在宅勤務下における新入社員の現場受け入れで気を付けるべき3つのこと
~コミュニケーション施策の実施とマネジメント方法の転換が鍵~

公開日 2021/04/12

執筆者:シンクタンク本部 研究員 金本 麻里

2020年度の新卒新入社員(以降、新入社員)は、コロナ禍の影響で、例年とまったく異なる新卒オンボーディング(新入社員の受け入れ~定着・戦力化のプロセス)を経験した。1回目の緊急事態宣言が発令されていた2020年4月7日~5月中下旬は、多くの新入社員が入社後すぐに在宅勤務を余儀なくされ、新入社員研修をオンラインで受講。宣言解除後は徐々に出社率が高まったものの、10月時点でも、過半数の新入社員が在宅勤務を続けていた。

2020年度は、いわば突貫工事的に、すでに計画されていた新卒オンボーディング施策を在宅勤務に乗せ換えたために、準備不足で思わぬ悪影響が出てしまった企業も多かったのではないだろうか。2021年度も引き続き、在宅勤務を行いながら新入社員を受け入れる企業が多いことが想定される。このため、2020年度の実態について、在宅勤務によって新入社員にどのような影響があり、どのような取り組みが有効だったのかを振り返ることは、2021年度の取り組みに向けた貴重な示唆となるのではないだろうか。

そこで、本コラムでは、パーソル総合研究所が行った「2020年度新卒入社者のオンボーディング実態調査(コロナ禍影響編)※」の結果を基に、2021年度に新入社員を配属先に受け入れる際に気を付けるべき点を述べたい。

※従業員数300名以上企業の新卒新入社員、人事担当者に対して実施(2020年11月実査)

  1. 2020年度の新卒オンボーディング実態
  2. 在宅勤務が新入社員に与えた影響
  3. 新入社員の成長や定着を促すために、在宅勤務下の現場受け入れで気を付けるべき点
  4. まとめ

2020年度の新卒オンボーディング実態

まず、2020年度の新卒オンボーディングは、例年とどのように異なっていたのだろうか。

研修については、2020年度の新入社員は半数以上がオンラインで受講しており、2018年度、2019年度が約1.5割だったのに比して急激に増加した。OJTは、新入社員の約3割がオンラインで経験していた。面談や歓迎会・懇親会については、研修期間は約4~5割、配属後は約3割がオンラインでの実施を経験していた(図1)。

図1.新入社員の定着・育成に関する各施策の実施方法(新入社員から聴取)
図1.新入社員の定着・育成に関する各施策の実施方法(新入社員から聴取)
出所:パーソル総合研究所「新卒入社者のオンボーディング実態調査(コロナ禍影響編)」。以下同様。


また、研修やOJT、面談等の実施率は例年と変わらなかったが、歓迎会・懇親会は中止する企業が多く、2018年度、2019年度に比べ実施率が半分以下に減少していた。対面コミュニケーションの減少に加え、業務外の交流頻度も減少していたことが分かる。

在宅勤務が新入社員に与えた影響

在宅勤務が新入社員に与えた主な影響は、コミュニケーションの希薄化と育成効果の低下だった。

新入社員に対する在宅勤務の影響ランキング(新入社員から聴取)を見ると(図2)、1位、3位、6位がコミュニケーションのとりづらさだった。フリーコメントでは「オンラインでは初めて会った人と仲良くなりづらい」「意図しないコミュニケーションが生まれにくい」といった、オンラインコミュニケーションで《あるある》な課題が新入社員からも挙がっていた。中でも、同期とのコミュニケーションについての課題感が最も多く、1位の結果に。新入社員にとって、同期とのつながりは、情緒的なサポートの意味や、情報交換や切磋琢磨を通じた成長の意味においても重要である。また、3位、6位に挙がる先輩社員や上司とのコミュニケーションも、職場に馴染んだり、仕事の仕方を学んだりする上で不可欠だ。にもかかわらず、2020年度はこれらが課題の上位を占める結果となってしまったわけだ。

さらに、在宅勤務の新入社員は、出社者に比べ、他部署の先輩社員や経営層といった、通常の業務では関わらない人々との関係が構築しにくいという傾向も見られた。新入社員が他部署を含めた幅広い社内人脈を構築できるような支援は、コロナ禍に関係なく、新入社員の組織社会化(組織や仕事に適応するプロセス)を促し、ひいては成長や定着に非常に効果的であることが分析から分かっている。こうしたことから、在宅勤務における同期や上司、他部署を含めた周囲の人々との関係構築に重要となるコミュニケーションの課題は、2021年度に改善すべき優先度の高いポイントといえるだろう。

図2.新入社員の在宅勤務の課題ランキング(新入社員から聴取)
図2.新入社員の在宅勤務の課題ランキング(新入社員から聴取)

コミュニケーション課題に次いで、育成効果の低下についても課題感が強かった。在宅勤務によって、OJTや業務を通じた育成効果の低下を実感した新入社員は47.9%、研修・業務へのモチベーション低下は46.5%と約半数にのぼった(図2)。オンライン化により非言語情報から学べなくなったことに加え、突然のオンライン化に適応しきれず、新入社員も上司も効果的な方法が分からなかったことが要因と考えられる。

一方で、在宅勤務という働き方そのものに対しては、「通勤時間が削減できる」「自分のペースで作業できる」といったポジティブな声が多く聞かれ、既存社員同様に在宅勤務のメリットを感じていたようだ(「第四回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」参照)。

新入社員の成長や定着を促すために、在宅勤務下の現場受け入れで気を付けるべき点

では、2021年度の在宅勤務下での新入社員の現場受け入れにおいては、どのような点に気を付けるべきなのか。

まず、前述のコミュニケーションの課題を解決するために、新入社員が上司や先輩社員と人間関係を構築できるような仕組みを、例年よりも多く設けたほうがよいだろう。例えば、上司や育成担当者との定期的な面談や1on1を設定し、その中でも、業務外の雑談をする時間を設けるなどして意図的に関係構築をしていく工夫が考えられる。また、在宅勤務では業務で関わる相手だけに関係が閉じやすいことから、他部署の先輩社員など、業務外で相談できる相手を設定し、さまざまな立場の人と関係が作れるように支援することも重要だ。日報や社内SNSなどを使って、業務に関する進捗報告や相談だけでなく、自身の調子や仕事への感想も含めて定期的に報告・相談ができるような仕組みも有効だと考える。オンラインでの歓迎会・懇親会も、対面よりも満足度は低下する可能性があるが、積極的に実施するとよいだろう。

次に、在宅勤務下の新入社員育成において、上司や先輩社員が従来よりも力を入れるべき点として、次の2点が挙げられる。1点目は、上司や先輩社員の側から歩み寄り、新入社員の話を傾聴し、信頼関係を作ることである。調査結果では、週3日以上在宅勤務をしている新入社員について、上司が「プライベートな話も聞いてくれる」ことが成長や定着を促すという結果が出ている(図3・図4)。この項目は実施率が約3割と低く、あまり行われていないだけに、特徴的な結果といえる。ただし、これについては、やり方によってハラスメントにもなりかねないため、単にプライベートな話を聞けばよいのではなく、そのような話ができるほど、堅苦しくない、親密な関係を作ることが効果的である、と解釈すべきだろう。そのような関係が築けていれば、在宅勤務でも新入社員が会社や仕事に関する情報を得やすく、組織への愛着や所属意識も持ちやすいと考えられる。

図3.新入社員の「成長」の観点で有効なマネジメント
図3.新入社員の「成長」の観点で有効なマネジメント


図4.新入社員の「定着」の観点で有効なマネジメント行動
図4.新入社員の「定着」の観点で有効なマネジメント行動

2点目は、従来の伴走型のマネジメント方法から、新入社員がある程度自律的に作業できるようなマネジメント方法に転換することである。調査結果から、週3日以上在宅勤務を実施する新入社員では、上司が「ビジョンや方向性を示してくれる」ことが成長や定着を促すことが分かっており(図3・図4)、また、別の分析では、「作業スケジュールを自分で決められる」ことも成長や定着にプラスに働いていた。在宅勤務では、対面に比べ指示が伝わりづらかったり、進捗状況が見えづらかったりするため、これまでのように、横目で見ながら細かい指示やアドバイスを出すようなマネジメントが困難になる。そのため、新入社員がある程度自律的に作業できるように、ビジョンや方向性を共有し、作業の順序などの細かい点は新入社員自身で決められるようにするほうが効果的なのだろう。同時に、前述のような信頼関係を早い時点で構築することを目指し、新入社員がつまずいたときには相談に乗り、丁寧にフォローすることも従来に増して重要となるだろう。

まとめ

以上をまとめると、2021年度の新入社員の現場受け入れで、特に気を付けるべきことは次の3点に集約される。

  • 新入社員が上司や他部署を含めた先輩社員と関係構築する機会を、例年よりも多く設ける
  • 上司や先輩社員の側から歩み寄り、新入社員の話を傾聴することを意識して信頼関係を作る
  • 新入社員がある程度自律的に業務を遂行できるように、ビジョンや方向性を示すとともに、相談しやすい姿勢を見せる

在宅勤務下での新卒オンボーディングの方法を模索することは、新入社員だけでなく、既存社員も含め、新たな働き方に適応した組織文化を作る機会になると考えられる。ぜひ組織的に取り組んでみていただきたい。

執筆者紹介

金本 麻里

シンクタンク本部
研究員

金本 麻里

Mari Kanemoto

総合コンサルティングファームに勤務後、人・組織に対する興味・関心から、人事サービス提供会社に転職。適性検査やストレスチェックの開発・分析報告業務に従事。
調査・研究活動を通じて、人・組織に関する社会課題解決の一翼を担いたいと考え、2020年1月より現職。

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