2023年3月15日発刊
リスキリングは経営課題 -日本企業の「学びとキャリア」考-

リスキリングは経営課題 -日本企業の「学びとキャリア」考-

概要

学ぶ習慣のない従業員ばかりでは、会社としての成長が止まってしまう。しかし、研修などを用意しても学ぶ従業員が一部に限られ、効果が実感できない――。このような課題がビジネスの現場に溢れている状況で、いま巷で行われているリスキリング・ブームを「活かす」にはどうすればいいのでしょうか。それには、リスキリングの議論に多く見られる《必要なスキルを明確にし、そのスキルを教育訓練し、必要な仕事に就かせていく》という発想を乗り越える必要があります。

そこで本書では、リスキリングを現実的に進めるための仕掛けや仕組み、方向性について、各種データを基に論じていきます。低迷し続けてきた日本企業の人材投資が活性化している今だからこそ、「リスキリング」を人への投資と学ぶ個人を広げ増やすための「チャンス」として捉え返し、「ブーム」で終わらせない。それを目指した筆者なりの「メッセージ」が詰まった一冊です。

「リスキリングを推進すると言ってもどうすればいいのかわからない」「従業員が自発的に学んでくれない」といった課題を抱える企業の人事・経営者、現場マネジャーの方はもちろん、企業で働き続け、自身の学びについて考え続ける個人の方々にもきっと参考になるはずです。

小林 祐児 著
光文社 2023/3/15 発行

INDEX

まえがき

第1章 「リスキリング」の流行とその課題

  • 突然の「リスキリング」ブームはなぜ起きたか

  •  ① DXの潮流
     ② 人的資本開示の潮流

  • 世界各国で進むリスキリング

  • データで見る日本のリスキリングの現在地

  • 「リスキリング」の議論が表層的なものになる理由

  • 「工場モデル」の欠点

  •  ① 「個」への過度なフォーカス
     ② 学びの偏在性
     ➂ 「スキル明確化」という出発点
     ④ スキルの「獲得」と「発揮」の等値

  • 人はなぜ「工場モデル」に引き寄せられるのか

  • 工場モデルを乗り越えるために

【補論】「スキル明確化」という幻想──氾濫する「うまくやる力」はどこへいくのか

第2章 「学ばなさ」の根本を探る──「中動態的」キャリア論

  • 「世界で最も学ばない日本人」を解剖する

  • 日本人が学ばない理由は「なんとなく」

  • 「学ばせたくない」企業と「学びたくない」国民の共犯関係

  • 「足場」なき労働市場の中で

  • 「働かないおじさん」問題に抱く違和感

  • 「受け身のキャリア」という誤解

  • 日本のキャリアは〝中動態〟的である

  • 「普通のキャリア」が、世界一学ばない社員を生み続ける

  • 企業と個人の「WILL」「CAN」「MUST」がズレる時

  • 「個の力」への過剰な期待

第3章 「変わらなさ」の根本を探る──変化を抑制するメカニズム

  • スキルを発揮することが「コスト」になる理由

  • イノベーションは「迷惑」である

  • 〈変化抑制〉は波及する──「多元的無知」のメカニズム

  • 「認知的不協和」のプロセス

  • 「助け合い」の不都合な真実

  • 下がっていく「変化適応力」と上がっていく影響力

  • 〈変化適応力〉を促進する三つの心理

  • 〈変化適応力〉に影響する人材マネジメント

第4章 リスキリングを支える「三つの学び」

  • 捨てる学び──「アンラーニング」

  • 誰が、どのようなアンラーニングを行っているのか

  • 「変わらない役職」と「中途半端に良い評価」がアンラーニングを阻害する

  • アンラーニングを促進する「限界認知」とは

  • どんな経験が「限界」を突きつけるのか

  • 「現在の中途半端な成功」がアンラーニングを妨げる

  • 「人を巻き込む」学び──「ソーシャル・ラーニング」

  • 「他者」との学びの四つの機能

  •  ① 「真似し合い」
     ② 「教え合い」
     ➂ 「創り合い」
     ④ 「高め合い」

  • 「やる気」は外からやってくる

  • 「ろうそく型」と「炭火型」の動機づけ

  • 社会ネットワークでつながる知──「ラーニング・ブリッジング」

  • 「結束型」「橋渡し型」それぞれの長所

  • 日本企業が苦手なのは「二次的橋渡し」

  • 世界一他人を信頼しない国

  • 「関係性の地図」ありきの社会

  • 「孤独」が学びを遠ざける

  • テレワーカーにおける「社内の他人化」

  • 企業というプレイヤーにこそできること

第5章 「工場」から「創発」へ──日本はリスキリングをどう進めるべきか

  • 皮下注射から「変化創出」の促進へ

  • 「変化抑制」に対する処方箋──「変化報酬」型施策

  • 報酬としての「ポスト」「金銭」「経験」

  • 「変化抑制」に対する処方箋──「挑戦共有」型施策

  • 必要なのは「予測改革」

  • 形骸化する目標管理

  • 「掛け声」ではなく「仕掛け」や「仕組み」を

第6章 「学びの共同体」の仕組み──企業を「キャリアの学校」にする

  • コーポレート・ユニバーシティの潮流と企業訓練校

  • リスキリングの中心機関としてのコーポレート・ユニバーシティの進化

  •  ① 入学
     ② 基本の技術研修プログラム
     ➂ 階層別マネジメント研修・次世代リーダー育成
     ④ 学びと成績の記録システム
     ⑤ キャリア・コミュニティ機能
     ⑥ 地域・企業間の連携・連帯
     ⑦ 採用・アルムナイ活動との統合

第7章 「学ぶ意思の発芽」の仕組み

  • 内部労働市場のアップデート

    • 対話型ジョブ・マッチングシステムの構築

      • 「誰と」「どのように」相談するか

        • 「対話」という「創発」的行為

          • 対話的コミュニケーションの作り方

終章 これからの企業における「学び」の方向性

  • ここまでのまとめ

    • これからの学びの三つのスローガン

    •  ① 「復習主義」から「予習主義」へ
       ② 学ぶことではなく、「学ばないこと」を「選択」にする
       ➂ 「わたしの学び」から「学びのわたしたち化」へ

      • 社会関係資本と「心の外部性」

        • 「社会」は最後のブルーオーシャンである

あとがき

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