2024年7月20日発刊
企業価値に連動する 人的資本経営戦略

企業価値に連動する 人的資本経営戦略

概要

「人材を資本としてとらえて、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営」。これは経済産業省が定義した、わが国の人的資本経営の在り方です。EU、英国、米国では、日本より先行して有形資産から無形資産へ、人的資源から人的資本を重要視する経営が実践されており、日本でも人的資本情報開示の義務化によって、投資家からの人材投資への期待はさらに高まっています。

本書は、このような動向を背景に、財務戦略を専門領域とする慶應義塾大学教授の保田隆明氏と、人材戦略を専門とするパーソル総合研究所上席主任研究員の佐々木聡の二人が、共同座長として立ち上げた「企業価値に資する人的資本経営コンソーシアム」の取り組み成果を集約したものです。

「企業価値に資する人的資本経営コンソーシアム」には、日本を代表する企業の人事、財務、IR、ESGやサステナブル経営の推進を担う責任者、日本有数の投資系金融機関に所属する機関投資家が参画。そこで提示・共有された有識者による論点や、その論点に関する各社の取り組み状況、またこれらの内容を踏まえて、あるべき人材投資や組織開発の在り方に関して多角的に行った考察を本書にまとめています。

「経営戦略と人材戦略の連動」はなぜ難しいのか。市場から評価される人的資本情報の開示とは?実務担当者が抱く「なぜ」を起点に、人材投資・組織開発の在り方について掘り下げます。

保田隆明・佐々木聡 編著
中央経済社 2024/7/20 発行

INDEX

はじめに

第Ⅰ部 戦略的視点

  • 第1章 人的資本経営と財務戦略

  •  1 収益力向上に向けて必要な事業ポートフォリオ変革

     2 事業ポートフォリオ変革と人的資本経営

     3 事業ポートフォリオ変革、DX、人的資本経営の一体改革:日立製作所

     4 一方で、ESG一本足打法はリスクが高い

     5 投資家は「見えないもの」を見たい

     6 まとめ

  • 第2章 コーポレートバリューにより、未来の組織を1つにする

  •  1 人の思考を統制するもの

      (1) 「制度」の影響、それを人為的に生み出す先導者たち

      (2) 「鉄の檻」は生じていないか?

      (3) 技術が人の役割を変えていく

      (4) 人に残された世界:人はどこで付加価値を生むのか

     2 コーポレートバリューを問い直し、人を束ねる力とする

      (1) コーポレートバリューは、個性的に表現されるべきである

      (2) コーポレートバリューはリーダーシップの拠り所となる

      (3) コーポレートバリューを組織に実装する

     3 コーポレートバリューにより、未来の組織を1つにする

  • 第3章 経営戦略と人材戦略の連動

  •  1 「経営戦略と人材戦略の連動」は一丁目一番地

     2 連動しない戦略

      (1) バランス・スコアカードで見える化

      (2) 時間差による困難さ

      (3) 体制の問題

     3 いかに連動させるか

      (1) 「関係の質」を高める

      (2) 事業ポートフォリオと人材ポートフォリオの連動を強めるさ

     4 まとめ

  • 第4章 人的資本経営とパーパスの位置づけ: 人的資本経営の対外発信とコーポレートブランディング

  •  1 人的資本経営におけるパーパス

      (1) 人的資本経営におけるパーパスの位置づけ

      (2) パーパスと業績との関係

      (3) 消費者や従業員への影響

     2 パーパス起点のインナーブランディング

      (1) オーナーシップとアラインメント

      (2) 組織文化の醸成へ

      (3) パーパスの策定および浸透方法:電通グループの事例

      (4) 財務情報と非財務情報の一体開示

     3 パーパス・人的資本経営の対外発信とコーポレートブランディング

     4 まとめ

    第Ⅱ部 財務的視点および株式市場からの評価

    • 第5章 人的資本経営と企業業績および株価との関係性

    •  1 株式価値と財務・非財務指標の関係

        (1) 株式の理論的価値

        (2) 株式価値に関する投資実務家の視点

        (3) ESG活動(非財務情報)と株式価値の関係

       2 人への投資は株式価値拡大に繋がるのか

        (1) 人的資本と株式価値との関係:日本株における実証分析

        (2) 人的資本に関する取り組みと財務パフォーマンスに関する海外先行研究

       3 ESG投資において企業のサステナビリティ活動をどう評価するか

       4 社会への貢献と株式価値拡大を両立する人的資本に関する取り組み

        (1) 人材投資効率

        (2) 労働分配率

        (3) 経営のディシプリン(規律付け)

        (4) 人材投資効率、労働分配率が高く、経営規律のある企業の株式価値

        (5) 日本における人への投資、労働生産性について

       5 投資先企業との対話について

    • 第6章 ダイバーシティ&インクルージョン(D&I): 企業開示における機関投資家視点

    •  1 日本における女性活躍推進の現状

       2 女性活躍推進と株価パフォーマンス

        (1) 女性活躍推進と企業パフォーマンスの関係性

        (2) なでしこ銘柄と株価パフォーマンス

       3 機関投資家の動向と女性活躍推進-ネガティブスクリーニングにならないために企業がやるべきこと

       4 企業がすべきこと-トップの方向性を探求

        (1) 企業価値とは

        (2) 企業開示と人的資本経営(D&I)

       5 今後の課題・女性開示3項目についての投資家との対話

        (1) 女性管理職比率

        (2) 男性育児休暇取得率

        (3) 男女賃金格差

       6 今から企業がすべきこと:求められる人的資本の考え方

    • 第7章 株式市場から評価される人的資本情報開示

    •  1 サステナビリティ情報開示の動向

        (1) サステナビリティ情報開示の海外動向

        (2) 有価証券報告書の改正経緯

        (3) 人的資本情報開示枠組みの問題は何か

       2 国際的枠組みから見る有価証券報告書の人的資本情報

        (1) ガバナンス

        (2) リスク管理

       3 開示すべき情報とは何か

       4 チェックポイント

    • 第8章 人的資本情報開示の定性評価と人工知能技術の活用

    •  1 人的資本開示の現状

       2 財務報告研究におけるテキスト分析の先行研究

       3 定量評価におけるデータ収集と方法論

        (1) データ収集プロセスとデータソース

        (2) テキスト分析と構造トピックモデル(STM: Structural Topic Model)

        (3) 機械学習(XGBoost)によるモデリング

       4 定性評価におけるデータ収集と概要

        (1) 「サステナビリティに関する考え方及び取組」の概要

        (2) 人的資本開示定性評価プロジェクト

        (3) 人的資本開示定性評価の概要

       5 「女性管理職比率、男性育児休業取得率、男女賃金格差」の開示内容分析

       6 「サステナビリティに関する考え方及び取組」の開示内容分析

        (1) 開示内の文字数に関する分析

        (2) 開示内の画像数に関する分析

        (3) 構造トピックモデル(STM)によるトピック抽出

       7 具体的な企業の分析

        (1) パーソルHD

        (2) サンゲツ

       8 機械学習による定性評価と開示内容分析

    • 第9章 企業の変革を通じた企業価値向上のケーススタディ

    •  1 「シャドウボード」で経営判断にZ世代の視点を取り入れる

        (1) 新世代の消費者に向けブランドを刷新

        (2) シャドウボードを成功させるには

        (3) シャドウボードの効力

       2 新たな経営モデルで、従業員エンゲージメントを劇的に向上させる

        (1) 長く続いた従業員と企業の対立関係に終止符を打つ

        (2) 従業員エンゲージメントモデルの成功要因

        (3) ステークホルダーの巻き込みと成果・成功の共有

       3 長期的な視点から段階的に変革を進める

        (1) ステップ1: カイゼンと事業基盤の強化(2009年〜2014年)

        (2) ステップ2: DXで競合環境を再設定(2015年〜2018年)

        (3) ステップ3: サステナビリティでデジタル銀行としての強固な位置づけへ(2019年〜)

        (4) 企業変革の実現

       4 逆境から原点に立ち戻って成し遂げた組織変革

        (1) 商工中金のDNA

        (2) 不祥事を乗り越え想定を超えた組織風土改革へ

        (3) 定款にパーパスとミッションを記載

        (4) 多様な学びの場

        (5) 独自性の高い人的情報開示

       5 チェックポイント

      第Ⅲ部 具体的な取り組み

      • 第10章 エンゲージメントとウェルビーイング

      •  1 エンゲージメント

          (1) エンゲージメントとは何か

          (2) 人的資本情報として注目を集めるエンゲージメント

          (3) 役員報酬とエンゲージメントとの連動

         2 ウェルビーイング

          (1) ウェルビーイングとは何か

          (2) 国際的に注目を集めるウェルビーイング

          (3) 日本で注目を集めるウェルビーイング

          (4) 仕事を通じた主観的ウェルビーイングの国際比較

          (5) 仕事を通じた主観的ウェルビーイングの業績向上効果

          (6) 人的資本情報開示におけるウェルビーイングの動向

          (7) エンゲージメントとウェルビーイングの共通点、相違点

         3 ウェルビーイングを経営に実装する

          (1) ウェルビーイングを経営に実装するときの視点

          (2) 従業員のウェルビーイング向上のための介入の観点

         4 まとめ

      • 第11章 新しい働き方(ハイブリッドワーク)と人的資本経営

      •  1 人的資本経営を実践する

         2 東証上場企業の人的資本経営実践状況

          (1) 人的資本経営実践の現状

          (2) 人的資本経営実践と企業パフォーマンス

         3 未来の働き方:ハイブリッドワーク

          (1) ハイブリッドワークとその効果

          (2) 東証上場企業のハイブリッドワーク実施状況

          (3) ハイブリッドワークへの選好

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