自社専用のセールスバイブルを作り高いレベルで面談スキルを平準化
製品中心の営業からお客様のニーズを中心とするソリューション営業への転換により飛躍的な業績アップを実現

アイデックスラボラトリーズ株式会社様事例

アイデックスラボラトリーズ株式会社様
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動物臨床検査や水・牛乳検査の分野で最先端の製品・サービス・情報技術ソリューションを提供するIDEXX Laboratories,Inc.(アイデックスラボラトリーズ社)。アメリカ・メイン州に本社を構え全世界175ヵ国以上に事業を展開。約6,000名の社員および100名を超える研究者が在籍し、新しいテクノロジー研究と獣医師向けアプリケーションの開発に取り組む。

スキルの定着には個人営業からチーム営業への転換が不可欠

逸見 賢 コンパニオンアニマル事業部 事業部長
逸見 賢

永山 未来
富士ゼロックス総合教育研究所
(現 パーソル総合研究所)
ソリューションビジネス部 4G
永山 未来

逸見 私が担当する事業部は、動物病院の獣医師様やスタッフ様が主なお客様となり、お客様が置かれている状況やニーズはそれぞれ異なります。動物病院に特化した検査診断のトータルソリューションを提供できるところが当社の強みであり、セールスにはお客様の個々の状況やニーズ把握した上で、ソリューションを提案するいわゆる「ソリューション営業」を求めていましたが、当時、多くのセールスは自社製品の特徴をアピールするプロダクト中心の営業スタイルになっていました。また、営業組織は中途採用のメンバーが中心で、培ってきたバックグラウンドはさまざまです。したがって、標準的な面談スキルやプロセスといったものはなく、セールスのやり方も個々の経験やスキルに依存していました。ソリューション営業への転換を目指し、それまで本社のセールストレーナーや外部講師による研修を行ったこともありましたが、それぞれの研修内容は決して悪くはなかったものの、スポッ トでの研修となってしまい求める営業スタイルやスキルが定着していないという課題がありました。そんな折、当社社員が富士ゼロックス総合教育研究所(現 パーソル総合研究所)の公開セミナーを受講したことがきっかけで縁ができご相談をすることとなりました。

永山 プロダクト中心の営業スタイルからお客様のニーズを中心におくソリューション営業への転換を成功させるためには、ソリューション営業に必要なスキルを習得するための「面談スキル研修」、ソリューション営業を効果的に進めるための標準化された「セールスプロセスの構築」、ソリューション営業の現場定着を促進するためのチーム作りやマネジャーのコーチングスキルを強化する「マネジメント力の向上」の3つの柱が必要だと考え、ご提案しました。

ソリューション営業を定着させるための3つのポイントソリューション営業を定着させるための3つのポイント

研修4ヶ月目から業績への影響も顕著に

逸見 当初の問題意識はソリューション営業に必要なセールススキルの習得でしたが、スキルセットの学習だけでは定着はしないとのご提案に共感し、本プロジェクトがスタートしました。当初3ヶ月は、組織変更と同時期に研修をスタートしたこともあり、すぐにはっきりと分かるような結果には至りませんでした。しかし、4ヶ月を過ぎたあたりから、目に見えて成長したと思えるメンバーが増え、目標達成ができる人が増えてきました。徐々に販売台数でも成果が出始め、最終的にはコアとなる製品で飛躍的な業績アップを実現することができました。

徳久 プロジェクトを担当させていただいた当初から、セールスの皆さんの成長意欲が非常に高く、コミュニケーション能力も高いという印象を抱きました。セールスのプロセスやスキルがきちんとセットされ、セールスが個々ではなくチームとして機能すれば高い成果が期待できる非常にポテンシャルのある組織だと感じていました。高いポテンシャルがあったからこそ、短期間でのスキルアップと業績向上に貢献できたのではないかと思います。

スキルとプロセスの標準化が促され、コミュニケーションをとれる風土に

逸見 それまでは営業管理はABCの3段階で確度の管理を行うことが中心でした。確度が高いものを「A」、確度の低いものを「C」として管理していましたが、人によって「A」や「C」の評価軸もバラバラで、的確な管理ができていませんでした。そのため、一定の方針やルールを決めたとしても、人によるばらつきをなかなか回避することできずにいました。今は標準となるセールスプロセスを、時間をかけて作り上げたことで、プロセスの進捗を営業メンバー間でも共有することができるようになりました。同じ基準で営業進捗を管理できるようになったことで、マネジャーの情報収集も的確になり、指示も具体的になりました。仕組みがしっかりと出来上がってきたことで、新任の営業マネジャーでもよいコーチングができるようになり、業績アップの一因になっていると思います。

組織風土の面でも、改善が見られるようになりました。それまでは会議の中でしゃべる人が限られていましたが、会議中に発言する人が増えました。コミュニケーションをとれる風土ができあがってきたことで、ミーティングのオーナーもマネジャークラスからリーダークラスが担当するようになりました。プレマネジャーとしての活躍の場が増え、リーダークラスの営業メンバーが意欲的に活動をしてくれています。

次のステージへのステップアップに向けて

逸見 今回のプロジェクトにより、面談スキル、セールスプロセスが標準化され、コア商品をチームで売るための仕組みができました。また、各メンバーに自信がつき、チーム内の信頼関係もでき、素晴らしい土台ができあがったと思います。業績向上により、本社からの期待もさらに上がり、次期5ヶ年計画は当初の目標値を上方修正し、より大きな目標にチャレンジすることとなりました。研修で積み上げた土台をさらに発展させ、次の目標に臨みたいと思います。

当社は、動物病院向けにワンストップで多様な検査機器を提供し、機器販売のみでなく300を超える受託検査ができることが強みです。おそらく国内でも最も多様な検査ができる企業だと思います。その強みを生かし、動物病院のみなさまの良きご相談相手となれるよう、しっかりとした体制をつくっていきたいと考えています。今は1つの製品やスポットの検査で活用していただいている「点のニーズ」のお客様にも「面のニーズ」へしっかりとお応えしていきたいと思います。

そのためには、コア商品だけでなく多様な自社製品についての理解を深め、統合的なソリューションとしてプレゼンテーションできるように営業力を強化していかなければなりません。当社の基礎となった面談スキルをより高いレベルで実践し、より幅広い製品で実践できるようにトレーニングをしていきたいと思います。富士ゼロックス総合教育研究所(現 パーソル総合研究所)のみなさまには今後もお力添えをいただければと存じます。

施策実施スケジュール施策実施スケジュール

現場の声

面談スキルの標準化はメンバーにもマネジャーにも役に立つ

永原 尚 コンパニオンアニマル事業部
リージョナルセールスマネージャー
永原 尚

中西 雅彦 コンパニオンアニマル事業部
リージョナルセールス
中西 雅彦

中西 私はそれまでは営業活動をするとき自己流のステップに従って営業をしていました。面談スキル研修の受講により、初心に帰る気持ちでスキルの基礎を学習させていただき、自己流であったものを高いレベルで標準化することができたと感じました。明日から使えそうだな、と思うような発見もたくさんあり、非常にためになりました。

永原 面談スキル研修の受講により、メンバーみんなが共通言語となるスキルを理解し、実践できるようになりました。面談スキルが共通言語化されたことは、現場にとって学びが多かっただけでなく、マネジャーとしても非常に助かりました。各メンバーがどのプロセスまで進捗しているのかもよく分かるようになりました。特に行き詰っているときのコーチングがしやすくなり、受け取る側のメンバーとしても共通言語を使って指導されるため理解しやすくなったのではないかと思います。私が担当しているリージョン2というエリアは大阪から神奈川までの広域なエリアを担当しているため電話会議を行うことが多いのですが、共通言語で会話ができることで電話でのやり取りもスムーズになり、コミュニケーションの質が上がったことは成果につながる大きな変化です。

中西 例えば、面談スキル研修では「面談の開始」「情報収集」「情報提供」といった実際のお客様との面談の流れに沿ってスキルを学びます。営業活動に慣れてしまうとどうしても自分のやりやすいやり方になってしまうところがあり、意識して自分の弱いところを強化するように心がけています。同僚との話し合いも明確に議論をすることができるようになり、「面談の開始」のフェーズで準備がしっかりとできているか?とか、「情報収集」のフェーズで突っ込んだ情報を聞けているか?など、具体的に成功例・失敗例の共有などがしやすくなりました。

永原 今までも、会議の中で成功事例の共有を行うことはあったのですが、限られた人だからできる成功事例というものも多かったように思います。また、失敗例や商談が行き詰っている話は出したがらない部分がありました。今は、共通言語を使ってどの段階で行き詰っているのかはっきりと分かるため、進捗が思わしくない商談についてもメンバーが自ら気づき、どのようにすれば商談が進むかアドバイスを求める場面が増えてきました。それまでは、何に困っているかわからないというところもあったかと思いますが、的確な質問も増え、営業力の底上げにつながっていると思います。

 

CRPにより営業プロセスの標準化を図るとともに、常にブラッシュアップを続ける

CRP 「CRP」
(Customer Relationship Process)

中西 面談スキル研修で基本的なスキルの型を学んだ後は、当社の実情に合わせたセールスプロセス「CRP(Customer Relationship Process)」を作りました。私がリーダーに立候補し、当社のセールスのバイブルを作る気持ちで参加しました。

CRPはセールスプロセスのフェーズごとに、メンバーの成功例や話の引き出し方をまとめた冊子です。CRPに沿ってセールス活動を行うことで、新任の人が来たとしても、高いレベルで当社標準の営業活動を再現できるように配慮しました。今後、肉づけをしていき、継続的に進化させていきたいと思います。

永原 CRPができたおかげで、一人ひとりのセールスの成功体験が共有されやすくなりました。ドキュメントに残るため、チームの共有財産となり、メンバーの引き出しの量が増えていると実感しています。特にプロセスの中で最も重要な「ニーズの把握」の切り口を共有することで、面談スキル研修で学んだ「情報収集」というニーズを引き出すスキルとつながり、社内全体に浸透したと思います。

 

また、今までは機器を販売するところまでがゴールと考えているセールスも多かったのですが、CRPでのゴールは販売後に顧客との関係を良質なものにし、売上を最大化するところまで書かれているため、長いスパンを見越した動きができるようになりました。多くのセールスの意識も行動も変わってきたと思います。

徳久 特に新人セールスの方は、忠実に面談スキル研修で学んだスキルやCRPに沿った営業活動を実践しようとしてくれる人が多く、いくつかの成功事例が出てきました。たとえば、ある新人セールスは、お客様との面談前に自ら作成した事前準備シートをマネジャーと確認して万全の準備を行い、面談場面で事前にバインダーに挟んだ紙に書いておいた仮説に基づいて推測したニーズをお客様にお見せし、それが正しいか、認識のズレがないかをその場で確認するというやり方を実践していました。その方法が非常に効果的で、その方は2週間でクオーターの目標を達成し、成功事例として共有することができました。

永原 その人の成果が他のメンバーにも共有され効果が高いということから、3年目4年目のセールスもこのやり方を活用・応用し、成果をあげています。新人セールスのやり方からも学びがあるということも、セールススキルが共通言語化された成果だと思います。

チームビルディングで自身とメンバーとの認識のギャップに気づく

永原 チームビルディングの研修も印象的でした。マネジャーとして強みだと思っていた部分や改善すべきだと考えていた部分がメンバーにとってはそうでないということが多々あり、マネジャーとメンバーの現状に対する認識のギャップが分かりました。ただ、ありがたかったのが「達成意欲を持てるチームを目指したい」という点については共通認識があり、メンバーが非常に協力的だったということです。これまでチームの目指す姿について話をする機会を持てていませんでしたが、目標の数字を達成するためにどのように行動するか?という議論にスムーズに入っていけたため、チームワークはよりよくなったと思います。

徳久 ソリューション営業定着のための施策導入前後で3つのリージョンの変化を定量的に把握するためチーム協働性診断を行いました。チーム協働性診断はチームの目的・目標の共有や進捗管理といった「タスクプロセス」と、メンバーの関係性やチームの雰囲気といった「メンテナンスプロセス」の2つの側面からチームの状態を5点満点でスコア化する診断です。リージョン2は、チーム協働性診断のスコアを見ても大きく改善したチームです。研修とは別の機会に無関心のお客様に対する会話例をチーム内で検討し、成功事例を共有するなど自発的な学びの場を作っているシーンもありました。メンバー同士がお互いを尊重しながら協力関係を築き、営業現場でソリューショ ン営業のスキルを確実に実践・進化されていました。

このようなチームの変化は月に2回の頻度で半年ほど実施してきたマネジャーの方々との個別コーチングの中でも感じとることができました。永原さんを含めた3名のリージョンマネジャーそれぞれがメンバーの育成を主としたチームの課題に真剣に向き合い、悩み、工夫しながら目指すチームづくりに向け着実にマネジメントのPDCAを回し、最終的には、メンバーの成長を実感し、喜んでおられた姿が強く印象に残っています。

中西 もともとチームワーク自体はよかったと思うのですが、ただ仲がよくて結果が出ない組織では意味がありません。チームビルディングを通じて自分たちの良い部分を潰すことなく課題を認識して指摘し合えるようになりました。学んだ内容を自分たちのアクションに生かせるようチーム内で工夫をしながら、最も学びを吸収できたチームではないかなと自負しています。

徳久 さらに、リージョン2は、組織の垣根を越えて別のチームの相談に乗ったり、メンバー同士がお互いのお客様に同行してアドバイスしたりすることもありました。まさに個人営業からチーム営業への転換を実現された素晴らしいチームだと思います。

施策導入前と9ヵ月後のチーム協働性診断の結果施策導入前と9ヵ月後のチーム協働性診断の結果

 

プロジェクトを振り返って

中西 一つひとつが大変気づきの多いプロジェクトでした。毎回研修が楽しみで、名古屋から東京に向かう新幹線の中でわくわくしていました。また、個人商店的な営業スタイルからセールスプロセスが標準化され、チームとして仕事ができるようになり、より仕事を楽しいと感じるようになりました。本当に感謝しています。今年度は、ここまでの成果を生かしながら、CRPをさらに精度の高いものに仕上げ、定着するように行動していきたいと思います。

永原 一連の取り組みの中で、徳久さんにたくさんの良い問いかけをいただきました。そのおかげで、やらされている感がなく、問いかけから内発的に進むべき方向を導き出すことができました。過去の研修の際に理想論をやれといわれてもどこか冷めてしまう部分がありましたが、今回はCRPなど、一緒に作り上げていっていただいたと感じています。とてもやりがいのあるプロジェクトでした。ありがとうございました。

インタビュー後記

徳久 収

富士ゼロックス総合教育研究所
(現 パーソル総合研究所)
エグゼクティブコンサルタント 徳久 収

Profile:1986年富士ゼロックス入社。営業、マーケティング、人事企画を経験後、富士ゼロックス総合教育研究所に移籍。コンサルティング部長、リサーチ部長などを経て現職。大手・中堅企業の営業革新、組織変革、人事改革などのプロジェクトを多数手掛ける。英国国立ウェールズ大学経営大学院(MBA)修了

「営業革新におけるチーム営業の重要性」

研修で新たなセールススキルを学んでも現場に定着せず成果があがらないといった声をよくお聞きします。それは学習した新たなスキルの活用をセールス個人に任せにしてしまうため、セールスはスキル活用に取り組む手間や失敗を恐れ、時には周囲からの抵抗があり、今までの慣れ親しんだやり方に戻ってしまうことが多いからだと感じています。
研修で学んだことを定着させていくためには、セールスが新たなスキルを現場で実践し、成功・失敗体験を繰り返しながら自分のものにしていくといった過程が必要です。
そこでキーとなるのが、個人営業からチーム営業への転換です。具体的には、メンバー全員がチームの目標を共有し、目標達成に向けたお互いの役割と期待を確認した上で、新たな面談スキルの活用について成功・失敗事例を共有しながら知恵を出し合い実践を繰り返していくチームを作れるかが重要です。
アイデックスラボラトリーズ様では、チームビルディングや面談スキル研修、セールスプロセスの構築をきっかけにマネジャーがソリューション営業に必要なスキルについてメンバー自身が主体的に考え、活用することを奨励し、失敗を含めた事例を安心して共有できる場づくりを行い、リーダークラスのセールスが新たなスキルを積極的に自分自身で活用しながら体験に基づきメンバーにアドバイスするといったチーム営業の基盤が出来上がりました。このようにチーム営業の基盤が早い段階でできたからこそ、ソリューション営業への転換が早期に進み、高い成果の実現につながったのだと思います。

取材日:2018年4月。所属・役職は取材当時のものです。更新:2023年12月

※富士ゼロックス総合教育研究所は、2019年7月パーソルラーニング株式会社に、
2021年4月株式会社パーソル総合研究所に社名変更しました。

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