HOMEコラム・レポート スペシャル 労働市場の今とこれから 第1回 2025年、583万人の人手不足という衝撃

スペシャル

2018.01.25

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労働市場の今とこれから 
第1回 2025年、583万人の人手不足という衝撃

労働力不足

2025年に不足する労働力は583万人

連日の新聞報道等で「人材不足」「労働力不足」という言葉を目にしない日はないと言えるほど、今この国は深刻な人手不足に陥っています。

実は日本の働き手の数(15歳〜64歳の人口を示す生産年齢人口)が減少傾向に転じたのは、今に始まった話ではありません。今から20年も前からジワリジワリと押し寄せてきた人手不足の波が、ここにきて一気に社会問題と化し注目されるようになった背景には、近年の景気回復による企業側の人材ニーズの高まりがあります。人手不足の状況を示す有効求人倍率は1.41倍(平成28年11月分)を記録し、バブル全盛期の1991年7月以来25年4ヵ月ぶりの高水準と報じられました。

現在の人手不足は今後も続くのか。また続くとすれば、今後どれほどの労働力不足が見込まれるのか。そうした問題意識から、パーソル総合研究所(以下、パーソル総研)では、人口動態から予測される将来の就業者数と、足元の経済成長率が今後も維持すると仮定した場合に必要となる労働力数を推計しました。その結果、「2025年に不足する労働力は583万人」という衝撃的な未来像が浮かび上がってきました。

人材不足の状況を産業別に見たのが図1です。最も労働力不足が深刻な産業は、情報通信・サービス業で482万人の不足。次いで、卸売・小売業の188万人の不足という見込みです。卸売・小売業では、アルバイトを確保できないという理由から閉鎖に追い込まれる店舗が見られるなど、既に人手不足が深刻化し、今後さらにその傾向は加速する見通しです。

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超労働力不足時代にどう向き合うか

では、こうした「超労働力不足時代」に、私たちはどう向き合えばよいのでしょうか。労働力不足を解消するアプローチには2通りの考え方があります。1つは生産性を上げることで「企業が必要とする労働力の数を減らす」という考え方で、もう1つは女性・シニア・外国人就業者の労働参加を促すことによって「働き手の数を増やす」という考え方です。

そこで、パーソル総研では「583万人の労働力不足」を乗り越えるための取り組み目標を設定し、それによって見込める労働力不足の解消度合いをシミュレーションしました。

人手不足を解消する4つの打ち手

1.生産性を上げる
まず、生産性の向上についてです。日本は主要先進国と比べ、労働生産性が著しく低い状況が続いています。情報通信業や製造業など一部の産業では高い生産性が実現されている一方、サービス業における生産性の向上は喫緊の課題とされています。特に、付加価値を生み出す担い手が人に他ならないサービス業では、働き方の改革や人材配置の最適化などを通じた労働生産性の向上が急務です。現在、日本の労働時間当たりの実質GDPは年率で平均0.9%伸びていますが、約3割増の年率1.2%に伸ばすことができれば、2025年に必要な労働力を114万人減らす効果が試算されます。

2.働く女性を増やす 
続いて、女性の労働参加についてです。日本では、結婚、出産、育児などのライフイベントをきっかけに職を離れる女性が多く、女性の労働力人口比率は30〜40代が大きく凹むM字型を描くのが特徴的です。それとは対称的に、女性活躍の先進国と言われるスウェーデンでは、40〜44歳をピークとした山形を描きます。日本もスウェーデン並みに女性の労働参加を促進できれば、2025年には30代以上の女性で350万人の労働参加が見込める計算になります。そのためには、育児休業などの制度の拡充・活用を促進することはもちろん、職務定義の見直しや成果に基づく評価の徹底など職場マネジメントの改善も不可欠です。

さらに、女性側の育児や就業に対する意識にも目を向ける必要があります。(独)労働政策研究・研修機構による調査(※注1)では、出産を機に職を離れる理由について、「自分で子育てをしたい」「両立の自信がない」など女性側の意識の問題が上位を占めることが分かっています。こうした女性側の育児や就業に対する考え方を見直す研修など、意識変革を促す支援が求められるでしょう。

3.働くシニアを増やす 
高齢化率(全人口に占める65歳以上人口の割合)が2007年に21%を超え、日本は世界に先んじて超高齢社会に突入しました。10年が経過した今では26%を超え、さらに2025年には30%の大台に達する見通しです。しかし、類を見ないペースで高齢化が進む現状を過度に悲観する必要はありません。健康寿命も高まり、定年後も働き続けたいと考えるシニアが少なくないからです。

内閣府「高齢者の地域社会への参加に関する意識調査」(平成20年)によれば、60歳以上の約70%が定年後も働き続けたいという意向を持つことが分かっています。2025年時点で65〜69歳の労働力を60〜64歳と同程度に維持できれば、167万人の労働力増加が見込まれます。この数字を現実的なものとするためには、短時間勤務制度や定年制の廃止といった、年齢に関わらず意欲と能力に応じて働き続けられる制度を導入するなど、企業レベルの工夫が必要なことは言うまでもありません。

4.日本で働く外国人を増やす
留学生と在留資格外国人労働者の増加に伴い、外国人労働者は年々増加傾向にあります。現在の増加ペースを維持すれば、2015年の90.8万人が2025年には144万人に増加する見込みです。これは2025年に全労働人口に占める外国人労働者の割合が2015年と比べ約1.6倍になる計算ですが、それを2倍にまで伸ばすことができれば、さらに約34万人の労働力増加が試算されます。

外国人労働者の雇用については法律や政策の観点から慎重な議論が必要ですが、企業も外国人労働者の採用や定着について改善の余地はあります。採用時には「優秀な学生の見極めが難しい」「求める日本語コミュニケーション能力を有する人材が少ない」などの課題を指摘する企業が多く、せっかく優秀な人材を採用できたとしても、「留学生を活用できる日本人管理者の不足」などの理由から、十分な活躍支援ができているとは言い難い現状です。環境整備に一層の改善が望まれます。

最後に

本稿では、「2025年に労働力が583万人不足する」という「衝撃的な未来」の輪郭を浮き彫りにし、人手不足の解消に向けて今から取り組むべき課題とその方向性をお伝えしました。これから全11回の連載では、日本が直面する主な雇用課題を取り上げ、解決に向けた実践的な処方箋を示していきたいと思いますので、ご期待ください。

※注1) 独立行政法人労働政策研究・研修機構「育児休業制度に関する調査研究報告書」(2003年)

本コラムは「冷凍食品情報(2017年2月号)」(一般社団法人日本冷凍食品協会発行)に掲載いただいたものを再編集して掲載しています。

執筆者紹介


フェロー

田中 聡

Satoshi Tanaka

2006年、株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア株式会社)に入社。事業部門を経て、2010年にHITO総合研究所(現パーソル総合研究所)の設立に参画。シンクタンク本部主任研究員を経て、2018年より現職。専門は、経営学習論・人的資源開発論。立教大学経営学部 助教。一般社団法人経営学習研究所 理事。

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