの点でも学ぶところがあり、研修を受けた結果、それぞれの個性を理解しやすくなりました。
芦川 3年目の提言では、受講者から「障がい者雇用」「新規事業立ち上げのためのスペシャルチームをつくる」「沖縄でのビジネス展開」という3テーマで提言がありました。彼らは1年かけて情報収集して議論を重ね、最後には社長への提言を行いました。中には途中でテーマが変わったものもありますが、「新規事業立ち上げのためのスペシャルチームづくり」は実際に採用され、2018年4月1日に発足することになりました。このように、研修の成果が次のアクションへとつながっています。
新井 提言活動に関しては、まだ拙い部分もありますが、受講者が忙しい仕事の合間をぬってかなり苦労して取り組んできた姿を見ていたので、よくここまできたと感慨深かったです。
八木 ある受講者から「現場での対話会でメンバーの声をきちんと聞くことが実践でき、営業所の雰囲気がよくなり、離職率が下がりました」と聞き、うれしくなりました。リーダーのおかげで、現場に話しやすい雰囲気ができていることを感じています。
芦川 ある受講者は研修前までは一方的な指導を行うことが多く間違ったリーダーシップをとっていたようですが、研修後はメンバーの話を聞くという行動ができるようになりました。こういった小さな変化を一過性で終わらせることなく、継続することで人の変化を積み上げていくことが大切だと思います。
今後は社外研修に参加するなど他流試合を経験し、他社の社員がどのように考え、会社に働きかけているのかなどを知って、新たな刺激を受けることが必要だと感じています。他社との関わりから次の成長のヒントを吸収していってほしいです。
新井 八木さんには当社の若手社員の一人ひとりの性格・人柄を細かく把握していただきました。受講者の名前がでれば、その人がどんな傾向を持っていて、どんな状況かすぐに議論をすることができました。紋切型の集合研修ではあり得ないことだと思います。今後もその人に合ったアドバイスを行っていただけると期待しています。
今回研修を経て成長したリーダーには現場で実践して活躍してもらい、その後は経営幹部になるための研修を実施したいです。そして、たとえば所長になるにはリーダー研修の受講を必須とするなど、研修を中軸にした新たな人事制度をつくることが必要だと考えています。
芦川 今回、八木さんはじめ富士ゼロックス総合教育研究所(現 パーソル総合研究所)とのおつきあいにより、さまざまな考え方や研修の運営方法などを勉強させていただきました。今後も年代別、役職別など多様なメニューを提案していただき、ともに研修制度を確立させていきたいと考えています。
初めにリーダー研修を実施すると聞いたときは、正直お客様にご提案する実務には直結しないのではないか?と思ったのですが、プロジェクトを組んでマネジメントを学びながら提案活動を行う研修だと知り、お客様への提案に活かせると思い受講しました。
TPIの結果では、周囲からは閉鎖的で何を考えているかわかりづらいと見えていることがわかり、積極的にオープンに話すよう行動を変えていきました。私自身、後輩がいない時期が長く若手意識から抜け出せずにいたのですが、研修を通じて部下を育てる立場にいることを自覚し、部下の考え方や意見を聞くことができるようになりました。また、これまでは一人で完結する仕事が多かったのですが、業務拡大に伴い人員が増えているので、チームで仕事をする基礎を学べたことも大きな成果です。研修内容の各テーマについても八木さん自身がロールモデルとなって実践してくれたので、理解が深まりました。
受講を決断した当時、30歳を超えて上司も部下もいる中間的なポジションだったので、もっと力をつけてステップアップしようと思い立候補しました。最初のTPIでは自己主張が弱いと指摘され、正直落ち込むこともありました。そこで、ミーティングではなるべく自分の意見を述べ、発言回数を増やし、それまではメールで済ませていたこともフェイス・トゥ・フェイスでコミュニケーションをとるよう意識しました。研修3年目に再度TPIを受けたところ、行動の改善がスコアにも表れ、自分自身の成長を実感しました。2年目の対話会も効果的で、会を重ねるごとに人との関わりが深まっていることを感じました。それによりチームワークが醸成され、自分のグループにとってもよい研修となりました。八木さんには的確なご指摘・アドバイスをいただき、最後は何でも相談できる間柄になりました。非常に勉強になり、感謝しています。
サブリーダーとして3年目を迎えるときにリーダー研修があると聞き、若手が増える中で自分をはじめ中堅社員の成長が必要だと感じていたので受講しました。最初にTPIの結果を見たときは、自分の癖や傾向は薄々わかってはいたものの、スコアや周囲からのコメントを目の当たりにしてはっきりと自覚することができました。また、対話会を職場で実践し、部下の考え方や意見を引き出せていなかった自分にも気づきました。それからはお互いが意見しやすい環境づくりを心がけています。一方、上司に対しては、若手の意見や状況をしっかりと伝えて橋渡しになれるように心がけています。
研修は回を重ねるごとに、次も受けたいという気持ちが湧いてきました。また、八木さんがはっきりとダメ出しをしてくださるので納得するまで取り組むことができました。後輩たちには、この研修は成長につながるので受けたほうがよいと勧めています。
研修1年目は、リーダーとして肯定的なアプローチを増やしていくことを学びました。その後、回を重ねるごとにチームで考える要素が多くなり、楽しく受講することができました。特に印象に残っているプログラムは対話会です。普段は話さないような業務に直結しない内容、仕事観なども話し合うことができ、それぞれのモチベーションの源泉に多様な考え方があることを理解しました。お互いを深く理解し合って質の高い仕事をするためにはさまざまな観点からコミュニケーションをとることが必要だと再認識しました。また、ファシリテーションの重要性を学び、現場で実践することで効果を実感しました。
今回の研修で学んだ、多様性を受け入れること、相手の個性を活かしてパフォーマンスを高めることは、現場で着実に活かすことができています。八木さんとは準備段階から一緒に研修をつくっていくお手伝いができたため、ともに成果があげられたことがうれしいです。
3年にわたる今回のプロジェクトを任せていただき本当に感謝しています。私自身は、日ごろ「自分たちの組織を自分たちで活性化させていく集団づくりのご支援を…」ということを念頭に仕事に取り組んでおりますが、受講者の方々へのインタビューを伺い少しはお役に立てたのではないかと大変うれしく感じました。受講者の方々には「日々の実践を通じて、リーダーシップ行動の質を高めていきましょう」というメッセージを送り続けていました。とりわけ2年目に行った“現場における対話会開催”、3年目に行った“幹部に向けた提言作成プロジェクト”はそれぞれ大変だったと思います。しかし、そこでの実践及びその後の振り返りを何度も繰り返し行うことにより周囲のメンバーへの影響力が磨かれていったことは間違いないと思います。またTPI(東大版総合人格目録)を活用し、自身のリーダーシップ行動の質を客観的に振り返りながら行ったことも自己変革をアシストしたと再認識することができました。
受講者の方々の発言の量や質は着実に変化(成長)していると感じています。今後も自らが自らを変革できるような環境づくりをお手伝いさせていただければと思っております。
取材日:2018年2月。所属・役職は取材当時のものです。
※富士ゼロックス総合教育研究所は、2019年7月パーソルラーニング株式会社に、
2021年4月株式会社パーソル総合研究所に社名変更しました。