公開日 2016.05.20
アルバイト・パートの人材確保がますます困難になっていく中、いま企業にできる打ち手は何か。その課題解決に向けて、本プロジェクトでは、外食・小売・運輸業の大手7企業の協力を得て、求職者や現場の従業員・管理者などを対象に大規模な調査/分析を行っている。調査は、パーソルグループと東京大学・中原淳准教授との共同研究にて行われた。この連載では、得られた調査結果の一部を随時紹介していく予定だ。
第1回である今回は、まず背景情報として、マクロな市場動向、現場管理者の感じている課題などから、アルバイト・パートの人材不足の現状を確認してみたい。
厚生労働省が四半期ごとに実施している「労働経済動向調査」の2016年2月結果によると、調査対象産業計で、正社員は19期連続、アルバイト・パート(調査では「パートタイム労働者」)は26期連続で、従業員が「不足している」と回答した事業所が「過剰である」と回答した事業所よりも上回っている。なかでもアルバイト・パートの不足状況について産業別に推移を見ると、「宿泊業・飲食サービス業」「卸売業・小売業」「サービス業」における企業が特に人材不足を感じており、不足感は年々増していることが分かる。
アルバイト・パート人材の労働者過不足判断D.I. 推移(※)
※「労働者過不足判断D.I.」とは、調査時点において、労働者が「不足」と回答した事業所の割合から「過剰」と回答した事業所の割合を差し引いた値。この判断D.I.がプラスであるほど、人材不足と感じている事業所が多いことを示す。グラフは、表章産業区分が改訂された2009年2月調査から、各年の2月調査数値で作成。
一方、厚生労働省の「一般職業紹介状況」を見ると、アルバイト・パート(調査では「パート」)の新規求人数は1990年頃から増加傾向が続いており、2009年のリーマンショックでいったん落ち込むものの、その後再びハイペースで増加している。
アルバイト・パートの有効求職者数については2011年の685,694人をピークに、この4年間は減少している。同期間は就職件数も減少しており、企業から新たな求人が出ていてもなかなか採用決定に至らなくなってきている状況がうかがえる。
アルバイト・パートの新規求人数/有効求職者数(年平均)
アルバイト・パートの就職件数(年平均)
採用困難な状況については、現場の店長・管理者の声にも表れている。本プロジェクトにて、店長・管理者を対象に「店長・管理者が職場で感じている課題」について上位3点を挙げてもらったところ(店長・管理者調査)、「売り上げ予算の達成が難しいこと」に次いで、「人が採用できないこと」が多い結果となった。また、「休暇がとりにくいこと」「従業員がすぐ辞めてしまうこと」「職場で頼れるメンバーがいないこと」などの回答率も高い。このことから、多くの店舗では十分に採用できていないほか、採用できても一人前に育つまで定着させられていないことが、人材不足に拍車をかけていそうだ。人が足りないまま空いたシフトの穴を店長自らが休み返上で補っている様子もうかがえる。都内の飲食店などでは繁忙期に人材が足りない分を店長が穴埋めし、3週間休みなしで働いているようなケースもあるという。
店長・管理者が職場で感じている課題
このようにアルバイト・パートの人材不足は、現場においても深刻な課題となっている。少子化に伴う労働力人口の減少も視野に入れると、ますます深刻化することは避けられないだろう。上の調査結果からも、今後の人材確保には採用だけでなく、その後の定着・育成も視野に入れた対策が必要になるのではないだろうか。
■調査概要
・調査名:店長・管理者調査
・調査主体:パーソルグループ×東京大学 中原淳准教授
・調査対象者:小売・外食・運輸の大手企業の現場マネジメント職(店長・現場管理者など)、2,380人
・調査期間:2016年1月18日~2月21日
※引用いただく際は出所を明示してください。
出所の記載例:パーソルグループ・東京大学中原淳研究室「パート・アルバイト店長・管理者調査」
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