公開日:2020年4月24日(金)
調査名 | 新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査 |
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調査内容 | 新型コロナウイルス対策がテレワーク(在宅勤務)にもたらした影響を定量的に把握する。 |
調査対象 | 【第一回調査】全国、正社員、20~59歳男女、勤務先従業員人数10人以上 n=21,448 【第二回調査】全国の就業者 20~59歳男女、勤務先従業員人数10人以上 n=25,769 ※第一回、第二回を比較するため、主に正規雇用の従業員の数値を用いて分析。 ※調査結果の数値は平成27年国勢調査のデータより正規の職員・従業員 性年代(5歳刻み)の構成比に合わせてウェイトバック処理。 ※グラフ中のサンプル数はウェイトバック処理後のサンプル数。 |
調査時期 | 第一回調査:2020年03月09日-03月15日 第二回調査:2020年04月10日-04月12日 |
調査方法 | 調査モニターを用いたインターネット定量調査 |
調査実施主体 | 株式会社パーソル総合研究所 |
都道府県・業界・職種別のテレワーク実施率ランキングや、4月上旬の都道府県別出社率などはこちら
調査報告書(全文)
正社員のテレワーク実施率が27.9%であるのに対して、非正規の実施率は17.0%と10.9ポイントの差。
新型コロナが収束した後もテレワークを続けたい人は53.2%。20代と30代では6割を超えている。
緊急事態宣言後、正社員のテレワーク実施率は、全国平均で27.9%。3月半ばの時点では13.2%であり、1か月で2倍以上となっている。(図1)。国勢調査に基づく簡易推計では、1か月間でテレワークを行っている人は約400万人増加し、約760万人がテレワークを実施していることになる。
図1.3月と4月のテレワーク実施率
エリア別に正社員のテレワーク実施率をみると、緊急事態宣言地域の7都府県で38.8%、それ以外の地域で13.8%。7都府県はそれ以外の地域に比べて2.8倍実施している。東京都に限れば49.1%(3月半ばは23.1%)。
テレワークを行っている人のうち、現在の会社で初めて実施した人は68.7%。3月半ばは47.8%だったため、「テレワーク初心者」は大幅に増えている(図2)。
図2.3月と4月の初めてのテレワーク実施率
一日中のテレワークと業務自体が無くなったケースを全体から差し引けば「出社率」となる。緊急事態宣言後の初日に当たる4月8日の7都府県における正社員の出社率は61.8%と、前日の7日から6.2ポイントしか減っていないことが明らかとなった。その後、出社率は徐々に下がっていくが、4月10日で58.5%。いま政府が要請している7割減との差は大きい状況だった(図3)。
図3.緊急事態宣言地域の7都府県における出社率
テレワークを行っている人の「不安」をランキング化すると、1位「相手の気持ちが分かりにくい」で37.4%、2位「仕事をさぼっていると思われないか」で28.4%、3位「出社する同僚の業務負担の増加」で26.4%。(図4)。
図4.テレワークの不安
テレワークを行っている人の「課題」をランキング化すると、1位「運動不足」で73.6%、2位「テレワークでできない仕事がある」で60.2%、3位「必要機器がない(プリンターなど)」で47.8%。(図5)。
図5.テレワークの課題
テレワークを行っている人の「課題」について、「労働時間が長くなりがち」は21.0%にとどまった。また、テレワーク実施の前後の「変化」について、労働時間が減った=36.2%(増えた=9.6%)、業務量が減った=37.6%(増えた=6.8%)となった。
初めてテレワークを実施している人は、「仕事に集中できない」(従来からの経験者に比べて14.6ポイント差)、「仕事に適した机や椅子がない」(同13.5ポイント差)などの特徴がみられた。
テレワーク実施の前後の「変化」について、上司とのやりとりが減った=45.2%、同僚とのやりとりが減った=50.0%、組織の一体感が低くなった=36.4%、仕事への意欲・やる気が減った=32.8%と、組織としての課題が生じる結果となった。(図6)企業としてはテレワークの長期化に備えて、対策を検討すべきである。
図6.テレワーク実施前後の変化
テレワークが命じられている人は13.7%、推奨されている人は27.0%と、命令・推奨の合計は40.7%となった。一方、会社から特に案内がない(通常通り出勤している)人も未だに53.0%いる(図7。3月調査では命令3.2%、推奨18.9%、命令・推奨の合計22.1%。特に案内がない人は71.5%)。
時差出勤が命じられている人は8.3%、時差出勤が推奨されている人は30.6%と、命令・推奨の合計は38.9%となった。一方、会社から特に案内がない(通常通り出勤している)人も未だに52.3%いる(図8。3月調査では命令4.4%、推奨25.0%、命令・推奨の合計29.4%。特に案内がない人は64.9%)。
図7.テレワークの企業方針
図8.時差出勤の企業方針
正社員のテレワーク実施率が27.9%であるのに対して、非正規の実施率は17.0%と10.9ポイントの差。
新型コロナが収束した後もテレワークを続けたい人は53.2%。20代と30代では6割を超えている(図9)。
図9.新型コロナ収束後のテレワーク継続意向
テレワークができない理由について、4月調査では以下のとおりとなった(図10)。3月調査では「テレワーク制度が整備されていない」が41.1%で1位、「テレワークで行える業務ではない」が39.5%で2位だったため、順位が入れ替わったことになる。社内制度の整備が少し進んだり、全体としてテレワークがさらに行われたりする中、業務特性上できない人が目立ってきている(エクセルの詳細データ「業界別」「職種別」のシートを参照)。
図10.テレワークができない理由
企業規模別のテレワーク実施率について、従業員数が多い企業ほど、テレワーク実施率が高まることが改めて確認できた(図11)。新型コロナへの対応として、中小企業が抱える大きな課題といえる。
図11.企業規模別(従業員数別)のテレワーク実施率
3月中旬からの1か月間で、テレワーク実施率は2倍以上増加していることが確認できた。 一方で、一日中出社せずにテレワークだけで完結できているわけではなく、政府が要請する出社7割減には程遠い現状が明らかとなった。
それでは、さらに急速にテレワークを広げるためにどうすればよいだろうか。方向性は2つある。一つは「危機感の底上げ」だ。データの分析により、地域別のテレワーク実施率と感染者数との相関はかなり強く、感染に対する危機意識が人々の行動をかなり左右していることが分かった。数万人規模の死者が出る事態となれば、もはや経営どころの話ではなくなる。今こそ「人命ファースト」となるべきだ。むろん、警鐘を鳴らすだけで企業を動かすのは難しく、休業補償や補助金の整備・拡充、アクセスしやすい情報の提供は必須となる。
もう一つは、企業間や個人間にある、テレワークの足かせを断ち切ることだ。テレワークの徹底は1社や1人だけではできない。企業活動では相互のやりとりが生じ、「納期や約束」「書類・FAX・押印が必要な取引」など、顧客や取引先の都合により遠隔地で作業できないことは多い。また、上司・経営層の指示に逆らって個人がテレワークを行うことは容易ではない。職場内や企業ごとに危機意識の濃淡が存在すると、テレワークは難しいということだ。
職場に危機感の薄い上司や同僚がいる場合、企業トップからのメッセージや出社の承認制の導入が有効だろう。顧客や取引先に対して弱い立場の企業のために、大企業や業界団体を通じた納期緩和や遠隔取引の依頼・通達がより行われることを期待したい。そのための参考データとして、今回の調査では業種・職種別のテレワーク実施率も公開する。
今回、テレワークの課題も定量的に明らかとなった。多くの人が集中力の欠如や運動不足、仕事意欲の低下などを感じている。人命を守るため、そして労働生産性の観点からもテレワークは進められるべきだが、急激な変化がもたらす課題にも同時に対処していかなければならない。
※本調査を引用いただく際は出所を明示してください。
出所の記載例:パーソル総合研究所「新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」
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