新入社員研修を実践型オンライン研修で展開し、横のつながりと社外との対話を実践
ドコモCS長野支店は、地域に根差したNTTドコモの通信サービスの提供及び向上に取組まれています。本事例は、関東・信越の5支店(長野、埼玉、栃木、群馬、新潟)に配属された新入社員に対して、10日間のうち6日間を弊社が預かり実際の地域課題を自社のソリューションで解決することをテーマに実践型オンライン研修として提供しています。本プロジェクトリーダーの長野CS支社の齋藤様に、その狙いと効果などについてお話を伺いました。
株式会社ドコモCS 長野支店 齋藤森史氏
斎藤氏:元々、新入社員については、4月に2,3週間にわたり、本社とグループ会社で導入研修を実施しています。ただ、今回は、新型コロナウィルスの影響のため集合型研修ではなく、オンラインでの実施となりました。年度初めにドコモグループで実施した導入研修の中でも学びを実践する機会を用意していましたが、集合型研修との勝手の違いを感じていました。実際に、長野支店に配属された新入社員からも、実践の場を更に欲しいという要望もありました。また、新入社員にとって大切な同期の間の横のつながりがオンラインだと取りづらいという点も課題に感じていました。
このことから新入社員に今後、支店という現場で活躍してもらうために、本格的なOJTに入る前に実践力を養う研修が必要と判断し、研修を企画しました。
また当初は、長野支店に配属された新入社員のみを対象に内製で研修を実施する方向で検討しておりましたが、実践力を効果的に養うためには、自分たちのコミュニティとは違うメンバーと交流を図ることが必要と考えました。ただ、長野支店だけでそうした機会を設けることは難しいため、近隣で同じような状況の支店へ声を掛け、合同で実施することとしました。当然ながら人数が多くなってくると、コンテンツの拡充や、各支店の考えも取り入れていく必要があります。内製での企画は限界があると判断し、パーソルさんへご相談しました。
齋藤氏:一番不安に思っていたのは、やはりオンラインでの開催ということです。ドコモグループで実施した導入研修もオンラインでした。しかし、新入社員からはオンラインでの実践は難しかったと聞いていたので、果たして5支店合同の研修でコミュニケーションが図れるのかという点が不安でした。
齋藤氏:参加者が、集合型と同じように研修に本気で取組めるかという点が不安でした。そのため、インプット中心の研修という枠組みではなく、グループワークを主体とする内容とし、研修とは別にコミュニケーションをとる時間をしっかり確保するなど、時間の割り振りにも配慮しました。パーソルさんには、私たちの想いをじっくりお伝えし、ご相談しながら研修を組み立てて頂きました。カリキュラムも柔軟にアレンジしていただき大変感謝しています。
齋藤氏:研修初日の新入社員の状況と、研修最終日のプレゼンテーション・成果発表のときの状況を見比べると、大きく成長していると感じることができました。新入社員同士が打ち解けあった様子から、同期間のつながりを育むことができたのではないかと感じています。オンラインであっても、共同で一つの資料を作りあげることができましたし、その過程で役割分担をしながら意見をぶつけ合うなど、チームでグループワークを進めていく姿も見られました。そういう意味では、オンライン研修も集合型と同じような効果を得られるという手応えを感じることができました。
齋藤氏:ドコモグループの導入研修では社会人としての基礎やマナーを学び、成果物を決められた期限内に提出できるようにしていくのですが、慣れないオンライン研修のなかでインプットと実践を繰り返して定着させるというところまでは、難しかったと思っています。
今回の研修では学生から社会人への脱皮を更に加速するべく、物事を考える際に効果的であるロジカルシンキングや、ビジネスにおけるコミュニケーション方法についてのインプットも行いました。また、実践する機会を多く設けるため、1つのテーマを2週間にわたって継続するのではなく、学ぶテーマやグループ編成を都度変えてアウトプットを出すことを繰り返し取組みました。その結果、限られた時間に質の高いアウトプットを出し、決められた期限を守るといった社会人としての意識づけをしながら、実践させることができたと考えています。
もちろんこうしたことは新入社員にとっては試行錯誤の連続で大変だったのではないかと思います。グループワークを見守っているなかで、コミュニケーションの難しさに悩み、立ち止まっているグループも見受けられました。ただ、最終的にはきちんとチームの中で方向性を軌道修正したりして、どのチームもレベルの高いアウトプットを出すことができていました。そういう意味では、今回の実践型の研修を通じて社会人としての意識や取組みを定着させていくことができたと感じています。また、参加した新入社員に対して行った事後アンケートにおいても、「脳が焼き切れるレベルまで考えることができた」という感想を寄せてくれた社員もいました。このように、新入社員にとっても今回の研修は非常に良い経験となったようです。
齋藤氏:はい。研修の始まりには、必ず「今日はこういうことをやりますよ、意識していきましょう」と意識づけの時間を設けました。こうしたことを繰り返すなかで、新入社員に素晴らしい動きがありました。ある日のグループに、「リーダーシップをとることが得意ではない」と苦手意識をもっている新入社員がいました。研修でのグループワークを重ねるなかで意識変化があったのか、最終日のグループワークでは他のメンバーに対して「チームのリーダーとなって意見をまとめていくことに是非挑戦したい」「まとめられるよう意識的に行動する」と宣言していました。その日、実際にチームの意見をまとめようと奮闘していました。最終的には、グループをまとめ上げ、みんなが満足できる成果につながっていました。チームビルディングという点でも学びを得た新入社員も多かったのではないかと思います。
また、グループワークが主体の研修になると、ともすると「これぐらいでいいんじゃないか」と、馴れ合いになってしまう懸念もあります。私たち事務局は、本人の成長につながるよう、いかに自ら行動するか、メンバー間で意見に相違があれば、一度立ち止まって考えるプロセスを意識するように伝えました。
齋藤氏:四国の自治体の観光協会様へのインタビューが、多くの新入社員にとっては入社して初めて社外の方と話す機会だったと思います。こうした機会に先立ち、社会人としてふさわしい振る舞いをすることや、質問の内容を練り込んで自分たちが聞きたいことをきちんと準備することを意識づけしました。オンラインの環境ではありますが、実際に社外の方と話をする、また社外の方から様々な示唆をいただく機会となりました。行政の方から地域の課題を直接聞くということは新入社員にとって非常にハードルが高かったと思います。しかし、こうした経験を通して、スムーズに現場のOJTへ移行できるのではないかと考えています。
また、配属支店とは別の組織とのつながりという意味で、自分が所属する支店ではなく、他支店の先輩社員にヒアリングする時間を設けました。今後本格的に業務に取組むようになると、組織の壁をまたがって、他組織の社員に連絡し、相談することも必要になってきます。そのような場面の事前訓練の意味も込め、他支店の先輩社員に自分たちの考えをぶつけ、アドバイスをもらうことを研修の中に組み込み、実践してもらいました。
支社の外で横のつながりをいかに作り、成果を出していくかというところも非常に頑張ってもらったと思います。
齋藤氏:まさにそうですね。自治体様の実際の課題をドコモのリソースを使って具体的な解決策を提案する課題というのは、とても実践的なものでした。新入社員の皆さんには限られた時間の中で粘り強くチャレンジしてもらいましたし、その頑張りもあって、実際に出てきたアウトプットを見ると質の高い内容ばかりでした。自治体様の課題解決に向けて、私たちのリソースをうまく組み合わせて提案できていたように感じています。お客様の課題解決に向けた初めての提案として、多くの学びを得られたことでしょう。
齋藤氏:結論からすると良かったと思っています。長野県内の自治体様に協力をお願いするという選択肢もあったかもしれませんが、実際に日頃からコミュニケーションをとっている身近なお客様とは、ヒアリングやご提案の機会もありますので、研修という形でお願いすることは現実的には難しいと思います。今回は新入社員の育成として四国の自治体様にご協力いただきましたが、結果として今後のお客様との関係強化のきっかけにもなったと思います。地域の方とリレーションをつくるというのは現場組織としては非常に重要です。そこは長野支店ではなく四国支社の方々と組織の垣根を越えてお互いリレーションをつくれたのは、新しい取組みだと思います。
齋藤氏:参加者の中からは、定型の研修ではなく、「全力で取り込まなければならない、受け身では取り残されてしまう。こんなに練り込まれた研修だと思っていなかった」という声がありました。他には、先ほどお話したように自分でリーダーシップを発揮してみようと意識してそれを実践して、自身の成長につながったとの声も上がっていました。こうした声はありがたかったですね。
大変だったという意味では、ポジティブな意味で「これだけ汗をかくとは思わなかった。」「実際のお客様を相手にするのは初めてだったので、学びになった」という声がありました。正解が用意されたサンプルの事例ではなく、現実のお客様の課題解決に実際に取組むことができたので、私たちとしては今回パーソルさんにお願いして実施することができて、本当に良かったと思っています。
齋藤氏:まず、本研修を企画していた4,5月当初は、まだオンラインを駆使した研修を身近で耳にする機会がありませんでした。今でこそ、オンライン研修は一般化していますが、当時は「集合型研修をオンラインで実施する」で精一杯だったと思います。そうした中で今回のような効果的なオンライン研修の事例を他の組織の方々に「オンラインでも効果的に研修を行うことができる」と知っていただくことができ、多くの方にとって、ご参考になったのではないかと思います。
実践的な内容で、かつ四国の自治体様を巻き込んだ研修ということで四国支社と連携をとりながらできました。これまで長野支店で企画して実施してきた研修では、単独開催が多いのですが、5支店合同で行うことで横の連携を図る意味でもよい研修だったと感じています。ドコモグループとして、1つの課題に対して一緒になって取組むことができた成功事例として社内の幹部陣に発表できました。非常に意義深い研修になっているのではないかと思います。
齋藤氏:私たちドコモは、5Gを強化して各種取組みを進めています。5G時代ではこれまでの価値観を飛び越え、新しい価値やサービスをお客様に提案し、提供していくことがこれまで以上に求められると思います。新入社員を含めた若手社員はまさにその第一線を担う人材です。自分自身の強みをきちんと把握して個性を生かして新しい価値を提供するマインドやスキルが求められていると考えています。そのような求められる人材像に対して、既存の価値観にとらわれず新しい価値を生み出していくチャレンジマインドやスキル、コンピテンシーを伸ばしていければと私たちは思っています。
そうしたなかで、今回のようにドコモのリソースを活かして、実際にお客様への価値提供を考える実践型の研修は非常に効果的だと思っています。また、定型的な業務ではなくプロジェクト型の業務についても、与えられた業務だけをやるのではなく、自ら積極的に取組んでいくことも重要になっています。今後は、このプロジェクト型業務に対して何か手当てできるような研修があれば、ぜひ取り入れていきたいと考えています。
齋藤氏:今回の研修は既存のパッケージ型の研修ではなく、私たちがやりたいことを丁寧にヒアリングしていただき、それを汲み取ってカリキュラムの中に組み込んでいただいたと思います。私たちが「こんな研修ができないだろうか」と頭の中で思い描いていても、言語化できないケースも多々あると思います。そういったところでコンサルティングしていただきながら研修としてアレンジをいただく、パッケージではなく個々のニーズに合わせた研修を設計いただくことを期待しています。
取材日:2020年11月
所属・役職は取材当時のものです。