長時間労働が常態化しがちなIT業界にありながら、働き方改革、健康経営に精力的に取り組み、9割の社員が「働きやすい会社」だと思う状態にまでなったSCSK。2021年からは、次のステージとしてWell-Being経営に乗り出した。Well-Being推進を担当する河辺氏にお話を伺った。
SCSK株式会社 執行役員/人事分掌役員補佐 (DEIB・Well-Being推進担当) 河辺 恵理 氏
1986年住商コンピューターサービス(現SCSK)入社。流通業界、金融業界を中心とした大企業向けのシステム開発などを担当。2014年同社初の女性執行役員として人事グループ副グループ長に就任。その後、グローバル事業やリソース戦略の責任者などを経て23年に人事組織に戻り、24年より現職。
情報システムを24時間365日提供し続けるIT業界では、長時間労働・深夜残業が当たり前とされてきました。私もシステム開発の現場に長らく従事していましたが、夜遅くまでいる社員や休まない社員がよしとされてきました。2012年、当時の経営トップがこの状況を見て「抜本的な改革が必要」と決意し、働き方改革に着手。2015年までの3年間で、従業員の残業時間月20時間以下、有給休暇年20日(100%)取得を実現しました。2015年からは健康経営にも取り組んでおり、「働きやすさ」の点では大きな進歩を遂げたと思います。
そして次のステージとして、2021年からは《Well-Being》をキーワードに掲げ、新しい施策にチャレンジしています。この言葉には「心身および社会的に満たされた状態」などの訳語がありますが、当社におけるWell-Beingでは、健康/働き方/DEI/キャリア/組織/やりがい/未来創造の7つの価値観が、社員一人ひとりにとって満たされた状態と定義しています。2024年3月に、この7つの価値観を基に社員の「働きやすさ」「働きがい」を指数化し、Well-Beingの実態を調査しました。その結果、働きやすさの実感値は相対的に高く、10年以上続けている働き方改革を通じて、社員が実感できるようになったのだと思います。しかし、働きやすさに比べると、働きがいはまだまだ伸びしろのある結果でした。働きがいのさらなる向上を視野に、こうしたデータと実態を照らし合わせながら、現在はWell-Being度を高めていく「Well-Beingサイクル」の確立を目指しています。
働きやすさを感じる観点は、心身ともに健康に働ける、ワークライフバランスが取れているなど、人による違いが比較的少ないものであると思います。一方、働きがいをどこに感じるかは人によって異なり、Well-Beingを実現するための施策も多様で複雑なものになるでしょう。そのため、全社的なWell-Beingの浸透もトップダウンではなく、各組織で主体的に進めていくことが重要と考えています。具体的には、組織ごとにワーキンググループを組成し、各組織の課題に応じたWell-Being施策の検討・実施を進めるようにしました。人事は、先述のような調査データなどの情報提供や事例の共有、ワーキンググループの場づくりなどによって、各組織で主体的に取り組めるよう後押ししていきます。
私自身がシステム開発の現場で働いていた頃を振り返ると、作ったシステムが実際に動いた時や顧客から感謝される時、働きがいを感じました。人それぞれ異なるとはいえ、こうした時に働きがいを感じる人は多いと思います。しかし、普段の仕事の中で「どこに働きがいを感じるか」を問われ、答える場面はあまりありません。思いは言語化することで認識されるものであり、それによって働きがいはより一層高まるように思います。働きやすい環境で、役職員が生き生きと活躍し、仕事を通じて世の中の役に立っていること、そして必要とされていることをしっかり実感できることが、一人ひとりの幸せや働きがいにつながると考えています。
※文中の内容・肩書等はすべて掲載当時のものです。
THEME
CONTACT US
こちらのフォームからお問い合わせいただけます