公開日 2015/09/29
「多様な正社員」の導入は、働く個人と企業経営にとってどのような意味を持つのだろうか。また、非正規社員から「多様な正社員」や「いわゆる正社員(無限定正社員)」へ転換する動きを進める上でどのような点に気をつけるべきか。
これまで、日本では非正規雇用と正規雇用の壁は厚く、非正規社員が次のキャリアとして正規雇用を目指すのは難しい状況にあった。雇用形態に不満を感じながらも非正規社員として働くことを余儀なくされた不本意就労が目立っている。もちろん、様々な就業観・キャリア観を持った非正規労働者を一括りにして議論するのは乱暴ではあるが、雇用の安定性やキャリアアップの機会を求めて正規雇用を望む層に限定すれば、「多様な正社員」制度は歓迎される話だろう。一方、経営観点からも期待できるメリットはある。社員のモチベーション向上やそれに伴う生産性向上を期待することができるという点だ。
「多様な正社員」の導入は、非正規雇用の待遇を改善し、生産性の向上を期待できるというプラスの側面がある一方で、慎重にならなければいけないという見方もある。近年の人材不足によって優秀な人材の確保に迫られた企業が、採用戦略の一環として「正社員化」を打ち出そうとする狙いである。そこで陥りがちなのが、「多様な正社員導入=正社員化」というミスリードだ。多様な正社員への転換は雇用形態が有期から無期に変わるだけで、「いわゆる正社員」への転換とは異なる。雇用期間の定めがなくなっただけで、実際にはキャリアアップや能力開発の機会は与えられない「名ばかり正社員」では、働く個人にとっても経営にとっても抜本的な問題解決にはならない。
それでは、非正規社員から「多様な正社員」や「いわゆる正社員(無限定正社員)」へ転換する動きを進める上でどのような点に気をつけるべきか。小手先の制度改訂や運用上の工夫といったレベルで解決される問題ではない。日本的雇用慣行の全体にかかわる問題であるという視点が必要である。
下図に、非正規社員から「多様な正社員」や「いわゆる正社員(無限定正社員)」への転換を進める上で重要な観点を3つに整理する。
また、機関誌HITOでは、各観点に関する先進的な企業事例を3社紹介している。ぜひ併せてご覧いただきたい。>>機関誌HITO vol.7 多様な正社員の未来
※本記事は、機関誌「HITO」vol.07 『多様な正社員の未来』からの抜粋記事です。
※文中の内容・肩書等はすべて掲載当時のもの。
本記事はお役に立ちましたか?
日本企業が高度外国人材を受け入れるためには何が必要か
職場の精神障害のある人へのナチュラルサポートの必要性 ~受け入れ成功職場の上司・同僚の特徴から~
障害者雇用の取り組みは、多様な人材・働き方を包摂した組織作りにつながる ~調査から見えたDEIへの好影響~
精神障害者雇用の現場マネジメントを円滑に進めるには ~ネットワークを広げた取り組みが成功の近道~
精神障害者と共に働く上司・同僚の負担感とその要因 ~調査から見た精神障害者雇用の現状と課題~
精神障害者雇用の現場マネジメントについての定量調査[上司・同僚調査]
精神障害者雇用の現場マネジメントについてのインタビュー調査
「性の多様性」を基本に置く「包括的性教育」。 それは、一人ひとりを尊重する「人権教育」でもある
精神障害者の就労における障害者枠と一般枠の違い
障害のある就業者の「はたらくWell-being」実現に向けた課題と方策
精神障害者雇用を成功させるノウハウとは
精神障害者雇用にまつわる誤解を解く
「幸せを感じながら働く」状態を目指す。それが企業・精神障害者の双方にとって大事なこと~外部支援者から見た障害者雇用の実態と、企業や個人に期待すること~
企業が向き合う精神障害者雇用の今 ~歴史的経緯とマクロ的動向から読み解く~
企業の不正・不祥事はなぜなくならないのか ~調査結果から見えた「共同体主義」という病根~
「障害者」と括らず希望する誰しもに、経済的自立と誇りある人生を 福祉の常識を覆す発想で挑戦を続けるアロンアロン
女性の管理職への昇進を後押しする上司の働きかけとは
女性の管理職昇進意欲を高める鍵は「管理職への両立支援」
人生100年時代に必要なのは、自分の軸を持ちキャリアを構築する「キャリアオーナーシップ」
自律性、主体性が求められる時代、人事施策成功のカギは《個の覚醒》にあり
「ダイバーシティ」に抵抗するのは誰か──社会的地位と不寛容さの関係を探る
【イベントレポート】働き方改革と企業の持続的成長に向けて
別冊HITO (2015 AUTUMN)『精神障がいと職場マネジメント』
多様な正社員導入で押さえるべき雇用ポートフォリオ見直しのポイント
いま議論されている限定正社員の問題
企業における「多様な正社員」導入の意味とは?
follow us
メルマガ登録&SNSフォローで最新情報をチェック!