ミドル・シニア層の約4割を占める「伸び悩みタイプ」とは?
50代前半に多い躍進停滞層の特徴

公開日 2018/03/13
最終更新日 2020/03/06

前回のレポート『躍進するミドル・シニアに共通する5つの行動特性』で、躍進を促す5つの行動特性「仕事を意味づける」「まずやってみる」「学びを活かす」「自ら人とかかわる」「年下とうまくやる」についてお伝えしました。それでは、実際、5つの行動特性を発揮しているミドル・シニアとは全体のどのくらいの割合でしょうか。また、思うような活躍が出来ずに伸び悩んでいるミドル・シニアの特徴とはどのようなものでしょうか。

今回のレポートでは、前回お伝えした5つの行動特性を基にクラスター分析を実施し、5タイプに分かれたミドル・シニアの人物像に迫っていきたいと思います(調査概要は下記参照)。

ミドル・シニア層の約4割を占める「伸び悩みタイプ」とは? 50代前半に多く、特徴は「多忙感」「職場への不満」など

  1. 全体の約4割を占める「伸び悩みタイプ」
  2. 「伸び悩みタイプ」の実像とは
  3. まとめ)「伸び悩みタイプ」の行動変化が経営課題解決の鍵

1.全体の約4割を占める「伸び悩みタイプ」

「5つの行動特性」指標を用いてクラスター分析(非階層クラスタリング、k-means法)を行った結果、5つの人材タイプに分かれることが分かりました。それぞれの人材タイプの特徴から、私たちは「ハイパフォーマータイプ」「バランスタイプ」「伸び悩みタイプ」「事なかれ・安住タイプ」「不活性タイプ」と名付けることにしました。

以下、各タイプの特徴についてご紹介します。※各タイプのレーダーチャートの破線は平均値を示す

【ハイパフォーマータイプ】 
5つの躍進行動全てにおいて平均を大きく上回るレベルで実践している躍進層

1図.png

【バランスタイプ】 
いずれの躍進行動も平均をやや上回る水準でバランスよく実践している層

図2.png

【伸び悩みタイプ】
いずれの躍進行動も平均をやや下回る躍進停滞層

図3.png

【事なかれ・安住タイプ】 
年下メンバーとの関係性は良好だが、その他の躍進行動は実践していない現状維持型層

図4.png

【不活性タイプ】 
いずれの躍進行動も平均を大幅に下回る不活性層

図5.png

また、5つの人材タイプの割合は以下のとおりです。

【図】5つの人材タイプ割合

図6.png

調査の結果から、躍進行動を極めて高いレベルで実践しているハイパフォーマータイプは、全体の約2割存在することが分かりました。また、最も多い割合を占めているのが「伸び悩みタイプ」です。そこで、ここからは「伸び悩みタイプ」の特徴を掘り下げてみていくことにしましょう。

2.「伸び悩みタイプ」の実像とは 

「(現在の就業に対する」多忙感」「昇進・昇格に対する見通し」「会社・職場・上司に対する満足度」「キャリア展望」の観点から、「伸び悩みタイプ」の特徴を整理したのが以下の表です。

7図.png

伸び悩みタイプについて、「5つの行動特性」の実践度が平均スコア以下であるという結果(上記参照)から、就業時間中に手持ち無沙汰を感じ、社内での出世にも意欲を示さないといった、いわゆる「働かないオジサン」のイメージを連想される方もいらっしゃるでしょう。しかし、私たちの調査結果によれば、そうしたイメージとは異なる人材像が浮かび上がってきました。具体的には、まず他のタイプより忙しさを感じながら仕事をし、今後の昇進・昇格も十分に可能だと捉えている点が「伸び悩みタイプ」の特徴であることが明らかになりました。にもかかわらず、会社・職場・上司に対する満足度は著しく低い傾向を示している、というのも「伸び悩みタイプ」にみられる特徴です。

「伸び悩みタイプ」は50代前半に最も多く、現在の年齢を考慮すると、将来的な昇進・昇格が現実的には難しい状況です。昇進・昇格に対する本人の明るい見通し(将来への期待)と、いま置かれている状況(実際の評価)とのギャップに対する不満を反映した結果とも言えるでしょう。また興味深いのがキャリア展望についてです。

上記のように会社・職場・上司に対して高い不満足を示しているのであれば、他社への転職意向が高いように思われますが、他タイプと比較してもその割合は決して高くないことが分かっています。積極的にこの会社で働きたい、とは思っていないが、かと言って他社への転職意向が高いわけでもない、という「消極的な就業意向」が顕著になる結果となりました。

まとめ)「伸び悩みタイプ」の行動変化が経営課題解決の鍵

躍進するミドル・シニアが実践する5つの行動特性を基にクラスター分析を実施し、 「ハイパフォーマータイプ」「バランスタイプ」「伸び悩みタイプ」「事なかれ・安住タイプ」「不活性タイプ」の5つの人材タイプとその特徴をお伝えしました。中でも、「伸び悩みタイプ」が最も多い割合を占めていることが分かりました。従業員の平均年齢が40歳を超えるようになり、ボリュームゾーンがミドル・シニア層へとシフトする高年齢化した日本企業において、約4割を占める「伸び悩みタイプ」のパフォーマンスが会社全体の経営に与える影響は決して無視できるものではありません。言い換えれば、伸び悩みタイプの躍進行動をいかに促すことができるかが喫緊の経営課題であるといっても過言ではないでしょう。

そこで、次回レポートでは、「伸び悩みタイプ」のパフォーマンスを高める上で重要な「5つの行動特性」に対して、組織・環境要因(「上司のマネジメント」「研修・カウンセリング」「職場の人間関係」)および個人要因(「キャリア意識」)がそれぞれどのような影響を与えているのかを見ていくことにします。


(※1)調査概要は以下の通りです。

調査概要


株式会社パーソル総合研究所/法政大学 石山研究室
「ミドル・シニアの躍進実態調査」
調査方法 調査会社モニターを用いたインターネット調査
調査協力者 以下の要件を満たすビジネスパーソン:2,300名
(1)従業員300人以上の企業に勤める40~69歳の男女
(2)正社員(60代は定年後再雇用含む)
調査日程 2017年5月12日~14日
調査実施主体 株式会社パーソル総合研究所/法政大学 石山研究室

※引用いただく際は出所を明示してください。
出所の記載例:パーソル総合研究所・法政大学 石山研究室「ミドル・シニアの躍進実態調査」


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