「人材を資本としてとらえて、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営」。これは経済産業省が定義した、わが国の人的資本経営の在り方です。EU、英国、米国では、日本より先行して有形資産から無形資産へ、人的資源から人的資本を重要視する経営が実践されており、日本でも人的資本情報開示の義務化によって、投資家からの人材投資への期待はさらに高まっています。
本書は、このような動向を背景に、財務戦略を専門領域とする慶應義塾大学教授の保田隆明氏と、人材戦略を専門とするパーソル総合研究所上席主任研究員の佐々木聡の二人が、共同座長として立ち上げた「企業価値に資する人的資本経営コンソーシアム」の取り組み成果を集約したものです。
「企業価値に資する人的資本経営コンソーシアム」には、日本を代表する企業の人事、財務、IR、ESGやサステナブル経営の推進を担う責任者、日本有数の投資系金融機関に所属する機関投資家が参画。そこで提示・共有された有識者による論点や、その論点に関する各社の取り組み状況、またこれらの内容を踏まえて、あるべき人材投資や組織開発の在り方に関して多角的に行った考察を本書にまとめています。
「経営戦略と人材戦略の連動」はなぜ難しいのか。市場から評価される人的資本情報の開示とは?実務担当者が抱く「なぜ」を起点に、人材投資・組織開発の在り方について掘り下げます。
保田隆明・佐々木聡 編著
中央経済社 2024/7/20 発行
1 収益力向上に向けて必要な事業ポートフォリオ変革
2 事業ポートフォリオ変革と人的資本経営
3 事業ポートフォリオ変革、DX、人的資本経営の一体改革:日立製作所
4 一方で、ESG一本足打法はリスクが高い
5 投資家は「見えないもの」を見たい
6 まとめ
1 人の思考を統制するもの
(1) 「制度」の影響、それを人為的に生み出す先導者たち
(2) 「鉄の檻」は生じていないか?
(3) 技術が人の役割を変えていく
(4) 人に残された世界:人はどこで付加価値を生むのか
2 コーポレートバリューを問い直し、人を束ねる力とする
(1) コーポレートバリューは、個性的に表現されるべきである
(2) コーポレートバリューはリーダーシップの拠り所となる
(3) コーポレートバリューを組織に実装する
3 コーポレートバリューにより、未来の組織を1つにする
1 「経営戦略と人材戦略の連動」は一丁目一番地
2 連動しない戦略
(1) バランス・スコアカードで見える化
(2) 時間差による困難さ
(3) 体制の問題
3 いかに連動させるか
(1) 「関係の質」を高める
(2) 事業ポートフォリオと人材ポートフォリオの連動を強めるさ
4 まとめ
1 人的資本経営におけるパーパス
(1) 人的資本経営におけるパーパスの位置づけ
(2) パーパスと業績との関係
(3) 消費者や従業員への影響
2 パーパス起点のインナーブランディング
(1) オーナーシップとアラインメント
(2) 組織文化の醸成へ
(3) パーパスの策定および浸透方法:電通グループの事例
(4) 財務情報と非財務情報の一体開示
3 パーパス・人的資本経営の対外発信とコーポレートブランディング
4 まとめ
1 株式価値と財務・非財務指標の関係
(1) 株式の理論的価値
(2) 株式価値に関する投資実務家の視点
(3) ESG活動(非財務情報)と株式価値の関係
2 人への投資は株式価値拡大に繋がるのか
(1) 人的資本と株式価値との関係:日本株における実証分析
(2) 人的資本に関する取り組みと財務パフォーマンスに関する海外先行研究
3 ESG投資において企業のサステナビリティ活動をどう評価するか
4 社会への貢献と株式価値拡大を両立する人的資本に関する取り組み
(1) 人材投資効率
(2) 労働分配率
(3) 経営のディシプリン(規律付け)
(4) 人材投資効率、労働分配率が高く、経営規律のある企業の株式価値
(5) 日本における人への投資、労働生産性について
5 投資先企業との対話について
1 日本における女性活躍推進の現状
2 女性活躍推進と株価パフォーマンス
(1) 女性活躍推進と企業パフォーマンスの関係性
(2) なでしこ銘柄と株価パフォーマンス
3 機関投資家の動向と女性活躍推進-ネガティブスクリーニングにならないために企業がやるべきこと
4 企業がすべきこと-トップの方向性を探求
(1) 企業価値とは
(2) 企業開示と人的資本経営(D&I)
5 今後の課題・女性開示3項目についての投資家との対話
(1) 女性管理職比率
(2) 男性育児休暇取得率
(3) 男女賃金格差
6 今から企業がすべきこと:求められる人的資本の考え方
1 サステナビリティ情報開示の動向
(1) サステナビリティ情報開示の海外動向
(2) 有価証券報告書の改正経緯
(3) 人的資本情報開示枠組みの問題は何か
2 国際的枠組みから見る有価証券報告書の人的資本情報
(1) ガバナンス
(2) リスク管理
3 開示すべき情報とは何か
4 チェックポイント
1 人的資本開示の現状
2 財務報告研究におけるテキスト分析の先行研究
3 定量評価におけるデータ収集と方法論
(1) データ収集プロセスとデータソース
(2) テキスト分析と構造トピックモデル(STM: Structural Topic Model)
(3) 機械学習(XGBoost)によるモデリング
4 定性評価におけるデータ収集と概要
(1) 「サステナビリティに関する考え方及び取組」の概要
(2) 人的資本開示定性評価プロジェクト
(3) 人的資本開示定性評価の概要
5 「女性管理職比率、男性育児休業取得率、男女賃金格差」の開示内容分析
6 「サステナビリティに関する考え方及び取組」の開示内容分析
(1) 開示内の文字数に関する分析
(2) 開示内の画像数に関する分析
(3) 構造トピックモデル(STM)によるトピック抽出
7 具体的な企業の分析
(1) パーソルHD
(2) サンゲツ
8 機械学習による定性評価と開示内容分析
1 「シャドウボード」で経営判断にZ世代の視点を取り入れる
(1) 新世代の消費者に向けブランドを刷新
(2) シャドウボードを成功させるには
(3) シャドウボードの効力
2 新たな経営モデルで、従業員エンゲージメントを劇的に向上させる
(1) 長く続いた従業員と企業の対立関係に終止符を打つ
(2) 従業員エンゲージメントモデルの成功要因
(3) ステークホルダーの巻き込みと成果・成功の共有
3 長期的な視点から段階的に変革を進める
(1) ステップ1: カイゼンと事業基盤の強化(2009年〜2014年)
(2) ステップ2: DXで競合環境を再設定(2015年〜2018年)
(3) ステップ3: サステナビリティでデジタル銀行としての強固な位置づけへ(2019年〜)
(4) 企業変革の実現
4 逆境から原点に立ち戻って成し遂げた組織変革
(1) 商工中金のDNA
(2) 不祥事を乗り越え想定を超えた組織風土改革へ
(3) 定款にパーパスとミッションを記載
(4) 多様な学びの場
(5) 独自性の高い人的情報開示
5 チェックポイント
1 エンゲージメント
(1) エンゲージメントとは何か
(2) 人的資本情報として注目を集めるエンゲージメント
(3) 役員報酬とエンゲージメントとの連動
2 ウェルビーイング
(1) ウェルビーイングとは何か
(2) 国際的に注目を集めるウェルビーイング
(3) 日本で注目を集めるウェルビーイング
(4) 仕事を通じた主観的ウェルビーイングの国際比較
(5) 仕事を通じた主観的ウェルビーイングの業績向上効果
(6) 人的資本情報開示におけるウェルビーイングの動向
(7) エンゲージメントとウェルビーイングの共通点、相違点
3 ウェルビーイングを経営に実装する
(1) ウェルビーイングを経営に実装するときの視点
(2) 従業員のウェルビーイング向上のための介入の観点
4 まとめ
1 人的資本経営を実践する
2 東証上場企業の人的資本経営実践状況
(1) 人的資本経営実践の現状
(2) 人的資本経営実践と企業パフォーマンス
3 未来の働き方:ハイブリッドワーク
(1) ハイブリッドワークとその効果
(2) 東証上場企業のハイブリッドワーク実施状況
(3) ハイブリッドワークへの選好
海外のHRトレンドワード解説2024 - BANI/Voice of Employee/Trust
高齢化社会で求められる仕事と介護の両立支援
男性育休の推進には、前向きに仕事をカバーできる「不在時マネジメント」が鍵
男性が育休をとりにくいのはなぜか
男性の育休取得をなぜ企業が推進すべきなのか――男性育休推進にあたって押さえておきたいポイント
調査研究要覧2023年度版
人的資本経営を考える
人的資本情報開示のこれまで、そしてこれから
なぜ、日本企業において男性育休取得が難しいのか? ~調査データから紐解く現状、課題、解決に向けた提言~
《インテグリティ&エンパシー》いつの時代も正しいことを誠実に 信頼されることが企業価値の根源
《“X(トランスフォーメーション)”リーダー》変革をリードする人材をどう育成していくか
人的資本情報開示にマーケティングの視点を――「USP」としての人材育成
男女の賃金の差異をめぐる課題
内部通報を利用して人的資本のリスク管理の開示充実を
有価証券報告書を通した人的資本のリスクの開示状況と課題
エンゲージメントとは何か――人的資本におけるエンゲージメントの開示実態と今後に向けて
女性管理職比率の現在地と依然遠い30%目標
企業と役員の人的資本に対するコミットメントに整合性を
有価証券報告書を通した人的資本のガバナンスの開示状況とその内容
有価証券報告書、ISSB、TISFDから考える人的資本情報開示のこれから
女性役員比率30%目標から人的資本経営を見直そう
役員報酬設計を通して示す人的資本経営へのコミットメント
株主総会の招集通知から見えた、人材に関する専門性不足
男性育休に関する定量調査
先行対応企業の開示から考える人的資本に関する指標の注目ポイント
内部通報制度は従業員に認知されているか
有価証券報告書による人的資本情報開示 企業の先行対応を調べる過程で得た3つの気づき
人的資本情報開示に先行対応した企業の有価証券報告書から何が学べるか
真に価値のある「人的資本経営」を実現するため、いま人事部に求められていることは何か
企業の競争力を高めるために ~多様性とキャリア自律の時代に求められる人事の発想~
HITO vol.19『人事トレンドワード 2022-2023』
目まぐるしく移り変わる人事トレンドに踊らされるのではなく、戦略的に活用できる人事へ
2022年-2023年人事トレンドワード解説 - テレワーク/DX人材/人的資本経営
地に足のついた“独自の”人的資本経営の模索を
人的資本経営は人事によるビジネスへの貢献の場 リーダーの発掘・育成の環境を整え企業成長を
人的資本経営は企業特殊性を最大限に生かす事業戦略と人材戦略を
人事は経営企画、財務、事業企画と共に 「持続的な企業の成長ストーリー」を語ろう
特別号 HITO REPORT vol.13『動き出す、日本の人的資本経営~組織の持続的成長と個人のウェルビーイングの両立に向けて~』
人的資本情報の開示に向けて
人的資本経営と情報開示を巡る来し方と行く末 ―ウェルビーイング時代の経営の根幹「人」へのまなざし―
~サイボウズの人的資本経営~ 企業理念やポリシーをいかに開示できるか 型にはめるより伝わりやすさを重視
~ポーラの人的資本経営~ 企業は人の集合体。ポーラに脈々と伝わる「個を大切にするDNA」でサステナビリティ経営を推進
《人的資本経営》「人への投資」が投資判断に影響する 今こそ企業存続への正しい危機感を
人的資本情報開示に関する調査【第2回】~求職者が関心を寄せる人的資本情報とは~
会社と社員のパーパスを重ね合わせ エンゲージメントの向上を通じた人的資本経営の高度化を目指す
人的資本経営を“看板の掛け替え”で終わらせてはいけない 個人の自由と裁量をどこまで尊重できるかが鍵
CFO/FP&Aの観点から考える CHROとCFOがCEOを支える経営体制の確立と人材育成の方向性
人的資本経営は「収益向上」のため 人事部はダイバーシティ&インクルージョンの推進から
~KDDIの人的資本経営~ 投資家との対話は学びの宝庫 人事は投資家と積極的に相対しよう
自社の人材戦略に沿ったストーリーあるデータを開示 人材に惜しみなく投資することで成長するサイバーエージェントの人的資本経営
経営戦略と連動した人材戦略の実現の鍵は人事部の位置付け ~人的資本経営に資する人事部になるには~
人的資本の情報開示の在り方 ~無難な開示項目より独自性のある情報開示を~
人的資本経営の実現に向けた日本企業のあるべき姿 ~人的資本の歴史的変遷から考察する~
人的資本情報の開示で自社の独自性を見直す好機に~市場は人材や組織の成長力を見ている~
人材版伊藤レポートを読み解く
人的資本情報やその開示に非上場企業も高い関心 自社の在り方を問い直す好機に
《人的資本経営》多様な個を尊重し、挑戦を促すことで企業発展につなげたい
人的資本経営の実現に向けて 人材版伊藤レポートを概観する
《人的資本経営》対話が社員の心に火をつける 時間という経営資本を対話に割こう
人的資本情報開示に関する実態調査
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