ATD認定プログラムの運営に関わってわかった参加者の変化とは
~ビジョンが明確になり、人材開発プロフェッショナルとしての自覚が生まれる~

公開日 2025/06/04

射水 和香子

株式会社パーソル総合研究所
事業推進本部 ラーニング事業推進部 パフォーマンスコンサルタントグループ

射水 和香子

大学卒業後、化粧品メーカーの美容部員を経て、大手人材サービス会社にて人材派遣、総合受付業務委託、海外人事分野のHRテック導入等の法人営業およびプロジェクトマネジメントを経験。約3年間営業チーム長として15名のマネジメントも行う。キャリアコンサルタントとして主に女性、若手社員のキャリアを支援すべく、社内研修や個別面談を多数実施。2022年、株式会社パーソル総合研究所に参画。キャリア、対話、コミュニケーション、リーダーシップ、営業力強化等の研修に多数登壇の他、研修前後の個別コーチング・グループコンサルテーションにおいても豊富な経験を持つ。個人としてキャリアカウンセリング学習者の育成にも携わっている。

  1. ATD認定プログラムにはどのような形で携わっていますか?
  2. ATD認定プログラムのおすすめポイントを教えてください
  3. 参加者が得た気づきの中で、特に理論的なフレームを使うことに関するものは何でしょうか?
  4. 理論を実務で活かす難しさについて、参加者からよく聞かれる原因にはどのようなものがあるのでしょうか?
  5. ATD認定プログラムはどのようなスタイルで学習をすすめますか?
  6. どんな課題をお持ちの方に参加いただきたいですか?
  7. 参加前と後で参加者の変化をどのように感じますか?
  8. 参加を検討されている方へメッセージをお願いします

― ATD認定プログラムにはどのような形で携わっていますか?

各コースには、進行役のファシリテーターと、一歩引いて全体を見ながらコース全体を管理するプロデューサーがおり、私はプロデューサー(図1)という立場で各コースにアテンドしています。プロデューサーは、オンラインコースにおいて、ファシリテーターと協力して進行やテクニカルサポートを行う役割です。この2年間、 『ATDコンサルティングスキル認定コース』『ATDニーズアセスメント認定コース』において、参加者の皆様の様子を間近に見てきました。

図1:ATD認定コースの提供体制

図1:ATD認定コースの提供体制

― ATD認定プログラムのおすすめポイントを教えてください。

ATD認定プログラムのおすすめのポイントは主に三つあります。
1.理論的なフレームの提供
まず一つ目は、それぞれのコースで学ぶべき内容がしっかり理論立てられ、フレームとして提示されている点です。全体像が明確で、この順番で進めていければ良いということが、参加者にとってわかりやすいと思います。
2.理論と実務のギャップの把握
二つ目は、現実の実務とあるべき姿の乖離に気づけるという点です。
例えば、コンサルティングであればお客様の声をしっかり聞き、変革を推進する必要があること、ニーズアセスメントでは、ニーズを的確に分析をして設計することが重要ですが、実務では理論通りに進まないことが多いと思います。現在のやり方で、何が抜け漏れがちなのか、どのポイントがうまく抑えられていないのかを把握することができます。
3.実践における障壁とその対処方法の学び
三つ目は、実践を通じてどのような障壁があるか、またその際にどう対処するかということまでしっかりとカバーできる点です。これらはプログラムの中に組み込まれており、ファシリテーターや他の参加者との対話を通じて学びます。

― 参加者が得た気づきの中で、特に理論的なフレームを使うことに関するものは何でしょうか?

まず、『ATDコンサルティングスキル認定コース』でのエピソードの一例を紹介します。コースで紹介される、プロジェクトを進めるための「5-Dコンサルティングモデル(図2)」では、次の段階に進む前に「GO or No Go」という判断が求められます。これは、先に進むのか、それとも進まずに辞めるのかを見極めるための非常に重要な判断です。ところが実際の現場では「やる」という前提でありきで進んでいることが多く、途中で「次に進めるのはやめよう」という決定をするには大きな勇気が求められるものです。参加者は、フレームを学ぶことで、それでも、立ち止まって判断することの重要性を気づきとして得ています。

図2:ATD 5-Dコンサルティングモデル

図2:ATD 5-Dコンサルティングモデル

また、『ATDニーズアセスメント認定コース』では、パフォーマー(参加者)のニーズアセスメントの重要性について「ニーズアセスメントサイクル(図3)」のフレームを活用し、学びます。研修に参加する人々が何を求めているのかを把握しなければ、学習効果を高めることはできません。ところが、現実には、例えば、2時間の「ダイバーシティ研修」を実施すると決めた上で、プログラム内容や日程を検討するということがあります。現場の人々がダイバーシティに対してどのような課題感を持ち、何を学ぶことで彼らのダイバーシティ推進に寄与できるのかをしっかり把握しないまま研修を行っても学習効果に繋がらないと、気づきとして話される方がいました。

図3:ニーズアセスメントサイクル

図3:ニーズアセスメントサイクル

― 理論を実務で活かす難しさについて、参加者からよく聞かれる原因にはどのようなものがあるのでしょうか?

多くの研修企画担当者からは、「1年間の研修スケジュールが決まっていて、前提を問い直すことはなく、問題がなければ前年と同じプログラムを同じ時期に実施することが多い」と聞きます。検討した結果として前年と同じ内容を行うのであれば良いと思いますが、組織の足並みを乱したくない、あるいは自分の負担を増やしたくないという考えから行っているとしたら問題です。本来研修は、組織の課題解決に向けた打ち手であるはずなのに、タスクとしてこなしてしまっていることが原因の一つではないでしょうか。

プロフェッショナルであれば「やってみた結果、それでよかったのか?」と振り返ることが重要です。実際に、ある研修企画担当者は、事業を内販から外販へ舵を切っていく中で、これまでと同じ研修提供ではいけないという危機感を持たれていました。個人のコンサルタントの方も、組織課題が複雑化する中で自分自身の考え方を見直したいと参加されています。組織に属する研修部門や変革推進担当の方々は、現場がすぐに動いてくれるとは限りませんが、少しでも変えていきたいという想いを持っており、この研修での学びをいかに展開していこうか真剣に考えていらっしゃる印象を受けます。

― ATD認定プログラムはどのようなスタイルで学習をすすめますか?

学習スタイルは参加体験型で、最初に「今の自分はどうですか? 」というセルフチェックからスタートします。例えば、『ATDコンサルティングスキル認定コース』では、コンサルタントに必要なさまざまな要素について5段階評価をつけ、『ATDニーズアセスメント認定コース』では、ニーズアセスメントについて何をどの程度できているかをチェックします。これはもちろん満点をとることが目的ではなく、どこができていて、どこができていないのか、何が原因なのかを把握することが重要です。そこからスタートします。

コースの内容は、ケーススタディやロールプレイに加え、参加者が普段心がけていることについて意見交換をしたり、実際に資料を読み込んで問題点やできているところを話し合ったりします。このため、参加者の皆さんは、話を聞くだけよりも、体験している時間が多いと思います。

― どんな課題をお持ちの方に参加いただきたいですか?

初学者から数年の経験を持つ方、さらにはベテランまで、それぞれの方に学びがあり参加いただきたいと考えています。 特に、初学者にとっては基本を学ぶ場になり、中堅層の方々にとっては、コンサルタントの役割やニーズアセスメントの全体像を理解し、自身のやり方を見つめなおすための良い機会といえます。

実際のアンケートでも、研修に参加した方々は「実践すべき内容がつかめた」との感想を寄せられており、見よう見まねで取り組んでいた手法の目的や活用すべき場面と方法を整理できたという声が寄せられています。中堅の方々からは、我流で続けてしまい気づかなかったポイントを発見できたとのフィードバックもあります。ベテランの方でも、自分のやり方に固執していたことに気づき、改善の余地があることを理解したという声があります。

― 参加前と後で参加者の変化をどのように感じますか?

参加者の変化として、大きく二つあります。まず、自分の現在の役割や組織の進め方、課題解決の方法について、ビジョンが明確になる方が多いと感じます。もう一つは、日々の実務で抱える葛藤や躊躇にどう向き合うか、どう捉えるかについて整理できる方が多いという点です。

一つ目の変化についてですが、参加者に話していただく時間が多い研修なので、ファシリテーターが活発な意見交換を歓迎する雰囲気をつくることによって「私はこう思っていました」「私たちの組織はこうです」といった具体的な発言や、「上司がこのようなことを言っているのですが、どうしたらいいでしょうか」といった相談も活発に行われます。そのため、日頃抱えている迷いや葛藤は話すことで明確になり、他の方の意見や取り組み事例、ファシリテーターからのコメントやアドバイスを通じて新たな気づきを得ることができます。

例えば、研修において「効果測定がしにくいので導入が難しい」といったことが議論されることがありますが、その際に「測れないという結論を出さない」 というアドバイスが出てきたりします。仕事をする以上、効果測定は必須であり、何をどう測るかという視点が重要です。そう考えると、組織がどう変わるべきか、何を進歩と捉えるかをしっかり考えないと指標は出てこないということがわかります。

「効果測定できません」と言っている状況は、組織の目指すべき方向やそれに向けたステップを見極められていない、つまり思考が足りていない状況かもしれません。そのことに自分が気づくことによって、組織や上司のせいではなく、自分が提案すべきだという意識に変わります。このような変化が、ATD認定プログラムを通じて参加者の方々にさまざまな角度から芽生えてくると私は受け取っています。

終了後のアンケートからも、修了者同士が集まる機会やフォローアップの場を求める声が寄せられており関係者同士の関係が深まっている様子がうかがえます。

― 参加を検討されている方へメッセージをお願いします。

参加を検討されている方で、現在の仕事に不安や行き詰まりを感じている方には、ATD認定プログラムの受講を強くお勧めします。このプログラムでは、自分の役割や組織の風土に基づくやり方を振り返り、原理原則についての新たな視点を得る機会を提供します。参加体験型の学びを通じて、実践や他の参加者の様子を観察することで、他者からの気づきも得られます。また、実務の葛藤については、参加者同士やファシリテーターがしっかりとサポートし、実務上の文脈を踏まえた最適解を発見される場面が 多くあります。

印象深い事例としては、ニーズアセスメントコースでの学びのデザインに関する議論です。参加者が「学習効果をあげるために、研修だけでなく、その前後を含めたデザインが必要」と提起し、ファシリテーターが「ラーニングエコシステム」の考え方を紹介することで、点で考えていた参加者の視点が一気に広がりました。このように、具体的な問題解決に向けた意見交換が行われることで、皆さんの学びが活性化されると信じています。現場のリアルな声を通じて、単に内容を学ぶだけでなく、共に学び合うことが重要です。このATD認定プログラムで得られる学びは、あなたのキャリアに大きな影響を与えるでしょう。ぜひご参加ください。

※文中の内容・肩書等はすべて掲載当時のものです。

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