アルバイト・パートに「選ばれる」面接のために 属性別にみた面接のポイント

公開日 2016/07/28

アルバイト・パートに「選ばれる」面接のために属性別にみた面接のポイント

アルバイト・パートの採用において応募の次の関門は、「面接」だ。人材不足が進み過去に類を見ない売り手市場となっているなか、面接についても以前とは異なる対策が求められるようになってきている。そこで今回は、約1,000人を対象とした【面接担当者調査】と8,000人を対象とした【パート・アルバイト一般従業員調査】から見えてきた現在のアルバイト・パート面接のポイントをお伝えしたい。

「最後の下見」としての面接

アルバイト・パートの面接は、大きくわけて、店長などの現場管理者やその補佐的立場の人が行っている場合と、別の部署の担当者が集約的に行っている場合がある。所要時間は30分~1時間程度で、ほとんどが一度きりの面接で合否が決まる。今回の調査結果から見えてきたのは、その「面接」という極めて短い時間での体験が、求職時のみならず、入社後の行動にも想像以上に強い影響力を持っていることだ。

影響は、直接的影響/間接的影響の2つの側面から整理できる。一つは、内定辞退という直接的影響だ。今回の調査で明らかになったアルバイトの「内定辞退」の割合は24.0%。およそ4人に1人は内定を出しても入社に至らず、辞退をしている計算になる。

現在の求人過多の状況と、WEBでの気軽な応募が浸透したことを背景に、応募者の多くは複数の職場へ同時に応募している。こうした状況に鑑みて、面接の場は応募者にとってアルバイト先を絞り込むための「最後の下見」の場になったといえそうだ。

面接はこれから働く上での「基準づくり」

2つ目に見逃せないのが、入社後の「定着」への間接的影響だ。下表は、入社1カ月以内で辞めてしまう早期離職と相関の強いネガティブな項目を上位から順番に並べたものだ。

早期退職影響項目ランキング_550.png

これをみると、1位・2位は面接時の説明と実態との違い、4位・5位も入社前のイメージと入社後の現実との齟齬と、入社前や面接と入社後の実態とのギャップ、非整合が離職に大きな影を落としている。

面接は、アルバイトの従業員にとって、その職場で今後働いていく上での「基準づくり」の場として作用している。「面接での話よりも」現場が忙しい、「聞いていたこと」と仕事の内容が違う、「思っていたより」正社員になるのが難しい......など、入社前/入社後のギャップとそこから生まれる職場への不満/満足。面接はその基準を面接官と応募者でつくりあげていく場としても見ることができる。

このように面接での体験は、入社から定着まで、その職場でのアルバイトの働き方全体に影響を与えている。担当者によってやり方がバラバラな属人的な面接では、この貴重で重要な体験をきちんとコントロールすることは難しい。

では、どういった点が面接のポイントになるのだろうか。

面接の3つの法則

アルバイトの面接を行うにあたって、どういった点がポイントになるのか。ここでは次の3点をご紹介したい。

1.面接来社時の「既存スタッフの対応」

「既存のスタッフの対応」とは、面接のために来社した応募者に対する職場スタッフの対応のことだ。これは面接前の極めて短い時間の体験だが、そこでの印象で働く意欲は大きく左右されることが調査から明らかになっている。相手が「お客様」ではないことが分かったとたん、スタッフの言葉遣いが乱暴になったり、忙しくて面接まで長い間待たせたりするなど、このタイミングでの職場への悪印象は、たとえ入社に至ったとしても後々まで尾を引く。実際に、1カ月以内の早期離職理由のランキングでは、「面接来社時の既存スタッフの悪印象」は全体の3位という結果となっている。

2.仕事の「やりがい・魅力」を伝えられるか

面接において、作業内容やシフト、時給などの「条件合わせ」に終始することなく、スタッフをモチベートするような言葉をいかに投げかけられるか。これが、働きたい意欲の向上に、最も影響力が高いことが分析では判明している。提供しているサービスやお店の魅力をはじめ、職場ごとに異なるそこで働くことの魅力や価値をいかにプレゼンテーションできるか。「最後の下見」で応募者の心を動かすのは、その伝え方にかかっている。

3.面接官の「伝えているつもり」意識の転換

そして最後のポイントとして忘れてはならないのが、面接官が1や2を「できているつもり」になっていることだ。下のグラフは、面接後の働きたい気持ちに影響する重要な3点について、上段(濃いグレー)に「面接官の意識」、下段(薄いグレー)に「面接を受けた従業員の意識」をグラフ化したものだ。

面接ギャップ_550.png

ここから示唆されるのは、希望する仕事内容をきちんと聞くことも、仕事のやりがいを伝えることも、面接官は「やっているつもり」になっている部分が多くあるということだ。いくら伝え手が話したつもり、聞いたつもりでも、実際に受け手側の理解や伝達の実感につながっているとは限らない。こうした面接官の「できているつもり」の意識を変え、応募者とのギャップを埋めていくことが「選ばれる」ための面接では重要になってくるだろう。

層別にみた面接のポイント

次に、「学生」「主婦」「フリーター」に応募者の層を分けたときに、それぞれどのような特徴があるかを見てみよう。上の3点は共通のポイントとしてありつつも、面接での注意点は層ごとに微妙に異なることが調査結果から見えてきた。

面接注意点_10001.png

上表は、面接後の働きたい気持ちへの影響の強さについて、層別に重回帰分析を行ったものだ。

この分析結果を読み解いていくと、まず【主婦層】は、来社時の対応や職場の整理整頓具合などに最も敏感に反応し、「面接時の職場印象」がそのまま働きたい意欲につながっている。【主婦層】には特に丁寧な対応、面接場所の清掃などを心がけたい。また、【主婦層】は仕事内容やシフトなどについてきちんと具体的な内容を伝え、希望と擦り合わせることが最も重要な層でもある。入社後の働き方について曖昧さを残さず、しっかりと理解してもらうことで働く意欲を高めることができそうだ。

【学生層】が最も気持ちを動かされているのは、会社や職場の理念や目標を理解できたときだ。職場全体の目標を入社前から伝え、その職場が目指している姿をイメージさせることが学生の働く意欲を大きく高めている結果が示されている。

【フリーター層】は「仕事内容」への自分の希望を聞いてくれるかを最も気にしている様子がうかがえる。「やりたい希望を面接官がきちんと聞いてくれた」という実感を与えることが重要だろう。逆に言えば、十分聞いてくれない=「やりたくない仕事をやらされる可能性がある」という印象を持たれると働く意欲を低下させてしまう可能性が高いので要注意だ。

現状、多くのアルバイトの面接担当者は、シフトや作業内容といった条件面の擦り合せと、その人の適性の見極めに多くの時間を割いている。もちろんそれも重要であるが、それ以上に現状の人材不足の下では「いかに応募者を仕事へと動機づけるか」が重要になってくる。まずは「見極める面接」から「動機づける面接」へと面接官の意識を転換し、層ごとの特徴を理解しながら、貴重な応募者から入社を断られない面接に努めることから始めよう。そうした「断られない」面接の実践が、そのまま入社後に「辞めない」面接へとつながっている。


【予告】アルバイト・パート成長創造プロジェクト2016年秋・書籍刊行予定です
東京大学・中原淳准教授とパーソルグループのインテリジェンスHITO総合研究所は、小売・飲食・運輸業界大手7社の協力のもと、全国約2万5,000人を対象に、「アルバイト・パート雇用」に関わる大規模調査を実施しました。そこで得られたデータ・知見は、2016年秋にダイヤモンド社より書籍『アルバイト人材採用・育成入門』(仮題)として刊行予定です。詳しい刊行予定等詳細は、随時ホームページでお知らせいたします。

※書籍では、今回の面接のポイントについて、より詳しく分析した結果を掲載予定です。


■調査概要
・調査名:面接担当者調査
・調査主体:パーソルグループ×東京大学 中原淳准教授
・調査対象者:小売・外食・運輸の大手企業、非正規雇用の面接担当者、952人
・調査期間:2016年1月18日~2月21日

・調査名:パート・アルバイト一般従業員調査
・調査主体:パーソルグループ×東京大学 中原淳准教授
・調査対象者:小売・外食・運輸大手6社7ブランドにおける非正規雇用の一般従業員 (店舗・営業所スタッフ・配送スタッフなど)、8,141人
・調査期間:2016年1月18日~2月21日


※引用いただく際は出所を明示してください。
出所の記載例:パーソルグループ・東京大学中原淳研究室「パート・アルバイト一般従業員調査/離職者調査」


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