Well-beingな状態で働くためのテレワークのポイントと対策
~はたらく人の心の状態を2分するテレワーク~

Well-beingな状態で働くためのテレワークのポイントと対策

新型コロナウイルスの感染拡大により、Well-beingへの注目度が増している。働き方においても、一定普及してきているテレワーク(在宅勤務)という環境下で、いかにWell-beingな状態(より良い心の状態)を保ちながら働くかは、就業者個人にとっても企業にとっても強い関心事である。そこで本コラムでは、調査結果から見えてきた「就業者の心の状態に対するコロナ禍やテレワークの影響」や「テレワークにおいてWell-beingな状態で働くためのヒント」を紹介する。

  1. コロナ禍が就業者の心の状態に与えた影響(1年間の変化)
  2. テレワークは幸福度を高め、不幸度を低減するのか?
  3. テレワークで注意すべきは、「不幸せ」にならないこと
  4. 不幸せを感じるテレワーカー/感じないテレワーカーに2極化
  5. Well-beingの観点から見たテレワークにおける年代別のポイントと対策(まとめ)

コロナ禍が就業者の心の状態に与えた影響(1年間の変化)

新型コロナウイルスへの感染が拡大し、不安感と共に過ごしてきたこの1年、国内の就業者の心の状態にはどのような変化があったのか。緊急事態宣言前となる2020年2月と2021年2月の経年実施した就業者の主観的幸福感と不幸感に関するインターネット調査の結果を紹介したい*1。 質問方法は、国内居住の有職者(2020年:5,000名/2021年:3,000名)に対し、「私は、働いていて幸せ/不幸せを感じている」「私は、働いていて幸せ/不幸せを感じることが多い」といった総合評価・頻度・周囲との比較といったそれぞれ5項目から構成したオリジナル尺度を用いて、「とてもそう思う~全くそう思わない」の7件法で回答を求めたものである[図1]。この結果、「働いていて幸せを感じている」と回答した人の割合は、2020年2月時点では44.0%、2021年2月時点では43.0%であり、はたらくことを通じた幸福感については、この1年間での大きな変化は確認されなかった。一方、「働いていて不幸せを感じる」と回答した人は、2020年2月時点では20.2%であったが、2021年2月時点では17.6%となり、不幸せを感じている人の割合はやや減少していることが確認された。雇用形態や職種などにより様相は異なるものの、国内の有職者という大局的な見地においては、不幸せを感じている人がやや減少していることは好ましい結果だといえる。

*1:はたらく人の幸せに関する調査 【続報版】
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/research/activity/data/well-being-telework.html

図1:はたらく人の幸せ/不幸せ実感の変化

テレワークは幸福度を高め、不幸度を低減するのか?

そこで、次に関心を向けたのは、新たな働き方として注目されるテレワーク勤務者と出社者とではこの傾向に差があるのかという点である。当社が継続的に実施してきたテレワークに関する一連の大規模調査から、テレワーク勤務者は比較的規模の大きな企業の正社員に多いという属性に偏りがみられることが確認されている。よって、ここからは2021年2月に実施した調査の対象者3,000名のサンプルから「正社員」のみを抽出して分析を行った。私たちの予想としては、テレワーク実施者(836名)のほうが出社者(985名)よりも心の状態は良好であろうと考えた。そして、結果としても、主観的幸福感/不幸感ともにテレワーク勤務者のほうが出社者よりも良好であるとの傾向が確認された。しかし、この傾向は年代別に確認していくと、30代・40代においては統計的に支持されたものの、20代においては逆の結果が確認されたのである。若手社員ほど新たな働き方を希求し、適応も早いだろうという我々の予測に反し目を疑う結果であったが、20代では、テレワーク勤務者よりも出社者のほうが主観的な幸福感/不幸感のスコアが良好という結果であった[図2]。

図2:年代別 働き方別 はたらく幸せ/不幸せ実感

テレワークで注意すべきは、「不幸せ」にならないこと

では、テレワークという働き方においてWell-being (ウェルビーイング/より良い状態)を維持して仕事と向き合うためには、私たちはどのようなことに注意を払うとよいのか。先述した年代別の詳細を深堀りしつつ、このヒントを得るため、働く人のWell-being(ウェルビーイング)状態を計測する「はたらく人の幸せ/不幸せ尺度(Waw77)」*2を用いた分析結果を紹介したい。「はたらく人の幸せ/不幸せ尺度」とは、先述したはたらく人の主観的幸福感や不幸感の要因について、幸せ/不幸せをそれぞれ7つの因子を用いて分析するツールである[図3]。

図3:はたらく人の幸せ/不幸せの7因子尺度

この尺度を用いて分析した結果、はたらく人の幸せの7因子については、7つの因子すべてがテレワーク勤務者のほうが良好であり、かつ統計的に有意であることが確認された[図4]。とりわけ「自己成長因子」「自己裁量因子」といった因子のポイント差は注目すべき点であり、先のテレワーク勤務者の主観的幸福感が高い理由を説明する重要な観点だといえる。

一方、不幸せの7因子については、テレワーク勤務者のほうが良好かつ有意であったのは「不快空間因子」「評価不満因子」の2つの因子だけであった。また、「自己抑圧因子」は両者に差がなく、「オーバーワーク因子」にいたってはテレワーク勤務者のほうが不良となる傾向が確認された。この「不快空間因子」が良好という点からは、在宅勤務等では従来の職場空間よりも物理的には快適に仕事に向き合っている人が多いことがうかがえる(注:在宅勤務が可能な「職種」による偏りも考慮して解釈する必要がある)。「評価不満因子」については、現在も継続的にテレワーク勤務ができている人は、評価において一定の配慮と公平性が担保されている(されつつある)ことが示されたものと考えられる。

これらの結果全体から、テレワーク勤務者については「幸せ因子」だけを見るのではなく、「不幸せ因子」にこそ着目し、いかに「不幸せ」にならないようにするかを考えて対処していくことが肝要だといえる。

図4:テレワーク実施別 はたらく幸せ/不幸せ因子スコア

*2:「はたらく人の幸せの7因子/不幸せの7因子尺度(Well-being at Work Scale:Waw77)」
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/research/activity/spe/well-being/img/Well-Being_AtWorkScale.pdf

不幸せを感じるテレワーカー/感じないテレワーカーに2極化

では、「不幸せの7因子」についてもう少し深堀りしてみたい。まず、それぞれの因子スコアを3分割(高群・中群・低群)し、比率を確認した。その結果、「自己抑圧因子」「オーバーワーク因子」「協働不全因子」「疎外感因子」の4因子については、テレワーク勤務者の中でも良好な人と不良な人が2極化していることが確認できた。特に、この傾向は[図5]に示した通り、20代で顕著であった。また、「オーバーワーク因子」の2極化傾向については、40代・50代でも同様に確認された。つまり、テレワーク勤務者は全般的には良好な状態で勤務されている人が多いように見えるが、因子ごとに見ていくとその裏には着実に状態が悪化している人が少なくないことが分かる。この数値は、就労者の中にはテレワークという働き方を希求し、意気揚々と活躍をされている人がいる一方で、悶々と思い悩む人が一定数いるという現時点の(ある意味、強いられた)テレワーク勤務の一側面として、認識しておくべき実態であろう。

図5:テレワーク実施有無別 不幸せ因子分布 【20代】

Well-beingの観点から見たテレワークにおける年代別のポイントと対策(まとめ)

最後に、はたらく幸せの7因子/不幸せの7因子の分析から、改めて年代別の注意点を確認したい[図6]。下の図は、テレワーク勤務者の因子得点から出社者の因子得点を差し引き、年代ごとに因子得点の傾向を表現したものである。グラフが下に伸びている因子は、テレワークによって悪化が懸念されるポイントだと考えていただきたい。

図6:年代別 テレワーク実施有無別 はたらく幸せ/不幸せ因子スコア差

まず、幸せの7因子では、全般的にテレワーク勤務者の状態は良好だが、20代では「チームワーク因子」「他者貢献因子」が低い(悪化する)傾向が確認できる。次に、不幸せの7因子の傾向では、20代では「自己抑圧因子」「疎外感因子」、30代では「自己抑圧因子」、40代では「オーバーワーク因子」「疎外感因子」、50代では「オーバーワーク因子」といった因子が低くなる(悪化する)傾向が確認できる。この結果は、テレワークにおいて注意すべき点は「年代」によって異なる、という特徴が示唆されたものと考えられる。

もし、あなたが20代で「チームワーク因子」「他者貢献因子」「自己抑圧因子」「疎外感因子」といった因子に課題を感じているならば、どのような対策が考えられるか。例えば、日頃から仕事上のちょっとしたことへの感謝を口にする(メールやチャットに書き添える)、上司や先輩に次に習得すべき知識・スキルへのアドバイスを求める、自身を素直に開示する(オーセンティシティ)など、対策を自分なりに焦点化することができるのではないだろうか。また、あなたが組織のマネジメントを担う立場であるならば、先述の若手メンバーが自己開示できるような職場風土は醸成できているか、自身の振る舞いはどうかなどを振り返ったり、メンバーの育成を支援するための対話機会をつくったりするなどの対策が検討できるかと思う。ある会社では、メンバーの「チームワーク因子」や「疎外感因子」を悪化させないため、リモート会議の前後の10分ほどを雑談タイムとして解放し、アジェンダに関係ない会話を楽しむなどの工夫をされていると聞く。このような工夫については、それぞれの組織が状況に合わせて試行錯誤して編み出し、新たな自組織の文化として育んでいくものだと考える。テレワークが急速に普及して早1年、されどまだ1年……、テレワークの利点を生かし、多くの働く人たちが「はたらいて、笑い合える」。そんなこれからの時代に適応する新たな組織文化を創っていく、今はまさにその過程にあるのだと考えている。

執筆者紹介

井上 亮太郎

シンクタンク本部
主任研究員

井上 亮太郎

Ryotaro Inoue

大手総合建材メーカーにて営業、マーケティング、PMI(組織融合)を経験。その後、学校法人産業能率大学に移り組織・人材開発のコンサルティング事業に従事した後、2019年より現職。
人や組織、社会が直面する複雑な諸問題をシステマティック&システミックに捉え、創造的に解決するための調査・研究を行っている。

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