株式会社パーソル総合研究所 取締役/シンクタンク本部 本部長
立教大学大学院 経営学専攻 リーダーシップ開発コース 客員教授
法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科 兼任講師
本間 浩輔
1968年神奈川県生まれ。早稲田大学卒業後、野村総合研究所に入社。2000年スポーツナビの創業に参画。同社がヤフー傘下入りした後は、ヤフー人事担当執行役員、取締役常務執行役員(コーポレート管掌)を経て、2021年より現職。著書に『ヤフーの1on1 部下を成長させるコミュニケーションの技法』(ダイヤモンド社)、『会社の中はジレンマだらけー現場マネジャー「決断」のトレーニング』(中原淳・立教大学教授との共著。光文社)、『残業の9割はいらないーヤフーが実践する幸せな働き方』(光文社)がある。
パーソル総合研究所では、2023年12月に人事トレンドワードとして「賃上げ」「リスキリング」「人材獲得競争の再激化」の3つを発表しました。未来に向けてもうひとつ加えるとしたら、私はChatGPTに代表される「AI」だと思っています。HRテックの延長線上で、評価や選考などの業務がテクノロジーによって格段に便利になるでしょう。人事のみならず、そのような変化が組織の至るところで2、3年後には起こり始めるはずであり、その変化が企業経営にもたらすインパクトは小さくないと思われます。
AIの技術は一部のエンジニアだけでなく、一般の人も使えるようなものになりました。今後、企業にとっては、自らAIに関するエンジンを何らか開発し、提供するのか、提供された技術をうまく活用するのかをはじめ、「自社にどう適応(アダプト)させるか」が重要となり、そこが人事の腕の見せ所になります。リスキリングも、そのような適応を意識したものになるでしょう。スマートフォンの使いこなしひとつとっても、新しいものを面白がって使ってみる好奇心と、知識・スキルを組み替えていくアンラーニングが必要です。リスキリングは初心者がプログラミングを学ぶといった遠いものではなく、もっと身近なものになってくると思います。
加えて、人事が直面するであろう課題のひとつが、「管理職」に求める立場・在り方です。労働力不足や雇用の流動性の高まり、IT化、ダイバーシティの推進といった現場の複雑な連立方程式を解ける管理職が現場にいなければ、これからの組織は回らなくなります。その意味では、専門職としての管理職がもう一度見直されるはずです。そこにAI活用が進むことで、人がやるべき、会社業績に資する管理職の仕事がより明確に見えてくるのかもしれません。そうなると、人事も従来のような効率を重視したコストセンターではなく、企業価値を上げるためにどのような人を採用し、どういう管理職を置き、何をどうモニタリングしていくのか、さらには会社全体のイノベーションのために何ができるのかを考える役割が求められるでしょう。まさに「経営に資する人事」です。
そのためにも、これからの人事は積極的に外に出ていくべきです。外に出て仲間を作り、話をし、自社と外とを比較できるようにならなくてはいけません。人事は機密情報や個人情報などを多く扱うため内向きになりやすい部門ですが、社外秘情報に触れずに意見交換ができる部分は多くあります。得た知見を自社に持ち帰り、共有する。それが、私たちが組織で働く意味でもあると考えます。
時代が変わるのを前提に考えれば、社内の上ばかりを見て同じことをしていては乗り遅れてしまいます。特にシニア・ベテラン層の人ほど「自分が一番遅れている」という意識を持つこと。知らないこと・興味がなかったことにあえて触れる、そんな姿勢も求められるでしょう。
※文中の内容・肩書等はすべて掲載当時のものです。
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