公開日:2020年10月23日(金)
調査名 | 高度外国人材に関する定性調査 |
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調査目的 | 高収入な高度外国人材の日本で働く動機・実態および仕事上の満足点・不満点を通し、期待とのギャップや障壁となっている環境要因を明らかにする。 |
調査対象 | ・20~49歳の男女 ・現在日本で正社員として就業中の外国人・外国出身の方 ・短大卒以上で高等学校までの教育を主に日本以外で受けている方 ・出生時・現在のいずれかの国籍とも日本でないこと ・専門的・技術的分野もしくは永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者としての在留資格を所持していること(特定技能、技術研修、特定活動、文化活動、短期滞在、留学、研修、家族滞在は不可) ・個人年収1,000万円以上 ※最終的な対象者は個人年収700万円~800万円、900万円~1,000万円を各1名含む ・日本滞在歴1年以上 ・日本語または英語でインタビュー可能であること ・「人材関連サービス」、「マスコミ関連業」、「市場調査、コンサルティング、シンクタンク」に本人または同居する家族が勤務している場合は不可。対象者本人については、上記の業種に加えて「農業、林業、漁業、鉱業」の場合も不可 |
調査時期 | 2020年7月3日 - 7月8日 |
調査方法 | オンライン・デプスインタビュー(12名・1人あたり70分) |
調査実施主体 | 株式会社パーソル総合研究所 |
調査報告書(全文)
パーソル総合研究所は、これまでに外国人材に関する定量調査、企業・有識者インタビューを実施してきました。
【調査実績】
1.外国人雇用に関する企業の意識・実態調査
2.外国人部下を持つ日本人上司の意識・実態調査
3.日本で働く外国人材の就労実態・意識調査
4.留学生の就職活動と入社後の実態に関する定量調査
定量調査からは、企業の外国人材雇用の動向、外国人部下を持つ日本人上司が抱える課題や苦悩、日本で働く外国人材の不満や孤独感などを浮き彫りにしましたが、高収入層の高度外国人材にアプローチすることは困難でした。そこで今回、高収入・高学歴・高いスキルを持つ高度外国人材を対象としたデプスインタビュー(定性調査)を実施し、日本で働くことになった動機や職場の実態、日本で仕事をする上での期待とギャップ、障壁となっている要因、採用と定着を図るための対策などを明らかにしていきます。
※参考【JETRO高度外国人材活躍推進ポータル】高度外国人材とは https://www.jetro.go.jp/hrportal/forcompanies/about.html
図1.高度外国人材の定着のための課題の変化
ハイスペックな要件の他、向上心とキャリアの自律性、言語習得を含め新しい環境に適応する能力やポジティブな思考を持ち、責任の重い仕事にも前向きに取り組む姿勢が共通していた。
より良い地位や待遇を得られる機会、チャレンジ出来る仕事を強く求め、転職によりポジションや待遇を上げていく。現状に飽き足らず、転職をすることを厭わない傾向もうかがえた。
高い収入だけを求めているのではなく、成長できる仕事、やりたい仕事、キャリア形成に役立つ仕事にチャレンジしたい気持ちが強い。
図2.発言から読み取れる主な特徴
詳細は調査結果PDF P19-20参照
詳細は調査結果PDF P31-33参照
海外志向の学業優秀者が奨学金で日本の大学・大学院で学ぶ機会を得て、そのまま日本で就職し、日本(東京)の暮らしやすさを気に入って、継続勤務するケースが目立つ。自国での就職難も日本で就職した動機になっていた。
アジア出身者は、日本は欧米よりも地理的・文化的にも近く、働く上では魅力的かつ現実的な外国と考える傾向。欧米出身者を中心に、日本というやや「ニッチ」な国での勤務経験で自身の価値の差別化を図ろうと考える人も。
期待:仕事面は待遇の良さ、先端技術を学べる、成長できること。生活面では暮らしやすさ。不安:仕事と生活両面で日本語スキルの不足、日本語以外通じないこと。外国人に対する差別。
図3.日本で働くことになった動機・きっかけ
図4.来日前後の期待・不安と実態
外資系企業に多いフェアな評価制度や処遇、多様性のある職場風土、裁量の多い自由な働き方への満足度が高い。
一方、日系企業に多い長時間労働や休日勤務の多さ、上下関係に基づく厳しいビジネスマナー、「お客様は神様」という考え方などに強い違和感と不満。日系企業から外資系企業に転職する要因になっている。
子育て中の女性は昇進で不利。日常生活でも、日本は子育てに不親切で子育てしづらい環境と感じている。
豊富な業務の知識や経験、明確な指示、フランクに話せる関係も重要。
ただし、業務範囲を超えて相互に助け合う文化、生活面まで気にかけてくれる上司・同僚の良さも認識している。
図5.職場や仕事に対する満足点と不満点
図6.上司についての満足点と不満点
40代で子供がいる対象者や永住権を取得している対象者を中心に、長期居住を検討。
仕事に対する満足度よりも、日本(正確には東京)の暮らしやすさがその理由。安全で便利、快適さに対する満足度は高い。旅行やレジャー、趣味もエンジョイしている。
来日当時に比べ、日本の国際競争力は低下し、新技術の導入の遅さも懸念。税金の高さは不満。機会があれば、アメリカやヨーロッパ、シンガポールで働いてみたい。自国の経済状況も昔に比べて良くなり、待遇面も改善されているので、近い将来自国に戻る選択肢もある。
日本の永住権を持っていても、自国に住む両親らを日本に呼び長期間にわたって住まわせることは困難。両親の面倒を見るために帰国しなければならない人も。
図7.今後のキャリアプラン
来日前から日本語しか通じない環境を不安視。
日本文化や上下関係の理解を伴う「正しい敬語」を学ぶことの難しさ・苦労が挙げられた。日本語習得が進まないことが、直接的・間接的な要因となって早期に日本を去る外国人材もいる。
来日直後は住宅探しで困難に直面。その他、銀行口座開設や役所への届けなどの各種手続きも大変。友人の少なさや異国にいる外国人としての孤独感、子育ての難しさも悩み。来日前にはあまり意識されなかった日本の税金の高さも不満に。
図8.来日前から安定期までの各段階において高度外国人材が感じる障壁の変化
日本で働いている高度外国人材は高い専門性とスキルを持ち、労働市場における自身の価値の高さを認識している。そのため、外資系企業に多い業績重視のフェア(公正)な評価システムを好み、納得できる処遇、チャレンジングな仕事、日本独特な労働環境の改善を求めている。しかし、多くの日系企業はこのニーズに応えられず、優秀な人材が定着せずに外資系企業への流出が起きている。不満足な職場には見切りをつけて躊躇なく転職するため改善が急務である。
また、多くの日系企業は外国人材に「高い日本語レベル」を求めがちだが、「高いスキル」 と「高い日本語レベル」持つ人材はそもそも希少で争奪戦も激しい。そこで採用時に高い日本語レベルを求めず、入社前後の日本語学習をサポートしてレベル向上を図ることや、職場の英語・多言語対応を進めるなど柔軟な発想と対処が必要だろう。また、来日前後~定着までの間に悩みやニーズは変化するため、入社からの時期に応じた定期的なケアとサポートが求められる。
調査対象者の多くが日本で働き始めたのは10年以上前で、当時の日本に対し現在よりも高い国際競争力を感じていたが、今の日本は先端技術や待遇面での競争力を失いつつある上に、ビジネス上の意思決定や新技術導入のスピードの遅さを懸念する声も多く聞かれた。また、税金の高さに不満を持つ者も多い。優秀な外国人材を惹きつけ・定着してもらうためには、日本の暮らしやすさに磨きをかけ、日本で働く魅力や海外における日本のプレゼンス(存在感)向上がより重要になってくる。
図9.高度外国人材の採用・定着に必要なこと
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